人事施策 2020年7月15日 テレワーク(リモートワーク)でのコミュニケーションの注意点、対策のポイント 2020年に発生した新型コロナウイルスの影響により、テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)の導入が急速に進んでいます。一方で、様々な課題も浮き彫りになりつつあります。今回はテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)でのコミュニケーション上の課題、注意点、対応策を紹介します。 [目次] 急ごしらえなテレワークで浮き彫りになる課題 リモート環境下でのコミュニケーションの注意点 リモート業務でのコミュニケーションのポイント まとめ 急ごしらえなテレワークで浮き彫りになる課題 新型コロナウイルスの感染拡大以前の2019年に総務省が行った調査によると、テレワークは順調に普及していると言い難い状況でした。導入率は従業員100人以上299人以下の企業で14.5%、2000人以上の企業で46.6%であり、チャットやWeb会議システム導入企業は2割未満でした。 ところが、新型コロナウイルス感染拡大後の2020年4月、パーソル総合研究所が行った調査では正社員のテレワーク実施率は全国平均で27.9%、東京都の調査では都内企業のテレワーク導入率が62.7%に跳ね上がります。 多くの企業が迅速に対応したことがうかがえますが、一方で検討する時間があまりないまま導入したテレワーク環境下で様々な課題が表面化しました。特に懸念されているのがコミュニケーションエラーです。 リモート環境下でのコミュニケーションの注意点 民間企業が実施した複数の調査において、テレワークの課題のNo.1に「コミュニケーションの難しさ」が挙げられています。 ・コミュニケーションの量の低下 テレワークでは自席での上司や同僚との会話、休憩室や廊下などでの他部署の社員とのやりとりなどがなくなります。オフィスにいるだけで受動的に入ってきた情報が減少するため、意識的にコミュニケーションを図らないとコミュニケーションの量が低下します。 ・コミュニケーションの質の低下 リモート業務では文章でのやりとりが中心になります。これまでのように笑顔、目線、仕草で補完できていた情報がなくなるため、言葉が冷たく受け止められたり、曖昧な表現が誤解を生んだりなどコミュニケーションエラーが起きがちです。 リモート業務でのコミュニケーションのポイント リモート業務でのコミュニケーションを円滑にするポイントを紹介します。 ・ちょっとした会話をチャットで行う 対面で何気なくできていた気軽な質問、ちょっとした細かいやりとりをチャット上で行うことができます。チャットに「雑談ルーム」を設ける企業も増えています。ふと思いついたアイデア、素朴な疑問を共有することで業務が進み生産性が向上するのはリアルもリモートも同じです。 ・丁寧な表現をする メールやチャットでは曖昧な表現をできるだけ控えることが基本です。主語を明確にし、「あれ、これ」ではなくできるだけ固有名詞を使います。文章はひらがなを多めにして2~3行で改行するなど丁寧で読みやすい表現を意識しましょう。 「ありがとう!」「お疲れ様!」「了解しました!」といった一文や絵文字などで速やかにレスポンスすることも大切です。リモートワークではレスポンスがないと発信者が不安になったり無視された感覚になったりしやすいため注意しましょう。 ・Web会議では画面越しの印象に気を配る Web会議のときに相手の顔を見て話すと画面越しでは下を向いているように映ります。発言は伝えたい相手の名前を挙げながら、カメラ目線で行うことがポイントです。声の高さもワントーン上げて、できるだけ表情を豊かにするように心がけると印象がよくなります。 まとめ テレワークでのコミュニケーションは細やかな気配りが必要です。オンライン朝礼、チャットでの雑談、就業時の「蛍の光」などいろいろな手法が試みられていますが、各社まだ経験値が浅い状況です。社内カルチャーやITリテラシー水準も踏まえて、自社でルールやマナーを決めていきましょう。 コミュニケーション テレワーク リモートワーク 新型コロナウイルス
人事施策 2020年7月08日 ダイレクトリクルーティングのコツは手段の使い分けにあり 近年は採用媒体や人材紹介会社などに頼らず、企業が自ら人財を探し出し、接点を作り、獲得していく『ダイレクトリクルーティング』を行う企業が増えています。「攻めの採用」と言われるこの手法の特徴や導入時のコツについて解説します。 [目次] ダイレクトリクルーティングの特徴 ダイレクトリクルーティングのコツは手段の「使い分け」 まとめ ダイレクトリクルーティングの特徴 ダイレクトリクルーティングは従来型の採用手法と比べてどのような違いや特徴があるのでしょうか? まず、従来の採用手法では求職者の応募窓口が求人媒体企業や人材紹介会社などの外部企業です。企業は応募がないかぎり採用活動を前に進められず、「待ち続ける」ことになります。 一方、ダイレクトリクルーティングでは、企業が求める人財を自ら発掘して、ピンポイントかつダイレクトに接触を図ります。接点を持つ場も転職市場に限定されません。様々な場で求める人財を見つけだし、転職に関心のない段階であっても積極的にコンタクトするなど能動的なところが特徴です。 ただし、ダイレクトリクルーティングでは企業と個人とのコミュニケーションが「関係性の構築」から始まるため、採用プロセスが長期化することを覚悟して「ほしい人財」と接触を図る必要があります。採用担当者の業務負荷も高くなりますし、担当者のスキル、力量が問われる手法です。 