ワインで対談 2018年5月27日 新卒採用でどうすれば“学生に選ばれる企業”になれるのか – 採用コンサルタント・谷出正直さん × セレブレイン関 伸恭 × セレブレイン倉本 健【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第7回ゲストは、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直さん。売り手市場が続く新卒採用の現状と今後の展望について、企業と学生それぞれの目線から語っていただきました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭と、人材開発コンサルティング シニアコンサルタントの倉本 健が務めます。 第7回ゲスト:谷出 正直さん略歴 採用アナリスト/コンサルタント。エン・ジャパンにて新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用のコンサルティングや、採用アナリストとしてメディアへの情報提供や記事・コラムの連載、企業や大学でのセミナー講師など、幅広く新卒採用に関する情報を発信している。 企業の採用活動は年々早くなっている 関:谷出さん、赤坂あじる亭にようこそ! 本日はぜひ新卒採用についていろいろと教えてください。 倉本:私も谷出さんからお話を伺うことを楽しみにしていました。よろしくお願いします。 谷出:こちらこそよろしくお願いします。実はあじる亭で食事をするのは2回目なんですよ。以前に、懇意にしている会社の方に連れてきていただいたことがあります。 関:そうでしたか! では、セレブレインがあじる亭を経営していることもご存知で? 谷出:ええ。人事コンサルティングサービスを提供している会社が、飲食店も経営していると伺って、とてもユニークだなと思いました。 倉本:弊社のお客様からもよく言われることがあります。 関:谷出さんは、ワインはお好きですか? 谷出:大好きなのですが、今日はちょっとお酒が飲めないのです。実は先週、花粉症が悪化してしまい、しばらく寝込んでいまして、薬を服用しているもので……。 関:なんと、そうでしたか。 倉本:それでしたら、ソフトドリンクで乾杯しましょう。 谷出:ありがとうございます。お二人はお気になさらずぜひワインを。 建部/店長:それでは、谷出様のために、本日はスペシャルなソフトドリンクを用意いたしました。ノンアルコールのサングリアをベースにスパイスを利かせてトニックで割ってみました。 谷出:ありがとうございます! 関:建部さんはあじる亭の店長で、以前はフランスの2つ星レストランで10年間、シェフソムリエをされていた方なんですよ。 谷出:それはすごいですね! 建部/店長:関さんと倉本さんにはスパークリングワイン「BKワイン ペティアン・ナチュレル」をご用意しました。 関:ありがとうございます。それでは、乾杯! 谷出:このドリンク、とてもおいしいですね! さすがです。 関:次はぜひワインをご一緒しましょう。 谷出:そうですね、ぜひ。 関:花粉症の季節といえば、ちょうど企業の新卒採用が動き出す頃かと思います。 谷出:ええ。ちょうど今、2019年度の新卒採用が動き始めた時期ですね。 倉本:今はどのあたりのフェーズですか? 谷出:3月に新卒採用活動が解禁されたので、ちょうど1ヶ月くらいたちましたね。学生が春休みを利用して企業説明会に行ったり、OB訪問したりしている時期ですね。 関:ここ最近はずっと新卒は売り手市場と言われてますよね。 谷出:そうですね、売り手市場と言われて5年目ですね。 関:そうなのです。この5年間で何か変化もあったのでしょうか。 谷出:ありますね。売り手市場が続いていることもあり、どの企業も他社よりも早く学生と接点を持つために、動きがどんどん早くなってきています。 関:なぜ企業は動きを早めるのですか? 谷出:新卒の採用活動は前年の動きに強い影響を受けるものなのです。売り手市場だと前年と同じ動きをしていては、ライバル企業に出し抜かれてしまう。だから企業は前年よりも採用活動を早く始めて、学生との接点を作ろうとします。 倉本:やはり早く動いた方が有利ですか。 谷出:ええ。一人の学生が受ける企業数は限られていますし、最初に接触を図ると受けてくれやすいのです。接触が遅くなると、すでに他の企業の選考が進んでしまっていることもあるし、学生も既に第一志望の企業から内定をもらっているかもしれません。そうなると後発の企業は苦しくなります。 関:たしかに、後発の企業は既に選考が進んで着る企業より行きたいと思ってもらわないといけませんからね。 谷出:これが、売り手市場で企業の動きが早くなる理由です。それが4回、繰り返して起きていると考えてください。 倉本:どんどん前倒しで動くようになっているわけですね。 関:ちょうど最初のお料理がきました。 建部/店長:今回は春らしく、モッツァレラチーズを使用したカプレーゼです。季節の果物と野菜、今回は苺とトマトを合わせました。女子力高めの前菜です(笑)。 谷出:これは可愛らしいですね(笑)。 倉本:苺とは意外な組み合わせですね。 谷出:おっ、でもこれ、いけますね! 関:本当だ、苺とトマトの甘酸っぱさがうまく調和していますね。チーズにもぴったりです。 建部/店長:季節によってはリンゴや金柑を使うこともあるんですよ。 倉本:ワインも気になりますね。 建部/店長:前菜に合わせるのは、フランスのコート・デュ・ローヌの生産者、ドメーヌ・グラムノンのヴィオニエという品種を使ったワインです。トロピカルな香りで、春の芽吹きを感じさせてくれます。 関:うん、いい香りです。爽やかで飲みやすい。 倉本:前菜にぴったりです。瑞々しいアロマにしっかりした骨格を持つ白ワインですね。 谷出:いいですね、うらやましい。 関:さて、新卒採用に話を戻しますが、企業の採用人数も年々増えているのですか? 谷出:そうです。採用人数を増やすとなると何が起きるかというと、どの企業も積極的に自社のプロモーションをするようになります。まずは学生に自社の名前を知ってもらわないと始まりませんからね。そして、説明会の開催数も増やすようになります。 関:採用説明会に参加すると、学生もその企業が気になったりしますからね。 谷出:ええ。大手企業の情報が入ってくると、学生も入りたいですから受けますよね。採用の枠が増えているから、内定の数も増えています。企業からすると辞退される可能性も考えないといけないので、よりたくさんの内定を出す。そうすると、去年よりも今年の方が比較的に受かりやすいということになってきます。 関:私は氷河期世代だったので、信じられない状況です(笑)。 谷出:先輩が入社したとなれば、その後輩も感化されてその企業を意識するようにもなります。 倉本:わかりやすい図式ですね。 関:学生側はどういうところをみて、企業を判断しているのでしょう。 谷出:学生さんは世の中の動きに非常に左右されやすいですね。たとえば今ですと、2年前くらいから言われている「働き方改革」がトレンドワードです。また、ニュースを積極的に見るようになるので、「副業」・「在宅ワーク」といったキーワードも目にします。自分が受ける会社がそれらをどうとらえているのかは当然気になるところでしょう。 関:少し前ならダイバーシティや女性活躍、ブラック企業なんてワードも話題になりましたね。 谷出:そう、キャッチーな言葉が出てきたときに、それと目の前の会社を結びつけるのです。となると、企業はそれらの質問を想定して、答えられるようにしておかないといけません。 倉本:新卒採用で企業が意識すべき点ですね。 谷出:平均残業時間について質問されて、答えに詰まるようでは学生に不信感を抱かれます。もし残業時間が長くても、それを今後は改善していくといったポジティブな言葉が必要です。そうでないと学生は引いてしまいます。 倉本:もしくは、ネガティブな要素があっても、それを上回るポジティブな要素で魅了するかですね。 谷出:就職活動をはじめたばかりの頃は、学生は企業を選ぶ軸を持っていません。だからトレンドワードとか、単純に会社名を知っているとか、そういったところを重視します。 学歴や偏差値よりも立ち居振る舞いに人としての魅力が出る 関:次のお料理がきました。 建部/店長:当店でとても人気のあるオムレツのトリュフ風味をご用意しました。合わせるワインはカリフォルニアのナパ・バレーの典型的なシャルドネ、カモミ(Ca’Momi)です。樽が利いていて、バター系やクリーム系、卵料理と合わせるとおいしいですよ。 谷出:うーん、良い香りです! とろとろでたまらないオムレツですね。 関:このオムレツは私も大好きでよく頼んでいます。 倉本:ワインもバランスがいいですね。爽やかな甘いアロマがあって、華やか。酸味もちゃんとあり、全体を引き締めてくれています。 谷出:次は必ず飲みます(笑)。 前編では、売り手市場が続くなかでの企業の採用動向や学生が企業を選ぶ際に気にしているポイントをわかりやすく解説頂きました。 後編では、子どもの教育についての考え方から就職活動における学生の立ち振舞い、選ばれる企業になるために求められることについて議論を深めていきます。 今回のお店 ワイン居酒屋 赤坂あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
ワインで対談 2018年5月18日 企業が求める人材になるため何をすべきか – 人事・戦略コンサルタント松本利明さん×セレブレイン関伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第6回ゲストは、人事・戦略コンサルタントの松本利明さん。5万人以上のリストラと6000名以上の次世代リーダーの選定・育成に携わられた「人材の目利き」のプロフェッショナルです。1月に発売された著書「ラクして速いが一番すごい」が大ヒット中の松本さんに、企業が求める人材の条件とパーソナルブランディングについて伺いました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第6回ゲスト:松本 利明さん略歴 プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアなど大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。24年間で外資系、日系の世界的大企業から中堅企業まで600社以上の人事改革と生産性向上の実現を支援する。現在は、企業向けコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」に変革していくため、「持ち味の見つけ方、活かし方」をビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「ラクして速いが一番すごい」をはじめ、多数のベストセラーを執筆している。 なりたい自分ではなく、求められる自分になる 店長/加藤:メインのお料理に「国産牛ランプ肉の炭火焼きステーキ」をお持ちしました。添えてあるのはオーストラリア・タスマニア島のオーガニックマスタードです。これをすりつぶすと、一般的フレンチマスタードになります。 松本:おお、これはすごい! インスタ映えしそうですね(笑)。 関:本当ですね(笑)。私はこの粒マスタードが大好きです。ここはやはり赤ワインでしょうか。 店長/加藤:はい、ナパ・バレーの「シャペレ マウンテンキュヴェ」を合わせてどうぞ。こちらのワインは標高の高いところで収穫した4種類のぶどうをブレンドしており、ナパ・バレーらしくジューシーで凝縮感があります。お肉に負けないしっかりとした味わいですよ。 松本:このお肉は美味しいですね。柔らかくも噛みごたえがあって、旨味がぎゅっとつまっています。ボリュームたっぷりなのに、どんどん食べ進めてしまいます。 関:ワインと合わせることでさらに旨味が広がりますね。 松本:話を戻しましょう。もう一つの視点として、事業のライフサイクルのどこに自分が合っているのかを見極めることも重要ですね。 関:事業規模の成長に伴うステージ、ですね。 松本:事業のネタを考えることが得意なのか、事業を大きくしていくことが得意なのか、組織化して管理することが得意なのか。自分の資質がどのステージに合うのかを考えないといけません。 関:確かにポジションが同じだとしても、事業ステージによって求められる役割は大きく変わりますからね。 松本:結局、相手にどう喜んでもらうかということなんですよね。同じ「ありがとう」という言葉でも、中身はぜんぜん違います。仕事が速くてありがとうなのか、調整役をやってくれてありがとうなのか。 関:「ありがとう」の中身と自分の資質が合っているか、ですか。 松本:そうです。むりやりキャラ設定したとしても、その人の持つ資質と違っていたら破綻します。きっとうまくいきません。「ありがとう」と資質に一貫性を持たせないといけません。 関:そうでないと、自分の本来の姿とは異なるキャラクターを演じることになってしまいますよね。 松本:その一貫性が、パーソナルブランディングにつながります。パーソナルブランディングは、なりたい自分ではなく、求められる自分であるべきです。