人事施策 2024年1月09日 新規事業を生み出すフレームワーク~人事と経営の視点から 新規事業のプランを考えて、事業化する。新たな成長機会を創出したいと考えない企業はありません。ただ、その意欲がどれだけ高いか? 既存事業が順調に成長していると、危機感が薄れて先送りにしてしまう場合もあるでしょう。ゆえに、本気で新規事業に取り組もうと考える企業は既存事業の閉塞感によるものが多いかもしれません。今回は、そうした新規事業の創出を人事と経営の視点から考えてみたいと思います。 リスクマネジメント 人事戦略 人材開発 生産性向上
人事施策 2023年11月09日 キャリア自律が叫ばれる時代の到来をどのように捉えればいいのか? キャリア自律(Career Self-Reliance)とは、主体的に、価値観を理解し、仕事の意味を見出し、キャリア開発の目標と計画を描き、現在や将来の社会のニーズや変化を捉え、主体的に学び続け、キャリア開発することです。 近年、企業が「キャリア自律」という言葉をつかい、重要課題であるキャリア開発に取り組んでいくことを宣言するようになりました。例えば、日清食品ホールディングス社は公募ポストの年齢制限を撤廃して、50歳以上のシニア社員でも、新たに管理職へ挑戦できるようにしました。また、厚生労働省が自律的なキャリア形成支援の模範となる取り組みを行っている企業に対して表彰する『グッドキャリア企業アワード』の事例をみていくと、キャリア自律の支援が加速してきていることが分かります。 こうした動きは大きな転換の表れだと感じます。なぜなら、これまで企業は、「社内でキャリア自律を掲げることはリスクがある」と考えてきたからです。自分のキャリアについてあまり考えて来なかった人に考える機会を促せば、結果として離職する社員が増えてしまうかもしれません。いわばパンドラの箱だと考えていたのです。 実際、とある企業の人事部長も「組織に対する帰属意識が薄れ、離職者が増えるのではないか?」と考えて、キャリア自律を叫ぶことを長らく控えてきたと話してくれました。その企業は長年、新卒採用を中心に人材確保を行い、キャリアという概念を意識させず、会社や組織に忠誠心の高い人材を重宝してきました。「このシステムこそが成功体験なので壊したくない」、「リスクになることは排除したい」このように捉えてのことなのでしょう。しかし、そのような「キャリア自律=リスク」の認識はいまだ払拭されていないにも関わらず、企業主導でキャリア自律を促す動きが出てきました。それはなぜでしょうか?また、そのような時代の変化に対して、社員はどのように向き合えばいいのでしょうか? リスクマネジメント 人事戦略 人材開発 生産性向上
人事施策 2023年1月17日 採用マーケティングを「はじめる」3つのポイント-ターゲットの選定・訴求内容・手法選定- 採用マーケティングとは採用活動にマーケティングの手法を取り入れることを指します。 労働人口の減少により人材獲得競争が激化の一途をたどっているなか、人材のニーズを把握し効果的なアプローチを仕掛ける手法として注目されています。 本記事では、採用マーケティングを本格的に導入する際の3つのポイントを紹介します。 [目次] 採用マーケティングが必要とされる背景 採用マーケティング導入の3つのポイント 採用マーケティングがもたらす効果 まとめ 採用マーケティングが必要とされる背景 近年は、VUCA(変動が激しく、予測しづらく、複雑で、あいまいの意)の時代と言われています。異業種間の競争も珍しくない熾烈な市場で勝ち抜いていくためには、優秀な人材を採用していくことが必要です。一方で、国内は少子化で若手人材の採用やリテンションはますます難しくなっています。 今後の採用活動では就職、転職を意識している人材だけではなく「潜在層」もターゲットにした戦略=採用マーケティングが重要になります。くしくも2021年から日本経済団体連合会(経団連)の採用ルールが廃止され、長期間かけて採用活動を行えるようになりました。 中長期的な戦略をもとにインターンシップ、リファラル採用、デジタルマーケティングなどの施策を組み合わせて、マスだけではなく個々の興味・活動にあわせた情報提供をすることで採用力を向上させることができます。 採用マーケティングで自社の魅力を打ち出すと、求職者だけでなく既存社員にも訴求しますので、エンゲージメントの向上や離職防止効果も期待できます。 採用マーケティング導入の3つのポイント 採用マーケティングを導入する際のポイントを解説します。 ・ターゲット・ペルソナの選定 「潜在層」を重視したアプローチに変えていくことが採用マーケティングの肝となります。「潜在層」「顕在層」「候補者」ごとのペルソナ(人材像の詳細なイメージ)設計を、できる限り明確にすることがまず第一歩です。 ・訴求ポイントの明確化 (自社分析) 採用マーケティングの軸はあくまで企業の魅力です。SWOT分析や3C分析などのフレームワークを活用し、想いではなくデータをもとに強みを洗い出します。また、人材コンサルタントなど外部の人にも協力してもらい客観的な自社の魅力(訴求ポイント)を明確にすることが重要です。 ・マーケティング手法の選定 予算とターゲット・ペルソナに合わせて最適な手法を選びます。 