ワインで対談 2020年1月14日 HRテクノロジーを活用するために求められる日本企業の取組みとは – ウイングアーク1st民岡良さん × セレブレイン 関 伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第12回ゲストは、ウイングアーク1st株式会社 営業・カスタマーサクセス本部 人事ソリューション・エヴァンジェリストの民岡良さん。HRテクノロジーの最先端のトレンドや活用をすすめる上で求められる企業の取組みについて伺います。聞き手はセレブレイン パートナーHR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第12回ゲスト:民岡 良さん略歴 ウイングアーク1st株式会社 人事ソリューション・エヴァンジェリスト。日本オラクル、SAPジャパン、日本IBMを経て2018年10月より現職。HRテクノロジー・コンソーシアムの理事、および日本CHRO協会のアドバイザーも務める。著書に『HRテクノロジーで人事が変わる』(2018年 労務行政、共著)がある。 広範囲な仕事を請け負うジェネラリストにこそジョブ定義が必要 関:SAPジャパンを離れた後は、日本IBMに入社されましたよね。 民岡:2016年でしたね。日本IBMに入社したことは自分のキャリアとしても大きな意味がありました。日本IBMはどの世代にも知名度が高く、信頼されています。私もIBMの冠があったおかげで、多くのキャリアを積むことができました。 関:2016年というと、ちょうどWatsonなどが発売され、AIに関する取組みが盛り上がりはじめてきた頃ですね。 民岡:そうですね。ただ、強調しておきたいことがあります。確かに日本IBMではAIを活用した変革をいち早く推進してはいましたが、AIなどのテクノロジーの導入を単に行うだけではなく、その下支えもしっかり行っていたのがIBMの価値だったと思います。 関:下支えというと? 民岡:たとえば私が日本企業に対して啓蒙しているジョブ定義やスキル・コンピテンシー定義をどういう粒度で行うのか、HRテクノロジーの活用のためにはそれらの定義が必要不可欠であり、どのような部分で活用していくべきか。そういう考え方の部分もIBMではしっかりと研究されていました。 関:たしかにIBMは技術力もありますが、アカデミックな取組みも進んでいますよね。 民岡:はい。人事系専門の研究所がありまして、基礎研究もかなりやっていますし、論文も数多く発表しています。業界ごとのジョブ定義集なんかも製品として持っていました。 関:日本もジョブ型人事に変えないといけないと思っている人は増えていると思います。 民岡:ええ。ですが、増え方が遅いです。「うちは専門職ではなくジェネラリストの集まりだからジョブ定義はいらない」といわれることもあります。しかし、そうではないと私は思います。ジェネラリストのほうがむしろ広範囲な仕事を請け負っているわけですから、しっかりと仕事の定義を行っていかないといけないんですよ。 関:むしろ逆ですよね。範囲が広いジェネラリストこそジョブ定義が必要であるはずです。 民岡:そうなんです。定義できないのではなく、定義しようとしていないだけなんです。また、「ベンチャーだから全員の仕事に目が届く。だからジョブ定義はいらない」という声もあります。それも違います。最初だからこそジョブ定義をしっかりしておくことが大事なんです。人や仕事が増えたとき、そのジョブ定義をベースに積み上げていくわけですから。 関:アメリカのスタートアップのアプローチと同じですね。 民岡:何でもアメリカが正しいわけではありませんが、これについては見習うべきだと思いますね。仕事が見えているといっても、見ている人のバイアスがかかっています。企業の大小を問わず、ジョブ定義は必要なものだと思います。 日本企業の人事は4つのパターンに類型化できる 関:おっしゃる通りです。ただ、日本では従来からある職能型の人事に基づく考え方がとても根強く残っていますので、いきなりジョブ型人事と言われても変われない企業も多いのではないかと思います。変化するためにはどうすればいいのでしょう。 民岡:それを考えるとき、私は日本企業の人事担当者の方を4類型に分類して考えることにしています。まず、第1類型は「無知な人」です。カーナビには地図が必要であるのと同じように、HRテクノロジーを活用していくためにはジョブ定義が必要だということを知らない人々です。この第1類型の方々は知らないだけなので、必要性についてしっかり説明すると素直に学び、気づくことができます。 関:その必要性に気づくことができれば、変化していくことができそうですね。 民岡:次に第2類型です。この第2類型の方々は、昔から日本で人事業務に従事してきた方々で、現在の状況も分かっている頭が良い人たちです。ですが、過去に「コンピテンシー」が流行ったけれど、結局うまく根付かなかった経験を持っているので、「コンピテンシー」の要素の積み上げであるジョブ定義については消極的です。 関:知っているだけに踏み出せないのですね。 民岡:「日本には合わない」と未だに思っているんですよ。過去の体験にとらわれてしまうんです。ちょっと話はそれますが、そういう点でも御社の高橋さんはすごいんですよ。あれだけのキャリアと成功体験をお持ちなのに、今でも新しい考え方をどんどん取り入れて進んでおられますよね。そんな人はほとんどいないんですよ。 関:確かに新しい考えを取り入れることに対する抵抗感をあまり感じさせないですね。 小巻/店長:メインのお料理をお持ちしました。『カナダ産牛ハラミのステーキ』です。ベリーソースでどうぞ。 民岡:おお! 美味しそうな赤身ですね! 柔らかい! スパイスも利いていていくらでも食べられそうです。 関:本当ですね。ジューシーで旨味があります。これぞ肉! という感じです。 小巻/店長:こちらに合わせるのはオリジナルブレンドティーと、イタリア・ピエモンテを代表するバローロです。ネッビオーロという品種で作られており、“ワインの王”とも称されます。 関:なんだかすごそうですね。……お! これはたしかに合いますね! ベリーソースの果実味と絶妙にマリアージュします。 民岡:どれも美味しいお料理ばかりで最高です! これからの人事に必要とされるのは、社員一人ひとりに寄り添うこと 関:楽しんでいただけてよかったです。お話を戻すと……次は第3類型ですね。 民岡:私はこの第3類型が一番やっかいだと考えています。 関:どんな方々でしょうか。 民岡:第2類型と基本的には同じバックグラウンドを持っているのですが、違いはHRテクノロジーの活用ためにはジョブ定義が必要だということまでをも深く理解しています。それでも、あえてジョブ定義が浸透しないように止めている方々がいるのです。 関:なぜそんなことを? 民岡:利害がからんでいたり、「逃げ切りたい」と思っていたりするからです。変革とは火中の栗を拾うこと。もう少しで引退だから、それまでは変化などせず今のままでいきたいわけです。ましてや、これまでの発言や考え方を撤回するわけにもいかない。しかも、第3類型の方々にはインフルエンサーも多いから影響力もあり非常にたちが悪いです。 関:どのように捉えればよいのでしょうか。 民岡:講演で私がよく言って笑いをとっているのが、「もう隠居してもらうしかない」ということです(笑)。すべてを理解しているだけに、今さら「学び直し」という路線はないわけですからね。でも、本当にそれくらいやっかいなんですよ。 関:変化のきっかけがほしいですね。 民岡:そこで期待したいのが、最後の第4類型です。これは、営業やマーケティングのように人事とはまったく異なる部門から人事を改革するために来た人たちのことです。たいてい30代後半~40代前半くらいの優秀な人材が抜擢されることが多いですね。 関:ただ、その人たちが来ても、第2類型や第3類型の方々が人事部門にもいたりするわけですよね。 民岡:そこがネックです。第4類型の方はたいてい課長クラスとして入ることが多く、その上人事部長は第2類型や第3類型であることが珍しくありません。その場合には、上司をうまく転がして組織を変革していく能力が問われます。 関:なかなか難しそうですね。 民岡:これまで日本では、労務中心の旧来型人事の考え方でもうまくいっていました。それがついに機能しなくなってきたのが今だと思っています。なぜかというと、世代が替わってきたからです。 関:世代ですか。 民岡:仮に10段階評価で30くらいつくような突出した優秀な人材でも、これまでの日本の人事ではルールで定められた10段階の枠に収められてきたわけです。それでも我慢していたのが我々くらいまでの世代です。ところが今の若い世代は、それを我慢しなくなってきました。これはとてもまっとうなことだと思います。 関:ジョブ定義以外で人事が変わるべき点はありますか。 民岡:限界はありますが、究極的には社員一人ひとりに寄り添うべきだと思います。たとえば満員電車で出勤したくないのなら、遅い時間の出社を認めてやればいい。ちなみにこれは実際に私が社会人2年目のころから勝手に実践してきたことです(笑)。20年以上の時を経て、今では当たり前の考えになりつつありますよね。それでパフォーマンスが上がるならその方が良いでしょう。それをやらずに、「昔からの決まり事だからこれからもそう」だというのは怠慢です。運動部で下級生には練習時間中終始水を飲ませないのと同じくらい時代錯誤なことだと思います。 関:従業員のことをどれだけ考えられるかということですね。 民岡:いわゆる従業員体験(Employee Experience)の考え方ですね。今の時代、従業員は企業からすればお客様なんです。採用活動では応募者に企業を売り込んで買ってもらう、つまり働きたいと思ってもらうことが今後は大事になります。 関:これからの人事にはマーケティング思考が必要だと言われますからね。 民岡:ええ。そういう考え方が主流になってきたというのは、とても良いことです。もう10年以上前から提唱してきた私としては、ようやく変化する時代の入り口に来たなという印象です。 関:本日はとても興味深いお話をありがとうございました! 民岡:こちらこそ、とても美味しいお料理と楽しい時間をありがとうございました! 今回のお店 あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。 編集後記 ライター・カメラマンの山田井です。 生粋の人事畑ではなく、多彩なキャリアをお持ちの民岡さんならではの視点はとても刺激的。昨今の人事が抱える課題に一石を投じるお話が伺えました。 また、あじる亭の季節の食材を取り入れたお料理とワインペアリングも絶品。どれも実際にためしていただきたい組み合わせですが、個人的には『カナダ産牛ハラミのステーキ』とバローロがベストマッチ! とろけるようなマリアージュはぜひ多くの方に体験していただきたいです。
ワインで対談 2020年1月08日 HRテクノロジーを活用するために求められる日本企業の取組みとは – ウイングアーク1st民岡良さん × セレブレイン 関 伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第12回ゲストは、ウイングアーク1st株式会社 営業・カスタマーサクセス本部 人事ソリューション・エヴァンジェリストの民岡良さん。HRテクノロジーの最先端のトレンドや活用をすすめる上で求められる企業の取組みについて伺います。聞き手はセレブレイン パートナーHR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第12回ゲスト:民岡 良さん略歴 ウイングアーク1st株式会社 人事ソリューション・エヴァンジェリスト。日本オラクル、SAPジャパン、日本IBMを経て2018年10月より現職。HRテクノロジー・コンソーシアムの理事、および日本CHRO協会のアドバイザーも務める。著書に『HRテクノロジーで人事が変わる』(2018年 労務行政、共著)がある。 思わぬ出会いがオラクル入社の決め手に 関:民岡さん、あじる亭にようこそ! 今回は日本の人事に求められるデータ活用のあり方や、HRテクノロジー活用を効果的に進めていく上で前提となってくる考え方を伺いたいと思います。でも、かしこまった対談ではありませんから、飲みながらお話しましょう(笑)。まずはクレマン・ド・ブルゴーニュで乾杯! 民岡:乾杯!といきたいところなのですが、実は私、お酒が飲めないんです。でも、美味しいものは大好きなので今日はとても楽しみにしています! 関:美味しいワインを一緒に味わえないのは残念です。でも、大丈夫です。あじる亭ではお酒をお飲みにならない方向けのドリンクもしっかりありますし、料理はもちろん美味しいです。今日はぜひ楽しんでください。 民岡:こちらのあじる亭は御社のグループ会社なんですよね? 関:ええ。人事コンサルティング会社が飲食店も経営するというのは珍しいとよくいわれます。お店ができた経緯については店長の小巻さん、お願いいたします。 小巻/店長:もともとはセレブレインの副社長である高橋が大のワイン好きだったことが始まりです。お客様との会食や会社関連の食事で使えるお店がほしいと考えた高橋が、2001年にセレブールというお店を開業しました。そこから店舗を増やし、現在は赤坂に系列店が4店舗ございます。あじる亭もその一つです。ちなみにあじる亭という言葉はIT用語の「アジャイル」から来ています。 民岡:そうだったんですね! アジャイルとはユニークです。 