コラム

コラム

1on1を社内の「風土」として定着させるには

1on1を社内の「風土」として定着させるには

リモートワークの普及などをきっかけに、社員同士のコミュニケーションの重要性が改めて見直されています。オフィス勤務への回帰が進む中でも、対面・オンラインの双方で、1on1ミーティングを導入する企業は増えてきています。一方で「なかなか定着しない」「社員が積極的に取り組んでくれない」といった悩みを抱えている企業も少なくありません。1on1は短期的な実施ではメリットが現れにくく、継続して初めて効果がもたらされます。そこで今回は、1on1の適切な運用方法や定着させるためのポイントを解説します。

導入しても長続きしない理由とは?

先日、ある企業から1on1に関するご相談を受けました。その企業では、従業員の心理的安全性を高め、社内コミュニケーションを活性化するために、上司・部下といった垂直の関係だけでなく、同僚や他部署の人とも1on1ができる取り組みを始めたそうです。関係が固定されているメンター制度などとは異なり、その時の課題に応じて、適した相手に柔軟に相談できるという取り組みです。一見とても好ましい施策で、導入時の期待も大きかったのですが、なぜかなかなか社内に定着せず、「この先、どのように運用していったらいいかわからない」とのことでした。

1on1がもたらす多様なメリット

1on1とは、一般的には上司と部下が1対1で定期的に行う面談を通じて、部下の成長をサポートするマネジメント手法のことを指します。頻度は週に1回から月に1回のペースで、30分から60分程度で行われることが一般的です。上司が部下の悩みや課題を聞き出し、アドバイスやフィードバックを行うことで、信頼関係の構築や、部下の成長促進、モチベーションやエンゲージメントの向上、心理的安全性の醸成、組織力の強化、人材の離職・流出防止など、さまざまな効果に繋げていきます。

しかし、これらの効果を最大限に引き出すには、1on1が適切に運用され、社内に確実に浸透・定着することが何より重要になります。1on1を有効活用し、また社内に定着させるためには、まずは面談する側も受ける側も、その位置づけをきちんと理解することが必要です。

取り組みにあたっては単にマニュアルなどを準備するだけでなく、1on1の進め方、特に面談する側に対するトレーニングやFAQ・Tipsの整備など、導入後の効果的な運用に向けた支援策が重要となります。こうした取り組みが不十分だと、「せっかく取り組んだのに効果が得られない」「なんとなく利用しづらい」「いつの間にかしなくなった」と、せっかくの良い取り組みも失速してしまいます。今回ご紹介した企業のケースは、まさにこれに当てはまります。

1on1を定着させるための6つのポイント

では、1on1を効果的に実施していくためには具体的に何をしたらよいのでしょうか。ここからは、定着に向けてのポイントや方法をいくつかご紹介します。

ポイント① 位置づけや目的を明確にする

1on1を導入する際は、会社としての大きな目的 (風通しの良い組織風土の醸成、従業員エンゲージメントの向上など)だけでなく、より具体的な位置づけ(上司と部下の信頼関係構築、部下の課題抽出とサポート、相互のキャリア開発支援など)を明確に社内に発信することが重要です。これらの目的・位置づけを面談する側と受ける側が共有認識として持つことで、1on1の意義がより浸透し、継続していく意欲につながります。目的次第では「相談者の課題に対し、答えを一方的に出すのではなく、一緒に考え解決への道筋をつける」ような具体的な進め方も生まれるでしょう。

ポイント② 事前にしっかり準備をする

特に一度1on1を実施して頓挫してしまった企業の場合、再開時に社員の心理的ハードルが高まるため、リニューアルする際は定着までの仕組みづくりなどを丁寧に準備して臨みましょう。また、3カ月・6カ月など一定のスパンごとに実施状況を把握し、改善する仕組みを設けることで、より確実な定着に近づけていくことができます。

ポイント③ 改善サイクルに繫げる

1on1専用のツールを導入する企業も少なくありませんが、ただ導入しただけでは定着は望めません。ツールの活用は1on1実施時の面談サポートや振り返りには適しているものの、互いに気づきを共有するところまでで完結し、そこから具体的な改善施策へは展開しないことも多いです。上司側と部下側に一定の頻度でアンケート調査などを行うとともに、1on1実施上状況のデータを掛け合わせ、組織全体の分析を行い、改善サイクルに繋げていきましょう。

ポイント④ 文化・風土として日常業務の中に浸透させる

1on1の取り組みに成功している企業では、1on1を単なる制度や仕組みではなく、職場の文化・風土の一つとして、日常の業務コミュニケーションの中にうまく組み込んでいます。そのためには社員一人ひとりが「楽しくできる」「励みになる」と感じられるような工夫が大事です。例えば、社内ポスターで啓蒙したり、実施する際に参考になるガイドやTipsを発信したり、1on1をうまく活用しているマネージャーの実施例を社内で共有・評価するなど、全社を巻き込んでいく必要があります。またそういった活動内容がおざなりにならないよう、絶えずアプローチを変化させ続けることも重要です。

ポイント⑤ 広報役のコミュニケーターを配置する

1on1は人事評価面談などの「評価制度」上の仕組みではありません。社員同士のコミュニケーションの一環としてより良い「組織風土」として定着させていくためには、専任のコミュニケーターを配置し、広報的アプローチを通じて、意識や方法の浸透を推し進める必要があります。こういった活動は得手不得手もあるため、純粋に楽しめる人材や工夫ができる人材を担当者としてアサインするとよいでしょう。

風土を変えると、組織が変わる

今回ご紹介したような取り組みは一朝一夕にはできません。しかしこういった草の根の取り組みが定着していくことで、組織の風通しが格段に改善し、抱えていた課題がスムーズに解決できたという事例は多くあります。一方で、担当者が一人だと、多忙により施策が形骸化しがちです。そのため、複数の担当者で進めていく体制を作り、活動を分かりやすい形で評価に含めたり、小冊子やポスターなどの販促物を用意して活動の促進材料にしたりするなど、長期的な視点でサポートすることが大切です。

1on1はスタートさせること自体は決して難しいことではありません。しかしそれを本当の意味で組織に根付かせるには、社員一人ひとりにとって当たり前のコミュニケーションスタイルとして育てていく工夫が求められます。

風土を変えるには様々なアイディアが必要になりますが、ぜひ腰を据えて実践してみてください。風土が変われば、組織も変わっていきます。

セレブレインでは、「チェンジマネジメント」として、「制度」と「風土」をうまく連携させて組織を変えるご支援をしています。組織風土への働きかけでお悩みの企業の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

前のページ
次のページ

最新記事

タグ

日本初 実践型トレーニング アナリティカルシンキング
人事と組織に役立つ最新情報を月1回配信 メールマガジン登録はこちら

お問い合わせ