コラム

ワインで対談

AIの導入で人事の仕事はどう変わる? – AI研究家・大西 可奈子さん × セレブレイン 関 将宏【前編】

AIの導入で人事の仕事はどう変わる? – AI研究家・大西 可奈子さん × セレブレイン 関 将宏【前編】

セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第9回ゲストは、NTTドコモで対話AIの研究開発に携わり、3月には著書「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」も出版された大西可奈子さん。AIが人事業界に及ぼす革新と現状についてお話いただきました。聞き手はセレブレイン 人事戦略コンサルティングユニット マネジャー・関 将宏が務めます。

第9回ゲスト:大西 可奈子さん略歴
お茶の水女子大学修了後、株式会社NTTドコモ入社。国立研究開発法人 情報通信研究機構への出向を経て、現在はNTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部で自然言語処理と対話AIの研究開発に従事。著書に『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』(マイナビ出版)など。講演・執筆活動などマルチに活躍している。

まずはワインで乾杯! 暑い夏にぴったりのスパークリング!

関(将):大西さん、ようこそ「あじる亭 Annesso」へ! ワインはお好きですか?

大西:最近、ワインにハマっているんですよ! 実はこちらの姉妹店であるセレブールには何度かお邪魔したことがあります。

関(将):そうだったんですね! あじる亭 Annessoはちょうど先日、リニューアルオープンしたばかりなんです。ぜひおいしい料理とワインを楽しんでいただきたいです。

大西:おいしいものには目がないので、もう今からワクワクしています(笑)。

関(将):ではお話の前にまずはスパークリングで喉を潤しましょう!

野村/店長:本日も暑いですね。こんな日にぴったりのスパークリングワイン、フランスはブルゴーニュのヴァン・ムスーをご用意しました。ブラン・ド・ブランといって、白ぶどう100%で作られています。豊かなコクとさっぱりした酸味があって、後味もすっきりですよ。

大西:おいしい! もうずっと猛暑続きなので、冷えたスパークリングワインは最高ですね!

関(将):ぐいぐい飲んじゃいますね。……大西さん、けっこうお強いのでは?

大西:そうですね、けっこう飲む方だと思います(笑)。

関(将):おお! ぜひたくさん飲んでくださいね。さて、このまま酔っ払ってしまう前に(笑)、人事とAIについてお話を伺わせてください。

大西:はい。人事とAIの組み合わせは個人的にも注目している領域の一つです。私の方こそ本日はいろいろと教えていただきたいですね。

なぜAIの解説本を出版したのか

野村/最初のお料理とワインをお持ちしました。当店では世界各国のワインを扱っていますが、モンテネグロというちょっと珍しい国のワインです。

大西:たしかに初めて見ました! モンテネグロでもワインを作っているんですね。

関(将):モンテネグロってどこでしたっけ?

野村/店長:イタリアの反対側に位置する小さな国ですね。モンテネグロのワインはあまり国外に出ないので、日本でも目にすることは少ないと思います。

大西:本当にワインの世界は広いですね。

野村/店長:そしてお料理はホタテと夏野菜のガスパチョ仕立てです。ガスパチョのソースには野菜の旨味がぎゅっとつまっています。せっかくですので、ソースもぜひパンにつけるなどして召し上がってみてください。

大西:うん、酸味がさわやかですごく夏っぽいです! 見た目もかわいいですね。

関(将):このワインとまた合いますね!

野村/店長:ワインはソーヴィニヨン・ブランというすっきりさわやかな品種なんですよ。

大西:外の猛暑がすっかり吹き飛びました(笑)。

関(将):さて、まず大西さんのお仕事にいろいろとお聞きしたいのですが、そもそもAIに興味を持つきっかけは何だったのですか?

大西:どこまで遡るかによりますが、最初に興味を持ったのは子ども時代です。鉄腕アトムが大好きで、あの可愛らしいフォルムと、ロボットが家族になる世界観に惚れ込みました。それで、コンピュータ系の仕事に就いて、鉄腕アトムをつくることが夢になったのです。

関(将):子ども時代からですか! 当時はまだ今みたいにAIブームというわけではなかったですよね。

大西:そうですね。AIという言葉がフィーチャーされたのは本当に最近のことで、私が大学生の頃はまだ今のように流行ってはいませんでした。世間的にはまだ、SFに出てくる言葉のような現実味のない概念だったと思います。

関(将):AIというと今は第3次ブームだと言われていますね。

大西:ええ。第1次と第2次ブームはかなり昔のことで、あくまでも研究者の中でのトレンドという感じでした。今の第3次ブームになって、ようやく一般社会のビジネスなど目に見える形になった印象です。

関(将):そうですね。ようやく地に足がついた感じがあります。今のブームは単なる流行り物で終わらず、このまま定着していきそうですよね。

大西:そう願いたいですね。

関(将):話を戻すと、そこから大西さんは大学に入ってAIの研究に?

大西:AIの一つの領域である自然言語処理を専門に研究していました。今でこそ自然言語処理は花形領域ですが、当時は地味な研究でしたよ(笑)。

関(将):就職されてから急にブームが来た、と。

大西:そうなんです。私としてはやっていることは変わっていないのですが、世の中の方が変わりました。おかげさまで、メディアでの連載や講演活動、著書の出版など、お仕事の幅が一気に広がっています。もともと話すことや伝えることは大好きなので、そういったお仕事をいただけるのは嬉しいですね。

関(将):著書といえば、3月に「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」を出版されましたよね。何度も重版がかかるなど好評とのこと。実は私もこの対談が決まる前に、ふつうに購入して読ませて頂きました。

大西:ありがとうございます!