資質というものは20歳くらいまでに形成され、それ以降はほとんど変わりません。自分が資質として得たカードを仕事の中でどのようにうまく発揮していくか、ということがポイントなのです。 関:原点回帰ですね。見失いがちですが、大事なことだと思います。 松本:気をつけないといけないのは、自分の資質に合わないことであったとしても、時間をかけて努力するとちょっとだけ伸びるんですよ。そうやって身につけたものって苦労して獲得したこともあって、なかなか捨てられなくなるのです。 関:よくわかります。 松本:優秀な人材を獲得・育成していきたい企業側にとっても、社員の資質の話は重要です。野球で4番タイプばかり集めても勝てないのと同じ。リーダーと一言でいっても、その人なりの持ち味に合わせてポジションを考える必要があります。事業を太くするのが得意なリーダーもいれば、海外展開が得意なリーダーもいます。 関:日本企業の人材開発・育成は、そこがどうしても一つの同じ方向に流れがちですよね。 松本:能力には3つあって、まず根底にあるのが“資質”です。その上に“ポータブルスキル”。これは仕事を前に進めるために必要な汎用的なスキルで、どのような会社・職場でも通用するものです。その上に“専門性”があります。専門性は資質に合っていれば身につきます。となると、重要になってくるのはポータブルスキルになります。 ラクして速いが一番すごい 関:そこで自分自身の特徴をどう出せるかですね。今のようなお話が松本さんの著書「ラクして速いが一番すごい」にも詳しく書かれていますが、この書籍はどんな方に向けて執筆されたのですか? 松本:30代くらいで、社員200名くらいのオーナー会社か大手の子会社に勤めていて、会社に問題意識を持っている方ですね。 関:読者のターゲットがすごく具体的ですね! 拝読しましたが、読みやすいですし、行動レベルにまで落とし込んでくれているので、仕事を効率的に進めていくために明日からでも実践できるエッセンスがぎゅっと詰まっています。 松本:ありがとうございます。タイトルから仕事術の本と思われることも多いのですが、実はコミュニケーションの本であり、キャリアの本でもあるんです。 関:企業で働いていると実際にこういうシーンってあるなと感じるエピソードがたくさん書かれていて、弊社の若手コンサルタントにも読ませたいと思いました。最後に読者に対してメッセージをいただけますか? 今は働き方改革やグローバリゼーションやダイバーシティなど、いろいろと言われている時代ですが……。 松本:今は誰にでもチャンスがある時代ですよね。だけど、こうすればいいというロールモデルがない時代でもあります。そんな時代を生きるためには、繰り返しになりますが、なりたい自分ではなくて、資質に基づいて求められる自分になることが大事だと思います。 関:とても勇気づけられる言葉です。本日はありがとうございました! 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワインと炭火焼きのダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。ソムリエ資格をもつシェフがカリフォルニアキュイジーヌとワインを絶妙にマリアージュし、腕を振るっています。 (都合により4月末日を持って閉店しています) 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。今回のお料理とワインもすばらしいマリアージュ! 実際にいただいてみると、料理とワインの要素やトーンがぴたりと一致していて感動すら覚えます。 ミニハンバーガーのスライダーは、見た目にもフォトジェニックですし、何と言っても甘辛い味噌煮込みが絶品。男性は特に好きな味じゃないでしょうか。 そしてランプ肉の炭火焼きステーキ! 肉、肉、肉で思わず笑顔になってしまう一皿。出てきた瞬間、対談されていたお二人の顔がほころんだのが印象的でした。「シャペレ マウンテンキュヴェ」とのマリアージュはあまりにも完璧なので、ぜひ一度味わっていただきたいところです。
ワインで対談 2018年5月13日 企業が求める人材になるため何をすべきか – 人事・戦略コンサルタント松本利明さん×セレブレイン関伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第6回ゲストは、人事・戦略コンサルタントの松本利明さん。5万人以上のリストラと6000名以上の次世代リーダーの選定・育成に携わられた「人材の目利き」のプロフェッショナルです。1月に発売された著書「ラクして速いが一番すごい」が大ヒット中の松本さんに、企業が求める人材の条件とパーソナルブランディングについて伺いました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第6回ゲスト:松本 利明さん略歴 プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアなど大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。24年間で外資系、日系の世界的大企業から中堅企業まで、600社以上の人事改革と生産性向上の実現を支援する。現在は、企業向けコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」に変革していくために、「持ち味の見つけ方、活かし方」をビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「ラクして速いが一番すごい」をはじめ、多数のベストセラーを執筆している。 大企業へのアドバイスから個人のキャリア相談まで――松本さんの多彩な仕事ぶり 関:松本さん、あじる亭カリフォルニアにようこそ。あじる亭カリフォルニアは、カリフォルニアワインとこだわりの炭火焼料理を楽しむお店です。松本さんは、ワインはお好きでしょうか? 松本:好きですよ。お酒は大好きで、“シングルモルト普及委員会”というウイスキー入門者向けの試飲会を開催しているくらいです。ワインも好きですが詳しいわけではありません。というよりもあえて詳しくならないようにしているといいますか……ワインは奥が深いので、詳しくなろうとするとどんどん凝ってしまいそうなので(笑)。 関:(笑)。今日はぜひ楽しんでください。まずはスパークリングワインで乾杯しましょう。 松本:スパークリングワイン、おいしいですね。 関:食欲がわきますよね。今日は人事の話題を中心にいろいろとお話を伺わせてください。 松本:こちらこそよろしくおねがいします。関さんはセレブレインの前はどちらにいらっしゃったのですか? 関:前職はタレントマネジメントシステムを提供している会社で、セールスとマーケティングに携わっていました。その後、ご縁があってセレブレインに。松本さんが独立されたのはいつ頃ですか? 松本:約5年前ですね。20年以上は外資系大手のコンサルティング会社で人事分野のコンサルティングをした上で、40歳を過ぎたら独立してコンサルタントをすると決めていたんです。 関:そうでしたか。おっと、最初の料理がやってきましたよ。店長の加藤さん、ご説明をお願いします。 店長/加藤:最初のお料理は、「フランス・ロワール産ホワイトアスパラのサラダ 生姜とレモンの香り」と「昆布と真鯛のカルパッチョ」です。 松本:これはおいしいですね。ホワイトアスパラは香りが爽やかで、スパークリングワインにも合います。カルパッチョも身がしっかりしていてすばらしい。 関:ホワイトアスパラの食感も良いですし、緑が映えます。昆布締めも旨味が広がりますね。さらに食欲がわいてきました(笑)。 店長/加藤:合わせるワインはカリフォルニアの産地、ナパ・バレーのシャルドネ「マヤカマス・ヴィンヤーズ シャルドネ」です。特に90年台のカリフォルニアワインはインパクト重視で、しっかり樽を利かせるものが多かったのですが、こちらは樽を利かせつつも派手ではなく、クラシカルに造られたシャルドネです。旨味たっぷりの真鯛と相性抜群ですよ。 関:まろやかな品のある味わいですね。 松本:香りもよく、ぴったりですね。次のお料理とワインも楽しみになってきました。 関:松本さんは人事を中心とした企業へのコンサルティングサービスから書籍の執筆までとても幅広くご活躍されていますが、最近はどのような仕事に関わられることが多いのでしょうか? 松本:好きな仕事しかしていないのですが(笑)。基本的には企業を対象にした経営・人事領域のコンサルティングが多いですね。コンサルティングに加えて、本の執筆やメディアへの寄稿、個人のキャリア相談に乗ることもあります。 関:そういえば、東京ワーキングママ大学で女性のキャリア開発支援をされているとお聞きしました。 松本:はい。東京ワーキングママ大学は、子育てをしながら自分らしいリーダーとして活躍するためのビジネススクールになります。働く女性を支援するという主旨に賛同しまして、講師や受講者のキャリア開発支援を行っています。 関:そうなのですね。数多くの会社で人材開発に携わられた松本さんのアドバイスがあれば百人力ですね。 松本:私は、企業への人材紹介や私塾などは行っていないので、そういう意味では無理に転職を勧めたり、私塾に勧誘したりすることがないので、客観的に本音でアドバイスができるというのはありますね。 関:なるほど。 松本:少し前に行政関係の仕事で、50歳前後で大企業から成長産業へ転職する方々のキャリア指導の講座を受け持ったのですが、通常そういう方の転職成功率って2%くらいなんです。ところが私が担当したら、3年連続で25%以上の方がご自身が満足されるキャリアへ転身をすることができました。 関:それはすごいですね! 50歳を過ぎてキャリアチェンジをはかるというのは、簡単なことではないと感じます。 松本:私は毒舌なので、いきなりこう伝えるんです。「50歳をすぎて会社を移るということは、アルバイトか幹部として向かい入れられるかの二択しかない。それ以外の発想はなくしてください」と。 関:厳しいコメントですね。 松本:相談者の方々のそれまで生きてきた人生は決して間違ってはいません。それでも転職がうまくいかないのは、これまで培ってきた経験から何を引き出せば勝てるのか教わっていないからです。要は“大人の自己紹介”がきちんと出来ていないのです。私は企業側がどのような人材を求めているか理解していますので、その重要性を伝えることができます。 関:それはぜひ伺いたいですね。その前に次のお料理がきました。 欠点やコンプレックスこそ自分の“持ち味”にするべき 店長/加藤:続いては「スキレット スライダー」です。スライダーというのはミニハンバーガーのことで、こちらは牛肉の味噌煮込みを中に入れてあります。ワインはサンタバーバラの涼しい味わいの「ピエドラサッシ PS(ピーエス) シラー 」をご用意しました。 松本:これは見た目が可愛らしいですね。 関:ミニハンバーガーのことをスライダーというのですね。はじめて知りました。 松本:うん、おいしいです。味噌煮込みということで、少し和のテイストを感じます。 関:赤ワインのエレガントな果実味がマッチしますね。想像以上にぴったりの味わいです。 松本:ワインとお料理がお互いに引き立て合う組み合わせですね。すばらしい。 関:お話を戻して、先ほどの“大人の自己紹介”についてもう少し詳しく聞かせていただけますか。 松本:普通は自分の実績や強みをPRしがちですが、それでは他者と差別化ができません。「ソニーで30年」「パナソニックで29年」など、本人達はPRしているつもりでも、採用側からみるとどんぐりの背比べなのです。大人の自己紹介は「私がその会社にリソースとして加わることで、こんな課題をこう良くできます。それを証明する根拠となる実績はこれです。」と自己PRの1行目に書くことです。コツは強みではなく、持ち味から提供価値を考えることです 関:持ち味と強みの違いを教えていただけますか。 松本:強みは他の応募者と被りやすいものですし、もっと強い人がでてくれば負けます。持ち味は心理学でいう資質です。20歳くらいまでに形成される価値観・性格・根本的な動機で、一度形成されると変わりにくいものです。50歳前後となると資質を活かしたエピソードや実績はあるものです。その中から相手の企業で喜んでくれそうなものを取り出すのです。 関:なるほど。確かに強みは他の応募者と被りやすいですね。ただ、新卒採用の時に習った強みを自己PRするという以外のやり方をアラフィフの方々は受け入れてくれるのですか? 松本:大企業でずっと働いてきた方々にはプライドが高い方も多いので、私のやり方ではまずは10社くらい受けていただいて落ちるところからスタートします。 関:いきなり心が折れそうですね(笑)。 松本:そこからがスタートです。適性試験や実習を通して資質を浮き彫りにして、大人の自己紹介を作り込みます。そのプロセスで忘れていた本当の自分の良さを抽出し、伝え方を学ぶのです。 関:その人が輝ける道がきっとあるはずですよね。特に成長途上のベンチャー企業は、経験のある人材を求めています。 松本:そうですね。大事なことは「自分が入るとその会社がどうなるのか」という仮説を立てること。それは意外なところにあるかもしれません。