【例】 (1)Web広告(リスティング広告、SNS広告、純広告、動画広告、DSP広告) (2)自社のWebサイト、SNS、動画 (3)コンテンツマーケティング (4)マーケティングオートメーション(ITツール) なお、SNSやコンテンツマーケティング(オウンドメディア運営)は効果が出るまで一定期間かかります。それぞれの施策の時間軸も把握して計画を立てましょう。 採用マーケティングがもたらす効果 採用マーケティング導入のメリットを紹介します。 ・費用対効果 コンテンツマーケティング、SNS活用は社内に適任者がいればコストがあまりかかりません。仮にコンテンツ作成を外注しても、広告費用はかからず半永久的にWeb上に掲載可能です。軌道にのれば既存求人メディア、サービスよりコストパフォーマンスに優れています。 ・マッチング率向上・社員のエンゲージメント向上 Web上ではコンテンツが優れているかどうかで評価されます。自社の世界観、カルチャー、社員たちの魅力を優れたコンテンツとして発信できれば、企業規模に関係なく自社とマッチする人材に訴求できるでしょう。社員が自社の魅力を再発見し、エンゲージメント向上につながることも期待できます。 まとめ 近年のマーケティング領域では、ITツールの活用やデジタル社会の消費者行動にそった施策をとることで成果をあげる企業が増えています。採用市場も2020年を機に大きくデジタルシフトしました。リアルだけでなくオンラインの採用マーケティングに力を入れることは、直近はもちろん2~3年後の採用活動の成功にもつながるでしょう。 3C分析 SWOT分析 採用マーケティング
人事施策 2022年11月21日 コロナ禍3年目、働き方の「ニューノーマル」の今 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態宣言の発令を機に、多くの企業が「ニューノーマル」を旗印に、一斉にリモートワークを導入しました。その後3年目も終盤となり、リモートワークは一つの選択肢として定着し、まさに新しい「ノーマル」となりました。 今回は、多くの企業が推進してきた新たな働き方について、いくつかの取組み事例を紹介します。 [目次] 働き方のニューノーマル、その後 ニューノーマルな働き方への取組み事例 まとめ 働き方のニューノーマル、その後 働き方の「ニューノーマル」とは、主にコロナ禍を契機に、新しいビジネススタイル、職場の在り方などを指して生まれた言葉です。リモートワークのような社員の働く環境の整備だけでなく、顧客との商談、ビジネス上の手続きの在り方、採用の手法、オフィスのレイアウト、各種イベントのデジタル化なども含まれます。 背景には、当面はまだコロナウイルス対策を継続しなければならないという理由がまずあります。さらに、多くの企業がリモートワークを経験したことで、「リモートワークでも問題ない」「リモートワークのほうがむしろ合理的」など、場所や時間にとらわれない働き方が生産性向上につながると認識してきたことも影響しているでしょう。 もちろん、リモートワークでは対応できない業務もあれば、リモートワークで生産性が落ちたという意見もあります。リモートワークに限らず、働き方の多様性に目を向けることで、従来の形にとらわれない、働き方の「ニューノーマル」を実現することが求められてきたのです。単に社員にリモートワークを許可するだけではなく、企業が自社の価値を改めて考え、「働く環境の整備」「IT環境の整備」「業務体制と人事評価」「コミュニケーションの活性化」「健康サポート」などを包括的に行うことが必要になります。 ニューノーマルな働き方への取組み事例 ニューノーマルな働き方では日立製作所や富士通の取組みが注目されましたが、他にも次々と新しい動きが登場しました。 (1)パソナグループ 2020年9月、人材サービス業界大手パソナグループは、本社を東京から兵庫県の淡路島に移転すると発表しました。2024年5月までに経営企画、人事、財務経理などを担う1200人を島内に配置予定としており、2021年末時点で既に希望者350人が淡路勤務に。淡路を拠点とした地方創生事業を打ち立て、「地方創生テレワーク」を推進するほか、内閣府からの受託事業として「地方創生テレワークアワード」の運営も行うなど、テレワークを単なる出勤の代替としてではなく、新たな価値の提案としてうまく事業につなげています。地方への移転はほかにも、災害に対するリスクヘッジ、オフィス費用の低減、従業員が通勤ラッシュから解放されて自然豊かな環境で働けることなどを目的としている、と同社は述べています。 (2)サイボウズ株式会社 IT企業のサイボウズ株式会社はもともと2010年からリモートワークを推進している企業でしたが、コロナ禍によって全社的なリモートワークを経験した結果、従来の体制では情報格差が大きかったことや孤独感にどう対処するかなどの課題を隠すことなくオープンな場で発信してきました。現在では、「テレワークからハイブリッドワークへ」を掲げ、在宅勤務をはじめとしたテレワークと、出社してオフィスで働くオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を提唱しています。 (3)株式会社minitts コロナ禍によって多大な打撃を被った飲食業界。国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」を運営する株式会社minittsも例外ではなかったものの、早期に2店舗を閉店するという見切りの早さや給付金等の支援策をフル活用することで経営を維持しました。