関(将):AIの基本から応用まで、体系立てて勉強できる本が意外と他になくて、とても勉強になりました。この本はどうして書こうと?

大西:その理由は私自身の経験にあります。AIといえば機械学習やディープラーニングがトレンドの技術ですが、実は私はそれらの専門ではなかったんです。あくまでも自然言語処理の専門家だったんですよ。むしろ素人だったといっても過言ではないです。

関(将):えっ、そうだったんですね。

大西:でも、どんどん技術は進化し、時代は動いています。入社後はやはり機械学習の技術が必要になりました。それで必死になって勉強したのです。その後、国立研究開発法人 情報通信研究機構に出向するのですが、今度はディープラーニングの知識が必要になり、またしても勉強するはめになりました(笑)。

関(将):なるほど、まさに時代の転換点を過ごしてこられたのですね。

大西:機械学習やディープラーニングについて勉強しているときに私が感じたのが、「世の中には初心者向けのAI解説本と、めちゃくちゃ難しい技術書はあるのに、その間をつないでくれる本がない」ということでした。つまり、一冊でAIのことを体系立てて学べる本がなかったのです。だったら私が書こう、と。

関(将):ああ、たしかにわかります。今はインターネットにいろいろな情報がありますが、あれも記事単位でバラバラですからね。

大西:ちょうどその頃、知人の紹介で「IT Search+」というメディアにAIの解説を連載することになりました。その内容をまとめて加筆したものが『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』なんです。

関(将):よくわかりました。大西さんご自身の経験から来ていたとは……。

大西:私のようにこの本を必要としている人がきっとたくさんいるはずだと思っています(笑)。

関(将):まさにそうだと思います。というのも、今あらゆる会社がAIをビジネスに活用しようと取り組んでいます。そういった会社の方がAIを理解する手始めとして本書はぴったりだと思いました。

大西:そうなんです。AIを理解しようというと数学を勉強しなきゃいけないのかなと身構えてしまうかもしれませんが、はっきり言って数学の知識は必要ないんです。コードはネットにいくらでも落ちていて、少し手を加えるだけで使えたりします。エンジニアなら別ですが、その他の職種レベルで大事なのはAIという概念を理解できているかどうかです。

関(将):機械学習やディープラーニングにしても、データの学習はAIが勝手にやってくれるわけですからね。大事なのはデータをどう読み取るかですよね。

大西:おっしゃる通りです。

人事部へのAI導入に必要な人材・スキルとは?

野村/店長:続いてのお料理は飯ダコとオリーブのマリネです。飯ダコと夏野菜をマリネにして、もち米を食感のアクセントに。ケッパーでさっぱりとした味付けにしています。合わせるワインはギリシャのサントリーニ島を代表するアシルティコという品種を使った白ワインです。

大西:サントリーニ島ですか! 私、旅行が大好きでサントリーニ島にも行ったのですが、アシルティコはそのとき飲めなかったワインです。まさか今日飲めるなんて、嬉しいです!

関(将):先ほどのワインとはまた少し違ったさわやかさで面白いですね。

大西:何だかギリシャの潮の香りを感じるようなワインですね。柑橘系のニュアンスでさっぱりしているけど、コクもあって、旨味の豊富なタコにしっかり合いますね。

関(将):食欲がどんどん湧いてきます(笑)。さて、人事部へのAI導入についてもお聞きしたいのですが、AIを取り入れていくとしたら、具体的にはどういった作業が必要になりますか?

大西:人事部に限った話ではありませんが、何より大事なのは“今ある課題の中でAIが得意な仕事を探す”ということです。AIも1から100までなんでもできるわけではなく、得意なことと苦手なことがあります。今抱えている課題の中で、AIが得意とするものを見つけることが必要なんです。

関(将):仕事の中のどこをAIに置き換えるか、ですか。そうなるとむしろAIの知識よりも今の業務への理解が必要ですね。

大西:まさにそうなんです。人事の仕事にどんなものがあるのかを知らなければ、どれをAIに任せるのがいいのかわかるわけがありません。それから、どこまでならAIができるのかを知っておくことも大事です。

関(将):一人ですべて理解できる人ならいいですが、そんなスーパーマンはなかなかいませんよね。

大西:ふつうはそうです。ですからチームの座組が大事になります。人事の仕事に精通し、「ここはAIでいけるのでは?」と考えられる人。それを実現するためには具体的にどんなデータが必要なのかを考えられる人。そしてそういったAI活用のやり方を現場にうまく伝えられる人。もっというならビジネスにどれくらい貢献できるのかを想定して上司を説得できる人も必要でしょう。

関(将):データを取得するといっても、人事部はあまり予算をかけられないことも多いので、既存のデータをうまく活用できるスキルが重宝されそうですね。

大西:その通りですね。

前編では大西さんのお仕事や、AIとは何かといったお話を伺いました。後編では具体的にAIをどう人事に生かしていくのか、AIで仕事がどう変わっていくのかといったさらにディープなトークを繰り広げます。

今回のお店

あじる亭 Annesso

赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ!
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