たとえば、とある方は専門能力としては一見パッとしないようにみえましたが、部下が一人も辞めていないという実績がありました。ということは、どんどん人が辞めていってしまう企業の管理部門ならニーズがあるのではないかという仮説が立てられます。それを実際に書いていただいたら、すぐに決まりました。 関:直属の上司との人間関係、というものは職場でいきいきと働くにあたっての重要なファクターですよね、退職理由のランキングで取り上げられることも多いですし。 松本:ポイントは、自分自身の欠点やコンプレックスというものは、実は個性につながっているということです。たとえば太っているという特徴は一般的に欠点と思われるかもしれませんが、見方によっては癒し系といえるかもしれません。人間は自分をかっこよく見せたくなりますが、本当の魅力というのはむしろ、欠点をうまく見せることで伝えられるのです。 関:そういうものを見つけることができれば、転職においても強い武器になるということですね。 松本:一つ、例としてお話しましょう。昔の編集者はお酒が飲めることが大事でした。なぜなら、作家の先生と付き合うためには一緒にお酒を飲めないといけなかったからです。ところが、とある編集者の方はお酒が全く飲めませんでした。 関:それは困りますね。欠点を克服するなら、少しでもお酒を飲めるように頑張る方へ向かいそうですが……。 松本:酒が飲める編集者はたくさんいます。そのため、その方はそこで勝負してもしょうがないと考えました。ただ話をすることや聞くことは上手でした。そこで、作家先生が考えていることを先回りして調整していったそうです。その結果、お酒の場でのコミュニケーションがなくても、信頼をされるようになり、うまく仕事を進めることができるようになったのです。酒が強い編集者はたくさんいるが、こまごましたことを調整してくれて執筆に集中させてくれる編集者は他にいないと。持っている資質を活かすことでオリジナルな存在になれば強いのです。 関:これまで必ず必要と思われていたことができなくても、自分の得意な領域に注力することで、相手との信頼関係を築くことに成功したのですね。今のお話は参考になるという方も多いのではないでしょうか。 ここまで前編では、松本さんの多彩な仕事ぶりやキャリア開発に取り組んでいく上での重要な視点について話し合ってきました。 次回の後編では、企業に求められる人材になるために大事な視点とは?にフォーカスをあてて詳しく語っていただきます。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワインと炭火焼きのダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。ソムリエ資格をもつシェフがカリフォルニアキュイジーヌとワインを絶妙にマリアージュし、腕を振るっています。 (都合により4月末日を持って閉店しています)
ワインで対談 2018年4月23日 形だけだった日本のタレントマネジメントがやっと変わり始めた – プラスアルファ・コンサルティング鈴村 賢治さん×セレブレイン幸前 夛加史【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第5回ゲストは、株式会社プラスアルファ・コンサルティング取締役副社長の鈴村 賢治さん。マーケティング領域から参入された鈴村さんならではの視点で日本の人事の課題に切り込んでいただきました。聞き手はセレブレイン取締役パートナー 人事戦略コンサルティング担当・幸前 夛加史が務めます。 第5回ゲスト:鈴村 賢治さん略歴 株式会社野村総合研究所を経て、2007年にプラスアルファ・コンサルティング創業。取締役副社長に就任。データ分析やテキストマイニングを使ったCS(顧客満足)向上やビッグデータ活用プロジェクトを数多く推進。CS向上にES(従業員満足)向上が欠かせないこと、自らが経営者として感じた人材マネジメントの解決手法として「タレントパレット」を開発。幅広い業界での人材活用・育成・離職防止の推進・啓蒙を支援している。 タレントパレットが生まれたのは「自分たちが必要だったから」 鈴村:実はタレントパレットを製品化したのは、自分たちが必要としていたからなんですよ。 幸前:えっ、そうなんですか。 鈴村:ええ、社員が少ないときはコミュニケーションをしっかりとれていたのですが、100人を超えると全員と密なコミュニケーションを取り続けることは簡単ではありません。社員のことはわかっているつもりだったのに、ある日突然「仕事が合わないので辞めます」とか想定外の理由を聞かされてショックを受けたりするケースも増えてきたんです。社員のことをちゃんと理解できていなかった、と。 タレントパレットの原点は自分たちの会社経営での課題に対して、弊社が得意とするデータ活用の観点から解決できないかというところなんです。だから、タレントパレットは弊社が一番のヘビーユーザーです(笑)。 幸前:社員のモチベーションの状態がわからないと、タレントマネジメントはできませんよね。モチベーションは人間関係によっても違ってきます。スポーツのチームも監督が変わるだけで大きく変わりますし。 鈴村:実は新バージョンで「上長変化」という機能が実装されたんですよ。これまでも「異動変化」という機能があって、これは部署を異動したことでモチベーションが上がったか下がったかを抽出する機能です。ただ、モチベーションの上下にはもう一つ大きなトリガーがあることがわかりました。それが「上司が変わること」だったのです。 幸前:たしかに、人間ですので、相性の良し悪しはありますからね。 鈴村:そうなんです。こういうことがわかれば、社員のことを考えて異動を行ったのに、その意図がきちんと伝わらずにモチベーションが下がり、結果的に離職してしまうような不幸な出来事はなくなっていくと思うんです。 幸前:なるほど!相性を見える化することで、そういったことにも生かせるんですね。 鈴村:そうなんです。人の相性というのは内面の情報ですよね。同じ大学だったとか、同じ釜の飯を食ったからとか、そういうことも実は相性を知る重要な要素だと思います。そのような相性を見える化したい。どういう情報をどのように掛け合わせると、人の相性が見える化できるか、そのようなことにもチャレンジしたいと思っています! 店長/加藤:続いてのお料理は当店の看板メニューでもある「四川唐辛子のペンネアラビアータ」です。ベーコンやアンチョビがたっぷりで、旨味と辛味のバランスの良いお料理です。 鈴村:イタリアンと四川の融合とはユニークですね。 幸前:鈴村さんは辛いのがお好きということですので、ぜひこちらも。 店長/加藤:合わせて赤ワインをどうぞ。南フランスのドメーヌ・ド・ガブラという作り手のテール・ルージュです。温かい味わいでスパイシーかつジューシー。スパイスと相性の良い赤ワインですよ。 鈴村:これは合いますね。料理だけでもいいけれど、これはワインがあるとまた違いますね。 幸前:絶妙な組み合わせですね。 人事情報には多くの定性情報が眠っている 幸前:そういえば、タレントパレットには、テキストマイニングの機能が最近ついたんですよね? 鈴村:そうなんですよ! 幸前:そもそもテキストマイニングとはどういうものですか? 鈴村:テキストマイニングは、自然言語解析技術を使ってテキスト情報を分析して、定量的に発言内容や発言傾向を分析するための手法なんですが、実は、弊社はこの分野で国内トップシェアの技術と実績を持っているんです。 これまでは、主にマーケティング業務において、顧客アンケートの自由回答の分析や、最近ではソーシャルメディア、特にTwitterなどの膨大な量の投稿内容の分析で活用されてきました。 幸前:それを、今回人事業務領域に持ち込んだと? 鈴村:はい。人事情報にも定性情報が多く存在しています。例えば、社員アンケートのコメントや自己申告書にある“将来のキャリア希望”などの自由回答、面談時のメモ、それこそ、採用におけるエントリーシートも貴重な定性情報です。そのほとんどが管理はされているものの、十分にデータ活用されていないのではないかと考えています。 幸前:たしかに、そもそも定性情報というのは、通常は1件1件読まないと内容を読み取れないので、現場で活用していきたいと思っていても、分析するのは簡単ではないですね。 鈴村:離職防止分析の1つに「離職ワード分析」という機能があるのですが、実際に、過去の業務日報や満足度調査の自由回答から、在籍者と離職者の発言傾向の違いを分析してみると、離職者には、特に「業務量」とか「相談しにくい」というキーワードの出現が多いことが分かりました。こういうのが分かれば、似たような発言をしている社員がいたら早めにフォローした方がよいわけで、こういうのが離職防止につながると考えています。人事領域に眠っている定性情報は、これからの科学的人事に欠かせない宝の山だと思っています。 店長/加藤:続いてのお料理は当店の新しい名物の一つでもある「刺激的なスパイスたっぷりの痺れ豚」です。八角を利かせて甘辛く似た豚バラ肉に、当店で「痺れスパイス」と呼んでいるスパイスをふりかけています。 鈴村:痺れスパイス、すごそうですね。 店長/加藤:実山椒をメインに、ニンニクやフライドオニオンなどをシェフが独自にブレンドしたスパイスになります。 幸前:おおっ、これはピリッときますね。 鈴村:心地いいスパイス加減です。なるほど、痺れ豚、ですか。 店長/加藤:お料理に合わせるワインは、先ほどよりも、もう少ししっかりした味わいの南アフリカのクライン・ザルゼ・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨンを。 鈴村:ヨーロッパ風なのにどこかアジアな感じもあって、すごくおいしいです。 たしかにこれは赤ワインがあるといいですね。 幸前:僕も大好きで、毎回頼みます。 鈴村:これはワインが進んでしまいます(笑)。 日本の人事はいよいよ立ち行かなくなる段階にきた 幸前:それにしても、日本も今までの人材マネジメントスタイルでは人事部門が立ち行かなくなったというところにやっときたような気がしますね。どこかの時点で人事が経営や事業運営から切り離されてしまったように感じています。 鈴村:そうですね。たとえば人事評価は半期に一度という会社が多いですが、なぜ半期ごとなんですかと聞いても誰も回答できない。半期に一度面談だと、社員も評価の前になると急にやり始めたり、仕事のつじつまを合わせようとする。本来は日々の業務の中でリアルタイムに目標に対する達成感や満足感を図り、フィードバックしていくような動きに変えていかないと本質には変わらないと思います。 幸前:なかなか難しいところはありますね。人事評価を人事制度という全体のルールの中でどううまく運用するか、という儀式的なものになってしまっている会社も確かにあります。 鈴村:人事部門にはある程度文化を守る力学が働いていると思います。だけど、本当の人材活用を行うためには、自分たちのミッションについて、情報を管理するという観点から、積極的に経営や現場マネジメントの意思決定支援に活用していくというように、自らの役割を変えていかないといけないと思います。 幸前:それでいうと、ようやく節目に来たかなという感覚がありますね。たいていの人事トレンドがそうですが、アメリカから3年から5年遅れくらいで日本に入ってきています。ただ、タレントマネジメントという考え方が日本に入ってきたとき、日本にはまだいわゆる年功序列、終身雇用における職能等級制度というのがあって、一人ひとりというよりもマスで人材管理を行っていく文化でした。 鈴村:日本の文化とタレントマネジメントが組み合わさった混沌期があったわけですね。 幸前:モチベーションやタレントマネジメントの重要性って、実は15年くらい前から日本でもずっと言われ続けているんです。だけど、なかなか進まずに形だけになってしまっている側面もありました。ところが、いよいよ“社員が辞めていき、人が採れない”ということが課題になってきて、お尻に火がついたんですね。 鈴村:いよいよ日本の人材マネジメントも変革の時を迎えているわけですね。今日はとても楽しく会話ができました。ありがとうございました。 幸前:こちらこそ、熱い議論をありがとうございました! 今回のお店 あじる亭レピス 店名の「レピス」は仏語でスパイスの意味。世界のスパイスを使った料理とソムリエ厳選ワインを南仏のバルのようなおしゃれな空間で楽しめます。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。あじる亭レピスのスパイスのきいた情熱的な料理はどれも絶品。食べれば食べるほど食欲がわいてきます。 鈴村さんのお話もまさにあじる亭レピスの料理のごとく、刺激的な言葉が次々に飛び出す熱い対談となりました。 個人的に、料理で特に印象に残ったのは「トリュフ風味のスクランブルエッグ」と「刺激的なスパイスたっぷりの痺れ豚」。 ワインとの相性も完璧で、こんなマリアージュが楽しめるのは一流のシェフと“全員ソムリエ”のあじる亭レピスだからこそ。 鈴村さん、幸前さんのお二人も感動されていましたが、たしかにこれは何度訪れても毎回頼んでしまうと思います。ぜひお店を訪れたら真っ先に注文していただきたいですね。
