コラム
ワインで対談
“顔と名前が一致しない”を解決するサービス「カオナビ」は人事制度をどう変革するのか – カオナビ柳橋仁機さん × セレブレイン高城幸司【後編】
セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第2回ゲストは、株式会社カオナビ代表取締役社長・柳橋仁機さん。同社が提供するクラウド人材管理ツール「カオナビ」誕生の背景と、日本の人事の未来について伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司が務めます。
第2回ゲスト:柳橋仁機さん略歴
アクセンチュア、アイスタイルを経てサイバーエージェントのジョイントベンチャー子会社立ち上げに参画。その後、独立し「社員の顔と名前が一致しないを解決する」ことをコンセプトにしたクラウド型人材管理ツール「カオナビ」をリリース。株式会社カオナビ代表取締役社長。
クライアントのニーズを満たす「お皿とお団子戦略」
高城:ここまで、カオナビが誕生した経緯や時代背景などについて伺ってきました。サイバーエージェントのお仕事をきっかけにしてアイデアを発想され、現在ではクライアントが600社にまで増えたということでしたね。ここからはさらに深いお話を伺っていきたいと思いますが、ちなみにワインとお料理はいかがですか?
柳橋:とてもおいしいです。どんどんいけちゃいますね(笑)。
高城:それは嬉しいですね(笑)。ではお話に入る前に、次のワインとお料理をどうぞ。真ダコのマリネ「セビチェ」をご用意しました。さっぱりとしていて、パプリカパウダーでアクセントをつけた料理です。合わせるワインはビリキーノ・ワインズのマルヴァジア・ビアンカ2014です。
柳橋:うーん……これは爽やかでおいしい! マリネともよく合いますね!
高城:マスカットや桃、ミントなどのアロマティックな香りが、セビチェのスパイスとぴったりですよね。
柳橋:先ほどの微発泡スパークリングもよかったですが、こちらもすばらしいです。
高城:夏らしい組み合わせを楽しんでいただきながら、お話の続きを聞かせてください。今後、カオナビとしてはどんな展開を考えられているのでしょう。
柳橋:お客さまからは、カオナビ上であんなこともこんなこともやりたいというご要望をいただいています。たとえば、評価ワークフローを出して評価結果を見たいとか、適性検査の結果を蓄積したいとか、動画研修の履歴を残したいとか。カオナビに人事マスターが入っているので、キャリアに関わる情報をそこに蓄積したいというニーズが想定以上に増えているんですね。顔写真と人事情報を管理するというベーシックな機能を「お皿」とするなら、そこに載せる新しい機能が「お団子」です。このお団子を一つひとつ用意していくのが、今後のビジネス展開になってくると思います。
高城:そういうことは創業当時から考えていたことなのですか?
柳橋:考えていました。僕は開発者なのでデータベース的な考え方が強くありまして、人事のマスター情報をベースにプラットフォーム化したほうが有利だと思っているんです。評価ワークフローとか動画研修履歴とかは人事のマスターデータに紐づくものですから、最初からそこにコミットする機能を作る必要はありません。まずはベーシックなニーズでお客さまを増やして、お団子となる機能は後から増やしていくという戦略でいこうと考えたのです。
高城:なるほど。お皿の機能を充実させつつ、お団子を用意していくと。
柳橋:ただ、お団子の部分は外部パートナーとの連携も含めて考えています。こちらが綺麗で大きなお皿を用意できれば、外部のお団子屋さんとも連携がしやすくなるのではないかと。
高城:基本的な部分をしっかり作り込むことが大事ということですね。どういうところにこだわってらっしゃるのですか?
柳橋:UIやUXにまったく違和感を覚えない世界まで持っていきたいですね。普通にクリックしたときに画面がロードしたり、ちょっと遅いと思ったり、ボタンの位置がわからなかったり……ちょっとでも引っかかりがあるのはダメなんです。何のストレスもなく使える状態にしたいですね。
高城:これまでにも相当改善を進めてこられたわけですね。
柳橋:でもまだ2割だと思っています。できることはまだまだあります。
HRテックで変わりゆく日本の人事業界
高城:それでは最後のお料理とワインです。このケイジャンスパイスチキンはこのお店の人気メニューです。炭火でじっくり揚げているので、ジューシーで柔らかいです。スパイス検定1級を持ったシェフ特製のスパイスが刺激的ですよ。
柳橋:スパイシーでおいしいですね! ふだんは辛いものが好きで、韓国料理や中華料理をよく食べるんです。
高城:そうでしたか! 今度のワインはオレンジワインです。よく合うでしょ?
柳橋:本当ですね。ロゼよりも白寄りですね。……うん、おいしい! 実は赤ワインがあまり得意ではないのですが、これはいけますね。鼻にスッと香りが抜けていきます。
高城:ではそちらを召し上がっていただきながら、今後の日本のHRテックについてお話していきましょう。HRテックを普及させるためには何が重要なのか。
柳橋:僕が創業した頃って、それこそ人事情報をインターネット上に置くのはけしからん! みたいな世界だったんですよ。それが5年間で変わったと感じているので、そこは普及してきたところかなと。
高城:たしかにそうですね。
柳橋:それから、最近は1on1のノーレイティング制度が盛り上がっています。今までは目標管理制度でカチッと目標を決めて達成度を期末に評価していたのが、期初に掲げた目標ってだいたい変わるから、その評価制度は機能しないのでは……という問題意識が出始めているのかなと思いますね。
高城:既存の人事制度にとらわれていた部分がノーレイティングで変わろうとしているのですね。カオナビはそうした動きをどう取り込んでいくのでしょう。
柳橋:ノーレイティングや1on1の機能は、何かしらの方法でカオナビ上で実現しようと決めています。それはお客さまに求められたからではなく、世の中はそうあるべきだと僕が思うからです。システム開発の世界はウォーターフォールからアジャイルに移行しました。人事評価もアジャイルであるべきなんです。
高城:そういう動きについてくる業界というと……。
柳橋:やっぱり圧倒的にIT企業が多いですよね。特にITベンチャーはだいたいGoogleさんの制度を参考にしていますよ。
高城:今後、HRテックが広がっていく中で、アメリカなんかだとすごくたくさんのプレーヤーがいるわけですよね。海外のプレーヤーが日本にも上陸し始めていて、そういう黒船の存在をどう見ていますか?