ダイレクトリクルーティングのコツは手段の「使い分け」 ダイレクトリクルーティングには様々な手段があります。求める人材の層や採用担当者の人数、予算、社内体制よって適した手段を選ぶのがコツです。ここでは5種類の手段を紹介します。 手段01:オウンメディアを通した採用 自社のオウンドメディアで採用母集団の形成を図る手段です。発信する内容が求人情報に限定されないため転職を意識してもらうまで時間がかかるものの、潜在転職者層にもリーチできる手法です。オウンドメディア運営部門との協業体制の構築が必要です。 手段02:SNSの活用 Twitter、FacebookなどのSNSを通して採用する手段です。経営者、人事部門が発信者なら直接求人告知をしても自然ですし、一般社員にSNS上でオウンドメディアや公式サイトの採用頁を紹介してもらってもよいでしょう。SNS上での情報をもとに「このような企業、このような人たちと働きたい」思う層からの応募が期待できます。 手段03:自社イベントの開催 自社で主催するイベントの参加者にアプローチする手段です。イベントの内容や形式によっては優秀な潜在転職者層とのコミュニケーションをとることができます。長期的な採用母集団の形成が可能ですし、求める人財をスカウトできます。 手段04:ダイレクトリクルーティングサービスの利用 ダイレクトリクルーティングサービス企業のデータベースから求める人材を探して、スカウトメールやチャットでアプローチする手法です。コストはかかりますが採用担当者の業務負荷が軽減でき、進捗状況や人財データの一元管理も容易です。 手段05:リファラル採用 従業員に友人を紹介してもらう手法です。等身大の企業の魅力、課題などが求職者に伝わるためミスマッチが少なく、採用コストも抑制できます。ただし、従業員が企業に魅力を感じていないと効果が出にくいため、担当者の人選に留意する必要があります。 まとめ ダイレクトリクルーティングを導入する際は、複数の手法の特徴を理解して手段を使い分けましょう。どの手段も人事採用部門だけでは実行が難しいため社内の理解と協力を得ることも大切です。海外企業では採用担当者とは別に「人財発掘担当者」を置いているケースまであります。 長期的な視点で、全社で人材採用に取り組むことが、ダイレクトリクルーティングの成功につながるでしょう。 Sourcing ダイレクトリクルーティング ヘッドハンティング 採用手法
人事施策 2020年7月01日 「通年採用」の導入は採用市場をどう変えるのか 新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の採用活動にも影響を及ぼしています。具体的には、学生向け合同説明会の中止や採用予定人数の縮小が発生し、就職活動を控える学生に大きな不安を与えています。 こうした状況をふまえ、経済産業省は企業等の関係団体に対し、新規学卒者への「通年採用」や「秋季採用」の導入を要請し始めました。そこで今回は、通年採用へ切り替え始めた一部企業の動向やメリット・デメリットをご紹介するとともに、通年採用が今後の採用市場に与える影響について解説します。 [目次] 日本企業の採用活動の最新動向 「一括採用」から「通年採用」へと動き始めた企業 「通年採用」がもたらすメリット、デメリット 「通年採用」の導入が今後の採用市場に与える影響 まとめ 日本企業の採用活動の最新動向 企業の採用活動において広く定着する「春期一括採用」。企業は短期間で集中的に学生を採用できるため、集団での企業内訓練の実施や知識・技術の習得機会の創出が可能です。また、OECDのレポートによると、2019年の日本の若者(14歳~24歳)の失業率は3.8%と諸外国と比べ低い水準でした。企業が長期雇用を見据える一括採用は、学生側にも一定のメリットがあると考えられます。 参考:OECD Data『Youth unemployment rate』 このように、春期一括採用は日本企業にとって主流の採用方法でした。しかし、現在の情勢から一部の企業では通年採用へと切り替える動きが出ています。KDDIや日立製作所は、2021年度から通年採用を開始すると発表しました。 「一括採用」から「通年採用」へと動き始めた企業 KDDIは2021年度入社の新卒採用から、年間を通じて学生がいつでも応募できる「通年採用」に変更します。また、個々の状況に合わせて入社時期を選べるよう、年2回、4月と10月に入社時期を設けました。 参考:KDDI『2021年度よりKDDI新卒採用で通年採用を開始』 日立製作所の入社時期はさらにフレキシブルで、新設する「デジタル人財採用コース」では原則として卒業から1年以内の入社が可能に。その目的は、各自の自己成長の時間を設けることです。デジタル分野への配属を確約したうえで、卒業後の海外留学や長期ボランティア、自己啓発といった活動を認めています。 参考:日立製作所『ジョブ型人財マネジメントの実現に向けた2021年度採用計画について』 「通年採用」がもたらすメリット、デメリット 企業側の切り替えが進み始めた「通年採用」には、以下のようなメリットがあります。 ・多様な人財と出会う機会が増える 通年採用は、春季一括採用では得られない人財と出会える可能性があります。第二新卒などの既卒者、日本での就業を希望する外国人の採用に対応しやすくなるからです。 ・期間に縛られず余裕を持って人財を選べる 選考時期にピークがなく、採用活動のリソースに余裕が生まれます。そのため、人事はゆとりを持って人財を見極めることができます。 ・自社の状況に応じた採用活動を行える 自社の経営状況に応じて採用計画を見直し、臨機応変に採用活動を行えます。自然災害や海外市場の影響を受けた急激な景気変動にも柔軟な対応が可能です。 