関:民岡さんは弊社の高橋とも以前からお付き合いがありますよね。 民岡:ええ。今回の対談のお話をセレブレインさんからいただいたとき、これはもう絶対に高橋敦子(セレブレイン代表取締役副社長)さんと私の関わりについてお話しなければ! と意気込んできたんです。 関:そんなにですか!? 民岡:だって、私がIT業界に入れたのは100%高橋さんのおかげですからね! 関:そういえば民岡さんは、高橋が採用の責任者を務めていた頃の日本オラクルに新卒で入社されていますよね。 民岡:ええ。当時、私はITの経験もなく、オラクルがどんな会社なのかもよく知りませんでした。ただ、何か凄そうだぞと思ってエントリーしたんです。ところが、なかなか話が進まず、しびれを切らして高橋さんに直接どうなっているのか伺ったのです。 関:それはすごい行動力ですね! 民岡:それで、高橋さんに「IT未経験だけど誰よりも熱意はあります!」ということを伝えました。そうしたら気に入っていただけて、それからすぐ速達で採用の通知が来たんです。 関:そうだったんですね。それはなかなかユニークなエピソードですね(笑)。 民岡:そんな対応をしていただいたので、オラクルという会社はすごい! とますます心酔しました。後から知った言葉ですが、私にとってオラクル、そして高橋さんとの出会いはまさに「セレンディピティ(予期せぬ幸運との出会いや発見)」だったんです。 関:民岡さんは今でこそ日本のHRテクノロジーの第一人者として活躍されていますが、キャリアの始まりはむしろ情緒的なお話からだったのですね。 民岡:そうなんです。誤解されがちですが、私は何もかもがテクノロジーでどうにかなるとは思っていません。テクノロジーでどうにもならない部分もあります。それはきちんと人間が判断したり、実施することが必要です。その上で、これまで勘やこれまでの経験などに過度に頼り切っていた部分をテクノロジーで補っていくべきだと思っています。高橋さんとの出会いは幸運なキャリアのスタートでした。あのとき感じたセレンディピティを出来るだけ多くの方々に経験して頂きたい、そのためにはテクノロジーをうまく活用すると実現性が高まるのである、というちょっと変わった考えをもって仕事をしています。 関:なるほど。ちょうどここで最初のお料理が来たようです。 高いモチベーションを持って入社した日本オラクルを4年で辞めた理由 小巻/店長:まず召し上がっていただきたいのは『渋谷チーズスタンドモッツァレラとイチジク』です。渋谷にあるチーズ専門店・チーズスタンドさんのチーズを旬のイチジクとあわせてどうぞ。 民岡:チーズスタンド、知っていますよ! チーズに関してはチーズプロフェッショナルの資格を取ろうかと思っているくらい大好きなんです。 関:えっ、そうなんですか! 民岡さん、本当に美味しいものがお好きなんですね。 民岡:それはもう大好きです。私はランチ一食にだって全力で取り組んでいますからね!(笑) 関:すばらしいですね! 民岡:……うん、とても美味しいですね。見た目も色鮮やかで楽しく、贅沢な味わいです。さすがチーズスタンドのモッツァレラ。濃厚でイチジクとも相性抜群です。 関:季節によってフルーツは変わるので、一年を通して楽しみたい一皿ですね。……さて、お話に戻りまして、民岡さんはその後、日本オラクルを辞めてSAPジャパン、そして日本IBMというキャリアを歩まれています。そのあたりについても伺えますか。 民岡:ええ。先ほどお話したように、熱い想いをもって入社した日本オラクルですが、実は4年くらいであっさり辞めてしまうんです。 関:え、それはまたどうして……。 民岡:おかしいですよね。すごく高いモチベーションをもって入社したのに、やりたい仕事がなくなって辞めてしまったんです。いや正確には、浅はかにも「社内にはやりたい仕事がない」と勘違いして辞めたんですね。要するに「適職」とのマッチングの問題だったと思っています。当時の私の状況こそが、今でも考えるべき人事の課題なんだと思います。 関:モチベーションだけではダメだと。 民岡:そうです。モチベーションやエンゲージメントといった「気持ち」の部分の要素があった上で、さらにそこに適した仕事が与えられることが大事です。「気持ち」と適切なジョブのマッチングの両方が必要なんです。 関:確かに所属している会社自体はいろいろな事業をやっているし、職種だってたくさんある。だけど、自分がやりたい仕事に就けているとは必ずしも限らない。そうなると社内で仕事を変えるのではなく転職しようとなりがちです。 SAPジャパンでHCMシステムに出会い、HRテクノロジーに目覚める 民岡:そんなわけで日本オラクルを辞めたのですが、実はその後少しブランクがありまして、福岡に移住したりお遍路をしたりしていたんですよ(笑)。 関:えっ! 相変わらず行動力がすごいですね。 民岡:充電期間にしかできないことをやろうと思いまして。結局、福岡には7年いて、ロースクールに通ったりもしたのですが、最終的に今後のキャリアを考えて東京に戻り、SAPジャパンに入社しました。そこで出会ったのが、社員のスキルを可視化して、個人の特性とジョブをマッチングするHCM(人事管理)システムです。そこで初めて、自分がオラクルを辞めてしまった理由が“ジョブとのマッチングがうまくいかなかったから”だと分かったんです。それが私にとってのHRテクノロジーとの出会いであり、ターニングポイントでしたね。 関:いつ頃のことですか? 民岡:2008年くらいですね。 関:それは早いですね! HRテクノロジーという言葉が盛り上がる前です。 民岡:そう。だからは当時の外資系企業のHCMの考え方は、まだ日本企業にはなかなか受け入れられないものでした。でも私はこのシステム(の思想)こそがこれからの日本の人事に必要だと考えました。 小巻/店長:続いてのお料理をお持ちしました。『静岡県産ジャンボマッシュルーム“ポットベラ”フリット』です。 民岡:これ、マッシュルームですか! 大きいですね。 小巻/店長:直径が8~10cmもあるマッシュルームです。もともとヨーロッパで育てられていましたが、それを日本でも栽培できるようにされた方がいまして、そちらからいただきました。 関:やはり秋はきのこですね! 小巻/店長:そんなきのこに合わせていただきたい飲み物は、まずオーストリア産の無農薬りんごを使ったジュースです。ワインも最近は亜硫酸の添加を減らしたナチュラルなものが増えていますが、当店ではジュースにもこだわっています。 民岡:これは嬉しいですね! 爽やかな甘さがきのこの香りやフリットの香ばしさとマッチします。 小巻/店長:ワインはカリフォルニア、ソノマのシャルドネ『アーサー・セラーズ』をご用意しました。実は日本人の桃井隆宏さんという方がお作りになっているワインなんです。 関:うん、柑橘や洋梨のようなアロマがあり、樽も上品ですね。とても高品質なシャルドネです。フリットとも当然、最高に合います! 小巻/店長:ぜひ先ほどの『渋谷チーズスタンドモッツァレラとイチジク』とも合わせてみてください。 関:これもいいですね! いろいろな合わせ方を楽しめます。 前編ではオラクルから始まった民岡さんの波乱万丈なキャリアと、HRテクノロジーとの出会いについて伺いました。後編ではIBMでのご経験と、現在の人事制度の課題と解決策について伺います。 今回のお店 あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
ワインで対談 2019年4月23日 ウェブ面接が採用市場にもたらす革新と地方創生の可能性とは – ブルーエージェンシー 前田 裕人さん × セレブレイン 関 伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第11回ゲストはウェブ面接システム「インタビューメーカー」を提供する株式会社ブルーエージェンシー・代表取締役の前田 裕人さんです。現在、採用の現場で注目を集めるウェブ面接ツールの有用性について伺うと共に、前田さんが構想されている「地方創生×ウェブ面接」のビジョンについてもお話しいただきました。聞き手はセレブレイン パートナーHR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第11回ゲスト:前田 裕人さん略歴 中学時代からバンド活動に打ち込み、音楽の専門学校を卒業後は開発会社に入社。退職後はバンド活動の資金集めのため、アルバイトとしてブルーエージェンシーに立ち上げメンバーの一人として参画する。その後、インタビューメーカーのリリースに携わり、2016年8月に代表取締役に就任した。 現在の採用市場は大企業と中小企業で二分化されている 関:インタビューメーカーが急成長している背景には、人材不足と言われる中で企業の採用を取り巻く環境の変化があると思います。今は売り手市場ですが、企業の採用担当者の皆さんは大変苦労されていますよね。 前田:本当に大変ですよね。今、人に満足している企業ってほとんどないんじゃないでしょうか。つねに良い人材がほしいと思っているはずです。 関:これまでの採用業務は労働集約的な側面もありますが、これからは採用プロセスを進めるにあたって、これまで以上に人材との接点を増やしていかないといけませんからね。昔は接点といえば求人媒体や展示会、人材紹介が中心でしたが、今はダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、いろいろなやり方がありますし。 前田:そうなんですよね。ダイレクトリクルーティングやリファラルとなると、これまでと進め方が大きく変わりますので、企業の人事はマインドチェンジを迫られています。 関:以前は求人サイトに登録して、そこからやってくる人材をどうスクリーニングするかが人事の仕事でした。ところが、今は応募してくれる人を増やす行為にかなり力量をおいて実施していかないとうまく進みません。そういう意味でもウェブ面接はニーズがあると感じます。時間や空間を超えていつでもどこでも面接ができるのは大きなメリットですね。 前田:ええ。現在の採用市場は二分化されています。大企業の場合は応募が多すぎて、一人ひとりの応募者を見極めていくことが大変です。全員面接したいが、そこまで行うには人も時間も足りない。スクリーニングするのにもなるべく書類ではなく応募者と話をしたい。そこでウェブ面接を活用して、質と量を確保することに取り組んでいます。一方で、中小企業は応募が少なく、とにかく応募者を増やしたい。しかし応募者からすると面接に出向くこともハードルになりますから、辞退してしまうことも少なくありません。ウェブ面接は出向く必要がありませんから、応募のハードルを下げることができるんです。 関:なるほど。大企業と中小企業、それぞれの事情は違っても、どちらにもウェブ面接のニーズがあるわけですね。 採用に対する企業の危機感が増している 野村/店長:続いてのお料理は「大人のロールキャベツ」です。赤ワインで煮込んでいて、メインとして召し上がっていただけるボリュームのある一皿です。お肉は粗い合いびき肉で、それを薄い豚足で巻いて、下仁田ネギでキャベツを結びました。 前田:普通のロールキャベツとぜんぜん違いますね! これはおいしそうです。 関:こうなるとワインが気になりますね。 野村/店長:大人のロールキャベツに合わせるワインはブルガリアの赤ワイン、カタルジーナ・メゼック マヴルッドをご用意しました。 前田:ブルガリアですか! 関:あまり聞かないですね。 野村/店長:そうなんです。ブルガリアワインは日本にはあまり入ってきていないのですが、実は昔からワインをつくっている国なんです。このワインはブルガリアの土着品種であるマブルッド100%のワインで、シラーに似た雰囲気があり、お肉にも合います。 関:たしかに香りにブラックベリーなど黒系果実のニュアンスを感じます。それでいて親しみやすくキャッチーな味わいですね。タンニンもなめらかですし、シラーよりも果実味がふくよかで陽気な印象です。 前田:ロールキャベツのジューシーな合いびき肉とすばらしくマッチしますね。豚足のコリッとした食感も面白いです。 関:お話を戻しますと、採用といっても新卒や中途、アルバイトなどがあるかと思いますが、インタビューメーカーはどの領域に一番使われているのですか? 前田:一番多いのは中途採用ですね。というのも中途採用の対象となる方は、昼間は現職の会社で働いていることが多いですよね。そうなるとなかなか面接する時間を確保するのも簡単ではありません。そこでウェブ面接が役立つのです。 関:なるほど。対面での面接だと会社側の事業部門の方々などのスケジュール調整も大変ですよね。弊社はヘッドハンティング事業も行っていますが、現職でバリバリ活躍されている人材の方との面談調整は、時間がかかることが多いです。 前田:ええ。そうしたなかでまず話だけでもできるのは大きなメリットですよね。そこで動機形成ができれば次につなげることができますし、そもそもミスマッチングなのであれば、それも早くわかるに越したことはありませんから。 関:HR Techでは採用関連の領域がもっともマーケット規模が大きいと言われています。今後ウェブ面接はもっと成長していきそうですね。最近の人事業界をご覧になって、変わってきたなと思うことはありますか? 前田:二つあります。まず「ウェブ面接って何?」という状態だったのが、「今検討中です」という反応が増えました。もう一つは、採用に対する企業の危機感が増していると感じています。何か手段を変えないと良い人が採れないということに気づき、その結果ウェブ面接を採用する企業が増えている印象です。 