人事施策 2018年11月09日 リアルタイムフィードバックの導入とその実現ツール 近年、従来は年次で行っていた人事評価を見直す企業が徐々に増えてきています。背景には、従来型の評価プロセスでは、ビジネススピードとの乖離が大きくなってきていることがあるようです。年次評価を見直した多くの企業では、日常を通じた人材育成の機会を重視し、良い仕事をしたときや失敗したときにタイムリーにその場で従業員にフィードバックするリアルタイムフィードバックの仕組みを取り入れています。今回はそんなリアルタイムフィードバックについてご紹介します。 [目次] リアルタイムフィードバックとは? リアルタイムフィードバックを実施するためのツール まとめ リアルタイムフィードバックとは? これまでの人事評価のあり方と違い、月に1度もしくは2週間に1度などの頻度で上司との1on1を実施し、都度フィードバックをしていくことをリアルタイムフィードバックと呼んでいます。 フィードバックの頻度が増えることにより、振り返りや改善点の認識合わせをタイムリーに行うことができるので、ビジネス環境の変化にも臨機応変に対応可能になります。また、フィードバックは時間が経ってから伝えても、記憶があいまいになるため、変えるべきところを正確に理解することが難しくなり、効果が薄まります。リアルタイムフィードバックでは、具体的な内容が頭のなかで鮮明なうちに行うことができるため、その効果が高まることもメリットのひとつです。 米国のAdobe社の行った調査では、多くの従業員は数ヶ月かけてまとめられたフィードバックを聞くより、すぐその場でのフィードバックを望んでいるとの結果がでているそうです。 出典:Adobe社 Full Study: Performance Reviews Get a Failing Gradeより抜粋 リアルタイムフィードバックを実施するためのツール フィードバックの頻度をあげるからといって、全体工数が増えてしまっては意味がありません。システムの活用などで効率的に運用していくことも導入のポイントです。そんなフィードバックを簡単に行うためのツールを提供している企業をご紹介します。 impraise https://www.impraise.com/ 2014年設立、現在ではアメリカ、オランダ、ポルトガルの3カ国で展開しているグローバル企業です。「人の成長こそがビジネスの成長(Grow your people, grow your business)」という信念のもと、Web baseでモバイルでも簡単にリアルタイムフィードバックが可能なシステムを提供しています。 デモ動画: まとめ 即時に反応がわかるSNSの普及などもすぐにフィードバックを求める人が増えている背景にはある気がします。テクノロジーの進化により、働く従業員の求める内容も変化しています。日常的な業務コミュニケーションの延長線上に評価を位置付けるなど、時代にあわせて常に変化していくことできる企業だけが、継続して成長し生き残ることができる企業なのではないでしょうか。
人事施策 2018年10月29日 【スタート、ストップ、コンティニュー】1on1やフィードバック時に使える効果的なフレームワーク 年初に目標を立て、年度の終わりに目標の結果に対して評価をし、フィードバックをする。そんなこれまでの人事評価の仕組みがビジネスのスピードが早くなり通じなくなってきています。先進的な企業では1on1を取り入れたり、ノーレイティングの仕組みを取り入れ始めています。 そんなときに重要なのが、面談時のコミュニケーション。上手にコミュニケーションをすることで部下の成長を促すことも可能になります。今回はそんな面談時のコミュニケーションに活用できるフレームワーク「スタート、ストップ、コンティニュー」についてご紹介します。 [目次] 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは? 有用性について まとめ 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは? 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは、フィードバックを効果的に行うフレームワークです。面談時などに話しあう内容をリスト形式で集約し、全体結果を分析しながら次の3つに分類します。 スタート(Start)・・・これから何を始めるか ストップ(Stop)・・・今までしてきたことで何をやめるか コンティニュー(Continue)・・・何をこれからも継続していくか 組織の中では、優秀な人に仕事が集まり、一部の人だけが業務過多になるケースが多々発生します。気がつけば、本来しなくてもいいことをしていたり、またやめるタイミングを逃したまま形式的に実施している業務も少なくありません。定期的に「スタート、ストップ、コンティニュー」を実施することで、優先順位が常に明確に整理され、次の行動を迷いなく促すことができるため、業務過多を緩和させることもできます。 