一方、通年採用には人事の業務負荷や難易度が高まるといったデメリットも。人事には、人財採用のプランや募集活動、コスト管理などに通年で取り組む必要性が生じるのです。 「通年採用」の導入が今後の採用市場に与える影響 一括採用の意図は長期雇用を見据えた効率的な人財育成ですが、通年採用には必要なときに必要なポストを任せられる即戦力の人財を獲得する目的があります。企業によっては新卒や中途の区分をなくし、「求職者」として同条件で採用活動を行うこともあり得るでしょう。その場合、就労経験のない学生はこれまで以上にインターンシップなどの学外活動に力を注ぎ始めるかもしれません。 通年採用が広まることで、企業の採用活動の多様化はより一層推進されるでしょう。通年採用は採用市場のあり方を変え、日本の雇用環境全体に多大な影響を与える可能性があります。 まとめ 独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年に公表した調査結果によると、大学生・大学院生の約6割が「通年採用」を行う企業は多い方が良い、と回答しています。もはや通年採用のメリットやデメリットだけで導入を判断する段階ではありません。企業は現在の社会情勢や学生の動向を注視しながら、通年採用の導入を検討するよう求められているのです。 参考:(独)労働政策研究・研修機構『大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズ調査』 企業事例 新卒採用 新型コロナウイルス 通年採用
人事施策 2020年6月17日 いま求められているオンライン採用導入のポイントとは? 新型コロナウイルスの影響が多方面に広がるなか、厚生労働省は関係団体に対して「雇用維持等に配慮する」よう要請文を出しています。その中には「多様な通信手段を活用した説明会や面接・試験等による一層の募集機会の提供」といった内容も含まれており、オンライン上の採用活動が奨励されています。 本記事では、採用市場の最新動向、オンライン採用のメリットや注意点、導入時のポイントを解説します。 [目次] 採用市場の最新動向 オンライン採用のメリットと注意点 オンライン採用導入時のポイント まとめ 採用市場の最新動向 毎年春に行われる新卒学生向けの「合同説明会」や「ガイダンス」の多くが、2020年は新型コロナウイルス感染予防のために中止となりました。一方で、株式会社リクルートキャリアの「2020年4月1日時点内定状況」によると、就職内定率は31.3%と過去最高値です。 エン・ジャパン株式会社が3月に実施した「感染症拡大による中途採用への影響」においては、85%の転職コンサルタントが「半数以上の企業が採用を継続している」と回答。ベンチャー企業、外資系企業などが人材獲得に積極的であることを指摘しています。 緊急事態宣言が発令され、多くの業界の需要が激減しているなか、デジタルトランスフォーメーションを推進するIT業界、製薬業界、食品業界などが伸びていることを考えると、今後の採用市場は新卒・中途市場とも二極化していくことが予測できます。 オンライン採用のメリットと注意点 株式会社ビズリーチが2020年4月に同社の採用クラウド「HRMOS」導入企業に行った調査によると、採用活動のオンライン化に対応している企業は過半数を超え、その6割以上が「メリットが大きい」と回答しています。企業が感じるおもなメリットは以下の点です。 ・遠方の求職者との接点が増えた オンライン採用では求職者側に交通費や宿泊費がかかりません。企業も地方に赴く必要がありません。その結果、企業と遠方(地方・海外)の求職者との接点が増え母集団が形成しやすくなります。 ・求職者と気軽に接点が持てる オンライン採用なら求職者の都合に合わせていつでも、どこからでも接点を持つことができます。採用担当者が在宅勤務でも選考を進められることもメリットです。 一方で、オンライン採用の課題も浮き彫りになっています。 ・職場の雰囲気を伝えることが難しい オンライン採用では職場の雰囲気を伝えることが難しくなります。新卒採用では「人」が就職先選びの重要な決め手となることが多いため、入社後にギャップが出てくる可能性があります。 ・求職者の印象を正確に把握しづらい リアルな面接のように入退室の立ち振る舞い、面談中の姿勢などを確認できないため、求職者の印象を正確に判断しづらい課題があります。 オンライン採用導入時のポイント オンライン採用ツールを選ぶポイントを紹介します。 ・複数同時接続が可能 1対1の面接、グループ面接のいずれにも対応できるように複数名同時接続が可能なツールを選ぶ必要があります。 ・情報を共有しやすい オンライン上で伝えたい情報をアピールするためには、資料を共有できる「画面共有機能」があり、かつ伝えたい箇所を強調できることが望ましいと言えます。 ・スマートフォンやタブレットも利用できる モバイル対応型ツールだと求職者とのスケジュール調整がしやすく、選考をスピーディに進めることができます。 ・気軽に参加できる 昨今は求職者とURLを共有するだけでオンライン採用ができるツールもあります。大変手軽なため、オンライン説明会への参加者増加が期待できます。 まとめ コロナウイルス感染症の影響によりオンライン採用が急速に普及し、リアルな面接をすることが企業イメージ悪化につながりかねない状況になっています。ビジネス環境の変化に適応し、安全で効率的な採用活動に切り換えていきましょう。 DX オンライン採用 デジタルトランスフォーメーション テレワーク 採用 新型コロナウイルス