関:同感です。採用は今、大きく変わろうとしていますね。 ウェブ面接がもたらす地方創生の可能性 野村/店長:続いてのお料理は「イカボナーラ」です。イカの身や白身魚のすり身をカルボナーラ風に仕上げました。黒い色なのはイカスミを使っているからです。クリーミーで、濃厚な旨味がつまった一皿です。 前田:これもユニークですね! 関:こちらにはどんなワインを? 野村/店長:魚介なので白ワインも合いますが、今回はあえてギリシャの赤ワインを合わせました。キリ・ヤーニのラミニスタというワインで、ぶどうは土着品種のクシノマヴロ100%です。ピノ・ノワールやメルローに近いニュアンスがあります。ギリシャは海が近いこともあり、魚介によくマッチすると思いますよ。 関:初めて飲む品種ですが、おいしいですね! イカボナーラのクリーミーな舌触りが、ワインの優しい雰囲気に似ていますね。しっかりとした酸味とミネラル感があり、どこか海を思わせるワインです。なるほど、赤ワインですが魚介ときれいにマリアージュしますね。 前田:すごく良い香りですね。そして確かにイカボナーラとよく合います。 関:さて、最後にブルーエージェンシーさんの今後の展開についても伺いたいと思います。インタビューメーカーのお話を聞いていて、採用だけでなく社員との面談にも使えるのではと感じました。 前田:実はそうやって使っていただているクライアントもあるんですよ。 関:やはりそうですか! コンサルティングの現場にいる立場からすると、上司と部下の対話ツールとしても便利だなと思いました。上司がウェブ面接で部下と接している姿を振り返りなどに活用することで、マネージャー育成にもなりますよね。組織改善につながりそうです。 前田:現場を可視化できるというのは大きいですよね。 関:そういえばブルーエージェンシーさんはシンガポールに子会社をつくられたと聞きました。なぜシンガポールなのでしょう? 前田:世界中の大企業のヘッドオフィスがシンガポールに集まっていますからね。今後はタイやマレーシアなど様々な国に進出するつもりです。 関:それは大変楽しみですね。国内のマーケットではどう展開されていくのですか? 前田:地方創生とのコラボレーションを考えています。 2月に宮崎県の日南市と移職住プロジェクトという移住希望者や求職者と日南市の事業者をつなげて、移住促進や人材確保を目指す取り組みを開始しました。地方自治体は人口減少が進む中、経済の活性化を図っていくために移住を促進して人を呼び込みたいと考えています。それと同時に企業も誘致したいと考えています。 関:地方に移住したいという人がいたとしても、確かに生活の基盤となる仕事が確保できないと難しいですよね。 前田:そうなんです。移住したいと考えていても仕事がなければ暮らせない。仕事を探そうにも、移住前に就職活動をするのはとても大変です。面接のたびに何度も地方へ行くのは難しいですからね。僕はここが地方移住の足かせになっていると思っています。そこで役立つのがウェブ面接なんです。僕たちは日南市と一緒になって現地の魅力を打ち出すメディアを創りました。メディアを通じて日南市のことを知って、興味を持ってもらい、移住のハードルはウェブ面接でなくしていくという流れです。 関:すばらしい取り組みです!これは世の中が大きく変わる可能性もありますね。 前田:ええ。移住したいと考えている潜在層はかなりいると思っています。そこを掘り起こせたら嬉しいですね。衣食住ならぬ“移職住”で地方創生に貢献したいと思います。 関:WEB面接で日本の地方を活性化!ですね。本日はありがとうございました! ブルーエージェンシーが参画されている「宮崎日南移住ナビ」はこちらをご参照下さい。 http://nichinan-uji.jp/ 今回のお店 あじる亭 Annesso 赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ! 編集後記 ライター・カメラマンの山田井です。 前田さんのお話を伺って、思っていた以上にウェブ面接のメリットは大きいと感じました。採用活動に苦労している企業からは、ますます注目が集まりそうです。 また、後半の地方創生にかける前田さんの熱い思いには胸を打たれました。地方移住のハードルになっているのが「職」だというのは、本当にその通りだと思います。移住前に仕事が見つかりやすくなれば、本格的に人が動くようになりそうですね。 そして今回のお料理とワインもすばらしいものでした。 ブルガリアやギリシャといった、普段あまり目にしない国のワインがグラスで気軽に楽しめるのはあじる亭Annessoならでは。シェフによる唯一無二のお料理と合わせて、ぜひ皆さんも楽しんでみてください。
ワインで対談 2019年4月15日 ウェブ面接が採用市場にもたらす革新と地方創生の可能性とは – ブルーエージェンシー 前田 裕人さん × セレブレイン 関 伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第11回ゲストはウェブ面接システム「インタビューメーカー」を提供する株式会社ブルーエージェンシー・代表取締役の前田 裕人さんです。現在、採用の現場で注目を集めるウェブ面接ツールの有用性について伺うと共に、前田さんが構想されている「地方創生×ウェブ面接」のビジョンについてもお話しいただきました。聞き手はセレブレイン パートナーHR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第11回ゲスト:前田 裕人さん略歴 中学時代からバンド活動に打ち込み、音楽の専門学校を卒業後、開発会社に入社。退職後はバンド活動の資金集めのため、アルバイトとしてブルーエージェンシーに立ち上げメンバーの一人として参画する。その後、インタビューメーカーのリリースに携わり、2016年8月に代表取締役に就任した。 乾杯はロワール地方のロゼスパークリングワインで 関:前田さん、ようこそあじる亭Annessoへ! 今日はおいしいワインと料理をいただきながらお話を聞かせてください。 前田:お招きありがとうございます。実はあじる亭Annessoは何度か来たことがあるんですよ。 関:えっ、そうでしたか! ありがとうございます。そういえば御社も赤坂で近いですよね。 前田:そうなんです。セレブレインさんとは2つ隣のビルですよね(笑)。 関:ええ。それを知ったときは驚きましたよ(笑)。 前田:ちなみにAnnessoとはどういう意味なんですか? 野村/店長:店長の野村と申します。Annessoはイタリア語で「別館」という意味です。セレブレインは赤坂見附に飲食店を4店舗オープンしていて、そのなかのひとつ「あじる亭」の別館的な位置づけのお店なんですよ。 前田:なるほど、そうでしたか! 野村/店長:あじる亭Annessoはやみつきになるお肉料理とスパイス、そして世界のワインをテーマにしたお店です。各国の料理はもちろん、シェフがモロッコ料理店にいたこともあるので、そういった珍しい国のエッセンスを取り入れたお料理もお出ししています。 前田:ますます楽しみになってきました! 関:それではまずは乾杯しましょう! 野村/店長:では最初のスパークリングワインはスタッフのトマからご説明させていただきます。 トマ:スパークリングワインはイリス・ル・ロゼ・ブリュット・ド・ロワールをご用意しました。フランスのロワールという地方のロゼスパークリングワインで、カベルネ・フランというぶどう品種を100%使用したちょっと珍しいスパークリングワインです。 関:……うん! おいしいですね! ロゼだからか、ふつうのスパークリングワインよりも少しボリュームとコクがあるような気がします。 前田:そうですね。私はビール党なのでキレのあるお酒が好きですが、このロゼスパークリングはフレッシュでキレもあり、なおかつぶどうの果実感も感じられておいしいです。 インタビューメーカーは求人アプリの失敗から生まれた 関:ごくごく飲んでしまいそうです(笑)。さて、まずはブルーエージェンシーさんの成り立ちから伺います。会社を立ち上げられたのはいつ頃でしたか? 前田:2015年の5月ですね。サービスをリリースしたのは同年の9月でした。 関:ブルーエージェンシーさんといえばクラウド型ウェブ面接システムの「インタビューメーカー」ですが、それがリリースされたのが2015年? 前田:いえ、その前身となるアルバイト求人アプリ「即ジョブ」というサービスでした。ウェブ面接システムではなく、求人メディアとしてスタートしたのです。 関:そうだったんですね! でもそこからなぜインタビューメーカーに? 前田:即ジョブは求人メディアでありつつも、インタビューメーカーのようなウェブ面接システムを内部に持っていました。企業が求人広告を出して、応募者の申込みがあった際にその流れでウェブ面接ができるということが売りだったのです。しかし、正直に申し上げて即ジョブは失敗しました。そこですぐに方針転換することにしたのです。 関:失敗ですか……その理由は何だったのでしょう。 前田:理由は2つありました。まずメディア事業では広告を出してその知名度を上げる必要があったのですが、そのやり方ではなかなか大手の競合他社に太刀打ちするのが難しいということ。そしてもう一つは、採用の際にウェブで面接を行うという文化が当時はまだほとんどなくて、応募者がなかなか集まらなかったということです。 関:なるほど。たしかにそうかもしれません。かなり先進的な取り組みだったと思いますが……。 前田:そこでメディアはやめて、ウェブ面接システムを流用した「インタビューメーカー」に本腰を入れることにしました。リリース年の12月には決断して、翌年2月にはベータ版をリリースしたのです。 関:ものすごいスピード感ですよね。 圧倒的な開発スピードで1000社以上の導入を達成 野村/店長:お待たせしました。最初のお料理です。「柿とフレッシュチーズの生ハム巻き」をご用意しました。ぜひ先ほど乾杯で召し上がったロセスパークリングワインと合わせていただければと思います。 前田:柿ですか! これは食べたことのないお料理ですね。生ハムと合わせるとは……。 関:驚きますよね。でもフルーツと生ハムって相性が良いんですよ。季節によってはいちじくのときもあって、私も大好物なんです。 前田:なるほど! これは確かにロゼスパークリングにぴったり合いますね! 関:生ハムのほのかな塩味と柿の甘やかな果実味は、両方ともロゼスパークリングに共通する要素ですね。完璧なマリアージュです。 野村/店長:まさに仰る通りです。カベルネ・フランは黒ぶどうで、生ハムのようなお肉にも合わせやすいボリューム感を持っています。フレッシュチーズはマスカルポーネとリコッタチーズという黄金の組み合わせで、濃厚な余韻をロゼスパークリングがさっと洗い流してくれます。 関:これはぜひ、あじる亭Annessoに来たら試していただきたいペアリングです。 前田:すばらしいですね! 次のワインとお料理も楽しみになってきます。 関:では召し上がっていただきながらお話の続きを聞かせてください。インタビューメーカーはすでに1000社以上の企業が導入しているそうですね。2016年にベータ版を出してからの成長スピードには驚かされます。 前田:開発スピードは特に意識しています。というのも、僕らはもともと人事業界の専門家ではなかったので、「これでいいのか?」という意識をつねに持っているんです。クライアントからご要望はどんどん実装して改善していく必要があります。 関:半年前に見たときと今ではまったくUIも変わっていて驚いたのですが、開発スピードの速さが反映されているのですね。 前田:機能を増やすとどうしてもUIが複雑になっていきがちですからね。大型のリニューアルでよりわかりやすく改善しています。 関:とはいえ、UIが変わるとクライアントが戸惑いませんか? 前田:ええ。でも僕らは投げっぱなしじゃなくて、UIが変わるたびにトライアルを行い、クライアントにつきっきりで使い方をレクチャーしているんです。 関:納品したらマニュアルを渡して、投げっぱなしという企業さんのケースも見聞きしますが、それはすごいですね。 前田:弊社が“人×テクノロジー”をバリューとしている所以ですね。 関:会社としても急成長していますよね。 前田:そうですね。最初のオフィスはとても小さくて、社員も6~7人しかいなかったのですが、現在は40人を超えて成長しています。 関:余談ですが、ブルーエージェンシーさんのオフィスは靴を脱ぎますよね。あれはびっくりしました(笑)。 前田:そうなんですよ。オフィスが小さかった頃はアパートみたいな部屋で靴を脱いでいたんです。その名残かもしれませんね。僕は靴下も脱いでいますよ(笑)。その方がすっきりするんです。 関:人材はどんどん増やしていく方向ですか? 前田:ええ。月に100人近くものエントリーをいただくので、それをインタビューメーカーを最大活用して面談を進めています。最近は、最終的に月に3~4人程度採用していますね。 関:それだけ数が多いとインタビューメーカーの効果は大きそうですね。 前田:はい。遠方の方もいらっしゃるのでウェブ面接はとても役立ちます。 前編ではインタビューメーカーの開発秘話と、ブルーエージェンシーの急成長の背景を伺いました。後編ではウェブ面接が採用市場にもたらす革新と、前田さんが構想する地方創生の取り組みについて伺います。 今回のお店 あじる亭 Annesso 赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ!