有用性について 「スタート、ストップ、コンティニュー」はシンプルなフレームワークなので、マネージャ―から部下、部下からマネージャー、チームメンバー同士、クライアントからプロジェクト全体のフィードバックなど、様々なシーンで活用することができます。個人だけでなく、チーム成果、業務プロセス、プロジェクトなどにも活用できる汎用性の高いフレームワークです。 複雑な評語や評点を付ける必要がなく、フィードバックプロセスもシンプルなので年に複数回行うことができるのもポイントです。 ビジネスのスピードが早くなり、あっという間に立てた戦略が通用しなくなる昨今。工数をかけずに高い頻度で現状分析と見直しを行うことが求められている現代において、シンプルなフレームワークである「スタート、ストップ、コンティニュー」は大きな効果を発揮します。 まとめ シンプルなフレームワークである「スタート、ストップ、コンティニュー」ですが、出てくる内容に対して、どれに分類をするかを決めることはとても重要な判断です。本来は「コンティニュー」にすべき内容を「ストップ」にしてしまったり、逆に「ストップ」にすべきものを「コンティニュー」にしてしまい、何も整理されない、では本末転倒になってしまいます。 判断には、自社の戦略理解、目指す方向(ビジョン)の理解など、俯瞰的に物事を捉えられる総合力が必要とされます。これらをしっかりと判断して仕事を進めることができる人材が社内にいるかどうか、人材採用、人材育成は今後もより重要な経営課題になってくることが考えられます。
人事施策 2018年10月14日 退職防止にも効果的!オンボーディングでスムーズな「Yes to Desk」を実現する 以前、オンボーディングについてご紹介しましたが(新しい社員の早期戦力化!『オンボーディング』の勧め)、おかげさまで日々沢山の方々にアクセス頂いています。人材不足が騒がれている昨今、新しく入社する社員の早期戦力化はどこの企業でも重要度が上がってきています。今回はそんなオンボーディングについて、改めてアメリカの状況なども含めご紹介します。 [目次] アメリカでのオンボーディングの状況 「Yes to Desk」とは オンボーディング実施のためのツール紹介 まとめ アメリカでのオンボーディングの状況 アメリカでは2018年現在、失業率は過去最低水準に達しています。そのため、新しい人材の確保にはどこの会社も苦労しており、多くのコストをかけて採用した新たな社員に1日も早く会社にフィットしてそのパフォーマンスを発揮してもらうために、「オンボーディング」は企業における戦略的な取り組みとして上位に上がってきています。 誰にとっても最初の印象はとても重要です。しっかりとしたオンボーディングプログラムを提供することによって、受け入れた社員が長い間活躍してくれることが期待されます。実際に体系化された優れたオンボーディングプログラムを提供している企業では、新たに採用した社員が、3年というスパンで考えると継続して働き続ける率が69%も高いと言われています。また一方では、退職者の20%は45日以内に発生するというデータもあり、こういった数値を改善する手段こそがオンボーディングとなります。 また、オンボーディングの従業員に与える影響も大きくなってきており、退職する人たちの15%の人たちが、不適切なオンボーディングプログラムを退職理由にあげています。 つまり、アメリカではオンボーディングは早期戦力化の施策であるとともに、退職防止の施策としても重要な位置づけになってきています。 「Yes to Desk」とは そんななか、アメリカでは「Yes to Desk」という概念が新たにでてきています。 採用のオファーに対して「はい」と言ってから、実際に入社日に「デスク」に到着するまでの間をいかに生産的で従業員に歓迎されるようにするべきか、という考え方です。 オファーを受けいれた瞬間からオンボーディングプログラムは始まっているのです。 もともとはTwitter社の取組みなどから生まれた概念で、オファーを受け入れた瞬間から複数の関係する事業部が75ステップの「Yes to Desk」プロセスを実施していることからきているようです。ゴールは至ってシンプルで、座席の手配やメールアドレス、会社のミッションやビジョンの効果的な伝達、バーチャルオフィスツアー、幹部社員との交流機会、期待する業務内容などの迎え入れ方に関するアクションを漏れなく明確化させ、入社時の最初の印象をよくすることにあります。 オンボーディング実施のためのツール紹介 そんなオンボーディングを実現するための新たなツールをご紹介します。 https://enboarder.com/ 2015年に設立されたオーストラリアの企業 Enboarderは、単なるタスク、フォーム、書類作成などの効率化を支援するだけではなく、入社時における従業員経験とエンゲージメントに焦点を当てたオンボードとエンゲージメントのプラットフォームです。 