ワインで対談 2018年4月11日 形だけだった日本のタレントマネジメントがやっと変わり始めた – プラスアルファ・コンサルティング鈴村 賢治さん×セレブレイン幸前 夛加史【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第5回ゲストは、株式会社プラスアルファ・コンサルティング取締役副社長の鈴村 賢治さん。マーケティング領域から参入された鈴村さんならではの視点で日本の人事の課題に切り込んでいただきました。聞き手はセレブレイン取締役パートナー 人事戦略コンサルティング担当・幸前 夛加史が務めます。 第5回ゲスト:鈴村 賢治さん略歴 株式会社野村総合研究所を経て、2007年にプラスアルファ・コンサルティング創業。取締役副社長に就任。データ分析やテキストマイニングを使ったCS(顧客満足)向上やビッグデータ活用プロジェクトを数多く推進。CS向上にES(従業員満足)向上が欠かせないこと、自らが経営者として感じた人材マネジメントの解決手法として「タレントパレット」を開発。幅広い業界での人材活用・育成・離職防止の推進・啓蒙を支援している。 対談の舞台は“スタッフ全員ソムリエ”のあじる亭レピス――まずはスペインの「カヴァ」で乾杯! 幸前:鈴村さん、本日はお越しいただきありがとうございます。 鈴村:よろしくお願いします。こちらのお店はセレブレインさんのグループ会社なんですか? 幸前:そうなんですよ。株式会社セレブールとして運営しています。 鈴村:すばらしいですね。 グループ会社にワインが飲めるビストロがあるのはすごくうらやましい。 仕事の後にミーティングもできそうですね。 幸前:できますよ(笑)。「ちょっと場所を変えましょうか」なんて言って。 鈴村:いいですね~ 幸前:では、まずはスパーリングワインで乾杯しましょう。加藤さん、こちらのワインは? 店長/加藤:スペインのスパーリングワイン「カヴァ」のラ・ロスカをご用意しました。 鈴村:こういう時の一杯目はスパーリングワインに限りますね! 幸前:こちらの加藤さんがあじる亭レピスの店長さんなんですよ。 実は加藤さんも含め、セレブールではお店の全スタッフがソムリエの資格を持っているんですよ。 鈴村:それはすごい。 男にとってソムリエって憧れの仕事の一つですよね。取るためにはどんな試験を受けるんですか? 店長/加藤:筆記試験とテイスティング、それから三次試験で実技ですね。 鈴村:三次試験まであるんですか!? すごいですね……。 幸前:鈴村さん、最初のお料理がきましたよ。 店長/加藤:「鰤のカルパッチョ 柚子の香り」をお持ちしました。柚子の香りがするドレッシングを使ったカルパッチョです。 鈴村:これはおいしい! 身が厚くて柚子の香りがまた爽やか。 食欲が出てきますね! 幸前:よかった! どんどん召し上がってください。 鈴村:ところで、幸前さんはセレブレインに入る前は、どちらにいらっしゃったんですか? 幸前:最初は銀行だったのですが、出向でシンクタンクに行って、そのままこの仕事がメインになりましたね。 鈴村:前職も人事系? 幸前:ええ。人事をテーマにしたコンサルが多くて。鈴村さんは野村総合研究所のご出身ですよね。 鈴村:CRMなどのシステム開発のほか、顧客データの分析などのマーケティング領域をやっていました。それからプラスアルファ・コンサルティングを設立して12年になりますね。テキストマイニング技術を駆使した見える化エンジンが主力製品です。 幸前:そこからタレントパレットで人事領域にも進出されて。 鈴村:タレントパレットをリリースして1年半くらい経ちますね。おかげさまで採用企業数ももうすぐ100社くらいになりそうです。 日本の人事はデータの管理は行っていても活用ができていない 店長/加藤:続いてはレピス名物、「パクチーとハラペーニョのサラダ」です。 幸前:おー、パクチがどっさり! 鈴村さん、パクチーは? 鈴村:大好きですよ! これだけあると食べ甲斐がありますね~ 幸前:この独特の香りがたまらないですね。 鈴村:うん、これもおいしいですね! 弊社はシンガポールに支社があって、アジア系の料理も好きなんです。唐辛子とオリーブオイルを使った辛い料理とか最高ですね。 幸前:あじる亭レピスの「レピス」はフランス語でスパイスという意味なので、辛い料理もいろいろとありますよ。 鈴村:今度、会社の仲間とも来てみたいです♪ 幸前:ところで、プラスアルファ・コンサルティングさんは昨年、HR EXPOに出展されていましたね。HRテックの活用で人事が変わりつつある中で、我々も最新トレンドは常にキャッチアップしているので、イベントや展示会には顔を出すようにしています。そのときにプラスアルファ・コンサルティングさんのブースにも立ち寄らせていただいて、タレントパレットの説明を受けまして。 鈴村:おお、そうだったんですね。幸前さんからみて、タレントパレット、いかがですか? 幸前:人事情報の見せ方が面白いなと思いました。人事データベースやグローバル人事のスキルデータベースなんかは前からありますが、結局“箱”の中に入れたものを管理するだけで、それをどう活かしていくのかという状況がずっとあったんですよね。 鈴村:そうなんですよ。 マーケティング領域では情報活用がすでに研ぎ澄まされていて、販売データをExcelで眺めるだけじゃなく、ビジュアルで見える化して分析します。そこから試行錯誤してPDCAを回していくことが業務として浸透しているんです。ところが、人事領域はまだほとんどの会社がExcel文化ですよね。 幸前:まさにその通りですね。 鈴村:データの管理はできても活用ができていないわけです。そう考えたときに、マーケティングのアプローチが人事でも求められているんじゃないかと思いました。 幸前:そこが人事でずっと変わってこなかったところですよね。タレントパレットはそのブレイクスルーになる着眼点だと思います。 鈴村:ずっと人事領域のコンサルティングをされている幸前さんにそう言っていただけるのは嬉しいですね。 大事なのは表面的な情報ではない 店長/加藤:次のお料理は「トリュフ風味のスクランブルエッグ」です。トリュフの香りをつけたクリームソースが女性にとても人気のメニューです。トリュフの香りに合わせて、少し樽の風味を効かせたカリフォルニアのシャルドネ「グレンブルック シャルドネ」をご用意しました。 鈴村:これ、すごいいい香りしますね! 店長/加藤:幸前さんも毎回注文されるお料理なんですよ。 幸前:たとえコースメニューに入っていなくても注文するくらい好物です(笑)。 鈴村:たしかに、その気持ちわかります。濃厚な香りがふわっと立ち上ってきます。これは、赤ワインとぴったり合いますね~。 幸前:何度食べても飽きません。本当においしい! ワインも香りが甘くてバランスがいいですね。 鈴村:私もワイン大好きなので、飲みながらこんなふうにお話できて最高です(笑)。 幸前:人事のお話に戻りますが、こんなエピソードがあります。とある会社がグローバル人材のデータを一元化するプロジェクトをやろうとしてデータを集めて入れてみたものの、次に聞かれたのが「で、このデータどう使うの?」と(笑)。 鈴村:それ、データ活用のあるあるですね(笑) 幸前:そもそも人事にはこれまでデータを活用するという観点が少なかったんですよね。 鈴村:おっしゃる通りですね。コンサルティングをしていると、先に仮説があって、それを検証するためにデータを集めるという発想になるんです。データを集めてから、さあどうしましょうとは順番が全く逆なんですよね。その企業のタレントマネジメントの目的を考えたら、そこに必要なデータは、もしかすると今持っているデータではないかもしれない。違う情報を新たに集めるべきかもしれない。そんなことだってあるわけです。 幸前:そういう意味では今までの人事って、データとして可視化されていない暗黙知的な感覚はすごく持っているかもしれません。 鈴村:そうなんです。暗黙知をどうデータに落とすのかは次のテーマだと思います。たとえばどの部署にどんな人がいるのか、データとしてはあるけど、結局その人は何がしたいのか、何が得意なのか。そういう“状態”を表すようなエモーショナルなデータを活用しないといけません。 幸前:適性検査や性格特性などをアンケートで取ったりはしているんでしょうけどね。 鈴村:だいたい取りっぱなしで終わりますよね。本当はそれをもっと人事情報と組み合わせて使うべきだと思っています。 幸前:本当にその通りだと思います。勤怠データや給与データも大事だけど、社員の顔色やコンディション、社員同士がきちんと会話できているのか、そういうところが重要なんですよね。 鈴村:生きたデータというのはそういう情報ですよね。先日、科学的な離職防止セミナーを行ったのですが、すぐ満席になったんです。昔は辞めたら補充すればいいって考えだったでしょう。でも今は採用難で次の人が採れない。特に外食産業や介護業界などは離職率の高さが経営課題になっています。そうなると、今いる人たちをいかに辞めさせないか、持っているパフォーマンスを引き出すかという発想に変えていかないといけません。 前編では、マーケティング領域から参入された鈴村さんだからこそ見えた、日本の人事における課題を浮き彫りにしてきました。 後編では、タレントパレットのユニークな機能が生まれた背景を伺いつつ、日本の人事が抱える問題とその解決策についてさらに深く話し合っていきます。 今回のお店 あじる亭レピス 店名の「レピス」は仏語でスパイスの意味。世界のスパイスを使った料理とソムリエ厳選ワインを南仏のバルのようなおしゃれな空間で楽しめます。
ワインで対談 2018年2月04日 人事評価にレーティングが不要である理由とマネージャーに求められる資質とは – エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん × セレブレイン高橋敦子 × セレブレイン関伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第4回ゲストは、エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役社長・松丘 啓司さん。日本における人事の歴史から人事評価をめぐる問題に至るまで幅広くお話を伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役副社長・高橋 敦子とパートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。(上記画像 エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん(右)とセレブレイン関伸恭) 第4回ゲスト:松丘啓司さん略歴 1986年、東京大学法学部卒業後、アクセンチュアに入社。1992年にチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画後、一貫して人事・組織変革のコンサルティングに従事。ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年、人材・組織変革サービスを提供するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し代表取締役に就任。著書に『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』『ストーリーで学ぶ 営業の極意: 1時間でわかる成功のポイント』など多数。 マネージャーに必要なのは人の可能性を伸ばすピープルマネジメント 高橋:松丘さん、次のお料理をどうぞ。 ソムリエ:甘エビと白イカ、きゅうりと水なすのタルタル仕立てです。ココナッツを効かせたピリ辛のカレー風味に味付けしています。合わせるワインはオーストリアのリースリングです。ちょっと熟成した2010年の旨味がマリアージュすると思いますよ。 松丘:オーストリアもワインの歴史が古いですよね。リースリングというと、ワインエキスパートを取ったときにキューピー人形の香りが特徴だって覚えましたね。 高橋:私はニシンあぶらの香りだと教わりました。 関:へ~! おもしろいですね。 松丘:うん、このリースリングもすばらしいですね。フルーティーで酸味もしっかりしているけど、熟成しているからかまろやかで旨味もすごくあります。 高橋:喜んでいただけてよかった!さすがのコメントですね〜。 松丘:セレブールさんのお店は他にもありますよね。 高橋:はい。全部で5店舗です。コンセプトは違いますが、どの店舗とも、キッチンやサービスの人間も“全員ソムリエ”ですので、マリアージュにこだわっています。全店赤坂にあるので、スタッフ間の横の連携もバッチリです。 松丘:それはいいですね。組織は縦割りになりがちですから。 高橋:そうですね。弊社でもそういう組織課題のご相談はよく受けていますね。どうすれば縦割り組織を変えられるのか、と。 松丘:コミュニケーションですよね。最近、LINE退職やSNS退職といった言葉も聞くようになりました。 関:LINEで退職を告げるということですか? 松丘:ええ。 関:そういう事態に対して人事的にはどのようにアプローチしていけば良いのでしょうか。 松丘:逆に企業でも皆がSNSをどんどん使っていけばいいと思いますよ。