ワインで対談 2018年10月31日 エンゲージメントを高めることで企業に起きる変化とは? – スタメン 大西泰平さん × セレブレイン 山田和彦【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第10回ゲストは、株式会社スタメン取締役マーケティング部長の大西泰平さん。昨今の人事業界でトレンドワードとなっているエンゲージメント経営についてお話を伺いました。聞き手はセレブレイン コンサルタント・山田 和彦が務めます。 第10回ゲスト:大西泰平さん略歴 1984年生まれ。大阪府出身。筑波大学卒業後、広告会社 大広に入社。2012年よりファーストリテイリングのユニクロ事業に従事。その後、語学留学を経て2014年よりnanilani,inc.でフロントエンジニア、Sekai Labでベトナム拠点事業責任者を務める。2016年8月より取締役として株式会社スタメンに参画する。 “会社に満足はしていても誇れない”という人は意外に多い 山田:エンゲージメントについてご説明いただいたところで、株式会社スタメンについても伺えればと思います。御社ではエンゲージメント経営にフォーカスしたコンサルティングサービス「TUNAG」を展開されていますよね。 大西:はい。エンゲージメント診断といって、現状の課題を可視化し、その課題に対しての打ち手を実施・運用した上で、さらにその効果を検証する、という三段構えでコンサルティングさせていただいています。 山田:分析する上で重要視している要素は? 大西:重視しているのは、自分の会社を家族や友人におすすめできるのか、誇らしく語れるのか、という点です。会社には満足しているけれど、家族や友人に対しては誇れないという社員がいるケースもあるんですよ。 山田:それはまた、一見すると矛盾しているような……。 大西:待遇は良いので満足度は高い。だけど会社に自信は持てない。そういう場合、課題は企業としてのブランディングにあることが少なくありません。従業員満足度調査などでは、そういった課題はなかなか見えてきません。エンゲージメントを診断することで初めて課題が可視化され、経営陣の皆さんにも納得していただけるのです。 山田:なるほど、面白いですね。会社の規模や待遇が必ずしもエンゲージメントとは一致しないと。 大西:消費財ではあまりないことですよね。めちゃくちゃ気に入っているのにおすすめできないというのは聞いたことがないです。 山田:気に入っているから独占したいときくらいでしょうか(笑)。 大西:(笑)。ところが人間関係だと普通にありえるんですよね。家族のことは大事だけど、反発してしまう……なんてよくある話じゃないですか。そういうウェットな部分は人間が絡むからこそだし、そこを掘り起こすことにも意味があるのだと思います。 山田:社員が心で思っていることをいかに引き出して、組織改善に役立てていくか、ですね。 ストーリーを伝えることでエンゲージメントを高めていく 小牧/店長:メインのお料理をお持ちしました。カナダ産のサーロインです。コーンを食べて育った牛で、肉のうまみが強く脂もしつこくないのであっさり食べられます。 大西:うわっ、これはもう見た目からしておいしそうですね! 山田:絶対に間違いない一皿ですね(笑)。 小牧/店長:そして合わせるワインはカリフォルニアのジンファンデルです。牛肉の脂が強い場合はタンニンが豊富なカベルネ・ソーヴィニヨンという品種がベストですが、今回は脂がそこまでではないので、旨味を増幅するジンファンデル品種でペアリングしました。 大西:肉がやわらかくてジューシーですね! この赤ワインも同じくジューシーな果実味があって、すばらしいマリアージュです。 山田:パワフルな組み合わせですよね。明日からまた頑張れそうなペアリングです! 大西:どの料理もおいしくてワインが進みすぎてしまいます(笑)。 山田:ぜひどんどん召し上がってください。……そして酔っ払う前にお話の続きを(笑)。他にエンゲージメント関係ではどんな事例がありますか? 大西:短期間で急成長を遂げた1,000人規模の企業の例をお話ししましょう。その企業は数年間で急成長したため、30代という年齢で役職を持っている初期メンバーが何人かいらっしゃいました。すると、最近入社した若手にとってその人たちは“年齢的には若いけれど、最初から偉い人”です。その人たちにも泥臭い苦労をした頃はあったし、その人たちが今のポジションに至るまでには、それ相応の困難があったはずなんですが、そういうことがなかなか具体的に想像できないわけです。 山田:たしかにそうかもしれません。 大西:その状態では、経営と現場に深い信頼関係を築いていくことは難しかったんです。そこで僕たちは、そうした幹部層の声を若手に届けることを提案しました。新人の頃は、こういうことがあったとか、こういう苦労をしたとか。本人の口から、当時を思い起こすことのできるぶっちゃけ話をリクエストしたわけです。 山田:若手にとっては新鮮な体験だったでしょうね。 大西:するとものすごく反響がありました。「○○さんにもそういう時代があったんですね」という声が集まり、古株メンバーと若手との接点が生まれたのです。 山田:幹部の方も年齢はそれほど上ではないわけですから、一度壁が取り払われれば若手の方とのコミュニケーションもうまくいきそうですね。 大西:この例で良かったのは、幹部の方や会社が紡いできたストーリーをしっかりと伝えられたことです。エンゲージメントとは関係性の質です。ストーリーが伝わると関係性の質が向上し、エンゲージメントも高まるのです。 山田:今のお話は若い会社の例でしたが、歴史が長い会社も同じですよね。創業当時の話や会社黎明期の話が若手にとって刺激になることは多いです。今は当たり前になっている製品の誕生秘話とか。そういうものを伝えていくことがエンゲージメントを高めることにつながるのですね。 大西:ええ。そして、できれば記事などで編集された情報よりも、当人が自分の言葉で語る方がいいでしょうね。 事業を多角的に展開することで若手にチャンスを与える 山田:そういえばスタメンでは既に新卒社員の採用を活発に行なっていると伺いました。 大西:2019年卒で2期目の新卒採用になりますね。 山田:会社を設立してからすぐに新卒採用をされているわけですが、何かお考えが? 大西:若いメンバーが活躍する会社を作りたいんです。ベンチャーなので中途で採用したほうが立ち上がりは早いのですが、中長期的に考えると若い社員が成長できる環境を整えることが大事です。そのためには早くから取り組む必要があると考えました。 山田:そもそもスタメンはどういったきっかけで創業されたのですか? 大西:代表の加藤と出会って会社を作ろうということになり、テーマを「地方発でも、全国区で活躍できるような人材を輩出できる会社」にしたのが最初です。加藤は事業を考えるのが大好きで、創業事業を固める上でいろいろアイデアを出してきたのですが、そのなかで自分たちがやる意味があって世の中に求められていると考えたのが、エンゲージメント領域でした。 山田:今後もエンゲージメント領域で展開していくのですか? 大西:もちろんそれもありますが、事業ポートフォリオはたくさん持ちたいとも考えています。それは、若手にチャンスを与えたいからです。ビジネスパーソンが成長するのは「ポストが人を育てる」ところが大きいのです。責任や役割を与えられてチャレンジしてこそ成長できます。僕や加藤もそういうチャンスを得て、20代から経験してきたことでここまでやってこれました。次はそのチャンスを若手メンバーにどんどん渡していきたいのです。 山田:なるほど、そのために事業を増やしていきたいと。 大西:事業が増えれば責任あるポストも増えて、若手にチャンスを与えられますからね。仮に300億円稼ぐとしたら、300億円のビジネスを一つ持つのではなく、30億円のビジネスを10個持ちたいですね。 山田:事業が広がると、「そもそもこの会社ってなんだっけ?」とビジョンが曖昧になることもありますよね。経営陣の考えも社員に伝わりにくくなっていきます。そうならないようにエンゲージメントを高めてしっかりとしたコアを作らないといけませんね。 大西:背骨となる事業は大事ですね。多角化しても崩れない組織を作ることを今のうちから考えていて、将来から逆算しながら組織を組み立てています。 無駄な会議は省き、1on1ミーティングはしっかりと行う 山田:今まさに成長し続けているなかで、スタメンさん自身がエンゲージメントで心がけていることは? 大西:時間の使い方は意識しています。たとえば定例の会議は極力設けていません。報告・共有だけの会議は生産高を下げてしまいます。ただし、1on1ミーティングはしっかりと行います。相互理解はエンゲージメントに欠かせませんから。 山田:どこにリソースを割くのか、メリハリを利かせているわけですね。御社はメディアでも取り上げられて注目が集まっていますよね。それもエンゲージメントに好影響が? 大西:メディアへの露出は確実に好影響がありましたね。社員が自分の仕事に誇りを持てるようになりました。お墨付きをいただけるのはベンチャーにとっては大きなことです。真摯に愚直に取り組んでいれば、見てくれている人はいるんだなと思いましたね。 山田:御社は名古屋に本社がありますが、名古屋のベンチャー事情はいかがですか? 大西:正直、まだまだ少ないですよ。ただ、その中でも名古屋は製造業が盛んなので、それに関するベンチャーが増えている印象です。AIを活用した物流効率化や自動運転などのベンチャーが生まれてきているのは、名古屋ならではかもしれませんね。 山田:ユニークですね! ベンチャーも本当に様々です。 大西:同じくらいの時期に創業したベンチャーで集まると、僕らはおじさんベンチャー扱いなんです(笑)。他のベンチャーは名古屋大学発の企業も多くて、経営陣も20代半ばくらいのすごくできる人たちが多い。彼らを見ていると、負けていられないなと思いますね。 山田:本日は参考になるお話をありがとうございました! 大西:こちらこそ、楽しくお話ができました。ワインもお料理も最高でした! 今回のお店 あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。 ライター・カメラマンの山田井です。 昨今、注目度が高まっているエンゲージメントという言葉について、あらためてしっかりと学ぶことができた対談。 多くの企業の現状を見てこられた大西さんならではの視点はとても参考になるもので、わかりやすい解説に目から鱗が落ちるばかりでした。 また、ワインと料理のペアリングも絶妙で、これぞワイン居酒屋あじる亭ならではといったマリアージュ! 肉には赤ワイン、魚には白ワインと思い込みがちですが、それだけではないということを体験することができました。皆さんもぜひあじる亭にお越しの際はワインと料理の組み合わせの妙をお楽しみください。
ワインで対談 2018年10月30日 エンゲージメントを高めることで企業に起きる変化とは? – スタメン 大西泰平さん × セレブレイン 山田和彦【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第10回ゲストは、株式会社スタメン取締役マーケティング部長の大西泰平さん。昨今の人事業界でトレンドワードとなっているエンゲージメント経営についてお話を伺いました。聞き手はセレブレイン コンサルタント・山田 和彦が務めます。 第10回ゲスト:大西泰平さん略歴 1984年生まれ。大阪府出身。筑波大学卒業後、広告会社 大広に入社。2012年よりファーストリテイリングのユニクロ事業に従事。その後、語学留学を経て2014年よりnanilani,inc.でフロントエンジニア、Sekai Labでベトナム拠点事業責任者を務める。2016年8月より取締役として株式会社スタメンに参画する。 シャルキュトリーに合わせるのはドイツの白ワイン! 山田:大西さん、本日はあじる亭にようこそ! 大西:お招きありがとうございます。素敵なレストランですね。こちらはセレブレインさんが運営されているのですよね? 山田:ええ。セレブレインの関連会社であるセレブールが展開するお店の一つです。サラリーマンの方々が自分の財布で気軽においしくワインと食事を楽しめるというコンセプトのカジュアルなビストロです。開店したのはもう13年前になりますね。 大西:長く愛されているお店なのですね。実は以前、私も赤坂で働いていたことがありました。 山田:そうでしたか。大西さんはお酒を飲まれますか? 大西:飲みますよ。ワインも好きです。あまり詳しくはないんですけど。 山田:ワインがお好きな方にはオススメのお店です!ぜひ今日はワインとお料理を楽しんでください。 小牧/店長:それでは最初のお料理です。自家製シャルキュトリーの前菜盛り合わせをご用意しました。パテ・ド・カンパーニュや生ハム、サラミなどを盛り合わせた当店の人気メニューです。 大西:おいしそうですね! ワインにもすばらしく合いそうです。 山田:早くワインと合わせてみたいですね! 最初のワインはどんなものでしょう。 小牧/店長:ドイツワインをご用意しました。リースリングという品種です。辛口も甘口もありますが、今回のワインは少し甘めです。味にふくらみがあり、お肉の柔らかさを包み込んでくれると思います。 山田:……うん、本当ですね! 確かに甘さもありますが、酸味もしっかりしていてバランスが良いですね。お肉を噛み締めたときの甘さにぴったりマッチします。 大西:たしかにこれは合いますね。お肉というと赤ワインのイメージでしたが、こういう感じで白ワインを合わせるのも良いですね。 “エンゲージメント”の定義とは? 山田:さて、ではワインとお料理を楽しんでいただきながらお話の方も聞かせてください。大西さんが取締役を務めていらっしゃる株式会社スタメンでは、エンゲージメント経営コンサルティングを事業として行っておられます。エンゲージメントという言葉はここ2、3年で人事の方がよく口にする言葉になりましたが、意外に定義が定まっていないと感じています。まずは御社が考えるエンゲージメントの定義から教えていただけないでしょうか? 大西:エンゲージメントは徐々に広がりつつありますが、まだ各社がそれぞれ違うことを言っていると感じています。私達はエンゲージメントという言葉を単体で使うこともありますが、エンゲージメント経営とか組織エンゲージメントとか、エンゲージメントという言葉に何かを付け足す形で、具体的な事象にフォーカスして捉えることが多いですね。 山田:世の中ではこれから定義が定まっていく状態ということですか? 大西:そうですね。ただ、私達としては、“会社と従業員の信頼関係が強固で、なおかつ従業員同士の信頼関係も強固な状態”を表していると考えています。 山田:会社と従業員、従業員と従業員の両方ですか。 大西:ええ。この2つが成り立っていて初めてエンゲージメントが高い状態だと考えています。たとえば実力主義の外資系企業の社員は、その会社で働くことにステータスを感じていたり、誇りを持っていたりします。