まとめ これまでオンボーディング構築の効果は、早期戦力化に重きを置かれていました。しかし、今回ご紹介したようにアメリカでは退職やその後の在籍率にも影響していることがわかってきています。もし、自社の退職率が高い場合は「Yes to Desk」を含めたオンボーディングを一度見直してみてはいかがでしょうか。 セレブレイン社では、新入社員早期戦力化のためのロードマップ作り、メンタリング(バディ、メンター制度)、1on1の仕組みづくりなどを支援しています。お悩み事などありましたらば、お気軽にご相談ください。 お問い合わせはこちら:https://www.celebrain.com/inquiry
人事施策 2018年7月26日 客観的視点により社員の成長を促す!360度評価の勧め 人材マネジメント用語としてはすでに当たり前となっている360度評価。しかし実際に導入しているケースは日本ではまだまだ少ないように感じます。そんな360度評価について、今回は改めてご紹介します。 [目次] 360度評価とは 活用方法や効果(ジョハリの窓) まとめ 360度評価とは 360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下、更に可能であれば取引先などの外部の関係者にも協力してもらい、対象者の仕事ぶりや職務上の行動について多面的に評価をしてもらうことで、本人の気づきを促し、人材育成に役立てようとするものです。360度フィードバック、360度サーベイなどといった言葉でも使われることがあり、セレブレインでは「3Dフィードバック制度」としてこちらの評価システムの導入を支援しています。 セレブレイン「3Dフィードバック制度」の図 活用方法や効果(ジョハリの窓) 360度評価の効果を説明する際、よく使用される概念に「ジョハリの窓」があります。 ジョハリの窓 心理学でよく使われる自己分析のための概念で、(1)の開放の窓の範囲を広げていくことが自己成長につながると言われています。 360度評価では、他人の視点を確認し、従来では見えなかった気づきが得られることからジョハリの窓の「(1)開放の窓」を広げることに効果を発揮します。 企業の人事部門では、360度評価を主に以下の4つの観点で活用しています。 1.人材育成 2.昇格アセスメント 3.バリューの浸透 4.コンプライアンスの徹底 人材育成や昇格アセスメントのように、個人へのフィードバックとして活用するだけでなく、企業としてのバリューの浸透やコンプライアンスの徹底などへも効果を発揮することが360度評価の大きな利点と言われています。 まとめ 様々なメリットのある360度評価ですが、実施にあたっては、部下に評価されないといけないという管理職の心理的なハードルや、感情での評価(好き嫌いで判断してしまう)、評価者のスキル、フィードバックに対する向き合い方など組織の取組みに関する受容度が大きく影響してきます。 受容度が低い場合には、回答の結果に合わせて動物のキャラクタータイプなどを用意し(例. 自信たっぷり黒豹タイプ、のんびりでも着実に結果をだす亀タイプなど)親しみやすさを打ち出すなど、360度評価を受け入れやすくする工夫が必要になるかもしれません。 主観の集まりを客観として捉えることができる360度評価は、うまく活用することで行動変革を生み出し、組織として企業の成長につなげることができます。 これまで実施したことのない企業は、成長に対する処方箋として、一度検討してみてはいかがでしょうか。
人事施策 2018年7月05日 独自のコンピテンシー設計でより高度な人事戦略の構築を! 今や企業経営において当たり前のように使用される「コンピテンシー」。しかし、企業ステージによっては未構築であったり、見直しのタイミングなどもでてくることと思います。 今回はコンピテンシーについて、作成ステップなどを含めてご紹介します。 [目次] 改めてコンピテンシーとは コンピテンシー活用方法 作成ステップ まとめ 改めてコンピテンシーとは コンピテンシーとは、1970年代にハーバード大学の心理学者デイビッド・C・マクレランド氏により提唱された理論で、特定の役割・職務遂行において高い業績を継続的に上げる人材のもつ思考特性のことです。日本では発揮能力、役割遂行能力とも言われ、成果主義の考え方とともに1990年代の後半あたりから広がり始めました。コンピテンシーを定めることで、職務と役割への期待値が明確化され、従業員がどのようなことを期待されているのか認識できるようになります。 コンピテンシーの活用方法 そんなコンピテンシーは、人材開発・育成、評価、後継者計画、採用それぞれの基準として活用されます。 基準が明確化されると、評価などにおいて正確な判断が可能になります。例えば、採用活動における面接において、確認するポイントが明確になり、曖昧に優秀な人材を採用するのではなく、「自社で活躍する可能性の高い」人材採用が可能になります。 