SNSで密にコミュニケーションを取り合いながら、お互いに褒め合い、認め合うカルチャーを作っていくのです。 高橋:日々の積み重ねですよね。なかなか褒め合うコミュニケーションを根付かせるのは大変ですが。 関:先ほどレーティングしないというお話を聞かせていただきましたけど、そうなると上司と部下で会話する内容も変わってきそうですね。 松丘:そもそも今まではきちんと時間をとって部下と対話をしていないという企業も多いのではないでしょうか。業務上の会話はあっても、1on1での対話は半期に一度の面談だけ。それも形骸化している……なんてことも多いはずです。 関:マネージャーが部下ときちんと対話できていないわけですね。 松丘:そう。対話って単純に話をすればいいってわけではないですよね。相手を理解すること、仕事に対する考え方や大切にしていること、将来の夢などを理解した上で、部下と向き合い、適切にフィードバックするのが本当の対話なんです。 関:なるほど……。 高橋:松丘さんに相談に来られる企業は、どんな課題を抱えているケースが多いのですか? 松丘:評価制度や現場における上司と部下のコミュニケーションがうまくいっていなくて、でもどうすればいいかよくわからないというようなご相談が多いですね。 関:やはり、マネージャーに対する教育や発想の転換が必要なのでしょうか。 松丘:そうですね。マネージャーに必要なのは、人の可能性を伸ばしていくマネジメント、それをピープルマネジメントと呼びます。ただ、人のマネジメントは難しいですから、一度研修を受けたくらいでは上達しませんね。失敗を繰り返して、そこから学んでいかないと。 関:失敗したら怖くなってしまいますよね。 松丘:研修を受けて実践しての繰り返しですね。よく、うちのマネージャーにはそんなスキルがないから無理だと言われるのですが、そうではないのです。マネージャーの力量を高めるための研修ですから、はじめからスキルは高くなくても大丈夫です。研修を受けて実践しながら高まっていくものなのです。 働き方改革の実現には社員が自律的に働ける仕組みづくりが必要 高橋:いよいよメインディッシュですね。 ソムリエ:香鶏という烏骨鶏に代表される地鶏のもも肉を使い、皮をパリッと焼き上げました。そこにポルチーニ茸、そしてトリュフをたっぷりと削っています。合わせるワインはブルゴーニュのサントネー村の赤ワインを。1999年と熟成したものをご用意しました。 松丘:これはおいしい! 鶏はやはり皮が一番おいしいですね。熟成したブルゴーニュのキノコっぽい香りがまた、トリュフやポルチーニ茸ととても合っています。 高橋:ふふ。素敵な対談ですよね(笑)。 関:松丘さんは普段、どのようなお食事を? 松丘:実はもう20年以上、週に複数回は寿司を食べているんですよ。 関:20年ですか! 高橋:お寿司と決めている理由があるんですか? 松丘:単純に好きだからですね。といっても予約が取れないような有名店ではないですよ。仕事が終わって今から行きたいなと思いつくことが多いので、かなり前から予約しないと入れないような店はNGです。 高橋:お寿司だと合わせるお酒は……。 松丘:だいたい日本酒ですね。ただ、寿司屋でも握りは食べないんですよ。バーに行く感覚というか、飲みに行っているので。それに、注文もしないんです。自動的に出てくるお店がいいですね。余計なことを考えたくないんです。 関:そうなんですね。自動的に出てくるとなると松丘さんの好みを把握していないと難しいですね!お仕事が終わった後の寿司屋というお話が出てきたところで、働き方改革についてもぜひ伺いたいです。働き方改革は今トレンドで、残業時間の削減から在宅勤務、テレワークなどありますが、そのあたりの取り組みについてはどうお考えですか? 松丘:在宅勤務やテレワークのメインとなる考え方って、働く時間と場所を縛らないということですよね。だけど、一人ひとりがそれをコントロールするためには、自律的に働けないとそもそも成り立たないわけです。 関:全職種に適用するのは簡単ではないですし、難しい側面はありますよね。 松丘:先ほどの目標管理の話と同じなんです。全社目標が部門目標になり、チーム目標になって個人の目標になる。個人からすると、仕事というのは上から評価基準と一緒に下りてくるものになってしまうんですね。だから受け身になってしまう。自分はこれがやりたいんだとか、こういうことに貢献するんだとか、そういう自発的な部分がないと自律はありえません。 関:たしかに与えられた仕事ではなく、自分で目指す方向を決めて主体的に取り組む方が仕事のパフォーマンスは上がりますね。 松丘:結局、上から下りていくと縦割りになってしまうんです。そうすると、他の人がどのような目標を持って、どこに向かって仕事をしているのかわからなくなってしまう。この人は今、こんな目標の達成に向けてがんばっているんだなということがわかれば、縦割りの問題も解決します。このあたりはHRテクノロジーを活用することで解決できそうな気がしています。 高橋:たしかにテクノロジーでも解決に期待が持てそうですね。 松丘:弊社でリリースを予定しているパフォーマンスマネジメント支援アプリもそういった機能を持っています。一人ひとりの目標を公開して、上司のこともわかるし、コメントもできます。 関:モバイルですか? 松丘:モバイルですね。でないとノリが重くなるんですよ。拝啓ますます……みたいに(笑)。もっと軽いタッチじゃないと。 関:PC版も? 松丘:もちろんです。PCでしかできないこともありますからね。これがあれば、どのチームがコミュニケーション活発だとか、どことどこがコミュニケーションできているかといったことまでわかるんですよ。 高橋:楽しみなアプリですね!リリースを楽しみにしています。本日はありがとうございました。 エム・アイ・アソシエイツ株式会社より2018年2月1日にリリースされた日本初のパフォーマンスマネジメント支援アプリ『1on1navi』についてはこちらのURLをご覧ください。 https://1on1navi.com/ 今回のお店 セレブール 2001年オープン。赤坂の隠れ家的ワインレストラン&バー。シェフを始め、スタッフは全員がソムリエの資格を持っており、フランスを中心とした銘醸ワインが約400種類そろっています。フレンチをベースにした創作料理とのマリアージュをお楽しみください。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 甘エビと白イカ、夏野菜のタルタル グリーンカレー風味 甘エビ、白いか、きゅうり、水なすといったバラエティに富んだ食材をタルタル仕立てに。ねっとりとした食感と少しピリ辛な味付けのコントラストが楽しめる一皿。添えられたパクチーの香りが良いアクセントになっています。 プラーガー・リースリング・ヴァッフストゥム・ボーデンシュタイン・スマラクト2010 オーストリア、ドナウ川沿いのヴァッハウの白ワイン。リースリングらしい酸味を持ちながらも、7年熟成を経たことでかなりまろやかになっています。桃や杏のようなフルーティーな香りと、からみつくような旨味が特徴です。 蔵王香鶏 もも肉のロースト 茸のヴァンジョーヌソース 蔵王の地鶏のもも肉をローストし、ポルチーニ茸のヴァンジョーヌソースをたっぷりと。ヴァンジョーヌとはフランス・ジュラ地方の黄ワインのこと。ジュラの郷土料理に、さらにサマートリュフを添えたスペシャルな一皿です。 サントネー 1999 18年の熟成を経たブルゴーニュ・サントネー村の赤ワイン。まだまだ果実味も残しつつ、キノコや土といった熟成による香りが立ち上り、すばらしい複雑味を備えています。まさに今が飲み頃のピーク。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。今回のゲストはエム・アイ・アソシエイツの松丘社長。著書『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』で語られているレーティングの問題点をわかりやすく解説していただくことができました。 また、ワインエキスパートの資格もお持ちということで、ワインについても会話に花が咲いていたようです。 セレブールのお料理とワインはさすがという他なく、まさに完璧としかいいようのないマリアージュでした。シャンパーニュから始まり、オーストリアの白、熟成したブルゴーニュの赤という流れは、ワインの奥深さ、世界の広さを感じられる流れだったと思います。 やはり特に感動したのはサントネーの1999年。熟成を経た状態の良いワインだけが放つうっとりとするような芳香は、まさにフィネスという言葉がふさわしい高貴さが感じられました。こうしたワインを完璧な状態とサーブで味わえるわけですから、なるほど、セレブールが長年ワインラヴァーから愛される理由もよくわかるというものです。
ワインで対談 2018年1月11日 人事評価にレーティングが不要である理由とマネージャーに求められる資質とは – エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん × セレブレイン高橋敦子 × セレブレイン関伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第4回ゲストは、エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役社長・松丘 啓司さん。日本における人事の歴史から人事評価をめぐる問題に至るまで幅広くお話を伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役副社長・高橋 敦子とパートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。(上記画像 右からエム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん、セレブレイン関伸恭、高橋敦子) 第4回ゲスト:松丘啓司さん略歴 1986年、東京大学法学部卒業後、アクセンチュアに入社。1992年にチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画後、一貫して人事・組織変革のコンサルティングに従事。ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年、人材・組織変革サービスを提供するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し代表取締役に就任。著書に『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』『ストーリーで学ぶ 営業の極意: 1時間でわかる成功のポイント』など多数。 なぜ日本は人事評価で“レーティング”し始めたのか 高橋:こんばんは、松丘さん。本日はいろいろとお話を聞かせてください。 松丘:こんばんは。こちらのお店には以前、伺ったことがあります。 高橋:そうでしたね。今回のお店であるセレブールはオープンしてもう17年も経ちます。松丘さんはワインエキスパートの資格を持っていらっしゃるとお聞きしているので、ぜひ今夜はセレブールのワインとお料理を楽しんでいってください。 松丘:とても楽しみです。 関:ではお話の前にまずは乾杯しましょう! 松丘:シャンパーニュですか。……うん、おいしいですね。 ソムリエ:LALLIER(ラリエ)というシャンパーニュで、ピノ・ノワールが多く使われています。ピノ・ノワールが多いと濃い味になりがちですが、ファーストタッチがすごく繊細です。 松丘:本当ですね。それにしっかりとしたコクがある。 ソムリエ:まだ日本に入り始めてそれほどたっていないのですが、これから伸びてくるシャンパーニュだと思いますよ。 関:ではさっそくお話を聞かせてください。松丘さんは以前、『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』という著書を出版され、人事業界でも話題になりました。とても刺激的なタイトルですが、どんな思いで執筆されたのですか? 松丘:日本の企業に問題提起したかったのです。 関:といいますと……。 松丘:タイトルにもある「人事評価」ですが、アメリカでは「パフォーマンス・マネジメント」と呼ばれています。個人のパフォーマンスを高めることが、組織全体のパフォーマンスを高めることにつながる、そのために人事評価を組み込んでいこうという考え方ですね。ところが、実際のところはアメリカも日本も”評価”がパフォーマンスの向上につながっていないと感じている会社が多いのです。完全に評価をなくそうというわけではありませんが、目標管理や評価といった当たり前に思っているものが本当に必要なんでしょうかと問題提起をしたかったのです。 高橋:たしかに人事評価は給与を決めるためだけにやっている会社も多いですよね。人事評価を育成やパフォーマンス向上のために活用できている会社は残念ながらあまり多くはありません。 関:そもそも現在多くの企業に採用されている人事評価制度が日本で出てきたのは、成果主義が叫ばれ始めた90年代後半ごろだったと思います。