コラム
人事施策
効果的なフィードバックで部下の成長を促進させる 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜
サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜にて実践に必要なパーソナルパワーについてご紹介しました。今回は部下の自主性を引き出す4つのコミュニケーションスキルから「フィードバック」についてお伝えします。
サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル:
1. 傾聴
部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力2. 質問
部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力3. 承認
部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力4. フィードバック
行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力
フィードバックとは?
フィードバックとは、部下が行った行動を自ら振り返り、学びや改善、成長に繋げていくためのアドバイスです。上司は、部下へのフィードバックを通じて、部下に自身の行動の内省を促していきます。成功や失敗から学び、改善を繰り返すことで、人は大きく成長をしていきます。
フィードバックとジョハリの窓
振り返りを行うことは、自分自身のことをよりよく認識・分析し、今後の活動に役立てていくことになります。
以前、客観的視点により社員の成長を促す!360度評価の勧めでもご紹介しましたが、自己認知を考えるのに有名な心理学のモデルが「ジョハリの窓」です。
「ジョハリの窓」とはサンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト とハリー・インガムという二人の名前にちなんでつけられた自己認識を4つの窓に分けた「対人関係における気づきのグラフモデル」です。
「自分の認識」と「他者からみた自分の認識」の違いを理解することで、改善に活かすことができます。
ジョハリの窓は次の4つの窓で構成されています。
・開放の窓:
自他ともに知っている領域です。
自分も周囲の人も知っていることになります。
・盲点の窓:
自分だけ知らない領域です。
自分は知らないが、周囲の人は知っていることです。
・秘密の窓:
自分だけ知っている領域です。
自分は知っているけれど、周囲の人には隠していることです。
・未知の窓:
自他ともに知らない領域です。
自分も周囲の人も知らないことです。
フィードバックを通じた振り返りは、部下に「盲点の窓」を気づかせ、その成長に向けて「開放の窓」を拡げていくことを支援していくことになります。
上司は、時には耳の痛いことも部下に伝えなければならないことがありますが、部下を大切に思い、その成長を支援したいと心から願ってフィードバックすることが大切です。
部下は、上司からのフィードバックを通じて、新たな視点を得たり、過去の行動を整理したり、これまで自分一人では気づくことができなかった考え方を獲得する機会を得ることができます。また、上司とともに振り返りを行うことで、日々の仕事の意義や次の一歩を踏み出すための学びを得ることができます。
フィードバックの種類
フィードバックには大きく以下の2つの種類があります。
1. ポジティブフィードバック
部下の行動の良い点に着目して、前向きな言葉でその行動がもたらす結果や今後の期待を言葉で伝えます。部下の意欲や達成感、自己効力感を高め、自発的な成長を促すことにつながります。ポジティブフィードバックを行う際には、部下の成長を願う心からの気持ちを込めて行うことが大切です。
2.ネガティブフィードバック
部下の行動の改善が必要な点に着目して、どこをどのように変えていくのがよいかを言葉で伝えます。
改善の機会は、部下にとっては成長の機会でもあります。部下を叱る、怒る、非難する、人間性に対して否定的な発言をするのではなく、対象となる行動に対してフィードバックを行いしょう。注意をしないと部下の意欲を低下させ、信頼関係を壊すことにつながることもありますので、言い方には工夫も必要です。
どちらか片方だけ使えばいいというわけではなく、フィードバックの際にはこの2つのフィードバックを適切に使い分けることが大切です。
振り返りを行う時のポイント
上司がフィードバックを通じて効果的に部下に振り返りを促すにはいくつか注意が必要です。以下に重要なポイントを記載します。
・適切な場所を選び、ともにすごす時間をちゃんととる
日常の会話の中でなんとなく行うのではなく、本人が周囲を気にせず話せるように適切な場所と時間を確保して行いましょう。また、上司も部下と一緒に考えて振り返るという姿勢が大切です。
・ポジティブフィードバックから行う
部下に肯定的なメッセージとして伝わるポジティブフィードバックから行いましょう。部下が素直になって心を開く準備を行うと効果的なフィードバックに繋がります。
・部下そのものではなく、行動にフォーカスをあてる
フィードバックは部下の具体的な行動に対して行います。 部下の欠点をあげつらったり、部下の人格に焦点をあてたりすることや、具体性にかける指摘をしたりすることは避けましょう。また、変えられるものに着目することも大切です。過去の結果は変えることはできないため、結果の話だけをしても改善に繋げることはできません。
フィードバックのまとめ
そもそも人は自分から気づかない限り、自分を変えることはなかなかできません。部下が現状を把握し、向き合うことやその改善や成長に向けたアクションの支援をすることがフィードバックです。効果的なフィードバックは部下の目標達成やモチベーションの向上に大きく効果を発揮します。部下の成長支援がうまくできていないと感じる方は、これまでのフィードバックのやり方は適切だったのか、一度見直しをしてみてもいいかもしれません。
最後に
これまで、数回に分けてサーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキルとして、傾聴、質問、 承認、フィードバックをご紹介してきました。
部下の話に心から耳を傾け、否定したり、自分の話をせずに真剣に聴く。
部下の頭の中を整理するために、効果的な質問を行う。
部下の日々の行動をよく観察し、適切に承認を行い、部下の仕事への意欲を上げる。
フィードバックを通じて振り返り、気づきや学びにつなげる。
これらの一連のことを部下を信じ、きちんと向き合って行っていくことで、部下との信頼関係が醸成され、部下の内なるパフォーマンスを引き出し、自発的な活動につながります。様々なテクニックもご紹介しましたが、一貫して一番大切なことは、表面的ではなく、心から部下と向き合うことです。上司は部下の自主性を尊重し、支援・奉仕を通じて信頼関係を育み、一人ひとりが前向きに能動的に活動していく環境を作ることが最も重要な仕事といっても過言ではありません。部下をもつ方々はチームとしての成果を最大化させるため、今回ご紹介した「サーバント・リーダーシップ」を発揮してみてはいかがでしょうか。
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