人事施策 2020年6月10日 人材マネジメントを企業の経営戦略として実現するためのポイントとは? 人材マネジメントとは、企業の経営目標を達成するための経営戦略の一環として取り組む人事戦略です。それは単一的なものではなく、人材採用(新卒・中途採用)、人事評価、人材育成、人材配置などの人事全般を一体的に捉えることが重要とされています。 生産年齢人口の減少や経済活動のグローバル化、情報技術の進展といった社会環境の変化が如実に現れる昨今。これらの変化に適応していくために、企業には人材マネジメントの強化がより一層求められています。 今回は、経営戦略として人材マネジメントを強化するために、企業が押さえておくべき3つのポイントを解説します。 [目次] 人材マネジメントとは 人材マネジメントのポイント1:経営戦略と一貫性のあるマネジメント運用 人材マネジメントのポイント2:経営陣から従業員への発信・情報共有 人材マネジメントのポイント3:従業員の自律的なキャリア形成の促進 まとめ 人材マネジメントとは 人材マネジメントは、採用、評価、育成、配置などを個別に扱い、単一的に捉えるものではありません。人材マネジメントを人事戦略、さらには経営戦略として実現していくには、あらゆる人事制度を一体的に捉え、一貫性を持って扱うことが重要です。 その一方で、日本企業の人材マネジメントには共通の特徴があります。それは、新卒一括採用や年功序列、終身雇用といった、いわゆる「日本型人材マネジメント」です。とりわけ新卒一括採用と終身雇用に関しては、内部公平性の観点から今なお日本企業に根強く残っています。 しかし、昨今の社会環境の変化に対し、従来の日本型人材マネジメントでは適応しきれないのが現状です。生産年齢人口の減少は新卒採用主体の人材確保を困難にし、経済活動のグローバル化は世界市場への環境適応力やリーダーシップのある人材を要求します。さらに、情報技術の進展は業務プロセス見直しによる人材の再配置、国を超えた人材の流動化を促すでしょう。 こうした新たな変化に日本企業が適応するには、人材マネジメントを強化していくことが必要不可欠です。次で紹介する人材マネジメント強化のポイントを押さえ、移りゆく時代の変化に適応できる人事戦略を構築しましょう。 人材マネジメントのポイント1:経営戦略と一貫性のあるマネジメント運用 人材マネジメントは、企業の経営戦略やビジョンを軸に運用することが大切です。経営戦略と人事戦略をともに検討することで、企業の経営目標の達成に必要な人材要件が明らかになります。経営戦略と一貫性のある人材要件ならば、採用、評価、育成、配置の基準も定めやすくなり、従業員にとっても説得力のあるものになるでしょう。 人材マネジメントのポイント2:経営陣から従業員への発信・情報共有 企業の経営陣は自社のMVV(Mission, Vision, Value)を社内に向けて発信することで、従業員一人ひとりが「会社を知る」機会を生み出せます。そしてMVVへの共感は、多様な人材、自律的な個人を活用していく上で重要なエンゲージメントとなり、さらにはモチベーションの強化にもつながるでしょう。 人材マネジメントのポイント3:従業員の自律的なキャリア形成の促進 経営戦略に基づく人事基準とMVVへの共感は、目標達成に向けた行動計画やキャリア形成について考えるよう従業員に促します。それに加え、企業は従業員が自律的なキャリア形成を行うために必要なサポートをしなければなりません。具体的な支援策としては、キャリアカウンセリングや自己申告制の活用、リカレント教育の推進があります。 まとめ 人材マネジメントは、企業が経営目標を達成するために必要な取り組みです。経営資源のひとつである「人材」を最大限に活用することで、個人と企業がともに成長できる環境を構築できるのです。 個人が求めるワークライフバランスやキャリアモビリティは、もはや無視できるものではありません。企業は個人の要望に配慮しつつ、キャリアカウンセリングやリカレント教育の採用によって、従業員の自律的なキャリア形成を促していく必要があります。こうした個人と企業が互いに高め合える人材マネジメントの方針は、従業員の成長と定着、さらには企業の発展へとつながっていくことでしょう。 MVV 人材マネジメント
人事施策 2020年5月20日 採用のミスマッチを防げ! 現場が欲しい人材を的確に採用するために出来ること 現場で活躍できる人材の獲得は、人事採用における代表的な課題です。採用した人材が現場で活躍できなければ、真の意味で「採用活動が成功した」とはいえません。 企業は、採用活動の段階で「人材」を的確に見極めるために、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。今回は、採用のミスマッチを防ぐための3つのポイントを解説します。 [目次] 活躍する人材の共通点 採用のミスマッチを防ぐ3つのポイント 的確な人材の採用にはヘッドハンティングが向いている まとめ 活躍する人材の共通点 採用後に活躍できる人材には、いくつかの共通点があります。次に挙げるポイントは、その主だった例です。 ・業務遂行に必要な能力と経験を有している 配属先で成果を上げられる人材は、そこでの業務を円滑に進められるだけの知識やスキルを有しています。即戦力となる人材は、入社した時点でそれらを獲得しており、かつ業務遂行上の類似した職務経験のある人物、ということになります。この観点は、入社早々に活躍が期待される中途社員の採用時に必須です。 ・自身が働く企業や組織についての理解を深めようと努力している 求められる能力を有していても、固有の企業文化や組織風土に馴染めない人物は、その力を発揮できない可能性があります。活躍する人材は、そうした文化や風土の理解を深めようと取り組む意識を持っています。 ・自身の能力開発に継続的に取り組んでいる 現時点で活躍するために必要な能力も、中長期的に見て変わらずにそうであるとは限りません。継続的な活躍には、現場を取り巻く環境の変化を見越した知識の更新やスキルの向上が不可欠です。現場で活躍できる人材は、そうした能力開発に貪欲な姿勢で取り組んでいます。 採用のミスマッチを防ぐ3つのポイント 採用のミスマッチを防ぐためには、経営陣や現場責任者と共に採用活動に取り組むことが大切です。 ・「必要な能力」を採用担当者と現場責任者との間で確認する 採用担当者は、求める「能力」を定義する際に、人材採用後の配置を予定している現場の責任者と、その認識をすり合わせる必要があります。現場の見解を把握することは、ミスマッチを防止するために望ましい取り組みでしょう。なぜなら現場責任者は、業務の遂行に有効な知識、スキル、経験を最も理解しているはずだからです。 ・「相応しい価値観」を経営陣や部門長に確認する 採用担当者は、企業文化や組織風土を支える固有の価値観について、経営陣や部門長の確認を取りましょう。なぜならそこで語られる内容は、現在の理念やビジョン、経営戦略が色濃く反映されたものになるからです。そうして価値観を言語化することで、採用担当者のなかでもその理解が深まります。 ・「求める人物像」を的確に表現する 自社で働く上で「必要な能力」と「相応しい価値観」、つまりはそれに基づく「求める人物像」を的確に表現することで、マッチングの精度は高まります。 的確な人材の採用にはヘッドハンティングが向いている 現場が欲しい人材は、即戦力になることが重要です。しかし、自社が求める人材を採用するのはとても難しい現実があります。企業における実際の採用では、オープンにできないポジションの採用、スピーディーな採用が求められるケース、新規事業への進出を経営戦略としてとっていく場合などがあり、人事担当者の解決策としてヘッドハンティングが適しています。 ヘッドハンティングとは? ヘッドハンティングとは、経営幹部、高度専門職、次世代リーダー候補など自社の経営課題と直結したポジションへの適材を社外からスカウトして自社に採用することを指します。 ヘッドハンティングが有効な採用とは? オープンにできないポジションの採用やスピーディーな採用が求められるケース、新規事業への進出を経営戦略としてとっていく場合には、ヘッドハンティングが有効です。 まとめ 採用のミスマッチを防ぐためには、現場での目標達成に貢献できる人物像を定めることが第一歩となります。その際、業務の遂行に必要な知識やスキル、つまりは「能力」を整理することは、もちろん大切です。ですが、企業内に深く根付いている文化や風土といった「価値観」にフォーカスした人材要件の棚卸も、非常に重要です。3つのポイントを押さえることで、現場で活躍できる人材を獲得できる採用活動につなげていきましょう。 ヘッドハンティング ミスマッチ防止 中途採用 採用 活躍人材
人事施策 2019年10月18日 人生100年時代!これからの日本に求められる人材マネジメントとは?(1)〜今起きている3つの環境変化〜 世界中で長寿化が進み、人生100年時代が到来すると言われています。これまでのライフスタイルとは全く異なる人生設計を各自が考えなければならない時代になってきました。政府でも「人生100年時代構想会議」から学び直しの支援や高齢者雇用の促進などを含む「人づくり革命基本構想」が発表され、企業に求められる人材マネジメントにも変化が訪れてきています。これからの日本に求められる人材マネジメントを数回に渡りご紹介します。 [目次] 日本の人材マネジメントを取り巻く状況 今起きている3つの環境変化 この時代に対応していくためには 日本の人材マネジメントを取り巻く状況 2019年5月に政府が発表した高年齢者雇用安定法の改正案では、65歳以上の希望する労働者に対し70歳までの雇用確保を努力義務として企業に求める骨格が示されました。平均寿命が伸び、長期のライフプランを念頭に社会で活躍していくことが求められるようになってきています。 一方、日本を代表する企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長や、経団連の中西宏明会長から、終身雇用の維持を守っていくことは難しい局面にあるとの見解が示されたことが話題になりました。いよいよ日本型雇用制度の大きな特徴であった終身雇用制度が真に終わりを告げようとしています。 そして、日本的な雇用慣行のもう一つの特徴であった、新卒一括採用も終わりつつあります。 日本企業は、これまで長期的安定的に人材を雇用することで同じ価値観を共有する高い集団的能力を発揮し、その競争力を強化してきました。しかしながら、「グローバル競争の激化」「デジタル化の進展」「急激な少子高齢化」によって、経営を取り巻く環境が大きく変化する中で、その優位性は低下してきています。 日本企業が世界を席巻していた時には様々シーンで参考にされていた日本型の人材マネジメントは大きな転換期を迎え、変革が求められています。 今起きている3つの環境変化 今、日本のビジネス環境には以下3つの変化が起きています。 グローバル 戦後、人口が増加し続けていた日本の国内市場は世界的にみても小さくない市場であり、国内だけでもそれなりの規模のビジネスを展開することができました。しかし、少子高齢化に伴い、人口減少が進んでいます。国内市場も、今後の拡大を見込むことは難しくなってきています。企業が持続的に成長をしていくためには、高成長している海外マーケットの開拓や取り込みが必要とされてきています。 デジタル AIに代表されるようなテクノロジーの進歩は著しく、これまで常識となっていた慣習が次々と破壊されています。