作成ステップ ではどのような手順で作成すればいいでしょうか。作成ステップは以下になります。 1.組織の将来ビジョン、経営計画、求める人材像の確認 2.作成対象職務と成果の定義 3.高業績者の選定 4.高業績者インタビューの実施/職務行動の観察 5.コンピテンシーモデルの作成 まずは将来ビジョンなどを改めて確認するところから始めます。そして、成果の定義、つまりどのようなことが職務上の成果責任として求められているのか、しっかりと定義を定めます。そして、その成果を発揮している高業績者を選定し、インタビューを実施した上で、その行動を分析していきます。分析結果を基に成果につながる特徴的な行動をモデル化し、コンピテンシーを作成していきます。 4.のインタビュー実施時には、一人あたり90分程度を目安に、直近の1〜2年間で仕事上で特に印象に残っている出来事、成功体験(失敗体験)を聞き出します。その出来事が起こったときの状況を思い出してもらい、どのようなことを考えて、実際に行った行動事実をできるだけ詳しく話していただきます。 ポリシーであったり、本人の行動と特定できないような事柄については、コンピテンシー作成の目的から焦点がずれていきます。対象者の自身の行動にフォーカスして話をしていただくように工夫をすることが大切です。 まとめ 優れたコンピテンシーは会社のビジョンとの一貫性が求められます。一貫性が感じられない場合、経営側の発言と人事評価の場面などで乖離が発生するため従業員のエンゲージメントに影響がでてきます。 時代の変化とともに求める人物像も変わってきます。定期的にコンピテンシーについても見直しをしていくことがビジネススピードの早い現代において、求められていることかもしれません。
人事施策 2018年7月01日 今更聞けない人事の重要ワード、会社と従業員の関係を定義する「エンゲージメント」とは? 近年、人事の業界ではエンゲージメントという言葉をよく耳にします。しかし、その言葉の意味については意外と整理されていないのが実情です。今回は改めて『エンゲージメント』についてご紹介します。 [目次] エンゲージメントとは? なぜ重要視されているのか? 具体的なサービス まとめ エンゲージメントとは? 従業員の仕事や会社に対する考え・状態を表す言葉として、様々な言葉があります。例えば、モチベーション、従業員満足度、コミットメント、など。普段、混同して使われがちですが、実はそれぞれ意味が異なります。 「モチベーション」は従業員のやる気を意味しています。会社に対してというよりも、仕事に対して個人の中に内在する動機付け要因と捉えてもいいかもしれません。目標に向かって進む際の内的なエネルギーとなりますが、会社と従業員の方向性があっていることが大事なことです。 「従業員満足」は会社に対する従業員の満足度を意味しています。顧客満足度を高めるためには、まず従業員満足度を高めることが重要である、との考えのもとで取組みの推進が行われました。ただし、従業員が満足するためには会社がどのような環境を提供すればよいのか?といった、会社から社員に対する一方向の関係に向かいやすい傾向があります。 「コミットメント」は約束や責任のことを意味しています。矢印は社員から会社に向いており、所属している会社に対して全うすべき責務として捉えられます。 そして、「エンゲージメント」は会社と従業員の間におけるつながりの強さを表しており、従業員が自発的に持つ思い入れや貢献意欲のことを意味しています。矢印も従業員と会社における双方向の概念で表現されます。 なぜ重要視されているのか? これまでは、モチベーションや従業員満足度を向上させることが会社の業績向上に結びつくという考えのもと、社員向けにサーベイや人事施策が行われることが多くありました。 しかし、最近ではそれらの内容に関して見直しを始める企業がでてきました。例えば、従業員満足は言い換えると「居心地の良さ」にも繫がる部分もあり、必ずしも業績向上へと結びつくものではないと考えられ始めています。 そんななか、いくつかの研究により「従業員エンゲージメント」の向上と業績向上には強い関係が示され、近年注目されるようになってきました。 この従業員エンゲージメントという概念は、日本ではまだまだ馴染みの薄い概念です。 アメリカの調査会社ギャラップ社が2017年に発表した従業員エンゲージメントに関する調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかいないという結果でした。参考までにアメリカは31%。その他の国と比較しても大きく乖離がでています。 ※調査結果はこちらから確認できます。 この調査結果からは、階層的なリーダーシップが強い半面、マネージャーがコーチングのような従業員の強みや・自主性を引き出すことが難しい状態であることや、日本独特の雇用制度や就業文化に基づいた組織中心の考え方が、逆に従業員の意欲を下げていることが伺えます。