コラム
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ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォームで 学び続ける文化の醸成~日本アイ・ビー・エムの例~
近年、ビジネス環境の変化が加速しており、職場での学習の在り方にも変化が求められています。グローバルでは、これまで主流だったLMS(ラーニング・マネージメント・システム)では効果的な学習は難しいという見方が広まり、代わってLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)が注目されています。
本記事ではLMS、LXPとは何か? また、LXPを導入した日本アイ・ビー・エム社の実例を紹介します。
LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは
「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム
「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス
コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速
まとめ
LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは
LMSとは、eラーニングを効果的に進めるための学習管理システムのことであり、「受講者や教材の管理」「学習進捗の管理」が容易になるメリットがあります。
LXPとは、受講者の学習ニーズを自動的に分析し個々のニーズに合った学習リソースを膨大な情報から検索、推奨できる学習システムであり、受講者の自律的な学習を促すのに有効なプラットフォームです。。
「時代はLMSからLXPへ」という主張もありますが、実はそれぞれ長所があります。LMSは社内全体で足並みのそろった学習を行い履歴を残したい場合に有用ですし、LXPは各従業員の自律学習のサポート、社員同士が学びあう文化の醸成に効果的です。目的に合わせて使い分けていくことが大切です。
「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム
ここからは実際にLXPを導入した日本アイ・ビー・エムの例を紹介します。
もともとIBMは、創始者のトーマス・ワトソン・シニア氏の「教育に飽和点はない」という言葉に象徴されるように、社内に学び続ける文化を育ててきた企業です。2013年には、当時のCEOジニー・ロメッティ氏が「THINK40」を提唱し、社員が年間最低でも40時間をスキル開発に充てることを薦めるなど、経営陣が社員のスキルアップや社員への学習機会の提供に強くコミットしています。
優秀な人材が常に学び続けるIBMでは社員の特許取得件数も非常に多く、米国特許取得企業ランキングでも28年連続第1位。創業以来6名のノーベル賞受賞者も輩出しています。
「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス
IBMでは2016年にIBM Watsonの機能を用いたLXP「Your Learning」を導入しました。Your Learningとは一人ひとりにパーソナライズされた学習の推奨ができ、場所を問わず楽しみながら学べる体験重視型のプラットフォームです。SNS機能があり学ぶ人同士が情報共有や評価しあえるところも特徴です。
導入後もデモを通して社員に活用メリットを伝え、意見を吸い上げて改良を重ねた結果、2019年には世界中の社員の約99%が四半期に1回は活用するようになりました。特に日本アイ・ビー・エム社員は活用率・学習時間ともトップクラスであり、2019年の平均学習時間は年間100時間にも達しています。
コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速
日本アイ・ビー・エムでは2020年のコロナ禍で在宅勤務となる人が増え、Your Learningを使ったオンライン学習がさらに加速したこともあり、対面で行っていた研修のほとんどをオンライン化し自宅から学べるように再設計しています。
新入社員研修もすべてオンラインで実施した結果、デジタルネイティブ世代の新入社員はデジタルツールを使いこなして研修は順調に進み、2020年上半期の学習完了数は前年同期と比較し63%増、平均学習時間も30%増加しました。
こうした取り組みが評価され日本アイ・ビー・エムは2020年9月に「HRテクノロジー大賞(後援:経済産業省、他 主催:ProFuture株式会社)」を受賞しました。
まとめ
これまでのe-ラーニングは多様な学びの機会を社員に提供でき、学習進捗管理もスムーズなLMSが主流でしたが、近年は一人ひとりの社員のニーズ・関心にそった自律的な学習を支援できるLXPが注目されています。
学びは、継続こそが重要であり難しい課題です。Your Learningを活用して社員の学びを加速させた日本アイ・ビー・エムの事例は、テレワークを導入していく企業にとって示唆に富んでいると言えるでしょう。