事業を大きくすることよりも、従業員と顧客の満足度に重きをおくため、メニューを1日100食限定と、あえて上限を設ける形態で運営。基本的に昼のみの営業で売り切れ、従業員は残業ゼロ。有給休暇完全取得を実現しています。「家族で晩御飯を一緒に食べられる働き方」を目指すという同社では、多様な人材が正社員として活躍しており業績も順調です。 (4)田辺三菱製薬株式会社 6年連続「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されている田辺三菱製薬株式会社は、2020年の在宅勤務時に行った従業員意識調査の結果をもとに、特に要望の多かった以下7項目を「働き方カエル宣言」と名づけ、新しい生活様式における働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。 1.感染予防策の徹底(オフィス環境、通勤、勤務形態) 2.会議の見直し 3.脱ハンコ 4.ペーパーワークの大削減 5.拠点のサテライトオフィス化 6.テレワーク環境の整備 7.毎週金曜日のFriday Survey継続(新しい働き方に対する従業員意識調査) その他、LGBTや女性活躍に対する積極的な取り組みや、事実婚・同性パートナーを配偶者と同様の扱いに変更するなど、従業員がより良く働ける環境の構築を積極的に推進しています。 以上、4社それぞれ独自性はあるものの、合理的思考に基づいた判断が企業にも従業員にもメリットをもたらしている点は共通していると言えるでしょう。 まとめ 新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中でビジネスのあらゆる面で変化が急速に進みました。さらに、今後は新しい環境にそったニューノーマルな働き方を設計していく必要に迫られています。現在はいわば大きな過渡期に直面しており社内外が混乱しやすい状況です。従業員の健康と働きやすさ、企業の生産性向上を実現できるニューノーマルを社内で検討することはとても重要です。 withコロナ テレワーク ニューノーマル 働き方改革 多様性
人事施策 2022年10月17日 自律型組織を考える(2)「ホラクラシー組織」 ホラクラシー(holacracy)とは役員、部長、課長などの階級や役職がなく、上司・部下といった上下関係もない組織体制のことを指します。従来のヒエラルキー型組織と相反する新しい経営手法として注目されており、生産性の向上やストレスの軽減ほかさまざまなメリットが指摘されています。本記事では、ホラクラシー組織が登場してきた背景、具体的なメリット・デメリットを解説します。 [目次] ホラクラシー組織の特徴とは? ホラクラシー組織が導入された背景 ホラクラシー組織のメリット ホラクラシー組織のデメリット・注意点 まとめ ホラクラシー組織の特徴とは? ホラクラシー組織とは、日本に従来から根づいている「中央集権型・階層型」のヒエラルキー組織に対して、「分散型・非階層型の組織」とも呼ばれます。組織の決定権は一部の上級管理職ではなく、社員が所属するグループに委ねられます。 社員全員に「役割」が与えられグループ内で個々が意思決定を行います。経営に対しても社員全員が発言権をもち、評価や査定も社員全員で実施するケースが多く見られます。 ホラクラシー組織が導入された背景 ホラクラシーは、2007年に米国のIT企業創業者、ブライアン・ロバートソン氏によって提唱されました。背景には世界のグローバル化、デジタル化があります。一部の管理職のみが重要情報を持ち意志決定するヒエラルキー型組織では、市場環境の変化の速さに対応しきれない課題があり、その解決のために創出されたと言われています。 ロバートソン氏の執筆した『HOLACRACY(ホラクラシー)』には、ホラクラシー組織は「55分で33議題の処理をも可能にするプロセスである」とあり、非常に効率的であることがうかがえます。 米国のネット通販企業ザッポスをはじめ世界で数百社が導入しているほか、日本でも不動産テックベンダーのダイヤモンドメディア、民泊情報サイトAirbnbなどが導入し注目を浴びています。 ・ホラクラシー組織とティール組織の違い ホラクラシー組織は「ティール組織」とよく混同されます。ティール組織とは「組織に関わるすべての人のために組織がある」という考えに基づき個々のメンバーが自律的に組織の目的に応じて行動する組織形態です。 ティール組織が広義の、ある意味では抽象的な「概念」であるのに対して、ホラクラシー組織は一つの明確な「ビジネスモデル」を提示しているところが違っており、わかりやすく言うとティール組織を構築する形態の一種として、ホラクラシー組織があると言えます。 ・ホラクラシーの解釈の注意点 ホラクラシー組織はしばしば誤解されますが、社員とグループは会社組織というグループに属するため、必ずしも「フラットな組織」ではなく、グループごとにファシリテーターをたてて進行するなど状況に応じて管理体制もつくるため「管理者がいない」ことにもあてはまりません。 上下関係がないかわりに「ホラクラシー憲法」というルールがあり、グループ運営の仕組みや意思決定のプロセスは規定されています。 ホラクラシー組織のメリット ホラクラシー組織のメリットには以下の点があります。 ・生産性・自律性の向上 意思決定スピードが早くなることで生産性向上につながります。また、社員の役割が明確かつ裁量権があるため自律性につながり、また業務に集中しやすいためモチベーションが上がることも期待できます。 ・多様なアイデアの創出 個々の意見が尊重されるため多様な意見が集まり、コミュニケーションも活発になるため新しいアイデアが生まれやすくなります 。 ・ストレス軽減 上下関係がなくなり、また個々やチームの目的や情報がオープンになるため、理不尽な要求・パワハラ・社内政治などが生じづらくなり、社員がリラックスして役割に集中できます。 ホラクラシー組織のデメリット・注意点 デメリットと注意点としては以下が挙げられます。 ・導入・実施コスト ヒエラルキー型組織は長く社会的に浸透しているため、企業にホラクラシーの考え方や意義を浸透させるには相応の時間を要するでしょう。 ・組織管理がしにくい ホラクラシー組織にはグループのリーダーは存在しないため、組織全体を統括してコントロールすることが難しい面があります。 ・リスク管理に注意を要する 個々の社員が意思決定の権限をもつため、何人もの承認を得るプロセスがない代わりに、リスク判断についても個々の裁量に委ねられる部分が大きくなります。また、情報をオープンにする必要があり、社内の誰もが情報にアクセスできるようになるため、機密情報の管理にも、より注意が必要となります。 まとめ ホラクラシー組織は、市場の変化の速さに対応しやすい非常に効率的、機能的な組織形態だと言えるでしょう。ヒエラルキー型組織から急激にホラクラシー組織に転換することは、評価・処遇の問題や心理的契約等の観点からもハードルは高いのですが、自律型組織を目指すうえでは参考にすべき組織モデルだと言えます。 JOB型雇用 ブライアン・ロバートソン ホラクラシー
人事施策 2022年10月03日 自律型組織を考える(1)「ティール組織」 2014年にフレデリック・ラルー氏によって著され、日本では2018年に英治出版から発行された『ティール組織』。当時、各所のビジネス書大賞で入賞し、瞬くまに日本中に知れ渡りました。あれから4年が経過しましたが、今でもティール組織のセミナーが開かれ、多数の人が集っています。 働く人々の価値観やライフスタイルが多様になり、リモートワークなど働き方の選択肢も増える中、自律型組織をどう構築するかは大きなテーマです。本記事では、そのヒントとして「ティール組織」に再注目してみたいと思います。 本記事ではティール組織とは何か? ティール組織を理解するにあたり必要な組織形態5フェーズの知識、ティール組織にまつわる誤解を解説していきます。 [目次] ティール組織とは? ティール組織に至る5つの組織フェーズ 最も優れている組織とは言い切れないティール組織の3つの誤解 まとめ ティール組織とは? ティール組織とは、社長や上司などのリーダーがマイクロマネジメントを行うのではなく、組織のメンバー一人ひとりが組織の社会的使命を理解したうえで、各現場において自律的に動いていく組織を指します。 ティール組織の特徴はパーパス(組織の存在意義)が明確で、セルフマネジメント(自主経営)とホールネス(全体性)を実現しているところにあり、『ティール組織』の著者フレデリック・ラルー氏は、ティール組織をこれまでの組織とは一線を画す組織形態だとしています。 ティール組織に至る5つの組織フェーズ 組織には発達過程があります。ティール組織は原始的な組織からのフェーズを内包しながら進化してきた組織です。 1.Red(レッド)組織 特定の個人の圧倒的な力でマネジメントする原始的な組織形態です。恐怖支配に近く、マフィアなどが相当します。 2.Amber(琥珀)組織 ピラミッド型の階級があり個々のメンバーの役割が決まっている組織です。命令系統はトップダウンであり個人は階級と役割に応じた仕事に徹します。軍隊などがあてはまります。 3.Orange(オレンジ)組織 組織内にヒエラルキーがありながらも個人の実力によって昇進したり、上意下達だけでなくボトムアップな意思伝達も多少は可能な組織です。一般企業の多くがあてはまります。 4.Green(グリーン)組織 ゆるやかな階級はあるものの、メンバーの意見、自主性がかなり尊重される民主的な組織です。一方で何かを決定する際に全員から合意を得るために時間がかかる傾向があります。NPOなどがあてはまります。 5.Teal(青緑)組織 組織に属するメンバーが、まるで一つの生命体の細胞のように自律的かつ調和的に動く組織です。メンバーたちの裁量権は大きく、一人ひとりが組織の意義を理解しているため、現場で迅速な意思決定ができます。 企業事例としては、「ザッポス伝説」という言葉を生んだ米国のアパレル通販サイト運営企業ザッポス社(Zappos.com)、日本ではクラウドサービスを展開するIT企業サイボウズ社などが知られます。また、書籍『ティール組織』にはさまざまな企業規模の事例が紹介されています。 ティール組織の3つの誤解 ティール組織を目指す際に留意すべき点を紹介します。 ティール組織が最も理想とは言えない ティール組織は進化した組織形態ですが、ほかの組織より優れているとは言い切れません。例えば、災害時などの緊急事態は、大人数を迅速に動かせる指示命令系統の明確な組織が適している場合もあります。