それ以前の日本はどうだったのでしょう。 松丘:以前の日本はいわゆる年功序列・終身雇用制度だったので、皆が同じように出世していったのです。だから評価をして差をつける必要もありませんでした。もちろん、そうはいっても出世には差がついてくるのですが、レーティングをしなくてもだいたい誰が出世するかはある程度わかっていたわけです。 関:なぜ、そこからレーティングするという流れに変わってきたのですか? 松丘:戦後の日本は高度成長期が続いていました。それが、70年代後半くらいから低成長になり、これではまずいということでカンフル剤的な施策があり、バブル経済が生まれたんですね。その後、バブルが崩壊し、同時に90年代前半からグローバル・エコノミーが急拡大してきました。 高橋:国境を超えてお金や情報が動くようになってきたわけですね。日本企業もグローバルでビジネスを展開するようになった頃ですね。 松丘:ええ。ところが日本はそれまで年功序列・終身雇用制度だったので、人件費構造が高かったわけです。終身雇用制度における人件費とは、つまり固定費です。欧米企業はご存知の通り、景気が悪くなると平気で解雇されますよね。そうしたグローバルベースのビジネスでは、これまでのやり方では勝てないと言われ始めたのです。 関:つまり、日本経済が低迷して企業がコストダウンを迫られるなか、人件費を変動費化して限られた原資を成果に応じて配分しようという試みだったと。 松丘:それが直接的な要因だと思います。当時の日本企業にとって、国際競争で同じ土俵に立つという意味でそれなりの効果はあったでしょう。ただ、人件費を削減すると言ってしまうのは体裁が悪いので、成果に応じて報いるのが公平だというレトリックを用いたわけですね。 人事評価においてレーティングが不要である理由 高橋:では最初のお料理をどうぞ。 ソムリエ:先ほどのシャンパーニュに合わせて、アミューズの盛り合わせをご用意しました。右手から干し鱈をじゃがいもと一緒にペーストしたブランダード、ブリア・サヴァランというヨーグルトを加えたフレッシュチーズと季節の桃、そして黒いちじくと生ハムを合わせたものです。 松丘:おしゃれですね。……うん、シャンパーニュにもよく合います。 関:松丘さんが一番お好きなワインは? 松丘:難しい質問ですね。やはりフランスは好きです。ブルゴーニュとか。でも家で飲むにはちょっと高いので、オーガニックワインをもっぱら飲んでいます(笑)。 高橋:私も同じです。オーガニックワインの最近の進化はすごいですよね。 関:ワインやお酒は毎日飲まれるのですか? 松丘:ええ。ほぼ毎日飲みますね。昔は休日の昼間に飲んだりしたこともありましたが、今はもう疲れちゃうから飲まないですね(笑)。 関:さて、お話の続きですが、企業では目標を立てて半期に一度、または年に一度評価をするという仕組みを取り入れているところが多いと思います。松丘さんのお考えでは、そういった企業は今後どういう仕組みでやっていくことが求められるのでしょう。 松丘:そうはいっても評価がなくなるわけではないんですよ。昇進や昇格、ボーナスなどは決めないといけないわけですから。私が言いたいのは、評価がなくなるわけではなく、レーティングしないということなんです。 関:レーティングというと、S・A・B・C・Dや1・2・3・4などで評価をつけることですよね。それをしない評価といいますと……。 松丘:今はまだ短期の業績をもとにレーティングを行って、それを昇格と密にリンクさせている会社が多いのですが。たとえば年次評価で3年連続A評価以上なら昇格とかね。 松丘:このやり方は明確なルールがあるので、一見すると公平なように見えます。しかし、そうではないんです。昇格というのはどうやって決めるべきかというと、本来的には今よりも一つ上の役割を果たせる能力やリーダーシップがあるかどうかで判断されるべきなんです。短期評価でAを3回とったからというレーティングで決めるべきものではありません。 高橋:役割を果たせるかどうか、ですか。 松丘:もちろん、能力があるかどうかを判定する際に実績での検証は必要です。しかし、それはレーティングである必要はありません。そこは切り離す必要があるのです 関:給与についてはどうなりますか? 松丘:給与の仕組みは会社によって違いますが、基本給はだいたい等級と連動しています。対してボーナスは毎期の業績によって決まります。つまり、基本給を決めるのにレーティングは必要ないのです。 関:たしかにその通りですね。 松丘:そうするとレーティングはボーナスの配分を決めるためだけに使うことになります。多くの会社は相対評価で決めますよね。 関:1.2とか0.8とかに調整して決める方法ですよね。 松丘:ええ。多くの会社では目標の達成度で判断することが多いですよね。しかし、それは最初から達成しやすい目標しか立てなくなるという問題をはらんでいるのです。これは成果主義の問題として以前から言われていたことです。 関:なるほど……。 松丘:そもそも何が評価されるべき成果なのか、その基準自体も変化しています。売上目標を達成したから評価されるべきなのか、それとも売上目標は達成できなかったけれど、すばらしいチャレンジをしてイノベーションにつながったなら、それは評価するべきではないのか。これを単純に2:6:2とかで配分すると、柔軟性を欠いてしまうのです。また、社員としては他の人と同じ程度の成果を出していればとりあえず真ん中の6には入れるので、他の人を見ながらほどほどにやっていればいいという意識になってしまいます。 高橋:日本人らしい思考ですよね。 関:海外ではそういった問題はないのですか? 松丘:欧米だと人材流動性が高いですから、たとえば「あなたはCです」のようにレーティングすると辞めてしまうんです。それで競合他社に移ってしまったりする。かといって「なぜCなのか」ということを説明して納得してもらうのも大変です。 関:そこに労力を使いたくないですよね。 松丘:実は脳科学の研究で、レーティングをするとマインドセットが「自分はダメだ」という方に向いてしまうという結果が出ているんです。人が成長するためには前向きなマインドセットになる必要があるので、やはりレーティングは問題があるのです。 前編では、日本の人事評価の歴史を経済的な視点から振り返り、さらに人事評価におけるレーティングの問題について詳しく語っていただきました。 次回、後編では現場の課題をどう解決していけばいいのかというお話に加えて、トレンドでもある働き方改革についても見解をお聞きします。 もちろん、お料理とワインもすばらしいものが登場! メインディッシュと、それに合わせる最高のワインは何が選ばれるのか……。こちらもお見逃しなく! 今回のお店 セレブール 2001年オープン。赤坂の隠れ家的ワインレストラン&バー。シェフを始め、スタッフは全員がソムリエの資格を持っており、フランスを中心とした銘醸ワインが約400種類そろっています。フレンチをベースにした創作料理とのマリアージュをお楽しみください。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 白桃とフレッシュチーズのサラダ 干し鱈をじゃがいもと一緒にペーストしたブランダードは、フランス・ラングドック地方の郷土料理。ブリア・サヴァランというヨーグルトを加えたフレッシュチーズと季節の桃、そして黒いちじくと生ハムを合わせたアミューズの盛り合わせ。見た目、香り、食感のすべてで楽しめる一皿です。 シャンパーニュ・ラリエ、R.012 ブリュット 秀逸なピノ・ノワールを生み出すアイ村のシャンパーニュ。ピノ・ノワールの比率が高めでしっかりとした骨格を持ちながらも、口当たりはなめらかで繊細。柑橘系の香りと白い花のアロマが感じられるバランスの良いワインです。
ワインで対談 2017年10月29日 米国のHRテックと日本企業の意外なつながりとは – タレンタ石橋慎一郎さん × セレブレイン高城幸司【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第3回ゲストは、株式会社タレンタCEO・石橋愼一郎さん。ベンチャー支援を始めた経緯や、同社が提供するデジタル面接プラットフォーム「HireVue」について、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司と対談しました。 第3回ゲスト:石橋慎一郎さん略歴 IBM、オラクルをはじめとする著名なIT企業において上級管理職を歴任した後、創設時からのパートナーであるサンブリッジ株式会社においていくつもの新規事業を立ち上げてきた。日本におけるテクノロジービジネスの発展を30年以上に亘ってリードし、現在はタレンタ株式会社のCEOとしてHRテックの普及に注力している。 アメリカのHRテックは、かつての日本企業のマネジメントスタイルをベースに開発されている 高城:ここまで、サンブリッジを創業してベンチャー支援をされてきた経緯や、タレンタで展開するサービスについてお話を伺ってきました。ところで、Facebookを拝見したのですが、石橋さんはプライベートでもアクティブですよね。ゴルフとか登山とかヨットとか……。 石橋:今は山に凝ってますね。もともとはゴルフをやっていて、体幹を鍛えるために山に登り始めたらすっかりそっちに夢中になってしまって。体力をつけるために有酸素運動をしようとジョギングを始めましたし、足腰に負担がかからないようにロードバイクを買って自転車もやっています。 高城:いやー、すごいですね。山にはどなたと? 石橋:最近はモンベルとかクラブツーリズムとかのツアーに一人で参加してますよ。レベルがいろいろあって、まだまだ先は遠いです。 高城:ぜひゴルフもまたやりましょうよ。タレンタとセレブレインでゴルフカップを。 石橋:いいですね! 高城:お話を戻しますが、やはり人事の業界ではアメリカが進んでいますよね。日本でもようやくHRの世界にテクノロジーを活用する重要性が認識され始めていますが、石橋さんから見てどんな状況だと思われますか? 石橋:やはりアメリカは進んでいると思います。HRテクノロジーベンダー含め人事政策を支援するさまざまなベンチャー企業が出てきていますので、良いサービスは我々も日本で展開したいと考えています。 高城:まだまだ日本に入ってきていない新しいサービスがたくさんあるということですね。 石橋:一つ、面白い話をしましょう。20数年前、ジャパン・アズ・ナンバーワンといって日本の経済状況が良かった時代がありました。その経済を支えている企業が社員に対して行っていたトリートメントがかなりすばらしいものだったのです。有能な人材をそれなりのポジションにつけて、終身雇用のエンゲージメントを与えることでモチベーションを高めていました。じゃあそのとき、アメリカはどうしていたか。 高城:ふむ。 石橋:アメリカは日本を見て、一生懸命に研究していたのです。そして、日本企業がやっていたことを彼らはシステム化しました。実は今、我々がアメリカから学んで日本に持ってきている製品の多くが、昔の日本の大企業がやっていたことをシステム化したものなんですね。 高城:うーん、なるほど。アメリカ企業のHRテック関連製品が実現しているものは、実は日本人がかつて実践していたことなのですね。 石橋:そうなんです。では日本とアメリカの違いは何なのかというと、アメリカはそういうものをシステム化してインフラを作るのが非常にうまいんですね。 高城:それならHRテックの考え方なんかは日本人にも親和性が高そうですね。 石橋:使いこなすことについて日本人は長けていますからね。ただ、システムという切り口でいうと、やはり3~5年はアメリカに遅れを取っていますね。 ブレイクスルーはコーチングにあり! HRテックで「Work Happy!」の実現を ソムリエ:さあ、メインディッシュです。ポークスペアリブに、ドンキー・アンド・ゴートのグルナッシュを合わせましょう。ここはもともとIT業界で働いていた夫婦が立ち上げたワイナリーで、クオリティは非常に高いです。 石橋:天国ですね、今日は(笑)。このワインは甘めのポークスペアリブにぴったり合いますね。日本だと甘めのスペアリブってあまり食べないですよね。 高城:ナチュールワインということもあって、普通のグルナッシュのイメージよりはさっぱりしていますが、やはり肉との相性は抜群ですね。普段はどんなワインを飲まれるのですか? 石橋:個人的には赤ワインが好きですが、周りに白好きが多いので、シャンパンからスタートして白、赤みたいな流れで飲むことが多いですね。 高城:いいですね! さて、メインディッシュをいただきながらお話の続きを。現在、アメリカではHRテックはどんな時期に入っているのでしょう。 石橋:まだまだ成長期ですよ。びっくりするようなものが次々に生まれています。たとえばスーパーの出入り口にボタンがあって、「良かった」とか「まあまあ良かった」みたいな感想を押すシステムなんかがあるんです。 高城:へえー! 面白いですね。 石橋:こういうのって日本人だとあまり考えないですよね。超多民族国家のアメリカだからこそ、システム化して合理的にお客さんの気持ちを汲み取ろうとするのかもしれません。 高城:しかし、日本からそういったサービスが生まれないというのはなぜなんでしょうね。日本発というのは難しいのでしょうか。 