しかし、個人主義で他の部署と足の引っ張り合いをしているのであれば、それは必ずしも組織としてエンゲージメントが高いとはいえません。 山田:会社と従業員の信頼関係はあっても、従業員同士の信頼関係がないパターンですね。 大西:一方、従業員同士は仲が良くて、信頼できる上司や同僚に囲まれていても、経営陣が信用できないと思っている場合も、先ほどと同じくエンゲージメントは高いとはいえません。 山田:先ほどの逆ですね。従業員同士の信頼関係はあるけれど、会社と従業員の信頼関係がない。 大西:エンゲージメントの把握については、こうして具体例を出すとわかりやすいと思います。 ロイヤリティとエンゲージメントはどう違うのか 小牧/店長:続いてのお料理をお持ちしました。新秋刀魚のコンフィです。低温の油でじっくり火を入れ、骨や内臓まで食べられる一皿です。付け合わせにはザワークラウトというキャベツの酢漬けとじゃがいもを添えてあります。じゃがいもにはお好みでマスタードをつけてお召し上がりください。 大西:肉に続いて魚ですか! これはワインも楽しみになりますね。 小牧/店長:ワインはオレゴンのピノ・ノワールをご用意しました。 山田:今度は赤なんですね。 大西:魚なのでてっきり白かと思いました! 小牧/店長:淡白な白身魚の場合は白ワインが合うのですが、肝まで食べられるコンフィとなると、実は赤ワインも相性が良いんですよ。特にオレゴンのピノ・ノワールは果実味が強く、酸もあるのでぴったりなんです。 大西:へえ~! そうだったんですね。……うん、たしかに合います! 山田:肉には赤、魚には白という思い込みをひっくり返される面白いペアリングですね。 大西:本当ですね。こういう提案をしていただけるのは楽しいですね。おいしいだけでなく驚きもあります。 山田:ワインと料理の世界は本当に奥深いですよね。さて、またエンゲージメントのお話に戻りますが、モチベーションやロイヤリティとは違うということでしょうか。 大西:モチベーションはもっと個人にフォーカスした概念になりますね。個人として仕事に熱中できているかを表すのがモチベーションなので、エンゲージメントとは直接関係ありません。ロイヤリティは比較的エンゲージメントに近い概念だと思いますが、先ほどの2つのうち会社と従業員の関係だけに限定した概念です。日本語でいうと“帰属意識”ですから。 山田:なるほど、ロイヤリティには従業員同士の関係は含まないわけですね。 大西:エンゲージメントはそういう意味では広義のワードですね。会社と従業員だけでなく、チームや部署をまたいだ関係性も考えないと組織としてのエンゲージメントは測れないのです。 山田:エンゲージメントが高まると組織はどうなっていくのでしょうか。 大西:業績の向上や社員の定着率が高まったり、教育コストが下がったりと、経営的なインパクトが出ることが証明されています。 山田:そうなると従業員満足度も上がりそうですね。 大西:そうですね。ただ、従業員満足度とエンゲージメントは明確に異なります。従業員満足度というのは、福利厚生や給与、仕事の内容など会社から与えられているものに対して満足している度合いなので、会社が赤字に転落するなどして待遇が悪くなると下がってしまいます。逆にいうと上げやすいということでもあります。 山田:待遇を改善すればいいわけですからね。 大西:一方でエンゲージメントは繰り返しになりますが、会社と従業員、従業員同士が信頼関係で結ばれている度合いですから、会社の業績が悪くなったときこそ力を発揮します。苦しい状況を皆で乗り越えようという空気が生まれるのは、エンゲージメントが高い組織ならではなのです。 山田:なるほど。そうなると短期的な視点よりも中長期的な視点で考えていくべきですね。 大西:もちろん企業には短期的な目標も必要です。でもそれだけでなく、中長期的にどうエンゲージメントを高めていくのかを考えることも大切ですね。 前編では“エンゲージメント”という言葉の定義と、モチベーションやロイヤリティといった概念との違いについて詳しくご説明いただきました。後編では大西さんが取締役を務めておられる株式会社スタメンについてさらに掘り下げて伺っていきます。 今回のお店 あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
ワインで対談 2018年9月12日 AIの導入で人事の仕事はどう変わる? – AI研究家・大西 可奈子さん × セレブレイン 関 将宏【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第9回ゲストは、NTTドコモで対話AIの研究開発に携わり、3月には著書「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」も出版された大西可奈子さん。AIが人事業界に及ぼす革新と現状についてお話いただきました。聞き手はセレブレイン 人事戦略コンサルティングユニット マネジャー・関 将宏が務めます。 第9回ゲスト:大西 可奈子さん略歴 お茶の水女子大学修了後、株式会社NTTドコモ入社。国立研究開発法人 情報通信研究機構への出向を経て、現在はNTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部で自然言語処理と対話AIの研究開発に従事。著書に『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』(マイナビ出版)など。講演・執筆活動などマルチに活躍している。 雑談という正解のない研究に挑む 関(将):大西さん、あじる亭 Annessoのワインとお料理はいかがですか? 大西:すばらしいです。特にさっき出していただいたギリシャのワインは、やっと念願叶ってという感じだったので感動しました(笑)。ギリシャといえばタコですし、お料理との組み合わせも絶妙ですよね。 関(将):本当においしいですよね。次のお料理も気になりますね。 野村/店長:続いてはエビとゴーヤのチーズチリチャンプルです。チリソースのスパイス感とチーズのまろやかさが合わさって、コクのあるピリ辛なお料理です。合わせるワインはカリフォルニアのロゼをお持ちしました。スパイス感に合わせて赤ワインでもいいのですが、今日は暑いので赤の前にロゼからということで(笑)。 大西:スパイスの利いた料理、大好きです! ここまでのワインとお料理で猛暑からやっと解放されたので、ちょうど温かいお料理がほしいと思っていたところでした。すごくおいしいです! 関(将):ワインも面白いエチケットですよね。これはふくろう? 野村/店長:そうなんです。ストルプマン・パラ・マリアというワインで、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フランなどいくつかの品種がブレンドされています。カベルネ・フランに少しベジブルな香りがあるので、ゴーヤとぴったりなんですよ。 大西:たしかに! それでこんなに合うんですね。 関(将):ではチーズチリチャンプルとロゼをいただきつつ、お話の続きに。人事以外でもいいので、大西さんが研究されている対話AIについて、具体的な活用の可能性をお聞きしたいです。 大西:たとえばコールセンターですね。AIが応対できるようになれば、かなりのヒューマンコストの削減になります。といっても今はまだ、すべてをAIが行えるわけではありません。まずAIが電話に出て、音声認識で相手の質問や要望を聞き取ります。過去のデータから問い合わせの内容を推測して、対応できる部署に振ることはできるでしょう。さらに回答も予測して、5つくらいのパターンを提示したりもできると思います。担当者はかかってきた内容と、AIが提示された予測回答を見て応対できるのでかなり楽になるのではないでしょうか。 関(将):なるほど、タスク指向型対話システムと呼ばれる、特定のタスクを目的とした対話ですよね。ある程度回答がしぼれると、かなり役立ちそうですね。 大西:ただ、コールセンターのスタッフ側も、いきなりAIから質問が飛んできて5つの回答パターンを提示されても最初は戸惑うと思うんですよね。AIみたいに新しいやり方を現場へ浸透させるのってけっこう大変なんですよ。 関(将):よくわかります。 大西:せっかくAIをつくっても本格導入できないのでは意味がありませんよね。だからこそ現場とのハブになれる人が必要なわけですが。 関(将):その部分をクリアできるようになれば、タスク型の対話についてはAIが活きる場面も増えそうですよね。一方で、大西さんがメインで研究されているのは非タスク型の対話ですよね。 大西:そうですね。有り体に言うと「雑談」ですね。 関(将):その部分の技術は進んでいるのでしょうか? 大西:正直に言って微妙です。進んではいますが、おそらく想像されているよりも歩みは遅いです。というのも対話のなかでも雑談って、あまり研究者が好まないんですよね。研究向きなのは「これが正解!」と答えがはっきり出るものなんです。雑談って明快な答えがあるわけではなく、どうしても主観評価になってしまうので、取り組んでいる研究者は多くはないですね。 関(将):なるほど、たしかに直接的にビジネスとは結びつけづらいかもしれませんね。 大西:雑談ってお金にならないですからね。タスク型の対話AIは「暑い」と話しかければ「エアコンの利いた商業施設を探します」と課題を解決してくれますが、雑談AIは「暑い」と話しかけても「夏だもんね」と返してくれるだけ(笑)。つまり、雑談AIをビジネスにしようとすると“話をすること”そのものが価値を生まないといけません。これはかなり難しい。 関(将):でもアトムやドラえもんみたいなロボットが友だちになってくれたら嬉しいですけどね。 大西:そうですよね! 関(将):ただ、雑談は正解がないから機械学習やディープラーニングの手法でどこまでできるのかは難しそうですよね。 大西:ええ。国立研究開発法人 情報通信研究機構にいた頃、「雑談とは共通の認識を省略した対話である」という仮説を立てたことがあるんです。例えば、「Nintendo Switchほしいよね」「マリオテニスもできるもんね」という対話があったとき、そのベースには「Nintendo Switchでマリオテニスが遊べる」という共通認識があるわけです。だから、「Nintendo Switchほしいよね」と話しかけられたAIはネットをクロールしてNintendo Switchに関する情報を集め、「マリオテニスが遊べる」という情報を探してきて、「マリオテニスもできるもんね」と返せば人間らしい雑談になるのではないか――という仮説です。 関(将):面白いですね! たしかに人間同士でも初対面で会話するときはお互いの共通項を探りますよね。 大西:そういうことですね。でも、裏を返せば雑談AIってまだそういうレベルなんですよ。本当の意味で雑談できるレベルにはありません。これは世界の有名な外資系IT企業でも一緒です。最近は応答文をリアルにつくりこむのが流行っていますが、あれは単に応答がうまいだけで、雑談できているわけではないんです。 関(将):Siriとかチャットボットとかがちょっと気の利いた返しをするような? 大西:そうです。あれはあくまで会話のシナリオを作り込んでいるだけで、そこに未来はないと私は思っています。 関(将):会話のシナリオの数を膨大にしてもだめなのですか? 大西:実際にそれを検証した事例があって、数万件のシナリオと数十万件のシナリオで比較したところ、ある段階から対話のクオリティが頭打ちになったそうです。ある程度まではいけるのですが、限界があるのです。シナリオではAIは人になれません。 関(将):難しいのですね……。大西さんの今後の研究にも期待しています。 AIの導入で人事の仕事はどう変わる? 野村/店長:メインの牛ハラミのステーキをお持ちしました! 合わせるワインはカリフォルニアの赤ワイン。このエチケット、見覚えがありますか? 関(将):あっ! ゲーム・オブ・スローンズじゃないですか! 野村/店長:そうなんです、こちら世界中で大ヒットしているドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の公式ワインです。ドラマの中でもワインが重要な役割を果たしています。 大西:へ~! すごい! それが実際に発売されたんですね。 野村/店長:ワイン自体はカリフォルニアにパソ・ロブレスという地域のもの凝縮感があり、しっかりとした味わいです。品種が6種類ほども入っているそうなのですが、何が入っているかは企業秘密とのことです。 大西:ミステリアスですね。 関(将):やわらかくてボリュームたっぷりのハラミと濃い赤ワインの相性は言うまでもなく最高ですね! 大西:お肉と濃い赤ワインが大好きなので、いくらでも食べられそうです(笑)。 関(将):さて、お話を戻して……もう一つ、人事的な視点でいうと、AIが普及することで人の仕事が置き換わってしまうのではないかという懸念があります。これについてはどうお考えでしょう。 大西:置き換わる仕事とそうでない仕事はあるでしょうね。たとえば勤怠データなどははっきりとした数字なので、それをもとにした分析はAIが得意とするところでしょう。 関(将):勤怠データから退職予測をするとか、適性検査からハイパフォーマーを見つけるとかですね。 大西:ええ。一方で社員の様子を見てコンディションを予測したりするのは難しいでしょうね。結局、AIといってもデータに基づいて分析・予測しているだけなので、データがふわふわしたものだとあまり活用する意味がないんです。 関(将):たしかに、適性検査と面接のデータをもとに、その人を採用するかどうかを判断するAIを導入しようとした企業の話を聞いたことがあります。AIならより少ないコストで正しく判断できるのでは……と期待したわけですね。ただ採用は重要事項なので、「なぜ採用/不採用になったのか」を採用担当が検証するように言われた。そうすると結局担当者が検査や面接の結果を一つ一つ確かめることになり、AIを導入する意味がなかったという(笑)。 大西:なるほど(笑)。そもそも、人でないと許されない領域というのは絶対にあって、そういったものはたとえAIの得意分野であっても、現時点では置き換えるべきではないと思います。たとえば医療とかもそうですね。発見はAIに任せた方がいいと思うけど、それを患者さんに伝えるときに「AIがそう言ってるんで」というのはまだ受け入れられないでしょう。 関(将):人間のお医者さんがきちんと診てくれていることに安心感を覚える人は多いでしょうね。 大西:クリエイティブ方面ももう少し時間がかかるかもしれません。すでに小説や絵画をつくるAIは出現していますが……。 関(将):村上春樹の小説を大量に読み込ませると彼の文体や作風を模倣したそれっぽい物語が出てきそうですけど、それはちょっと違うというか。 大西:それっぽければいいわけじゃないんですよね。背景となる物語も含めて消費しているので。 