また、高い自律性を備えた人材と自律的な風土があってはじめて成り立つため、そうでない従業員が多い場合は、混乱を招く恐れもあります。 ティール組織に至る決まった手法はない ティール組織とは形式ではなくパラダイム(概念的な枠組み)、つまり捉え方なので、ティール組織を実現していくプロセスも多様です。決まった手法は存在しません。そのため、まずは概念を理解した後で、具体的な手法を模索する必要があります。 組織の制度改革が先ではない ティール組織はメンバーが高い「自主性」を持たないと成立しません。会社の存在意義が明確であることも必要です。軸になるのは制度ではなくメンバーと会社との「信頼関係」「意識の変容」です。 ティール組織を実現するにはどうすればよいか ティール組織は、すぐに取り入れるべき組織管理手法といったものではなく、あくまで自律型組織のゴールの1つの形です。企業の存在意義やメンバーの自律性に依るマネジメントが機能すれば、組織のレジリエンスやイノベーションにも寄与するでしょう。しかし、会社のマネジメントのあり方をいきなり大きく変えることは現実的ではありません。 まずは、自律性の高いメンバーを集めて、チーム単位でティール組織を構築することから始めると良いでしょう。会社全体としてはオレンジ組織やグリーン組織であっても、プロジェクトチーム等でティール組織を機能させることができれば、自律的な人材にとってはモチベーションにつながりますし、会社としても、周囲への良い影響を期待できるでしょう。自分の会社では難しい、あるいは関係ないとあきらめるのではなく、従業員が「自律的な働き方」を実際に目にし、考えられるようにしていくことが、自律型組織への第一歩になると言えるでしょう。 セルフマネジメント ティール組織 フレデリック・ラルー ホールネス マネジメント
人事施策 2022年3月07日 「ジョブ型雇用」導入事例と運用のポイント [目次] 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント まとめ 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 職務内容を明確に定義して採用を行い、仕事の成果によって評価や処遇を決める「ジョブ型雇用」。 価値観の多様化や、リモートワークへの移行など、ビジネス環境の大きな変化を背景に、ますます注目が集まっています。 今回は、この「ジョブ型雇用」を積極的に導入・推進している企業の事例と、導入のポイントをご紹介します。 ・富士通株式会社の事例 日本と海外で異なる人事制度を運用していた富士通は、2020年に国内1万5,000人の幹部社員について、報酬体系を職責ベースとする『FUJITSU Level』へと切り替えました。2022年キャリア採用、2023年度新卒採用計画においても、ジョブを起点として職種ごとに適した人材の採用をグローバルに展開し、職責や専門性の高さに応じて個別の報酬設定を含む適切な処遇にて迎え入れるとしています。 一般社員についても、労働組合との話し合いを前提に適用を拡大する見込みです。 ・株式会社日立製作所の事例 日立製作所は、現在、全世界で約35万人の連結従業員を抱えており、すでに日本人よりも外国人の比率が上回るグローバル多国籍企業です。2024年度のジョブ型雇用への完全移行を目標に掲げ、国内でも「ジョブディスクリプションの導入・活用の具体化(職務の見える化)およびリスキル教育の強化」を2021年度の重点取り組み事項に挙げ、新卒採用においてもジョブ型インターンシップを導入しました。 ・株式会社資生堂の事例 資生堂の魚谷雅彦社長が「究極の適材適所」と語るジョブ型雇用。すでに課長以上を対象に2014年からジョブ型雇用を導入している資生堂では、対象の管理職社員からも「自分自身のポジションに求められることがよりクリアになっている」と前向きな評価が得られています。 魚谷社長は、従来の日本型雇用は現在の「変化する時代」に合わなくなってきていると述べ、ポストに応じて役割と専門性を明確にすることが多様な人材の公平な人事につながると考えています。 2021年1月からは、総合職の社員3,900人を対象にジョブ型雇用を拡大しました。 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント ジョブ型雇用の導入にあたって重要なポイントは、「ジョブスクリプションの記載内容」と「ジョブ型雇用契約についての従業員への説明」が挙げられます。 日立製作所の事例にあるようなジョブディスクリプションの作成にあたって、企業はこれまでよりも、職種やポジションごとの「職務内容」「達成目標」「責任と権限範囲」を明確にする必要があります。 ジョブ型雇用の導入前はもちろん導入後も、さまざまな局面で従業員に説明をする義務があります。ジョブディスクリプションに記載のない業務を依頼する場合は従業員が納得できる理由を説明しなければなりません。また、ジョブディスクリプションで定義している職務とは異なる職務への配置換えを行うことが簡単にはできないこともあるため、該当する職務の業務量が少なくなった場合や職務自体がなくなった場合を想定して、予めルールを明確にしておく必要があります。 ジョブ型雇用はドライな印象が強いものの、日本において多くの外資系企業がジョブ型雇用のもと優秀な人材を惹きつけ、かつ従業員のエンゲージメント向上も実現しています。