まだ日本企業では、従業員エンゲージメントを重視した経営が浸透していないことも要因と考えられますが、企業と従業員の間で強い信頼関係を築き、高い貢献意欲を醸成するためには、もっと個々の従業員のニーズや欲求に応える従業員中心の経営に移行する必要があるのかもしれません。 具体的なサービス そんなエンゲージメントを定点観測をするためのツールをご紹介します。 Glint https://www.glintinc.com/ 2013年創業のアメリカ・カルフォルニアの会社です。 ミッションは、「Our mission is to help people be happier and more successful at work.(人々が職場でより成功、より幸せになる手助けをする)」。 組織の健康状態と表してエンゲージメントの状態を可視化し、どんなアクションをするべきかなどのインサイトを提供します。 数百名から数万名規模の会社まで、大小様々な企業が利用しています。 市場の期待も大きく、2016年には$27Mの追加調達をしています。 まとめ ギャラップ社の調査結果でも分かるように、まだまだ日本では浸透しているとはいえない「エンゲージメント」という概念。しかし、自発的に貢献する意欲の高い社員が増えることで一人ひとりのパフォーマンスが向上し、それが最終的に組織力の強化につながっていくということは想像できます。 労働人口が減っていく現在、優秀な人材の確保は企業の重要課題にますますなっていきます。退職者を減らし、熱意を持って働く人を増やすためにも、まずは社員の現状を把握するためのエンゲージメント・サーベイを定点的に行い、そしてPDCAを回すことからスタートしてみてはいかがでしょうか。
人事施策 2018年5月28日 欧米の大手企業が導入する新しい評価制度ノーレイティングとは? 年度初めに目標を立案し、その目標の難易度や達成度に応じて人事評価をする。多くの日本の企業が実施してきた従来の方法が機能しなくなってきています。 そんななか欧米の企業を中心に導入が進んでいる「ノーレイティング」。今回は「ノーレイティング」についてご紹介します。 [目次] ノーレイティングとは 背景 具体的なツール まとめ ノーレイティングとは ノーレイティングとは、これまで行っていたスタックランキング制度(成績をA、Bなど全体からの相対評価でランキングをだす制度)は行わず、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う仕組みのなかで、上司が部下のパフォーマンスをマネジメントする人事評価の仕組みのことをいいます。 背景 近年、従来型の人事評価制度(年度初めに目標をたて、その実績に応じて、年度末にS,A、B、C、Dなどのランク付けを行って評価を行う)には大きく以下3つの課題がでてきました。 1. ビジネススピードが速くなり、目標達成サイクルとの乖離が発生してきた 2. スタックランキング制度は個人間の競争は生み出すが、チームワークや周囲とのコラボレーションは生まれにくい 3. 年度末に膨大な評価のための時間(手続きやドキュメントなどの準備)が必要とされる一方、評価をつけることが目的となり、形骸化してきている 従来、人事評価は賞与の決定や優秀な社員の昇格などを行うために活用されてきましたが、従来型の制度では時代の流れとともに、人材不足が進む中で優れた社員のエンゲージメントを高め、会社全体のパフォーマンスを上げるという本来の目的に対して機能しづらくなってきています。 こうしたなか、「ノーレイティング」という考え方が2012年ごろから欧米を中心に広がりをみせています。 ノーレイティングでは、月に1度などの頻度で定期的に主にマネージャーとメンバーとの間で1on1ミーティングを行います。メンバーのそれぞれの活動に対して、評価ではなく行動改善や成長につながるフィードバックをリアルタイムに行っていくことにより、業績向上に導いていきます。こちらの記事にも記載していますが、適切なタイミングでフィードバックを行うことは、効果を発揮するうえで非常に大切です。そして、必要に応じて目標も変化させていくことで、変化の激しいビジネス環境への対応も可能となります。 従来型の人事評価が、評価の目的を人材の査定に置いているのに対して、ノーレイティングでは人材育成を目的にしている点も特徴としてあげられます。 具体的なツール ノーレイティングを実施するためには、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う必要があるため、それらを管理するツールが欧米では活用されています。 Engagedly https://engagedly.com セントルイスに本社を構えるアメリカの会社です。 彼らの提供するプラットフォーム Engadedlyは、目標設定、マネージャーフィードバックの管理、ナレッジシェアなど、ノーレイティングを実施するための機能が含まれています。 