コラム

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「社員のモチベーション」にどう付き合っていけばいいのか

「社員のモチベーション」にどう付き合っていけばいいのか

最近は社員のエンゲージメントを高めるための施策が重要と叫ばれるようになりましたが、類似した言葉に「モチベーション」があります。

もともと、仕事の意欲向上には遠方に旅行も兼ねた研修が効果的。この意欲向上のことをモチベーションと呼ぶ。このように定義したのはJTBであったと言われています。始まりは1990年代。それから、あちこちでつかわれるようになって、定着していきました。

そんなモチベーションの類似した言葉としてエンゲージメントに注目が集まっています。このモチベーションはエンゲージメントと何が違うのか?さらにモチベーションについて、企業はどのように付き合っていったらいいのか?
一緒に考えていきたいと思います。

エンゲージメントだけを高めようとしても…

そもそも、この2つは「誰のため」に頑張るのかという観点から違うものと言えます。

モチベーションは自分自身を高めたいという思いで、エンゲージメントは組織やチームのために貢献したいと思えることです。

企業として成果をあげるためにはエンゲージメントを高めることが重要になってきますが、エンゲージメントを高めるためには、社員のモチベーションが高いことが重要。エンゲージメントだけを高めようとしても、モチベーションが低ければ組織やチームの成長もないでしょう。

ならば、社員のモチベーションをどのように高めたらいいのか?モチベーションが高まるのは自分自身の欲求が満たされたときです。

職場で考えると、自分の仕事が認められたとき、ほめられたときや成果につながったとき、あるいは誰かとの作業がスムーズにいって、いつもより早く終わったときなどに上がる傾向にあります。各自のおかれた状況で満たされるか否か?は違います。その状況を理解するために「マズローの欲求段階」を参考に考えてみましょう。

人間の欲求を5段階に理論化した「マズローの欲求段階」

マズローの欲求段階とは、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化したもののことです。

人間には5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。

下から挙げていくと、生理的欲求と呼ばれる「生きていくための基本的な欲求」「安全・安心」が満たされた安全欲求、組織から受け入れられたい社会的欲求、上司や同僚から認められ褒められたい承認欲求。そして、自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う自己実現欲求へレベルアップするといいます。

多くの人にとって、職場では第4段階である承認欲求が満たされることがモチベーションの軸にあります。そのため基本的に「どうやったら承認してもらえるのか」あるいか「その人は何を承認してほしいのか」に注目すればいいのですが、一筋縄ではいきません。

各自により「稼いで家族を喜ばせたい」「おいしい食事を食べたい」といったように、モチベーションがあがる要因となる欲求は様々なのです。

「経営陣はわかっていない やる気がなくなった」

あるネット系広告代理店では、営業成績に応じて毎月インセンティブとして報酬が支給されていました。ところが経営方針が変わり、歩合給ともいえるインセンティブが廃止され、替わりに、企業の業績とその人物の評価に基づくボーナス支給に変わったのです。その瞬間、モチベーションを大きく下げた人たくさん現れました。

常に業績が高かった社員のDさんは「何のために営業で頑張るのか? 経営陣はわかっていない。やる気がなくなった」と嘆きます。毎月の営業成績に紐づいた報奨金がモチベーションを高めていたにもかかわらず、あいまいな評価で支給されるボーナスでは、モチベーションを高める要因にならないと断言してくれました。

こうしたことを考えると、企業が慎重に考えた結果インセンティブの廃止が行われたのかは、少々疑問を感じます。

ただ実際は、インセンティブがいつも社員のモチベーションがあがる要因であったかといえばそうでもなく、なくなってからありがたみを痛感する要因であったのかもしれません。

本社の所在地がモチベーションをあげる要因に

このように、普段は当たり前のこととして享受していたものの、いざなくなるとモチベーションが下がる要因があります。

例えば、都会のど真ん中にある本社に勤務していたとしましょう。ところが、業績不振で本社が移転。郊外に勤務することになったら、モチベーションが下がった。それから数年後に業績が回復して本社が都心に戻ったらモチベーションが上がったというケースもあります。

つまり本社の位置がモチベーションをあげる要因とは認識されていなかったのです。このように、モチベーションを上げる要因として与えられても気付かないものがあります。

おそらく、同じ企業に勤務している人でも、モチベーションを高める要因と感じていた人と、当たり前だと勘違いしていた人に分かれるのではないでしょうか?なので、大事なことは、享受されているものでモチベーションをあげるべきものとしてきちんと認識し、当たり前と感じないことです。

でなければ、モチベーションをあげる要因を際限なく上げなければなりません。さらに高みを目指すことにモチベーションを感じることも重要に思えますが、当たり前になりすぎて目の前の仕事の積み重ねがおろそかになることは避けたいものです。

「幸せの基準は低い方がいい」成功を収めた経営者

ある成功を収めた経営者が語った「幸せの基準は低い方がいい」という記事が強く印象に残っています。それはちょうど会食中の出来事でした。

同席していた若手経営者が、自分の向上心を周囲にアピールするべく「自分は1回でも成功したレベルの仕事では満足が出来ない性分なのですよ」と語っていたときに、この言葉を発したのです。