関(将):人間の面白いところですよね。 大西:最近、ワイン×AIについてすごく考えるんですよ。仮にソムリエがAIになったらどうなるだろうって。エチケットは画像認識で判別できるだろうし、味も酸味とか渋味とか数値化できるんじゃないかと。でもソムリエは目の前のお客さんを見て、料理や今日の気温、お客さんの体調や雰囲気などを総合的に判断してワインを選んでくれますよね。それは今のAIには絶対にできないんです。 関(将):面白いですね。ワイン自体はデータベース化できそうですが、そこに人という要素が入ってくると、途端にAIの手には負えなくなってしまうわけですね。 大西:ちょうど先日、「日本の夏」をテーマにワインを持ち寄ってワイン会を開いたのですが、「日本の夏」をどう解釈するか、めちゃくちゃ悩んだんですよ。夏といえば潮の香りかなとか。でも潮の香りって定義できないので、それを選ぶことはやっぱり人間にしかできないんです。単純に「このワインに似たワインを選んで」ということなら、データさえあればAIは正確に選び出してくれると思いますけどね。 関(将):レコメンドはAIの得意分野ですもんね。とはいえ、今後はあらゆる分野にAIが浸透していくことは間違いありませんよね。AIが当たり前の世代もどんどん出てくるでしょう。 大西:世代の影響はありますね。たとえば音声認識もそうじゃないですか。私たちの世代はまだ、外でスマホに向かって話しかけることに気恥ずかしさがありますが、でもある世代からはきっと普通になっていくはずです。 関(将):慣れもありますよね。 大西:ええ。最近、スマートフォンを耳にあてずに、Bluetoothのイヤホンだけで通話している人も見かけますが、あれもちょっと前まで見かけるたびにギョッとしていました(笑)。Bluetoothイヤホンが普及した今はもう、それほど驚くこともないですよね。 関(将):人事とAIもそうなんだと思います。世代交代が進むにつれて少しずつAIの風は吹いてきている。勘と経験だけじゃなく、データをもとに話ができるようになっていくと思いますね。 大西:AIで世の中がどうなっていくのか、私も楽しみです。 関(将):本日は興味深いお話をありがとうございました! 大西:こちらこそ、今日は本当にいろいろな方向性からワインが楽しめて、すごく良い経験になりました! 今回のお店 あじる亭 Annesso 赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ! ライター・カメラマンの山田井です。 世の中は空前のAIブーム。今はまだ各業界、手探りなところもありますが、キャズムを超える瞬間もそう遠くはありません。今後、人事の世界もAIの導入により大きく変わっていくものと思われます。 来るべきAI社会に向けて、大きなヒントが得られた対談だったのではないでしょうか。 そして、リニューアルオープンしたあじる亭 Annessoのお料理とワインですが、相変わらずすばらしいものでした! フランスから始まり、モンテネグロ、ギリシャ、アメリカという世界旅行を楽しむかのようなワインのチョイスと、夏の火照った体を冷やし、食欲がぐんぐんわいてくるようなお料理の流れ! ペアリングも含め、夏の夜にふさわしい完璧なディナーでした。 あじる亭 Annessoを訪問された際は、ぜひ今回の記事もご参考して楽しんでいただければと思います。
ワインで対談 2018年8月27日 AIの導入で人事の仕事はどう変わる? – AI研究家・大西 可奈子さん × セレブレイン 関 将宏【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第9回ゲストは、NTTドコモで対話AIの研究開発に携わり、3月には著書「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」も出版された大西可奈子さん。AIが人事業界に及ぼす革新と現状についてお話いただきました。聞き手はセレブレイン 人事戦略コンサルティングユニット マネジャー・関 将宏が務めます。 第9回ゲスト:大西 可奈子さん略歴 お茶の水女子大学修了後、株式会社NTTドコモ入社。国立研究開発法人 情報通信研究機構への出向を経て、現在はNTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部で自然言語処理と対話AIの研究開発に従事。著書に『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』(マイナビ出版)など。講演・執筆活動などマルチに活躍している。 まずはワインで乾杯! 暑い夏にぴったりのスパークリング! 関(将):大西さん、ようこそ「あじる亭 Annesso」へ! ワインはお好きですか? 大西:最近、ワインにハマっているんですよ! 実はこちらの姉妹店であるセレブールには何度かお邪魔したことがあります。 関(将):そうだったんですね! あじる亭 Annessoはちょうど先日、リニューアルオープンしたばかりなんです。ぜひおいしい料理とワインを楽しんでいただきたいです。 大西:おいしいものには目がないので、もう今からワクワクしています(笑)。 関(将):ではお話の前にまずはスパークリングで喉を潤しましょう! 野村/店長:本日も暑いですね。こんな日にぴったりのスパークリングワイン、フランスはブルゴーニュのヴァン・ムスーをご用意しました。ブラン・ド・ブランといって、白ぶどう100%で作られています。豊かなコクとさっぱりした酸味があって、後味もすっきりですよ。 大西:おいしい! もうずっと猛暑続きなので、冷えたスパークリングワインは最高ですね! 関(将):ぐいぐい飲んじゃいますね。……大西さん、けっこうお強いのでは? 大西:そうですね、けっこう飲む方だと思います(笑)。 関(将):おお! ぜひたくさん飲んでくださいね。さて、このまま酔っ払ってしまう前に(笑)、人事とAIについてお話を伺わせてください。 大西:はい。人事とAIの組み合わせは個人的にも注目している領域の一つです。私の方こそ本日はいろいろと教えていただきたいですね。 なぜAIの解説本を出版したのか 野村/最初のお料理とワインをお持ちしました。当店では世界各国のワインを扱っていますが、モンテネグロというちょっと珍しい国のワインです。 大西:たしかに初めて見ました! モンテネグロでもワインを作っているんですね。 関(将):モンテネグロってどこでしたっけ? 野村/店長:イタリアの反対側に位置する小さな国ですね。モンテネグロのワインはあまり国外に出ないので、日本でも目にすることは少ないと思います。 大西:本当にワインの世界は広いですね。 野村/店長:そしてお料理はホタテと夏野菜のガスパチョ仕立てです。ガスパチョのソースには野菜の旨味がぎゅっとつまっています。せっかくですので、ソースもぜひパンにつけるなどして召し上がってみてください。 大西:うん、酸味がさわやかですごく夏っぽいです! 見た目もかわいいですね。 関(将):このワインとまた合いますね! 野村/店長:ワインはソーヴィニヨン・ブランというすっきりさわやかな品種なんですよ。 大西:外の猛暑がすっかり吹き飛びました(笑)。 関(将):さて、まず大西さんのお仕事にいろいろとお聞きしたいのですが、そもそもAIに興味を持つきっかけは何だったのですか? 大西:どこまで遡るかによりますが、最初に興味を持ったのは子ども時代です。鉄腕アトムが大好きで、あの可愛らしいフォルムと、ロボットが家族になる世界観に惚れ込みました。それで、コンピュータ系の仕事に就いて、鉄腕アトムをつくることが夢になったのです。 関(将):子ども時代からですか! 当時はまだ今みたいにAIブームというわけではなかったですよね。 大西:そうですね。AIという言葉がフィーチャーされたのは本当に最近のことで、私が大学生の頃はまだ今のように流行ってはいませんでした。世間的にはまだ、SFに出てくる言葉のような現実味のない概念だったと思います。 関(将):AIというと今は第3次ブームだと言われていますね。 大西:ええ。第1次と第2次ブームはかなり昔のことで、あくまでも研究者の中でのトレンドという感じでした。今の第3次ブームになって、ようやく一般社会のビジネスなど目に見える形になった印象です。 関(将):そうですね。ようやく地に足がついた感じがあります。今のブームは単なる流行り物で終わらず、このまま定着していきそうですよね。 大西:そう願いたいですね。 関(将):話を戻すと、そこから大西さんは大学に入ってAIの研究に? 大西:AIの一つの領域である自然言語処理を専門に研究していました。今でこそ自然言語処理は花形領域ですが、当時は地味な研究でしたよ(笑)。 関(将):就職されてから急にブームが来た、と。 大西:そうなんです。私としてはやっていることは変わっていないのですが、世の中の方が変わりました。おかげさまで、メディアでの連載や講演活動、著書の出版など、お仕事の幅が一気に広がっています。もともと話すことや伝えることは大好きなので、そういったお仕事をいただけるのは嬉しいですね。 関(将):著書といえば、3月に「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」を出版されましたよね。何度も重版がかかるなど好評とのこと。実は私もこの対談が決まる前に、ふつうに購入して読ませて頂きました。 大西:ありがとうございます! 関(将):AIの基本から応用まで、体系立てて勉強できる本が意外と他になくて、とても勉強になりました。この本はどうして書こうと? 大西:その理由は私自身の経験にあります。AIといえば機械学習やディープラーニングがトレンドの技術ですが、実は私はそれらの専門ではなかったんです。あくまでも自然言語処理の専門家だったんですよ。むしろ素人だったといっても過言ではないです。 関(将):えっ、そうだったんですね。 大西:でも、どんどん技術は進化し、時代は動いています。入社後はやはり機械学習の技術が必要になりました。それで必死になって勉強したのです。その後、国立研究開発法人 情報通信研究機構に出向するのですが、今度はディープラーニングの知識が必要になり、またしても勉強するはめになりました(笑)。 関(将):なるほど、まさに時代の転換点を過ごしてこられたのですね。 大西:機械学習やディープラーニングについて勉強しているときに私が感じたのが、「世の中には初心者向けのAI解説本と、めちゃくちゃ難しい技術書はあるのに、その間をつないでくれる本がない」ということでした。つまり、一冊でAIのことを体系立てて学べる本がなかったのです。だったら私が書こう、と。 関(将):ああ、たしかにわかります。今はインターネットにいろいろな情報がありますが、あれも記事単位でバラバラですからね。 大西:ちょうどその頃、知人の紹介で「IT Search+」というメディアにAIの解説を連載することになりました。その内容をまとめて加筆したものが『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』なんです。 関(将):よくわかりました。大西さんご自身の経験から来ていたとは……。 大西:私のようにこの本を必要としている人がきっとたくさんいるはずだと思っています(笑)。 関(将):まさにそうだと思います。というのも、今あらゆる会社がAIをビジネスに活用しようと取り組んでいます。そういった会社の方がAIを理解する手始めとして本書はぴったりだと思いました。 大西:そうなんです。AIを理解しようというと数学を勉強しなきゃいけないのかなと身構えてしまうかもしれませんが、はっきり言って数学の知識は必要ないんです。コードはネットにいくらでも落ちていて、少し手を加えるだけで使えたりします。エンジニアなら別ですが、その他の職種レベルで大事なのはAIという概念を理解できているかどうかです。 関(将):機械学習やディープラーニングにしても、データの学習はAIが勝手にやってくれるわけですからね。大事なのはデータをどう読み取るかですよね。 大西:おっしゃる通りです。 人事部へのAI導入に必要な人材・スキルとは? 野村/店長:続いてのお料理は飯ダコとオリーブのマリネです。飯ダコと夏野菜をマリネにして、もち米を食感のアクセントに。ケッパーでさっぱりとした味付けにしています。合わせるワインはギリシャのサントリーニ島を代表するアシルティコという品種を使った白ワインです。 大西:サントリーニ島ですか! 私、旅行が大好きでサントリーニ島にも行ったのですが、アシルティコはそのとき飲めなかったワインです。まさか今日飲めるなんて、嬉しいです! 関(将):先ほどのワインとはまた少し違ったさわやかさで面白いですね。 大西:何だかギリシャの潮の香りを感じるようなワインですね。柑橘系のニュアンスでさっぱりしているけど、コクもあって、旨味の豊富なタコにしっかり合いますね。 関(将):食欲がどんどん湧いてきます(笑)。さて、人事部へのAI導入についてもお聞きしたいのですが、AIを取り入れていくとしたら、具体的にはどういった作業が必要になりますか? 大西:人事部に限った話ではありませんが、何より大事なのは“今ある課題の中でAIが得意な仕事を探す”ということです。AIも1から100までなんでもできるわけではなく、得意なことと苦手なことがあります。今抱えている課題の中で、AIが得意とするものを見つけることが必要なんです。 関(将):仕事の中のどこをAIに置き換えるか、ですか。そうなるとむしろAIの知識よりも今の業務への理解が必要ですね。 大西:まさにそうなんです。人事の仕事にどんなものがあるのかを知らなければ、どれをAIに任せるのがいいのかわかるわけがありません。それから、どこまでならAIができるのかを知っておくことも大事です。 関(将):一人ですべて理解できる人ならいいですが、そんなスーパーマンはなかなかいませんよね。 大西:ふつうはそうです。ですからチームの座組が大事になります。人事の仕事に精通し、「ここはAIでいけるのでは?」と考えられる人。それを実現するためには具体的にどんなデータが必要なのかを考えられる人。そしてそういったAI活用のやり方を現場にうまく伝えられる人。もっというならビジネスにどれくらい貢献できるのかを想定して上司を説得できる人も必要でしょう。 関(将):データを取得するといっても、人事部はあまり予算をかけられないことも多いので、既存のデータをうまく活用できるスキルが重宝されそうですね。 大西:その通りですね。 前編では大西さんのお仕事や、AIとは何かといったお話を伺いました。後編では具体的にAIをどう人事に生かしていくのか、AIで仕事がどう変わっていくのかといったさらにディープなトークを繰り広げます。 今回のお店 あじる亭 Annesso 赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ!