重要なのは、雇用契約やジョブディスクリプションの明瞭さと事前の説明の徹底にあると言えるでしょう。 まとめ いわゆる日本型雇用とも呼ばれるメンバーシップ型雇用は、人材を自社に最適化できる長所がありましたが、ジョブローテーションを繰り返すため従業員に専門性がつきにくい短所がありました。また、待遇が横並びになりやすいため、優秀な人材の獲得競争においても弱い立場に置かれることが多くなります。 ジョブ型雇用は、企業側は優秀な人材を市場価値に応じた報酬で採用でき、従業員も専門性を高めていくことが可能な、雇用が流動化している時代にマッチしている雇用形態だと言えます。 ジョブ型雇用の導入を検討する企業は、他社事例をしっかりと確認して詳細なジョブディスクリプションを作成していくことが必要です。あわせて従業員に対して、人事の方針だけでなく、マクロ環境の変化についても情報発信していくことが望ましいでしょう。 ジョブディスクリプション ジョブ型雇用 企業事例 日立製作所 資生堂
人事施策 2022年2月21日 今さら聞けない「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」 世界経済に暗い影を落とし続けている新型コロナウイルス。一方、アフターコロナを見据えた取り組みとして、これまでの働き方を見直す企業の動きが強まっています。そうしたなかで注目を集めているのが従来の日本型雇用と言われる「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への転換です。今回は「メンバーシップ雇用」と「ジョブ型雇用」についておさらいしながら、「ジョブ型雇用」が注目される理由について解説します。 [目次] 「メンバーシップ型雇用」の特徴とは 「ジョブ型雇用」の特徴とは ジョブ型雇用が注目される理由 まとめ 「メンバーシップ型雇用」の特徴とは メンバーシップ型の雇用とは「人」に仕事を割り当てる雇用形態です。日本型雇用とも呼ばれているとおり日本企業で広く浸透しています。 新卒採用の際に特に顕著ですが、メンバーシップ型雇用では採用段階で業務内容や勤務地などが限定されません。「人」あっての雇用契約なので採用基準も「どのくらい成長しそうか」「長く貢献してくれそうか」が重視されます。会社方針による転勤や配置転換に従業員は基本的に従うことになります。 企業にとっては長期的に人材の育成・定着に取り組みやすいメリットがあります。従業員にとっても新型コロナウイルスのような予期せぬ環境変化で事業が縮小しても、雇用が維持されやすいメリットがあります。 一方、メンバーシップ型雇用は生産性の向上や人件費の抑制を難しくする面があります。育成や待遇が横並びになりやすいため、たとえば評価制度や人件費にメリハリをつけて最適化したい、といった場合に制度設計の難易度が上がります。 しかし、厳しい市場競争にさらされる昨今の企業は常に生産性向上や人件費の抑制を求められます。また、従業員の価値観も変化し、不本意な人事ローテーションや年功ベース賃金に疑問を感じた人材が、自分のキャリアを最大限に生かせ、かつ正当に評価してくれる人事制度のある企業に転職するケースも増えています。 このような背景もあり、メンバーシップ型雇用は転換点を迎えていると言われ、かわりに注目を浴びているのが「ジョブ型雇用」です。 「ジョブ型雇用」の特徴とは ジョブ型雇用とは「仕事」に人を割り当てる雇用形態です。採用時は自社が求める成果と必要な職務遂行能力を明確にします。企業と求職者は職務・勤務地・労働時間等に合意して雇用契約を結びます。 企業にとっては獲得した人材に高い専門性と生産性を期待できるメリットがあります。成果ベースでの評価もしやすくテレワークとの相性が良いため、コロナ禍で特に注目を集めることになりました。 従業員にとっては、自分の得意な分野に集中でき、専門スキルを高めやすいというメリットがあります。また、若者や女性なども属性で制限されることなく早期にキャリアを積み上げられる傾向にあり、ダイバーシティが進むとも言われています。 ジョブ型雇用が注目される理由 ジョブ型雇用については内閣府や日本経済団体連合会(以下、経団連)が言及しています。 経団連は、2022年1月18日に発表した『2022年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)』で、「ジョブ型」について「導入・活用の検討が必要」と明記しました。 報告では、各企業が自社の事業戦略や企業風土に照らして、組織としての生産性を高めるべく、メンバーシップ型を活かしながらジョブ型を最適に組み合わせた、「自社型」雇用システムをつくり上げていくことが大切だとしています。 過去に記者会見で今後の雇用について「顧客と共に考え付加価値を提供するビジネスモデルへの転換に対応できる人材は日本型雇用システムで育ちにくく、ジョブ型雇用などと組み合わせていくことになるであろう」と発言しています。 すでに資生堂、日立製作所、富士通、KDDI等、ジョブ型雇用の導入を図っている企業も現れています。一方で、多くの日本企業は転換に慎重です。 ダイキン工業の井上礼之会長は、2020年8月の朝日新聞紙上において「遅咲きの人もいる」と、昨今の働き方の変化に懸念を示しています。日本企業の能力開発費が減少傾向であることも懸念点の一つとして挙げられます。 