2016年にはアメリカのHRTECHに関するメディア「HRTECH OUTLOOK」にて、Top10 HR Cloud に選ばれ、現在では中小から大手まで様々な規模の企業に利用されている注目の製品です。 まとめ 相対評価を可視化したスタックランキング制度は個人の競争を促すことを中心にマネジメントをしていたころは有効でしたが、チームワークを生みづらく、オープンイノベーションの考え方に代表されるような共創の時代には向いていないかもしれません。 ノーレイティングを実施する際に重要となってくるのがマネージャーのマネジメントスキルです。メンバーとのコミュニケーション機会が増えるため、マネージャーにとっては工数が単純に減るわけではありません。効果的な1on1を実施できるかどうかにより、メンバーの成長度合いや評価に対する納得度も大きく変化するため、より高度なスキルが求められます。 今後の企業戦略において、マネージャーであるミドル層のスキルや資質はより一層重要になってくるのではないでしょうか。
人事施策 2018年5月06日 報酬だけではない!レコグニションの仕組み化で社員エンゲージメントを高める 日本の労働人口が減少している現在、社員ひとりひとりのエンゲージメントを高め、長期的に活躍してもらうことは企業や人事部門にとって重要な検討事項です。 では、どのようにすればエンゲージメントを高めることができるのか?今回は「レコグニション」についてご紹介します。 [目次] レコグニションとは? レコグニションを構築するための5つのポイント 海外のレコグニションプログラム提供サービス まとめ レコグニションとは? 「レコグニション」とは、日本語に直訳すると「認識」や「承認」という意味です。人事用語としては、「社員の活躍を認め、承認・称賛することを仕組み化する」ことです。以前、リワードプログラムについて紹介しましたが、「社員の活躍に対して報いる」という意味ではリワードもレコグニションも同じです。しかし、大きな違いとしては、リワードは金銭を伴うインセンティブのことを指し、レコグニションは非金銭的報酬で承認・称賛することを指します。社員の取り組んでいる仕事に価値があることを示し、ポジティブな職場の雰囲気を作りだすなど、より企業カルチャーへの影響が強いのが特徴です。 具体的な例としては、表彰制度、社内SNSで称賛しあう文化、ありがとうカードなどがレコグニションになります。 レコグニションを構築するための5つのポイント 最近の研究では、社員に対して前向きなフィードバックをするには、次の5つのポイントが重要であることがわかってきました。 1.即時 あとでまとめてフィードバックするよりも、その時々にすぐにフィードバックをする方が効果が高いと言われています。 2.誠実 何かを意図してやテクニックで承認・称賛をしても相手には響きません。承認・称賛は心から伝えることが大切です。 3.具体性 「いい仕事したね」などの曖昧な表現よりも「前年比200%の売上達成はとても素晴らしいね」など具体的に表現するほうが相手によく伝わります。 4.バランス 感謝する対象に対するレコグニションの釣り合いも重要なポイントです。メールで伝えるのか、電話で伝えるのか、わざわざ会って言うのかなど、伝え方だけ考えてみても重みが変わります。 5.ポジティブ 「これは×だけど、これは◯だね」などのように批判的なことと一緒に行うと効果はでません。良いことだけをフィードバックすると効果が高まります。 どれも受けて側にたつと納得のポイントです。これらの5つのポイントをレコグニション構築の際には念頭におくことで、効果の高い仕組み構築が可能になるかと思います。 海外のレコグニションプログラム提供サービス このような承認・称賛について、特に昔の日本では暗黙的という考え方が強く、あえて言わないという文化的な側面もある気がします。一方で欧米では必要なことは仕組み化していく、具体的にアクションをしていくという文化的な傾向があり、レコグニションについても、サービスが生まれてきています。 Achievers https://www.achievers.com 2002年に設立されたカナダの会社です。「Change the way the world works(世界の働き方を変える)」ミッションに掲げ、レコグニション、リワードに関するプラットフォームを提供しています。 ※レコグニション単体のシステム(承認・称賛を可視化するなどのシステム)はあまりなく、リワード(外部サービスと連携した福利厚生)がセットになるシステムが多くなります。 まとめ 個人の価値観によりますが、世の中報酬だけを目的に働く人だけではありません。ましてや、モチベーションは些細なことで大きく変わります。 最適なレコグニションの構築は経営的な観点からも、お金をかけずとも業績があがるという経済的合理性を発揮します。また、会社の文化構築や変革にも大きく寄与するため、働きやすい職場という競合優位性にもつながります。 継続的かつ頻発に承認・称賛が発生する仕組みを組織に作り込むことで、社員のエンゲージメントが向上し、イキイキと働くことや高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。 自社に合うレコグニションの構築を人事施策に取り入れてみてはいかがでしょうか。