柳橋:すでにワークデイさんなんかが来ていますよね。ただ、現在日本に上陸してきているサービスは、おもに大企業向けに作られた統合型のパッケージ製品が多く、カオナビとはターゲットやサービスのコンセプトが根本的に違うので、あまり気にしていませんが、いずれにしてもアメリカでは大きな実績を持っているので、HRテックサービスの一つとして注視はしています。
高城:今後、やっていきたいことはありますか?
柳橋:僕は医者の不養生は許されないと思っていて、カオナビというサービスで働き方改革やマネジメントの効率を上げると謳っているんだから、自らもそれを実現していかないといけないと考えています。まず、今やろうと考えているのが、給与据え置きのまま1日の勤務時間を段階的に減らすこと。そのためには社員の生産性を上げるための制度や取り組みが必要で、会議を30分制にするとか、マネージャーを飛ばして役員に直接報告していいとか、いろんなやり方を変えていきたいと思っています。
高城:カオナビ自身も変革の時を迎えているわけですね。
柳橋:北欧に目を向けると、そういう会社がざらにあるんですよ。日本は一人あたりのGDPが世界20位以下なんですが、上位が北欧なんです。生産性が高くて、15時とかに帰るのに年収1千万とか普通にもらっている。一番効率的で一番成果が上がる仕事のやり方をしているんです。
高城:そうした世界を目指すのに日本の人事もHRテック、そしてカオナビで改革していかなければいけませんね。本日はありがとうございました!
柳橋:こちらこそ、おいしいワインとお料理をありがとうございました。
あじる亭カリフォルニア
赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。
<本日のワインと料理>
本日お出ししたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。
ポットペラのカルパッチョ
巨大マッシュルームのポットペラをカルパッチョでいただく一皿。ポットペラの独特の食感が生ハムの旨味、オリーブオイルの香りと合わさり、魅惑的な味わいを生み出しています。ポットペラはこの他に炭火焼き、フリットなどの調理法を選ぶこともできます。
ブロック・セラーズ スパークリング シュナン・ブナン
ペティアン・ナチュレルという手法で作られたシュナン・ブラン100%の微発泡ワイン。フルーティーかつ爽やかな苦味がアクセントになっており、バランス良好。ビール感覚でするすると飲めてしまいます。あらゆる料理と相性が良さそうですが、今回のポットペラとはまた格別なマッチングを見せてくれます。
真ダコのマリネ「セビチェ」
真ダコをマリネしてパプリカパウダーをアクセントに加えた前菜。ぷりっとして柔らかな真ダコは食感、味わい共に絶品。添えられた野菜が彩り鮮やかで見た目にも楽しい一皿。ほのかに香るパプリカパウダーの甘酸っぱさと苦味が全体を引き締めています。
ビリキーノ・ワインズ マルヴァジア・ビアンカ2014
南イタリアの品種、マルヴァジア・ビアンカ100%で作られた白ワイン。マスカット、白桃、シトラスなどのアロマティックな香りからは、どこか東洋的な雰囲気も感じます。さっぱりとしたミネラル感もあり、スパイスを使った海の幸との相性は抜群でしょう。
ケイジャンスパイスチキン
炭火でじっくり揚げたケイジャンスパイスチキンはボリュームたっぷりで柔らかかつジューシー。スパイス検定1級のシェフがパプリカパウダー、チリパウダー、クミンパウダー、オレガノなどを配合して作った特製ケイジャンスパイスが使われています。
スクライブ シャルドネ スキン・ファーメンテッド カーネロス
白ぶどうを赤ワインの製法で作るオレンジワイン。基本的には白ワインに分類されますが、わずかに感じられるタンニンが味わいをより深く複雑なものにしています。このタンニンと豊かできれいな酸が、ケイジャンスパイスチキンの刺激的なスパイスとマリアージュします。
ライター・カメラマンの山田井です。カオナビの柳橋社長はまさに日本におけるHRテックの盛り上がりを肌で感じてきた人物。この日はユニークなTシャツでご出演いただき、HRテックプレーヤーとしての本音をずばりと語っていただきました。
白ワインがお好きということで、今回のワインはスパークリング、白、オレンジワインと、すべて白ワインのラインで統一。白ワインというオーダーに対してこれだけの種類をサッとそろえてくださるあじる亭カリフォルニアのすごさを垣間見ましたね……!
お料理はこちらも夏らしいスパイシーなものが中心。特にケイジャンスパイスチキンは、ほどよいスパイスの辛さがオレンジワインの酸と、クリスピーで香ばしいお肉が微かに感じられるタンニンとすばらしくマッチ!
自分ではまず実現できないマリアージュです。これぞプロの技ですね。