失業率の低さや新卒の育成など従来の日本型雇用の良さも見直される中でのジョブ型の流れですから、当面はハイブリッド型の雇用形態を模索する動きが増えると考えられます。デメリットを抑えるためには、人材育成とセットで考えていく必要もあるでしょう。 まとめ 企業にとっては長期的な人材育成、従業員にとっては雇用の安定というメリットがあるメンバーシップ型雇用は、これまでの日本企業の強みを生み出す源泉だったと言えます。しかし、2000年代以降のグローバル化、IT化による産業の変化に対応し組織の競争力を上げるために、専門性や生産性を高めやすい方法としてジョブ型雇用が検討され始めました。 ジョブ型雇用は、変化が激しく雇用が流動化した環境下において、企業と個人の双方にメリットをもたらすこともできると期待されています。メンバーシップ型雇用が機能しづらくなっている現在、企業はジョブ型雇用のメリットをうまく取り入れて、時代に合わせて雇用のあり方を最適化する必要があるでしょう。 JOB型雇用 ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用 日本型雇用
人事施策 2021年11月01日 AIの活用でダイバーシティ採用を推進 昨今、日本でもダイバーシティ採用の必要性が唱えられています。経済産業省もダイバーシティ採用の推進は多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高めるため、企業の競争力向上や持続的成長に不可欠となっています。 しかし、日本の企業が急に意識を変えることはそう簡単ではありません。採用活動においても無意識にこれまでのバイアスや慣例に影響される可能性はあるでしょう。本記事ではAIを活用してダイバーシティ採用を推進する例を紹介します。 [目次] ダイバーシティ採用推進の必要性 日本でダイバーシティ採用の推進が必要とされる背景 ダイバーシティ採用の推進にはAI活用が有効 ダイバーシティ採用にAIを活かした海外事例 まとめ ダイバーシティ採用推進の必要性 ダイバーシティは「多様性」という意味です。大きく 2つの意味があり、一つは表面的なダイバーシティ(国籍、民族、性別、年齢、障がい等)、もう一つが内面的なダイバーシティ(思想、価値観、所属するコミュニティ等)です。人事用語では「多様な人材を採用・活用する」といった文脈で使われます。 ダイバーシティはもともと米国で生まれた概念です。多様な人材を採用し、さまざまな価値観・発想をビジネスに活かしてもらうことが、社会にも企業にもプラスという思想です。 企業のメリット 国籍、民族を問わず能力の高い人材に活躍してもらえる 新しいアイデア・イノベーションが生まれやすい オープンな社風になり従業員が定着しやすくなる 日本でダイバーシティ採用の推進が必要とされる背景 日本でも以前からダイバーシティ採用推進は必要とされていました。 主な理由は以下の通りです。 (1)多様な人材を採用する企業の社会的責任 (2)労働人口の減少 (3)女性管理職が少ないなど女性人材の活用が進んでいない (4)労働観の多様化 (5)グローバル化による海外人材の来日 (6)多様化する市場ニーズへの対応が必要 特に(2)の労働人口減少の問題が影響しています。少子高齢化は年々進み若者が減っていくのは変えることができない現実です。そのため女性や高齢者、障がい者、外国人などの人材を採用し活かしていくことが求められています。 ダイバーシティ採用の推進にはAI活用が有効 海外では、ダイバーシティ採用の推進にAIを活用する企業が増えています。日本でもAIはチャットボット、スケジュール調整ほか採用プロセスの自動化など業務効率化に活用されてきましたが、海外ではそれにとどまらず、採用そのもの(面接・選考)にもAIを活用し始めています。 人事担当者といえども人間は何かしらのバイアスを持っていることが多いため、多様な人材を公正に採用するためには、バイアスのないAIを作り、採用活動に活用することが公正な採用に役立つという考え方に基づいています。 もちろん、AIがバイアスを持つこともありますが、AIのバイアスは発見されたら修正が可能なので人間のバイアスを減らすことよりは容易です。 ダイバーシティ採用にAIを活かした海外事例 ダイバーシティ 採用にAIを活かす事例に、ThisWay Global社の『Ai4JOBS』、TalVista社の『TalVista』があります。 Ai4JOBSは「バイアスを持たないトレーニングをされたAI」が、スキルはありながらも担当者のバイアスでチャンスを逸した人材を発見します。Ai4JOBSはHR Technology Conference & Expo 2019においてギグエコノミー賞を受賞しています。 「TalVista」は求人情報の最適化、ブラインド・レジュメ/CVレビュー、ストラクチャードインタビューの3機能で多様な人材を集め、バイアスに影響されず適性や入社後の活躍を指標に選考する支援をします。 まとめ グローバル化による厳しい競争に企業が勝ちぬくためには多様な人材が必要であり、そのためには多様な人材の能力を、的確に判断して採用する力が必要です。 とはいえ、それまでとは異なるさまざまな価値観・バックグラウンドを持つ人材の能力や活躍可能性を見抜くのは指標が難しく、バイアスに影響される可能性も少なからず出てくるでしょう。バイアスを持たないAIを選考に活かすことは、ダイバーシティ採用の推進に有効です。 AI活用 ダイバーシティ 多様性