人事施策 2018年4月03日 AI時代の人事に欠かせない『ピープルアナリティクス』とは? テクノロジーの進化、特にビッグデータとAIの組み合わせは、これまで「人」がしていた仕事の概念そのものを変えようとしています。 人事の仕事についてもその変化が訪れています。今回はそんなビッグデータとAIを活用するピープルアナリティクスについてご紹介します。 目次 ピープルアナリティクスとは ピープルアナリティクスの導入と活用 具体的なツール 今後の人事に求められること ピープルアナリティクスとは ピープルアナリティクスとは、企業内に蓄積されている従業員データを収集・分析し、人事の施策(採用、人材配置、組織力の強化など)に役立てる取り組みをいいます。ビッグデータ解析や機会学習技術の発達とともに、ここ1、2年でピープルアナリティクスは大きな広がりをみせています。 企業内には大量の人事データが眠っています。 具体的には、給与や賞与、退職金、人事評価結果、フィードバック、1on1、教育研修実績、福利厚生の利用内容、退職実績・事由、休暇取得、出退勤時刻、残業時間、など。 これらの社内にある膨大な情報を有機的に結びつけ分析することで、「自社/自組織のパフォーマンスに大きな影響を与える要因は何か?」、「短期間で辞めてしまう社員にはどのような特徴があるのか?」などの今までは特定が難しかったことに対してデータからアプローチすることができるようになります。既に自社に合う人材の採用や離職率の低減などの施策に活用する企業もでてきており、これからはピープルアナリティクスを活用した経営課題の解決や予測に基づく人事施策を行うことは特別なことではなくなっていくのかもしれません。 これまでは、人材に関してはデータ化してもその特徴をつかむことが簡単ではなかったこともあり、経験や勘、前例に基づいて「こんな感じの人が活躍しそうだ」「あいつが退職しそうだ」などと判断していることが多くありました。しかし、ピープルアナリティクスの導入により、経験や勘ではなく、ファクトに基づく確かな判断が可能になるのです。 ピープルアナリティクスの導入と活用 では、どのようなステップで導入していくべきでしょうか。導入ステップとしてABCDで考えるとスムーズに進みます。 (ピープルアナリティクスのABCD) 情報がデータ化されていなければ、ピープルアナリティクスを実施することはできません。自社のステージを把握し、適切なステップで導入していくことをお勧めします。 導入後はピープルアナリティクスで得られる情報をどのように活用していくかが重要になります。 「今あるデータをベースに未来を予測」することで、経験や勘とは違う効率的かつ効果的な人事アクションの実施につなげることができます。 具体的なツール ピープルアナリティクスのツールとして、海外では「Visier」が台頭してきています。 Visier https://www.visier.com 2010年にSAP, Business Objects, Crystal Decisions, OracleなどのBI(Business Intelligence )業界出身の方々が設立したカナダ バンクーバーの会社です。 既に世界中で120社を超える大手企業が利用しており、クラウド上には300万人分を超えるデータが蓄積されています。 topページの「Goodbye Reports. Hello Insights.」に彼らのコンセプトが非常に分かりやすく表現されています。レポート自体には価値はなく、次の施策に結びつける「洞察」をツールとして提供することを目指しています。 今後の人事に求められること 2018年3月24日の日経新聞に銀行の大量採用が終わりを迎えるという記事が掲載されていました。 メガ銀、大量採用に幕 その中の「人材を無駄づかいしてきた面は多分にある」というコメントが非常に印象的でした。有力大卒の人材をまとめて囲い込みながらも、事務作業などの比較的単純な作業に労力を割くウエートが大きいという意味でした。 事務的な仕事はどんどんコンピュータに置き換わり、人の仕事が再定義されてきています。 ピープルアナリティクスが浸透していくことにより、データから出てくる情報をもとに「どう判断するか」「どう施策に反映させるか」が、より一層重要になってくるのは間違いありません。 これからの人事には、データや数値の持つ意味を読み解き、経営のビジネスパートナーとして、戦略的な提言を行う人事部門に変化することが求められています。