不確実な経済・社会情勢において、最先端テクノロジー技術をビジネスに活用すること、また、蓄積されていくデータを活用したビジネスモデルの刷新(デジタルトランスフォーメーションの進展)が各企業に求められています。 少子高齢化 今、日本の人口形態は単なる人口減少ではなく、若年人口の減少と高齢者層が増加していることが特徴です。今後、人口ピラミッドは大きく変化し、生産年齢人口比率の減少が加速していきます。そのため、企業は働く人材の確保のために、子育て後の女性やシニア人材、外国人など、従来より多様な人材を活用していく必要がでてきています。合わせて就業ニーズや勤労意欲などの価値観や働き方の多様化をどのように受け入れていくか考えていく必要があります。 この時代に対応していくためには 従来のような過去の延長線上に未来がある予見可能性が高い世界から、VUCA(ブーカ:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ))時代に突入し、変化への適応力がより一層求められる世界に変化しています。その変化に対応した人材マネジメントが今日本の企業に求められているのです。 新卒一括採用や終身雇用に代表される企業内価値観、同質性を重視した「年功型のキャリア形成」から外部競争力を重視した「個人主体のキャリア形成」を支援するマネジメントを実施している企業が競争優位に立つようになってきました。 この時代に対応していくためには、「就社から就職」という意識変化を企業側も持つ必要があります。 「就社」は、職務、従事する仕事を定めずに人材を採用し、安定的な雇用確保の引き換えに職務範囲の限定をせずに雇用します。職能型、メンバーシップ型とも言われます。 一方、「就職」は特定の職務に対して人材を採用し、経験やスキルなどの職務遂行能力によって雇用します。職務型、ジョブ型とも言われます。 これまでの日本の企業はこの「就社」の概念が強い会社がほとんどでした。しかし、これからは企業側も人材採用や人材研修では職務型、ジョブ型が求められていことを意識していくことが重視されてきています。 次回はこれまでの日本の人材マネジメントとこれからの人材マネジメントを比較していきたいと思います。 マネジメント 人生100年時代
人事施策 2019年8月29日 自分の市場価値を定義する!エンプロイアビリティとは? 転職が当たり前になり、つい昔まで言われていた「35歳転職限界説」という言葉も過去のものになりつつあります。そんななか、自分の市場価値を定義する「エンプロイアビリティ」という言葉があるのをご存知でしょうか?今回はこの「エンプロイアビリティ」についてご紹介します。 [目次] エンプロイアビリティとは 内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティ まとめ エンプロイアビリティとは 「エンプロイアビリティ」とは、英語のEmploy(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせて作られた言葉で、「雇用される能力」のことを言います。そのため、雇用をされて働くビジネスパーソンにとっては市場価値(マーケットバリュー)とも捉えられています。 終身雇用が崩壊し、就業形態の多様化など変化が進むビジネス環境において、社内だけで通用する特定の職務への習熟ではなく、企業の枠を超えて通用する汎用度の高い能力が問われるようになってきた今、変化への適応能力や問題解決能力、イノベーション力などが重視される傾向にあります。 厚生労働省の調査では、エンプロイアビリティを次のように定義しています。 「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書」 エンプロイアビリティの定義: エンプロイアビリティは、労働市場価値を含んだ就業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な就業能力 具体的な能力: 1.職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの 2.協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの 3.動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの 引用元:https://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0712-2.html 上記のうち、3は個人的かつ潜在的なものであるため、具体的・客観的に評価することは困難と考えられますが、1と2については評価基準を策定することが可能と考えられています。 厚生労働省では、若年層のキャリア形成を支援するために、若者就職基礎能力や社会人基礎力をベースとしたエンプロイアビリティチェックリストというものを公開しています。 訴求力のある自己 PR 材料を洗い出すためのシートとして活用することができますので、興味のある方はぜひチェックしてみましょう。 厚生労働省:エンプロイアビリティチェックシート 内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティ エンプロイアビリティには、現在勤務している組織において継続的に雇用され続けるの能力という側面と、他社でも採用・活躍ができる能力という側面があります。 それぞれ、内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティと言われています。 