その経営者は、加えて「企業と自分の置かれた環境は、仕事で成功を収めれば変化して、確かにスケールが大きくなるかもしれない。ただ、仕事の大きさや難度に関わりなく、成果が出れば喜べる気持ちを失わない方がいい」と語ってくれました。

若手経営者はその言葉を素直に受け止め「自分は慢心していたかもしれません」と反省していたことを覚えています。

この経営者は、なぜこのようなことを語ったのでしょうか。仕事を始めたばかりのときには、小さな成果でも嬉しく思えてモチベーションも高まります。しかし、同じようにささいな成果が続くと、慣れてしまいモチベーションが高まらなくなる。さらに大きな成果を出すようになると、小さな成果でモチベーションが高まることがよくないことにさえ思えてきます。

「そんなささいなことで喜ぶなんて、レベルが低いぞ」と自分を卑下したくなるかもしれません。しかし、その考え方はいいことではありません。小さな成果に対して幸せ=モチベーションが高まる状態をキープすることが、成功を継続させるからです。このようにモチベーションを高める要因は人によって相当に違います。

モチベーションをあげる…上司や同僚がケアする時代

企業としてはモチベーションがあがるように仕向けていきたい。そのための取り組みを上司や同僚がケアする時代になりました。各自のモチベーションが高まる要因を把握して、可能な限り、その状況にもっていく。例えば、「●●な取り組みは素晴らしい」と褒めたたえて承認欲求を満たすとか、学習機会を提供するとか、新たな職場環境を準備するなど涙ぐましい努力をする企業および職場が増えています。

それだけ、モチベーションを高めることの重要性の認識が高まることとともに、下がるとどうなるか?生産性が下がる、離職が増えて、評価が下がる、自分に負担がかかる、などマイナスの要素が多いことを痛感しているからかもしれません。

知人で大企業の管理職をしているGさんは部下のモチベーションが下がるような発言をしてしまい、退職につながり、その退職者の仕事を自分がする羽目になったとのこと。退職者が出たのは上司の責任。採用難で簡単には人材の補充しない方針に転換したことで、痛い目をみることになりました。

あなたの会社にいるかも…下げる要因となる人物

同様にモチベーションを高めないと痛い目をみるとの認識をもつ人は増えています。ところがそんな努力を無駄にするような行為をする人がいます。高めたモチベーションを下げる要因となる存在の人物です。困った存在ですが、意外とみかけます。

例えば、社内で新規事業を起案している意欲的な社員に対して「何回も聞いたことがある」と発言する人。「もう二度と新規事業の起案なんてやるものか」と思うことでしょう。

あるいは「もう1回言っとくけど」「絶対だからね」と、1回言えばわかることを何度も念押したり「◯◯さんがこんなことを言っていたけど、大丈夫?」「私はいいと思うけど、ほかの人はどうかな?」「君はもっとできると思っていた」「これ、何の意味があるの?」「ま、どっちでもいいよ」など、言った本人の中では相手を思ってのことでも、結果的に相手のモチベーションを下げる言動をする人が結構います。

企業の努力が無駄とは言いませんが、削がれていくことになります。企業の職場がモチベーションの高い状態を維持するためには、こうした存在に対してなにがしかの対策を打っておきたいもの。

その対策のキーマンとなるのがマネジメント層。個別に組織でモチベーションを下げる機会につながる発言や行為を行わないようにケアをすることができる唯一の存在だからです。ただ、組織を漫然と眺めていても要因はみえてきません。個別の面談機会=1on1を活用して、見いだしていきましょう。

社員の成長を促すために上司と部下がマンツーマンで定期的にミーティングをするマネジメント手法のことです。定期的に行うミーティングは「1on1ミーティング」ともよばれ、多くの企業で導入されています。部下の成長をサポートするうえで欠かせないものでしょう。

「1on1ミーティング」短時間・高頻度がカギ

1on1ミーティングで使用する時間は平均15分から30分程度。株式会社パーソル総合研究所の「人事評価制度と目標管理の実態調査」によると、1on1の所要時間は平均25分程度となっています。短時間の面談を高頻度で繰り返すと効果を発揮します。

進め方として、部下からも気づいた点を共有する、つまり対話の場として機会を提供。これまでの各企業が行っていた人事面談は、評価や目標などの確認やすり合わせが目的。コミュニケーション方法も異なります。

1on1は比較的フランクな雰囲気で、部下の自発的な発言を尊重する「対話型コミュニケーション」です。一方、人事評価面談は、上司から部下への一方的なコミュニケーションが多い傾向にあります。あくまで

  • 最近仕事で困っていること
  • 最近仕事で成功したこと
  • サポートして欲しいこと

などを傾聴する機会として運用するのが望ましいと言われています。

こうしたフランクな機会を醸成して「職場に関して気になること」を何げなく聞いていくと、モチベーションを下げる発言などがあれば、聞きだせる可能性が高いと思います。もし、職場内で発見したら、即座に対処していきましょう。

 

※フロンティア・マネジメント株式会社運営オウンドメディア『Frontier Eyes Online』より転載

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