人事施策 2021年9月17日 ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォームで 学び続ける文化の醸成~日本アイ・ビー・エムの例~ 近年、ビジネス環境の変化が加速しており、職場での学習の在り方にも変化が求められています。グローバルでは、これまで主流だったLMS(ラーニング・マネージメント・システム)では効果的な学習は難しいという見方が広まり、代わってLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)が注目されています。 本記事ではLMS、LXPとは何か? また、LXPを導入した日本アイ・ビー・エム社の実例を紹介します。 [目次] LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは 「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム 「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速 まとめ LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは LMSとは、eラーニングを効果的に進めるための学習管理システムのことであり、「受講者や教材の管理」「学習進捗の管理」が容易になるメリットがあります。 LXPとは、受講者の学習ニーズを自動的に分析し個々のニーズに合った学習リソースを膨大な情報から検索、推奨できる学習システムであり、受講者の自律的な学習を促すのに有効なプラットフォームです。。 「時代はLMSからLXPへ」という主張もありますが、実はそれぞれ長所があります。LMSは社内全体で足並みのそろった学習を行い履歴を残したい場合に有用ですし、LXPは各従業員の自律学習のサポート、社員同士が学びあう文化の醸成に効果的です。目的に合わせて使い分けていくことが大切です。 「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム ここからは実際にLXPを導入した日本アイ・ビー・エムの例を紹介します。 もともとIBMは、創始者のトーマス・ワトソン・シニア氏の「教育に飽和点はない」という言葉に象徴されるように、社内に学び続ける文化を育ててきた企業です。2013年には、当時のCEOジニー・ロメッティ氏が「THINK40」を提唱し、社員が年間最低でも40時間をスキル開発に充てることを薦めるなど、経営陣が社員のスキルアップや社員への学習機会の提供に強くコミットしています。 優秀な人材が常に学び続けるIBMでは社員の特許取得件数も非常に多く、米国特許取得企業ランキングでも28年連続第1位。創業以来6名のノーベル賞受賞者も輩出しています。 「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス IBMでは2016年にIBM Watsonの機能を用いたLXP「Your Learning」を導入しました。Your Learningとは一人ひとりにパーソナライズされた学習の推奨ができ、場所を問わず楽しみながら学べる体験重視型のプラットフォームです。SNS機能があり学ぶ人同士が情報共有や評価しあえるところも特徴です。 導入後もデモを通して社員に活用メリットを伝え、意見を吸い上げて改良を重ねた結果、2019年には世界中の社員の約99%が四半期に1回は活用するようになりました。特に日本アイ・ビー・エム社員は活用率・学習時間ともトップクラスであり、2019年の平均学習時間は年間100時間にも達しています。 コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速 日本アイ・ビー・エムでは2020年のコロナ禍で在宅勤務となる人が増え、Your Learningを使ったオンライン学習がさらに加速したこともあり、対面で行っていた研修のほとんどをオンライン化し自宅から学べるように再設計しています。 新入社員研修もすべてオンラインで実施した結果、デジタルネイティブ世代の新入社員はデジタルツールを使いこなして研修は順調に進み、2020年上半期の学習完了数は前年同期と比較し63%増、平均学習時間も30%増加しました。 こうした取り組みが評価され日本アイ・ビー・エムは2020年9月に「HRテクノロジー大賞(後援:経済産業省、他 主催:ProFuture株式会社)」を受賞しました。 まとめ これまでのe-ラーニングは多様な学びの機会を社員に提供でき、学習進捗管理もスムーズなLMSが主流でしたが、近年は一人ひとりの社員のニーズ・関心にそった自律的な学習を支援できるLXPが注目されています。 学びは、継続こそが重要であり難しい課題です。Your Learningを活用して社員の学びを加速させた日本アイ・ビー・エムの事例は、テレワークを導入していく企業にとって示唆に富んでいると言えるでしょう。 LMS LXP ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム ラーニング・マネージメント・システム