ワインで対談 2018年8月05日 米国在住マーケティングマネージャーが語るHRテクノロジーの最新事情 – セレブレイン中澤 佳奈生 × セレブレイン高橋 敦子 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第8回ゲストは、セレブレイン マーケティング マネージャーで米国在住の中澤 佳奈生さん(写真左)。HRテクノロジーの本場・カリフォルニアの最新事情についてお話いただきました。聞き手はセレブレイン代表取締役副社長・高橋 敦子が務めます。 第8回ゲスト:中澤 佳奈生さん略歴 30年以上に渡り日米間でERPシステムを中心としたソフトウェアの企画、開発、運用に携わっている。2007年より米国に拠点を移し、米国の日系企業を中心とする管理会計のコンサルティングの業務を行いながら、クラウドベースのソフトウェア開発に携わる。この5年ほどは インターネットを活用した食ビジネスに範囲を広げ、 食の生産者・販売業者と消費者を結ぶサービスを立ち上げている。セレブレインでは、これまでの経験を活かして、米国を中心としたグローバルにおけるHRテクノロジーのマーケットリサーチや、アライアンスをリードしている。米国カリフォルニア州オレンジカウンティ在住。 米国はもっともHRテクノロジーの進んだ国 高橋:中澤さん、お久しぶりです! 本日は茜坂にようこそ。いつもは米国と日本で離れて仕事をさせていただいていますが、やっぱりこうして顔を合わせてお話できるのはいいですね。ぜひ和食とワインのペアリングを楽しんでください。 中澤:ありがとうございます。和食とワインのペアリングはとても楽しみです。カリフォルニアにも和食のお店はあるけれど、やっぱり日本で食べる和食はいいですね。特にセレブールのお店、料理もワインも本当においしいから楽しみです。 高橋:それじゃあ再会を祝して乾杯しましょう! 中山/ソムリエ:中澤様、ようこそ茜坂へ。ソムリエの中山です。本日は乾杯用にシャンパーニュをご用意いたしました。200年続くシャンパーニュメゾン、「R&L ルグラ」のブラン・ド・ブランです。 中澤:わっ、これすごくおいしい! 高橋:キリッと冷えていて立ち上る泡も繊細ですね。すばらしくエレガントです。 中澤:ブラン・ド・ブランっていうんですね。 中山/ソムリエ:はい。白ぶどうだけで作ったシャンパーニュのことをそのように呼びます。爽やかで夏にぴったりかと思います。 高橋:本当にそうですね。 中澤:ああ、もうすごく幸せ(笑)。 高橋:そうですね(笑)。このまま飲んでしまいそうだけど、今日はお話も楽しみにしていました。HRテクノロジーの本場といえばやっぱりカリフォルニア。中澤さんは2007年に渡米されて以降、ずっとカリフォルニアでお仕事されていますよね。 中澤:はい、そうなんです。テクノロジーベースで仕事をするにあたって、エンジニアにとっては働く環境や学べる環境が米国と日本で大きく異なるので、なかなか帰国して仕事するに至りませんでした。今、セレブレインと一緒に取組みを推進している「HRテクノロジー」の分野でも米国がもっとも進んでいると思っています。昔、日本で人事システムの開発に携わったことがありましたが、そのときはまさかこんなにテクノロジーが進化した時代がやってくるとは思わなかったです。 高橋:米国以外の状況はどうなのでしょう。 中澤:昨年ラスベガスで開催された大規模なHRテクノロジーカンファレンスにはヨーロッパの企業も多く出展していました。スペイン、イギリスなどの企業に加えて、最近はインドのスタートアップ企業が多く参加しており、世界各国でも盛り上がりをみせています。 高橋:そのように伺うと、日本はまだまだ世界に出ていくようなレベルじゃないのかなって思いますよね。 中澤:そうですね、日本企業をワールドワイドなカンファレンスで見かけることはまだ少ないですね。 中山/ソムリエ:シャンパーニュに合わせて最初のお料理をお持ちしました。前菜の盛り合わせには、長芋を使った素麺、煎り酒のジュレ。香り付けのオリーブオイルは小豆島のものを使用しています。そして三つ葉ととり貝のおひたし、生雲丹と生の湯葉。笹の上に載っているのは酢だことトマト、鯛を昆布締めにしたものを笹巻にしました。それから五三竹を胡麻和えに。イサキの真子、白子、鮎の南蛮漬けです。 中澤:すごい! 盛りだくさんですね! 高橋:豪華ですね! 中澤:やっぱり日本で食べる和食はいいですね。 高橋:話はそれてしまいますが、最近のシリコンバレーにおける日本食事情はどのようでしょうか? 中澤:天ぷらなどに関してはだいぶレベルがあがってはきましたよ。どちらかといえばカジュアルなイメージですね。美味しくなってきていて、安心して食べられる店も増えてきました。高級というとお寿司になることが多いかもしれません。ただ、ここまで季節感のある日本料理はなかなか食べることができないですね。米国では、お料理をシェアする文化もあって、ラーメンなんかもシェアして食べたりするのは面白いところですね。 中澤:そういえば、最近、セレブレインでは「AIエンジンを活用した人事データ分析」をテーマにしたセミナーを開催していますが、反響はどうでしょうか? 日本における状況はどうなんだろうと気になっていました。 高橋:シリコンバレーでは、すでに当たり前のようにAIや機械学習を活用してビジネスを推進したり、改善したりといったことが行われていますが、日本ではまだ一部のプロフェッショナル組織以外ではなかなか浸透していないのが現状、ということもあって、かなり反響はいいですね。特に数字から判断して意思決定をすることから最も遠い存在に見える人事の世界で、AIやデータをどう活用していけばよいのか、と大きな興味を持って頂いています。 中澤:そうなんですね。ようやく日本の人事部門でも本格的にテクノロジーやAIの活用が始まろうとしているのですね。カリフォルニアでは、人事部門にもデータサイエンティストがかなり多く存在するようになってきています。しかもかなりの割合で女性が活躍していますよ。もちろん、人事のみならずあらゆる部門でデータサイエンティストが活躍しているので、いまやシリコンバレーでは最も採用が難しい職種のひとつとして、大変な争奪戦が起こっています。 高橋:日本でもデータサイエンティストの採用をご要望頂くことは大変増えていますが、米国ではさらに激しそうですね。データサイエンティストに女性が多いというのは少し新鮮ですね。 中澤:カリフォルニアでは、データサイエンティスト以外にも、人事部門には基本的に女性の数が圧倒的に多いですよ。人事的な問題は慎重を要する必要のあることも多いので、女性の方が角が立たないってことはあるのかもしれません。米国では身だしなみの指摘ひとつにしても、人事が絡むんですよ。たとえばスカートの丈が短いんじゃないかっていう指摘も、上司じゃなくて人事を通して本人に伝えたりします。 高橋:そうなんですね。そのあたりは日本と文化や価値観の差が出るところですね。 中澤:でも実は、シリコンバレーってやっぱり男性社会?と感じることも多々ありますよ。女性で要職についている人の数は多いですが、経営の中心にはやはり男性の方が多いのは事実です。日本でも、最近は女性の登用などが結構進んできていますよね? 高橋:ええ。日本でも女性活躍推進法が施行されまして、女性管理職の比率も高めていく取組みが進んできています。ただ、全体としてはようやく努力目標レベルという感じで、まだまだ道半ばですね。 中澤:米国ではEEO(Equal Employment Opportunities)という、日本における雇用機会均等法に該当するルールがありまして、男女だけじゃなく、人種、年齢、国籍など、雇用上のあらゆる決定において差別を禁止する規定になっていますので、採用には細心の注意が求められます。ただ、もちろん応募時には人種や男女、年齢などがわからないようにはなっているけど、結局名前のラストネームから推測して、人種や男女を見分けて、採らないようにしている会社なんかは、米国でもあったりしますね。 高橋:ダイバーシティの国でも、そんな実態もあるんですね。 中山/ソムリエ:続いてのお料理です。「フォアグラ飯蒸し」はもち米にフォアグラを合わせた当店のスペシャリテでございます。お酒はもち米に合わせて石川県・鶴野酒造さんの「茜坂」をどうぞ。無濾過の生原酒でお米の甘みがしっかり残っていますよ。 中澤:「茜坂」というとお店の名前と同じですね! 高橋:実は当店のために鶴野酒造さんにつくっていただいたお酒なんです。茜坂は和食とワインのマリアージュを楽しめるお店ですが、こうして日本酒もお出ししているんですよ。 中澤:うーん、すごい! たしかにぴったりですね。すごく贅沢な味わいです。 高橋:ワインだとフォアグラにはソーテルヌが定番だけど、甘めの日本酒もすばらしいマリアージュを見せてくれますね。 中澤:今日のお料理、どれも本当においしくて華やかで……すごいです。 高橋:この後も楽しみですね! 人事のお話に戻りますが、HRテックについて、米国ならではと感じることはありますか? 中澤:採用でいうと、ビデオ面接がかなり多くなってきています。以前からスカイプやテレカンでの面接は普通に行われてもきましたが、最近はビデオ面接のテクノロジーがかなり進化して、リアルタイムで面接しているのと全く変わらないパフォーマンスを発揮しているようです。 高橋:日本でもなくはないけれど、まだまだ。差は大きいですね。弊社でもお客様にはかなりお勧めしているのですが、普及が進むにはまだまだ壁があるのを感じています。どうしても、「直接会わないと評価できない」という思い込みが強いようです。最終面接までのプロセスを効率的にできることや、データを残して判断に活用できること、複数人で評価できる、というメリットも大きいと感じてはいるのですが。 中澤:なるほどね。日本では、遠いといっても米国ほど国内移動にも時間がかからないので、直接会いましょうということになるのかもしれないですね。ただ遠方だとやはり交通費もかかるので、ビデオ面接はもっと普及してもいいと思いますね。 高橋:その通りですね。採用ひとつとってもお国柄が出ますが、採用後についてはいかがですか? 中澤:日本と大きく違うのが、米国は小さな会社でも1on1ミーティングをしっかりと実施するところが多いことですね。不満があるとしたらそれは何か、パフォーマンスが上がっていないならその原因は何なのか、2週間に一度は上司と向き合って話をして、その声が反映されるんです。 高橋:最近は日本でも同じような制度を導入する会社も増えてきましたが、まだ一部の先進的なビジネスモデルの会社くらいですね。でも、新しい取組みに対する情報伝達スピードが圧倒的に上がってきているので、学習段階の企業は増えているのではないかと。1on1をサポートするシステムも出てきているので、GAPは埋まってくると私は思っています。 中澤:色んな意味で米国の方が日本より厳しいというのも理由の一つかもしれませんね。契約社会だし、何かあると訴訟につながったりしますから。システムと数字で明快に管理しないとダメなんです。だから、そこでまたデータサイエンティストが必要ということになりますね。 中山/ソムリエ:メインディッシュに「和牛と花山椒のしゃぶしゃぶ」をお持ちしました。ワインはアントナン・ロデのサヴィニー・レ・ボーヌ1999です。とろけるような肉の味わいと熟成したブルゴーニュワインとのしっとりとしたマリアージュをお楽しみください。 中澤:もう、お肉の見た目がすごいです(笑)。 高橋:きれいな色合いですよね。しゃぶしゃぶで贅沢にいただきましょう。 中澤:うーん! たまらないです! 旨味がすごくて、口の中でとろけた後もずっと余韻が残っています。 高橋:ブルゴーニュの熟成したピノ・ノワールが絶妙ですね! 中澤:本当に、最高の組み合わせですね。なんでこんなにワインと合うのかしら。 中山/ソムリエ:かつおだしや昆布出汁などの旨味と、熟成したブルゴーニュの出汁感が合うんですよ。花山椒も良いアクセントになっていると思います。 中澤:なるほど、たしかにワインにも出汁の要素がありますね! おもしろいです。 高橋:楽しんでいただけてよかったです! 中澤:こちらの茜坂は、和食とワインのペアリングがコンセプトなんですよね。最近は日本でもそういうお店が増えているんですか? 高橋:どうでしょう。増えてはいると思いますが、まだ発展途上のジャンルだと思います。本格的な和食とのペアリングでは、茜坂はかなり自信を持っています。 中澤:すばらしいと思います! 高橋:和食とワインなら日本も負けていないんだけど! ただ、日本でも徐々にHRテクノロジーやAI/データサイエンスの世界も間違いなく浸透してきているので、あるタイミングで一気に変わる気もしてます! 中澤:そうですね。私は離れているので、日本では何がきっかけになるかはわからないけど、楽しみですね。 高橋:……という話を私たちは90年代からずっとしているんですけどね(笑)。HRテクノロジーの普及に向けて、もっとがんばっていこうと改めて思いました。中澤さん、今日はありがとうございました。 今回のお店 ワインと和食 茜坂 赤坂駅徒歩2分。落ち着いた和空間で素材を極力シンプルに生かした純和食とワインのペアリングが楽しめます。完全個室からカウンター席まで完備。板前・ホール全員がソムリエの資格を持ち、コースに合う最適なワインをご用意しております。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。 中澤さんから米国のHR最新事情を伺うことができ、改めて日本との違いが浮き彫りになりました。今後、日本でもHRテクノロジーが普及していくと思われますが、どのような形で広まっていくのか注目したいところです。 さて、今回のお料理とワインですが、どれも見事なペアリングでした。それぞれ単体でもすばらしい品々なのですが、ワイン、そして日本酒が組み合わさることで極上の味わいとなります。 フォアグラと日本酒、そしてしゃぶしゃぶと熟成ブルゴーニュはぜひ一度、体験していただきたいマリアージュでした。