石橋:昔から日本のベンチャーはアメリカで成功しているモデルを日本に持ち込むというのが主流でしたからね。 高城:タイムマシン戦略ですね。日本はガラパゴスなんて言われますが、今後ブレイクスルーするとしたらどういうところが切り口になるでしょう。 石橋:難しい質問ですね。ブレイクスルーといっていいかはわかりませんが、コーチングをどうインフラで活用するのかが切り口になるかもしれません。 高城:というと? 石橋:たとえば新卒で採用した社員が3年で3割辞めるという話があります。それは本人の資質、組織の問題、ビジネスモデルの問題などいろいろな理由があるわけですが、かなりの部分を占めているのが上司との関係性なんですね。コミュニケーションをとって、社員のモチベーションを高く保てるかが重要なんです。 高城:これまではそういうものは仕組みとは別の部分で担保されていたと思いますが、今はなかなかそうもいかないですよね。 石橋:そうなんですよね。課長や部長や社長はタレントマネージャーそのものなんだけど、意外とタレントのマネージができていない。だからこそHRテックで仕組みを作っていくのが重要なんです。よくなでしこジャパンW杯優勝した佐々木則夫監督のことをサーヴァントリーダーといいますが、そういうマネジメントスタイルを実行するためにもHRテックは必要だと思いますね。 高城:石橋さんの今後の目標はどんなことですか? 石橋:タレンタ社は「Work Happy!」というビジョンを掲げています。ハッピーというと幸せ感ととらえられがちですが、僕が思うハッピーはウェルビーイングの世界なんです。つまり、感情としての幸福だけでなく、自分が健康であること、家族が健康であることです。そういうところまでいかないとハッピーとはいえない。アメリカのHRテックを見ていても、やはりウェルネスの領域まで広がってきていると思います。そういう視点で見ると、タレンタ社はすごく裾野が広い面白い会社にしていけるんじゃないかという感覚がありますね。 高城:気持ちの面だけでなく、自分や周囲の健康まで含めて「幸せに働く」ことだというのはすごく納得がいく世界観ですね。ぜひ一緒にHRテックを盛り上げて、「Work Happy!」を実現できたらと思います。本日はありがとうございました。 石橋:こちらこそ、ありがとうございました。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 地下鉄赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ポークスペアリブ あじる亭カリフォルニア屈指の人気商品。ジューシーで柔らかく、ボリューム満点のスペアリブを甘口のソースでガツッと食べるアメリカンな一皿です。 ドンキー・アンド・ゴート グルナッシュ サンフランシスコのIT企業で働いていた夫婦が新たな挑戦として立ち上げたワイナリーのワイン。フランス・ローヌで技術を学び、2001年からワインを作り続けています。グルナッシュといえばどこか田舎っぽいイメージがあるかもしれませんが、自然派ワインということもあってか、ドライかつさっぱり。脂の多くない肉料理にマッチします。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。タレンタの石橋社長は日本のIT業界黎明期からベンチャー支援を続けてこられた方。投資家としてもプレーヤーとしても活躍されているからこその視点で、人事やテクノロジーの現状をお話ただきました。 食事についてもかなりのグルメということで、あじる亭カリフォルニアのお料理とワインをとても楽しまれていた様子。ご用意いただいた品々はどれも完璧なマリアージュで感動しました! どれも良かったのですが、やはり大人気のポークスペアリブは絶品でしたね。ローヌのグルナッシュも合うと思いますが、アメリカのグルナッシュ、しかも自然派ワインということで、また違った雰囲気の面白い組み合わせでした。 今回のマリアージュはどれも鉄板ですので、あじる亭カリフォルニアを訪れたらぜひ一緒に注文してみてほしいですね。
ワインで対談 2017年10月19日 米国のHRテックと日本企業の意外なつながりとは – タレンタ石橋愼一郎さん × セレブレイン高城幸司【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第3回ゲストは、株式会社タレンタCEO・石橋愼一郎さん。ベンチャー支援を始めた経緯や、同社が提供するデジタル面接プラットフォーム「HireVue」について、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司と対談しました。 第3回ゲスト:石橋愼一郎さん略歴 IBM、オラクルをはじめとする著名なIT企業において上級管理職を歴任した後、創設時からのパートナーであるサンブリッジ株式会社においていくつもの新規事業を立ち上げてきた。日本におけるテクノロジービジネスの発展を30年以上に亘ってリードし、現在はタレンタ株式会社のCEOとしてHRテックの普及に注力している。 石橋氏がサンブリッジを創業し、ベンチャー投資を始めた理由 高城:石橋さん、ようこそいらっしゃいました。何でも石橋さんはかなりのグルメだとか。 石橋:食事するのは大好きですね。和食も洋食も、B級グルメから三ツ星まで、僕ほどカバーしている人はいないと自負しているくらいです(笑)。 高城:それはすばらしい! 今夜はぜひカリフォルニアのワインとお食事を楽しんでいただきながら、石橋さんのこれまでのご経歴や日本の人事業界についてお話を伺えたらと思っています。 石橋:こちらこそよろしくお願いします。 高城:石橋さんはIBMやオラクルでプロダクトマネージャーやマーケティング本部長を務められた後、サンブリッジを創業して日本のベンチャーをずっと支援してこられましたよね。そういった取り組みがまさに今花開いているわけですが、そもそもなぜベンチャー投資業務に関する仕事をされることになったのですか? 石橋:サンブリッジは1999年に、日本オラクルの代表だった佐野さんや日本オラクル初代代表のアレン・マイナーと一緒にスタートした会社です。当時、日本のITベンチャーの数は非常に少なかったので、もっと活性化していきたいという思いが背景にありました。 高城:当時からアメリカではシリコンバレーを中心にベンチャー企業が次々に生まれていましたよね。日本との違いは何だったのでしょう。 石橋:シリコンバレーは成功した人がエンジェル投資家になり、次の人に投資するというエコシステムが出来上がっていたからです。そのやり方を日本に持ってこようという発想がサンブリッジのビジョンでした。インフラ、マーケティング営業支援、技術支援という三位一体の支援をすることで、どんどんITベンチャーを成功させてEXITし、リターンを得るというビジネスモデルだったのです。余談ですが……サンブリッジという社名は、日出ずる国としての日本と戦後の日本にとって太陽のような存在だったアメリカ、二つの太陽を結びつけるという意味でサン(太陽)ブリッジ(橋)と名付けました。 高城:そんな由来があったのですね! デジタル面接プラットフォーム「HireVue」は企業にどう活用されているのか 高城:最初のお料理とワインが来ました。 ソムリエ:ベーコンとホワイトマッシュルームをたっぷり入れたほうれん草のサラダです。合わせるワインは最近カリフォルニアでも流行っているナチュールワイン。ブロックセラーズという作り手の白ワインをご用意しました。 石橋:ありがとうございます。……うん、これはおいしい。カリフォルニアテイストですね。ワインのミネラル感がほうれん草の鉄分によくマッチします。 ソムリエ:マルサンヌというぶどう品種を90%使ったワインで、飲みごたえがありますよね。 石橋:カリフォルニアには面白いワインが多いですよね。実は最近、ワインスクールに通っているんですよ。 高城:えっ、そうなんですか。では今日はぜひカリフォルニアのワインを楽しんでいってください。さて、お話を戻しますが、ベンチャー支援を行う上では”目利き”が重要になってくると思います。何かポイントはあるのでしょうか? 石橋:いくつかあります。まず製品そのものの技術バックグラウンドがしっかりしているか、それから優秀な人材がいるか、そして社長がどんな資質の人なのかです。芯はしっかりしているけれど、人の言うことにも耳を傾けられるかどうか?など。そういうところも成功できる要素のひとつですね。 高城:なるほど。確かにそうですね。石橋さんが特に「人」に着目してビジネスを展開されるようになったのはいつ頃からでしょうか。 石橋:人を意識し始めたのはサンブリッジの創業から間もない2000年前半くらいでしたね。リーダー採用を手伝ったり、マーケティング支援をしたりしていたのですが、会社が成長するとそれに伴う”軋み”が出てくることがわかったのです。組織をどう運営するのか、人の評価をどうすればいいのか。そういった課題を解決するために開発された製品が、社員のスキルを可視化する「3Rings」です。 高城:タレンタでは他にも360度多面評価システムの「SilkRoad Performance」やデジタル面接プラットフォームの「HireVue」を提供されていますよね。 石橋:今メインでやっているのは「HireVue」で、これは採用面接をウェブの録画やライブ形式で行うというプラットフォームです。アメリカでもすでに700社くらいの企業が採用しており、大企業も数多く使っています。たとえば某IT企業がAIの研究者をグローバルで採用する際、「HireVue」で数千人を面接し、そこを通過した人をニューヨークに呼んで対面で面接するという方法をとっている事例もあります。 高城:日本ではそういったやり方は受け入れられるのでしょうか。 石橋:時期尚早かなと思ったのですが、ミレニアル世代の若者はスマホで育っていますから、デジタルに対する恐怖感はないようですね。デジタル面接でも自分の意見なりをしっかりと主張できています。すでに大手企業にも「HireVue」を採用いただいているんですよ。ユニークな使われ方をしている企業も多く、とあるサービス業の大手企業では設問の代わりに「ケーススタディ」をHireVueで実施したりしています。設置した具体的なシチュエーションに対して、どういうリアクションや言葉遣い、表情で対応をするかを見て判断するそうです。 高城:それは面白く興味深いですね。デジタル面接ならではですね。他にデジタル面接のメリットはどのようなところにありますか? 石橋:映像の記録が残るので、より多くの人によって判断できます。公平性が高く、その場で議論しながら評価出来るので、ばらつきがなくなるのです。 高城:実は私としては最初、採用ツールとしてのデジタル面接には懐疑的な部分があったんですよ。採用って人がやるべきでしょうと。でもあっという間に普及してきて、分野によっては採用のデファクトスタンダードになるのかもと感じています。業務効率化という点でも、候補者にとっての利便性からも画期的ですよね。 石橋:その意味では大きいですね。会場を用意しなくていいし、応募者と面接官のスケジュールを合わせなくてもいい。わざわざ遠くから来てもらうことがないので、双方にとってメリットが大きいです。 高城:今後は面接全体が置き換わっていくのでしょうか。 石橋:今のところは履歴書やエントリーシートなどのペーパーワーク、または一次面接までを効率化しているのが現実ですが、今後はもっと範囲は広まると思います。 タレンタが提供するサービスはすべて連動している 高城:二皿目のお料理をいただきましょう。 ソムリエ:スクランブルエッグ 雲丹のカプチーノ仕立てにオレンジワインのマサイアソン リボッラ・ジャッラを合わせます。 石橋:ほう、オレンジワインですか! ソムリエ:白ワインを赤ワインの製法で作るもので、ギュッとつまった旨味が雲丹の濃厚さとよく合います。リボッラ・ジアッラという品種はもともとイタリアの品種なんですが、それをカリフォルニアでオレンジワインにしたものです。 石橋:いや、これは本当にすばらしいですね。 高城:石橋さんはお好きなお料理のジャンルは? 石橋:京味系の和食が多いですね。走りと旬と名残の3つを楽しんでいますよ。 高城:ではお話に戻りましょう。御社では今現在「HireVue」や「SilkRoad Performance」、「3Rings」と多様なサービスを展開されていますが、全体としてはどんなビジョンを描いてらっしゃるのですか? 石橋:実はこれらのツールはすべて連動しているんです。既存の社員に対してのHRソリューション製品と採用のソリューション製品は分断されていることが多いのですが、経営者から見ると本来はつながっているべきなのです。 高城:といいますと? 石橋:どういう社員を入れるのかは既存の社員を見て判断しないといけませんし、どういう社員教育を行うべきなのかは、どんな社員が入ってきたのかによっても変わります。また、どういう教育をしてどのように社員を育てるのか、その結果によって次にどういう社員を採用するのかが決まります。 高城:なるほど。採用面接から社員のスキル可視化、そして360度評価……そのすべてをタレンタのサービスがサポートしてくれるというわけですね。 前編では、サンブリッジを創業してベンチャー支援を始めたきっかけから、”人”に注目して数々のHRテックサービスを手がけることになった経緯をお話いただきました。 次回、後編ではアメリカが先行するHRテックが実はかつての日本企業の取り組みと深い関係があったという興味深いお話や、日本が今後HRテックでブレイクスルーを迎えるにはどうすればいいのかという見解などをお聞きします。 お料理の方はいよいよメインディッシュが登場! あじる亭カリフォルニアを代表する肉料理とカリフォルニアワインのマリアージュをお楽しみに! 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 地下鉄赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ほうれん草のサラダ ベーコンとマッシュルームをたっぷりのせたカリフォルニアで大人気のほうれん草のサラダ。日本ではあまり見かけない生のほうれん草の滋味に身体が喜ぶ一皿です。 ブロックセラーズ ラブ・ホワイト カリフォルニアセントラルコーストで栽培されるマルサンヌとルーサンヌを使用した自然派ワイン。フルーティーでさわやかな味わいながら、しっかりした飲みごたえもあり。奥に感じるミネラル感がサラダなどにもマッチする他、単体で飲んでも楽しめます。 スクランブルエッグ 雲丹のカプチーノ仕立て 濃厚な雲丹の香りと風味を楽しめる一皿。とろけるような舌触りと口いっぱいに広がる香り、そしていつまでも余韻として残る深いコク。五感すべてで楽しめる一品です。 マサイアソン リボッラ・ジャッラ イタリアの品種、リボッラ・ジアッラ100%のオレンジワイン。皮と梗を含めて発酵させるスキンコンタクトという製法で作られます。ぶどうのうまみが凝縮しており、同じくうまみ成分の強い料理に完璧に寄り添います。