人事施策 2018年3月04日 社員エンゲージメントを高めるリワードプログラムとは? 社員のエンゲージメントを高め、ひとりひとりが高い業績に貢献できるようにすることが人事の施策。 その施策のひとつでもあるリワードプログラムについて、USでは面白いサービスがでてきています。今回はそんなリワードプログラムについてご紹介します。 目次 リワードとは? エンゲージメントにつながるモチベーションの構成要素 リワードプログラム具体的な外部サービス例 まとめ リワードとは? リワード(Reward)とは日本語に直訳すると「報酬」「褒美」のことです。人事施策の場合は一定の成果に対するインセンティブのことを指します。 では、どんなリワードが効果を発揮するのか? そのためには、まずはじめにトータルリワード(金銭的な報酬だけではなく、非金銭的な報酬を含めた包括的な処遇)を考える必要があります。 トータルリワードとは何か?その構成要素を以下の表にまとめました。 【トータルリワード】 金銭的報酬 直接報酬 基本給 賞与 インセンティブ 退職金 間接報酬 法定福利厚生 法定外福利厚生 能力開発支援 非金銭的報酬 仕事 成長機会、キャリアアップ 仕事の重要性 仕事の面白み 社会的な認知 労働環境 共感できる価値観 リーダーシップ 従業員間のつながり(協働、コミュニケーション) ワークライフバランス これらを企業の人事方針や総額人件費予算などに基づいてバランス良く考えていきます。 分かりやすい例として、例えば企業の人事方針が「業績に応じて給与を払う。従業員には成果をしっかりと求める。その代わりペイフォーパフォーマンスを重視する。」という場合は、金銭的報酬の直接報酬であるインセンティブへの配分を多くする、ということが考えられます。 グローバル化が進みダイバーシティが求められる昨今、個人の価値観は様々です。そして、その個人の集合体である企業にも、それぞれ異なる価値観が存在します。企業の価値観と独自の魅力的なトータルリワードを設計・提供していくことが、求める人材を惹きつけることや働く社員のモチベーションの向上につながります。 エンゲージメントにつながるモチベーションの構成要素 エンゲージメントを高めるためにはモチベーションの向上が大きく関係してきます。モチベーションの構成要素は大きく以下の2つになります。 ・外発的動機づけ ・内発的動機づけ 外発的動機づけとは、外的報酬(賞罰や昇進など)によって触発され、動機が高まることです。 ビジネスにおいての外発的動機づけは金銭である場合が多く、短期的に動機づけるのには有効です。しかし、長期的に維持するためには、外的報酬を繰り返したり、より強い外発的動機づけを必要とするなどのコスト増加の弊害があります。コストを支払い続けることができればいいですが、他社に高い報酬を提示されることで、すぐ転職をしてしまうなど、長期目線でみると、外発的動機づけだけでは自社に対するエンゲージメントやリテンションへの効果を発揮させることは難しいかもしれません。 一方、内発的動機づけとは、外的報酬によらず、個人の意欲・成長欲求・好奇心によって 動機が高まることです。内発的動機づけによる学習は、個人の持つ探究心や情熱がベースとなるため、学習の継続性、学習効果の高さ、さらには創造的な思考が強化されます。ビジネスでは創造的な解決策が必要であり、内発的動機づけによる学習、スキルの獲得、パフォーマンスが重要とされています。 リワードプログラム具体的な外部サービス例 多様な人材が働くUSの企業では、社員エンゲージメントを高めるためにさまざまなリワードプログラムが活用されていますが、その中でも近年ユニークなサービスを提供する企業ががでてきています。 https://www.blueboard.com/ 2014年のサンフランシスコ、週60時間のハードワークの末にリワードとして与えられたAmazonギフトカードに温かみを感じることができなかった二人が、もっと人間味のあるリワードをと想い起ち上げた会社です。金銭だけでなく、冒険などを通じた「体験」こそがエンゲージメントを高めるという考えのもと「体験」につながるリワードプログラムを実施可能なプラットフォームを提供しています。 http://www.globoforce.com/ レコグニションにフォーカスしたプラットフォームを提供している会社です。社員同士で賞賛・表彰しあう仕組みの構築が可能で、これらにより内発的動機づけを刺激し、モチベーションの向上につながけていくことができます。 まとめ HRテック先進のUSでは、さまざまな手段を講じて、いかに社員のエンゲージメントを高めるかが考えられています。 業績達成のインセンティブに旅行を与える企業などもありますが、団体旅行ということもあり、実際の金銭を与えるよりも割安で効果的な「体験」を与えることができたりします。 「インセンティブには金銭を与える」と単純に考えるのではなく、より工夫して企業の価値観に沿ったリワードプログラムをつくることが、独自の企業文化を醸成し、高い社員エンゲージメントへとつながっていくのではないでしょうか。