内的エンプロイアビリティ:特定の組織で通用する能力 外的エンプロイアビリティ:組織を問わず通用する能力 内的エンプロイアビリティが不足していると、仮に所属している企業の業績が悪くなった場合に、リストラの候補者に挙がってしまう可能性があります。内的エンプロイアビリティを高めるには、特定の組織で必要とされる専門的な知識やノウハウなどが求められます。 一方、外的エンプロイアビリティは、企業や業種が変わっても転職できる、活躍できる能力を指しているので、市場で評価される、他の企業でも通用する能力を蓄積することが求められます。そのため、個人にとっても今後歩んでいきたいキャリアの方向性によって伸ばすべきエンプロイアビリティは変わってきます。 欧米では1980年代以降から長期雇用に代わる発展的な労使関係を構築するために外的エンプロイアビリティを高める支援を行うことが活発になっています。企業側には生産性やモチベーションの向上、優秀な人材の確保、従業員側にはマーケットでの自身の価値の維持・向上、キャリア形成というメリットが生まれ、労働市場の活性化につながっています。 日本では長らく内的エンプロイアビリティが重視されてきましたが、人材の流動化が進む現在では、外的エンプロイアビリティの重要性が認識されています。 まとめ IT技術の発展や激しい社会変化に対応していくためには、エンプロイアビリティがますます重要な能力となるでしょう。 個人は常に自身のキャリア形成を見据えたエンプロイアビリティの向上をすることを意識し、企業側にとっても従業員のエンプロイアビリティを伸ばせる環境を整えることで結果として、自社の組織パフォーマンスの向上が期待できます。
人事施策 2019年7月17日 欧米では当たり前!企業の持続的な成長を実現するサクセッションプランの作成 ここ数年、中小企業を中心に事業承継に関するニュースをよく耳にします。中小企業の経営者の平均年齢が高齢化しているにも関わらず、後継者が見つからないために、廃業や事業譲渡をする企業が増加してきています。しかし、できるなら会社を持続させたい経営者の方々も多いのではないでしょうか?今回は後継者問題を解決するサクセッションプランについて、ご紹介します。 [目次] サクセッションプランとは サクセッションプラン作成の7つのステップ まとめ サクセッションプランとは サクセッションプランとは、企業の「後継者育成計画(幹部候補育成計画)」のことです。 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値 の向上を確保することを目的として、組織上の重要ポジションを定め、そのポジションに見合った後継者候補を発掘し、育成することをいいます。 企業の競争力を左右する最も重要な経営資源は、人材です。欧米企業ではサクセッションプランが企業の維持・発展の鍵を握ると考えられており、取締役会や経営層の重要な責任として認識されています。 近年、日本でも、多くの企業が後継者計画を策定することは、企業の成長や安定化のために必須であると考えるようになり、上場企業が守るべき行動原則を示した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)でも、次の社長やCEOをどのように選ぶのか早い段階から計画をつくり、選考過程の議事録を文書で残すよう企業に促す動きがでてきています。 また、将来の状況変化や不測の事態にも適切に対応できるよう、エマージェンシー・プランを含めて様々なシナリオを想定し、後継者計画に取り組んでおくことが望ましいとされています。 サクセッションプラン作成の7つのステップ サクセッションプランを進めるにあたって重要なことは、対象となるポジションに求める資質・能力・経験を明確にすることや、透明性の高いプロセスを確立することです。 経済産業省のCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)によると、後継者計画の策定・運用に取り組むにあたっては、 7つのステップに分けて検討することが有益であるとされています。 1. 後継者計画のロードマップの立案 就任から想定される交代時期に向けて、「いつ頃、誰が、何を行うか」といった大枠の工程やスケジュールを検討し、後継者計画のロードマップを描く。 2. 「あるべき社長・CEO 像」と評価基準の策定 求められる資質(能力、経験、実績、専門性、スキル、人柄など)を議論し、できる限り明確化した上で、客観的な評価基準を定める。 3. 後継者候補の選出 「あるべき社長・CEO 像」や評価基準に照らして、後継者候補を選出する。 4. 育成計画の策定・実施 選出された候補者ごとに、「あるべき社長・CEO 像」や評価基準に照らして、目標レベルに到達するための育成課題を明確化し、育成方針・ 計画を策定・実施する。 5. 後継者候補の評価、絞込み・入替え 後継者候補の状況を定期的にモニタリングし、「あるべき社長・CEO 像」や 評価基準に照らして評価を行い、必要に応じて後継者候補の絞込みや入替えを行う。 6. 最終候補者に対する評価と後継者の指名 取組を通じて数名程度にまで絞り込まれた最終候補者について、「あるべき社長・CEO 像」や評価基準に照らして最終的な評価を行い、その中から自社の経営トップに最も相応しい候補者を後継者として指名する。 7. 指名後のサポート 就任直後から十分にパフォーマンスを発揮できるように、指名後に実際の交代までに一定 の移行期間を設け、その間に引継ぎや社内外の関係者への後継者の周知、ネットワーク作りなど、必要な準備を行うことを支援する。 ※参照元URL: https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/ https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/pdf/2_009_05_05.pdf まとめ 企業において、これからのリーダーとなるべき人材を中長期的視野に立って育成していくことは、その将来を大きく左右します。欧米ではサクセッションプランを重要視しており、社長やCEOだけでなく、その他の幹部ポジションまで作成する企業が増えています。 日本にもサクセッションプランの考え方は浸透してきており、大企業を中心に取り入れられてきています。しかし、実情はなかなか難しい部分もあります。ファーストリテイリングの柳井さんが代表取締役として玉塚氏を任命しながらも数年後に社長に戻ったことや、ソフトバンクの孫さんがニケシュ・アローラ氏を後継者として名指ししながらも、数年後に撤回したりと、過去には様々な出来事があります。 日本を代表するカリスマ実業家でもある孫さんや柳井さんが後継者を誰に任命するのか、今後注目ですね。 マネジメント
人事施策 2019年7月15日 自律して持続的に成長をしていく組織、ラーニング・オーガニゼーションとは? ビジネスのスピードが以前とは比較できないほど早くなり、組織も常に変化や成長を求められています。組織自体も自発的に成長をしていくことができれば、会社全体の成長スピードが飛躍的に向上します。今回はそんな成長組織のコンセプトである『ラーニング・オーガニゼーション』についてご紹介します。 [目次] ラーニング・オーガニゼーションとは 5つのディシプリン ナレッジマネジメントの重要性とツール紹介 まとめ ラーニング・オーガニゼーションとは 「ラーニング・オーガニゼーション」とは、激しい変化に組織として対応していくために、個々人の自主的な学習の促進を持続的に行い、個人の自己改革・成長とともに進化していく組織のことをいいます。「自律的に持続的な変革を行っていく力を組織内に保有する」ということが特徴で、上意下達型の指示命令を行う管理組織とは異なる組織モデルになります。 「ラーニング・オーガニゼーション」はマサチューセッツ工科大学のピーター・M・センゲ教授(Peter M.Senge)により提唱された概念で、日本では「学習する組織」と呼ばれます。1990年に『The Fifth Discipline』を出版したことで、その考えは欧米を中心に大きな注目を集めて、世界中に広まりました。 ピーター・M・センゲ教授は、お互いに学び合って、システマティックなアプローチで共通のビジョン実現を目指す組織と定義しており、その実現手段として、組織に求められる5つ能力をディシプリンとしてを挙げています。 5つのディシプリン 5つのディシプリンは具体的には以下になります。 1.システム思考(Systems Thinking):ビジネスにおいて構造的相互作用を把握する力 →各メンバーが組織内でどのような役割を担っているかを相対的に把握・認識する 2.自己マスタリー(Personal Mastery):個々のメンバーが自己を高める意志を持つ →各メンバーがそれぞれ自身の能力向上に積極的に取り組んでいく 3.メンタル・モデル(Mental Models):凝り固まったものの考え方を克服する →固定観念から脱却し、従来のやり方にとらわれずに、そのときどきの環境に適応した柔軟な思考を持つ 4.ビジョンの共有(Shared Vision):個人と組織のビジョンに整合性を持たせる →メンバーと組織が目指す共通のビジョンを設定する 5.チーム学習(Team Learning):対話を行うスキルと場を養う →組織全体で高いレベルで学び合うことを重要視する 5つのディシプリンを習得・実現することによって、所属メンバーが課題や解決策を発見するための継続的な学習を行い、チーム全体で協力・柔軟に対応することにより問題解決型の組織を作ることができることを説いています。 ラーニング・オーガニゼーションを実現するためには、企業風土や組織文化を根本から変革していくことが求められるため、簡単ではありません。経営層の強い思いとリーダーシップが求められます。 ナレッジマネジメントの重要性とツール紹介 ラーニング・オーガニゼーションを実現するポイントの一つは、ナレッジ・マネジメントです。個人や組織で保有している暗黙知を形式知化して、組織全体でナレッジを共有することで学びは促進されます。 ナレッジ・マネジメントを実施するうえでの具体的なツールをひとつご紹介します。 GURU https://www.getguru.com/ 2013年に設立されたアメリカ フィラデルフィアの会社です。 顧客にはSlackやSpotifyなど今をときめくテクノロジー企業が含まれています。 彼らの調査によると、人々のワーキングタイムの20%は情報検索に費やされいているそうです。これらの時間を削減すべく、Guruはナレッジを適切に共有することにより、必要な情報を必要なタイミングで簡単に得られるようにすることをミッションに掲げています。 大きな特徴としては、AIを使うことで、人が自分で探すよりも適切な情報をGuruが提案できるようにしていることです。Slackとも連動が可能で、連携させることでSlack内でナレッジの共有を完結させることもできます。 まとめ 人は自ら学ぶことができる動物です。 ラーニング・オーガニゼーションの構築ができれば、変化の激しい現代のビジネス環境においても、他社に負けない強い組織へと自然と進化していきます。 時代や環境に合わせて、企業が進化して勝ち残っていくためには、ラーニング・オーガニゼーションの実現が競争力を左右していきます。 マネジメント