ワインで対談 2018年5月30日 新卒採用でどうすれば“学生に選ばれる企業”になれるのか – 採用コンサルタント・谷出正直さん × セレブレイン関 伸恭 × セレブレイン倉本 健【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第7回ゲストは、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直さん。売り手市場が続く新卒採用の現状と今後の展望について、企業と学生それぞれの目線から語っていただきました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭と、人材開発コンサルティング シニアコンサルタントの倉本 健が務めます。 第7回ゲスト:谷出 正直さん略歴 採用アナリスト/コンサルタント。エン・ジャパンにて新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用のコンサルティングや、採用アナリストとしてメディアへの情報提供や記事・コラムの連載、企業や大学でのセミナー講師など、幅広く新卒採用に関する情報を発信している。 学歴や偏差値よりも立ち振る舞いに人としての魅力が出る 倉本:学生さん側は就職活動に向けて、何を考えてどんなことをやっているのでしょうか。また、何をやるべきなのでしょう。私も娘がいるのですが、まわりに振り回されず自分の人生を生きてほしいと思っています。だけど、現実には企業やメディアからさまざまな情報が発信されてくるので、その中で知恵をつけて情報を選別しなければいけません。 谷出:情報を選別して自身で考える、ということは働く経験をしたことのない学生にとっては簡単ではないと思っています。その根っこにあるのは、学校教育を通じて、同質化させられてしまうという現状です。 倉本:ああ、それについては私も話したいことが山ほどあります(笑)。 関:私の子どもも、ちょうど小学生になるので気になるトピックです。 谷出:うちにも、今年小学生になる子どもがいるんですよ。 関:一緒ですね! 倉本:新卒の話からは脱線しますが、せっかくなので谷出さんの教育方針も伺いたいですね。 谷出:僕が日頃から子どもに伝えているのは「挨拶をする」「靴は脱いだら揃える」「帰ったらまずやるべきことをやってから、好きなことをする」の3つですね。マナーや躾の部分になりますが、新卒者向けの説明会に参加すると、そういった基本的なことに対する所作も学生によってかなり違うなと感じるんですよ。受付に来ても全然挨拶しない学生もいれば、挨拶したとしてもどこか不自然だったりする。そういった行動からおそらく、普段は挨拶していないんだろうなとわかってしまいます。 関:毎年たくさんの学生を見ている谷出さんならではの視点ですね。 谷出:学生から就活相談をされることも多いのですが、1~2時間話すと、企業が欲しいと思う人材かそうでないかはわかります。学歴や偏差値といったことではなく、立ち居振る舞いや人間としての魅力に違いが出るんです。突き詰めると、それって学校や家庭での教育やそれまでに培われてきた価値観に根ざしているのかなと感じています。 倉本:うんうん。 谷出:あとは子どもにはなるべく新しいことを経験させるようにしていますね。知らないことは選択肢に入ってこないですから。 関:育成理論としては、社会人にも共通する部分ですよね。 倉本:私はヘッドハンティングを仕事にしているのですが、いつも思っていることがありまして、それは20代の若い方であっても50代の人生経験ある方でも、人生のターニングポイントでの道の選び方には、その人の原体験というか、経験やルーツにすごく影響を受けるんですよね。なので、そういう人生の大切な節目でも力まずに自分らしい選択が出来る様な経験や準備を重ねてゆく事が大切だと思っています。私は、人は本当に十人十色で良いと思っていまして、その人にはその人なりの価値発揮の仕方があると思っているんです。ただ、価値発揮の仕方はいろいろあっていいのですが、やはり独りよがりでは上手くいかない。自分を活かすためには周囲に受け入れられるチャームポイントを持つ事がとても大事だと思います。自分なりの強みとチャームポイントの両方があって初めて自分らしい仕事が出来るのではないかな、と。 例えば、ほら、ものすごく優秀というわけではないのに、妙に早く上に上がっていく方とかいるじゃないですか。 谷出:可愛がられ力ですよね。 学生に選ばれる企業になるためにやるべきこと 関:さあ、続いてのお料理とワインです。 建部/店長:メインは牛ハラミのステーキです。あじる亭のスペシャリテですね。あじる亭は南仏のビストロをイメージしたお店ですが、特に現地で好まれる食材の一つがハラミなんです。日本だと焼き肉で食べることが多いと思いますが、それを塊で焼いてステーキにしています。 関:これも私の大好きなメニューです! 谷出:おいしそうですね! 建部/店長:合わせるワインはスペインのメンシアという品種を用いたフェント・ワインズの赤ワインです。深みがあってスパイシーで、肉との相性がとても良いですよ。 谷出:何だか良い香りがします! 関:おいしい。たしかにこのボリュームのあるハラミと合いますね! 倉本:どちらの味わいもより深みを増すような印象です。 関:思わず肉とワインのマリアージュに夢中になってしまいましたが(笑)。企業としては、売り手市場が続くなかでも優秀な人材を採用していきたい。どのように取り組むことで採用活動がうまくいくのでしょう。 谷出:そうですね、毎年40万人くらいの大卒学生が民間企業に就職を希望しています。また、優秀な学生は複数の企業から内定を獲得します。そのような学生に選んでもらうためには学生が自分の企業を“選ぶ理由”を先行投資で作れるかが大事だと思いますね。 関:選ぶ理由、ですか。 谷出:大事なことは、学生に自分の会社のことをちゃんと理解してもらうということです。事業内容はもちろん、大切にしている価値観や企業文化、ビジョン。それと学生が考える自身の将来像が合致するかどうかが選ぶ理由につながってきます。 倉本:それは、まさにマーケティングの視点ですよね。 関:学生にアプローチする方法や採用の形態も多様化していますよね。 谷出:そうですね。たとえば紹介業です。以前は紹介での採用というのは就職活動の後半戦に集中していました。もう1人採用したいけど、この時期から新たに探すのはなかなか難しいので紹介サービスを活用していた。ところが今は就職活動の前半戦からどんどん学生を紹介することを求められることが増えています。 関:それはどうしてですか? 谷出:一つは、新卒採用を支援する企業が、学生の個人情報を比較的簡単に入手できるようになったことですね。 倉本:それはどういったルートで入手するのですか? 谷出:例えばSNSです。以前は就職サイトを通してという形でしか学生と会うことができなかったのですが、今はTwitterやFacebookで学生を集めることもできます。そうすると、企業は解禁日を待たずに学生と接触が図ることも可能になります。採用支援サービス企業に依頼して、「●●大学の学生にだけ会わせて」みたいなことができるようになります。そして、実際に水面下で面談が進んだりします。 関:それは実質的な選考、ですよね。 谷出:そうですね。去年の選考解禁日は6月1日だったのですが、実際には解禁日を迎えたその時点で6割の学生が内定をとっていましたからね。その前年は5割でした。つまり1年間で1割増えていて、その数字だけみても、着実に早期化していることが分かってくるわけです。 倉本:となると今年は……。 谷出:さらに企業の動きが早くなるわけですから、もっと内定が早く出てくるでしょうね。 関:ますます企業が、学生に対して自社の魅力をどのように伝えていくかが重要になりますね。そうなると、人事も、もっと外に出て自社のブランディングや、マーケティングでいうところのリードジェネレーションなどに注力することが求められるのでしょうか。 谷出:ええ。そもそも知らない会社に学生が応募することはないので、まずは知ってもらわないといけない。それは別に就活が始まってからでなくてもいいのです。極端な話、子どもの頃から知ってもらっていればいいのです。ですから、これからは企業広報そのものが、採用活動においても価値を持ってくるでしょうね。採用担当者と広報担当者は今よりもっと近づき、一緒に取り組んでいくべきだと思いますよ。 倉本:結局は、自社の事業を磨き上げることにつながっていきますね。 谷出:例えば、もしAppleが新卒採用するとなったら大勢が応募しますよね。それは企業自体にファンが多いからです。全ての企業がAppleのように全世界に知られる必要はありません。要は自社の事業と、そのために採用したい人がどこにいるかの組み合わせです。東京で採用したいなら東京の学生に知られていればいいわけですし。 関:仰る通りですね。 谷出:あとは企業として、「うちにくると絶対にいいよ」としっかりアピールすることですね。 倉本:アピールできないってことは自信がないということ。実際、採用担当者の方が辞めてしまったりすることもありますしね(笑)。 谷出:そうそう。自分が来年くらいに辞めようって思っているようでは、学生に強くアピールすることはできないじゃないですか(笑)。 関:たしかに(笑)。最近はリファーラルによる採用も活発になりつつありますが、うまく行かないケースもあると聞きます。 谷出:リファーラル採用は決して簡単ではありません。仕組みを用意したけど、思うようにいかないことも多いです。働いている社員からの紹介ということですが、本当に仲の良い友人を自分が自信を持って働いている会社に引っ張ってこられるか。そこですよね。 関:企業と学生はお互い不幸にならないように、しっかりとマッチする相手を見つけてほしいですよね。その点で我々にできることって何でしょう。 谷出:学生さんによく言うのは、やりたいことを見つけられたらいいけど、見つけられなくても、誰かの夢を一緒に追いかけることで、それが自分の夢にもなっていく。そのためにできることを増やすともっと貢献できるから、自己研鑽していこうと伝えています。そして僕らは、学生に「そういう大人、超かっこいいな」って思ってもらえる社会をつくっていくべきですよね。 倉本:本当にその通りですね。 関:とても勉強になりました。谷出さん、ありがとうございました。 今回のお店 ワイン居酒屋 赤坂あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。 今回のお話は新卒採用という身近な話題。何年も携わっておられる谷出さんならではの視点で、深い知見を得ることができました。 そんな語らいを一層盛り上げてくれたのが料理とワイン。 見た目にも美しいいちごとトマトのカプレーゼに、オムレツ、ステーキと、あじる亭屈指の人気メニューが勢ぞろい! どれもあじる亭を訪れたら一度は食べていただきたい料理ばかりです。ワインもまたすばらしいマリアージュでした。