ワインで対談 2017年9月14日 “顔と名前が一致しない”を解決するサービス「カオナビ」は人事制度をどう変革するのか – カオナビ柳橋仁機さん × セレブレイン高城幸司【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第2回ゲストは、株式会社カオナビ代表取締役社長・柳橋仁機さん。同社が提供するクラウド人材管理ツール「カオナビ」誕生の背景と、日本の人事の未来について伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司が務めます。 第2回ゲスト:柳橋仁機さん略歴 アクセンチュア、アイスタイルを経てサイバーエージェントのジョイントベンチャー子会社立ち上げに参画。その後、独立し「社員の顔と名前が一致しないを解決する」ことをコンセプトにしたクラウド型人材管理ツール「カオナビ」をリリース。株式会社カオナビ代表取締役社長。 クライアントのニーズを満たす「お皿とお団子戦略」 高城:ここまで、カオナビが誕生した経緯や時代背景などについて伺ってきました。サイバーエージェントのお仕事をきっかけにしてアイデアを発想され、現在ではクライアントが600社にまで増えたということでしたね。ここからはさらに深いお話を伺っていきたいと思いますが、ちなみにワインとお料理はいかがですか? 柳橋:とてもおいしいです。どんどんいけちゃいますね(笑)。 高城:それは嬉しいですね(笑)。ではお話に入る前に、次のワインとお料理をどうぞ。真ダコのマリネ「セビチェ」をご用意しました。さっぱりとしていて、パプリカパウダーでアクセントをつけた料理です。合わせるワインはビリキーノ・ワインズのマルヴァジア・ビアンカ2014です。 柳橋:うーん……これは爽やかでおいしい! マリネともよく合いますね! 高城:マスカットや桃、ミントなどのアロマティックな香りが、セビチェのスパイスとぴったりですよね。 柳橋:先ほどの微発泡スパークリングもよかったですが、こちらもすばらしいです。 高城:夏らしい組み合わせを楽しんでいただきながら、お話の続きを聞かせてください。今後、カオナビとしてはどんな展開を考えられているのでしょう。 柳橋:お客さまからは、カオナビ上であんなこともこんなこともやりたいというご要望をいただいています。たとえば、評価ワークフローを出して評価結果を見たいとか、適性検査の結果を蓄積したいとか、動画研修の履歴を残したいとか。カオナビに人事マスターが入っているので、キャリアに関わる情報をそこに蓄積したいというニーズが想定以上に増えているんですね。顔写真と人事情報を管理するというベーシックな機能を「お皿」とするなら、そこに載せる新しい機能が「お団子」です。このお団子を一つひとつ用意していくのが、今後のビジネス展開になってくると思います。 高城:そういうことは創業当時から考えていたことなのですか? 柳橋:考えていました。僕は開発者なのでデータベース的な考え方が強くありまして、人事のマスター情報をベースにプラットフォーム化したほうが有利だと思っているんです。評価ワークフローとか動画研修履歴とかは人事のマスターデータに紐づくものですから、最初からそこにコミットする機能を作る必要はありません。まずはベーシックなニーズでお客さまを増やして、お団子となる機能は後から増やしていくという戦略でいこうと考えたのです。 高城:なるほど。お皿の機能を充実させつつ、お団子を用意していくと。 柳橋:ただ、お団子の部分は外部パートナーとの連携も含めて考えています。こちらが綺麗で大きなお皿を用意できれば、外部のお団子屋さんとも連携がしやすくなるのではないかと。 高城:基本的な部分をしっかり作り込むことが大事ということですね。どういうところにこだわってらっしゃるのですか? 柳橋:UIやUXにまったく違和感を覚えない世界まで持っていきたいですね。普通にクリックしたときに画面がロードしたり、ちょっと遅いと思ったり、ボタンの位置がわからなかったり……ちょっとでも引っかかりがあるのはダメなんです。何のストレスもなく使える状態にしたいですね。 高城:これまでにも相当改善を進めてこられたわけですね。 柳橋:でもまだ2割だと思っています。できることはまだまだあります。 HRテックで変わりゆく日本の人事業界 高城:それでは最後のお料理とワインです。このケイジャンスパイスチキンはこのお店の人気メニューです。炭火でじっくり揚げているので、ジューシーで柔らかいです。スパイス検定1級を持ったシェフ特製のスパイスが刺激的ですよ。 柳橋:スパイシーでおいしいですね! ふだんは辛いものが好きで、韓国料理や中華料理をよく食べるんです。 高城:そうでしたか! 今度のワインはオレンジワインです。よく合うでしょ? 柳橋:本当ですね。ロゼよりも白寄りですね。……うん、おいしい! 実は赤ワインがあまり得意ではないのですが、これはいけますね。鼻にスッと香りが抜けていきます。 高城:ではそちらを召し上がっていただきながら、今後の日本のHRテックについてお話していきましょう。HRテックを普及させるためには何が重要なのか。 柳橋:僕が創業した頃って、それこそ人事情報をインターネット上に置くのはけしからん! みたいな世界だったんですよ。それが5年間で変わったと感じているので、そこは普及してきたところかなと。 高城:たしかにそうですね。 柳橋:それから、最近は1on1のノーレイティング制度が盛り上がっています。今までは目標管理制度でカチッと目標を決めて達成度を期末に評価していたのが、期初に掲げた目標ってだいたい変わるから、その評価制度は機能しないのでは……という問題意識が出始めているのかなと思いますね。 高城:既存の人事制度にとらわれていた部分がノーレイティングで変わろうとしているのですね。カオナビはそうした動きをどう取り込んでいくのでしょう。 柳橋:ノーレイティングや1on1の機能は、何かしらの方法でカオナビ上で実現しようと決めています。それはお客さまに求められたからではなく、世の中はそうあるべきだと僕が思うからです。システム開発の世界はウォーターフォールからアジャイルに移行しました。人事評価もアジャイルであるべきなんです。 高城:そういう動きについてくる業界というと……。 柳橋:やっぱり圧倒的にIT企業が多いですよね。特にITベンチャーはだいたいGoogleさんの制度を参考にしていますよ。 高城:今後、HRテックが広がっていく中で、アメリカなんかだとすごくたくさんのプレーヤーがいるわけですよね。海外のプレーヤーが日本にも上陸し始めていて、そういう黒船の存在をどう見ていますか? 柳橋:すでにワークデイさんなんかが来ていますよね。ただ、現在日本に上陸してきているサービスは、おもに大企業向けに作られた統合型のパッケージ製品が多く、カオナビとはターゲットやサービスのコンセプトが根本的に違うので、あまり気にしていませんが、いずれにしてもアメリカでは大きな実績を持っているので、HRテックサービスの一つとして注視はしています。 高城:今後、やっていきたいことはありますか? 柳橋:僕は医者の不養生は許されないと思っていて、カオナビというサービスで働き方改革やマネジメントの効率を上げると謳っているんだから、自らもそれを実現していかないといけないと考えています。まず、今やろうと考えているのが、給与据え置きのまま1日の勤務時間を段階的に減らすこと。そのためには社員の生産性を上げるための制度や取り組みが必要で、会議を30分制にするとか、マネージャーを飛ばして役員に直接報告していいとか、いろんなやり方を変えていきたいと思っています。 高城:カオナビ自身も変革の時を迎えているわけですね。 柳橋:北欧に目を向けると、そういう会社がざらにあるんですよ。日本は一人あたりのGDPが世界20位以下なんですが、上位が北欧なんです。生産性が高くて、15時とかに帰るのに年収1千万とか普通にもらっている。一番効率的で一番成果が上がる仕事のやり方をしているんです。 高城:そうした世界を目指すのに日本の人事もHRテック、そしてカオナビで改革していかなければいけませんね。本日はありがとうございました! 柳橋:こちらこそ、おいしいワインとお料理をありがとうございました。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お出ししたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ポットペラのカルパッチョ 巨大マッシュルームのポットペラをカルパッチョでいただく一皿。ポットペラの独特の食感が生ハムの旨味、オリーブオイルの香りと合わさり、魅惑的な味わいを生み出しています。ポットペラはこの他に炭火焼き、フリットなどの調理法を選ぶこともできます。 ブロック・セラーズ スパークリング シュナン・ブナン ペティアン・ナチュレルという手法で作られたシュナン・ブラン100%の微発泡ワイン。フルーティーかつ爽やかな苦味がアクセントになっており、バランス良好。ビール感覚でするすると飲めてしまいます。あらゆる料理と相性が良さそうですが、今回のポットペラとはまた格別なマッチングを見せてくれます。 真ダコのマリネ「セビチェ」 真ダコをマリネしてパプリカパウダーをアクセントに加えた前菜。ぷりっとして柔らかな真ダコは食感、味わい共に絶品。添えられた野菜が彩り鮮やかで見た目にも楽しい一皿。ほのかに香るパプリカパウダーの甘酸っぱさと苦味が全体を引き締めています。 ビリキーノ・ワインズ マルヴァジア・ビアンカ2014 南イタリアの品種、マルヴァジア・ビアンカ100%で作られた白ワイン。マスカット、白桃、シトラスなどのアロマティックな香りからは、どこか東洋的な雰囲気も感じます。さっぱりとしたミネラル感もあり、スパイスを使った海の幸との相性は抜群でしょう。 ケイジャンスパイスチキン 炭火でじっくり揚げたケイジャンスパイスチキンはボリュームたっぷりで柔らかかつジューシー。スパイス検定1級のシェフがパプリカパウダー、チリパウダー、クミンパウダー、オレガノなどを配合して作った特製ケイジャンスパイスが使われています。 スクライブ シャルドネ スキン・ファーメンテッド カーネロス 白ぶどうを赤ワインの製法で作るオレンジワイン。基本的には白ワインに分類されますが、わずかに感じられるタンニンが味わいをより深く複雑なものにしています。このタンニンと豊かできれいな酸が、ケイジャンスパイスチキンの刺激的なスパイスとマリアージュします。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。カオナビの柳橋社長はまさに日本におけるHRテックの盛り上がりを肌で感じてきた人物。この日はユニークなTシャツでご出演いただき、HRテックプレーヤーとしての本音をずばりと語っていただきました。 白ワインがお好きということで、今回のワインはスパークリング、白、オレンジワインと、すべて白ワインのラインで統一。白ワインというオーダーに対してこれだけの種類をサッとそろえてくださるあじる亭カリフォルニアのすごさを垣間見ましたね……! お料理はこちらも夏らしいスパイシーなものが中心。特にケイジャンスパイスチキンは、ほどよいスパイスの辛さがオレンジワインの酸と、クリスピーで香ばしいお肉が微かに感じられるタンニンとすばらしくマッチ! 自分ではまず実現できないマリアージュです。これぞプロの技ですね。