コラム 2018年6月12日 ヘッドハンティングの成功と不成功を分けるもの? 先日、「ヘッドハンター」というTVドラマが最終回を迎えました。 企業のビジネス課題と人のキャリアと転職への葛藤がテーマであり、放送が遅い時間帯ということもあって、平均視聴率は必ずしも高くなかったようですが、ビジネスマンの間ではかなり話題になっていました。 海外では、エグゼグティブ層を中心にした人材の獲得手段であるエグゼクティブサーチコンサルティングと呼ばれるヘッドハンティングとはそもそもどういう手法なのでしょうか? 最近、日本でも「ヘッドハンターからスカウトメールが届く」という転職サイトもでてきているように、ヘッドハンティングという言葉が日常的に使われるようになっています。 急速に進む市場環境やテクノロジーの変革に対応するため、多くの企業で事業構造の見直しが進む中、以前は、エグゼクティブ層が中心であった依頼案件が最近ではミドルマネジメント層や特定のスキルセットを有した人材へと対象が拡がってきています。 ヘッドハンティングという言葉の意味を調べてみると、次のように具体的なプロセスで説明がなされています。 「特定の経営課題に対して社内に解決できる人材リソースが不在であった場合、この課題解決をするために必要な経験や能力を有した外部の適当な人物を特定し、より良い給与や役職、機会を提示し、引き抜きを行うこと」 つまりヘッドハンティングとは 経営課題の特定を行い 人物を特定し より良い機会を提示し 引き抜く そして、特定の経営課題を解決したい企業に代わって、この一連の作業を行う人をヘッドハンターと呼びます。ドラマ「ヘッドハンター」では、ストーリーが誇張されている点はありましたが、部分的には実際のヘッドハンティングのシーンをリアルに描いていたと思います。 さて、ではこのヘッドハンティングをいかに成功させるか? ポイントは色々とありますが、失敗しやすいケースが最初のステップである「経営課題の特定と明確化」 です。 これは採用活動、特に即戦力を求める中途採用を行う場合に共通している課題と思います。 採用すべき人材の要件を明確にするには、まず「どのような経営課題をどのように解決したいのか?」が具体的になっていないと採用活動が円滑に進みません。 私たちがまず行うのは、クライアント企業が抱える問題認識や課題を出来る限りブレイクダウンし、具体化するお手伝いをすることです。その過程で新たな課題を発見し、要件の見直しを行うことも多くあります。 実際にお手伝いしたA社の例でいえば、当初の依頼は・・・・ 「西日本エリアの販売力を強化できる幹部クラスの人材を探してほしい・・」でした。 これだけではA社が求める適任者を採用することは難しいでしょう。 必要なことは、事業、組織、人などの課題を具体化することで適任者の人材像を明確にし、共有することです。 西日本営業部門を統括、その中で特にポテンシャルの高い代理店チャネルを強化し、売り上げ拡大を図る責任者として活躍を期待。 そのため地域の主要代理店の経営者との連携を強化し、代理店としての営業戦略から販売促進活動まで一体となって推進する。 現営業体制の営業マネジャー3名を含む20名から30名程度に体制を拡大強化し、営業戦略の浸透を図り、売上を3年で2倍に拡大させたい。 売上拡大施策の一環としてマーケティング部門、商品開発部門と連携して当該地域特性に合わせた高収益商品を投入する計画。 ・・・・・などと、出来る限り具体的に落とし込んでいき、人物的な要素についてもコンセンサスを図っていきます。 当然ながら経営課題は上記例にある営業部門の課題だけでなく、経営、財務、事業承継、新規事業、M&AやIPO戦略、海外進出など多様です。まずはそれらの経営や事業推進における課題を具体的な項目に落とし込む作業を行うことで、本当に社内に適任者が不在なのか?社外に人材を求めるとしたらどのような要件を満たした人材が適任か?どこに適任人材がいるのか?を明らかにする事が可能になり、課題の早期解決につながります。 この作業は、私たちが人材サーチ(ヘッドハンティング)の依頼をお請けする際、最も重視しているプロセスの一つです。 トップエグゼクティブクラスのヘッドハンティングの場合は、個別に要素が異なりますので現場を巻き込むことはあまりないと思いますが、中堅以上のマネジメントレベルの採用においては、採用プロセスを経営課題解決のプロジェクトとして捉え、採用候補者が現場と深くかかわる場合には、事前に現場レベルの関係者も交えてコンセンサスを取っておくと、 候補者のターゲットリサーチをする際にも現場から有力な情報を得る事ができるなど、その後のプロセスがスムーズになります。 実際の担当したプロジェクトにおいても、クライアント企業の管掌役員が自ら社内に採用プロジェクトへの理解と賛同を得つつ、ヘッドハンターも参加してヒアリングと情報収集を行った結果、数十名の有力な候補者情報を得る事ができました。私たちが候補者とコンタクトを図る際にも自信をもってプレゼンテーションとアピールすることが可能になり、プロジェクトは大きな成果を上げる形で終えることができました。 もちろんヘッドハンティングの成功には、クライアントと候補者の双方にとってWin-Winの状態であることが不可欠です。クライアントサイドの課題を具体化すると同時に、候補者の将来キャリアについての課題を明らかにするプロセスも一層重要になります。 例えば、仕事の内容、勤務地、ポジション、将来性、職場風土、価値観、処遇、家族、家・・・・など人材固有の課題や不安要素を解消するプロセスも慎重に進める必要があることは言うまでもありません。このあたりが一般の公募や登録型の採用に見られるミスマッチが少ない理由であり、決定的に異なる点といえます。 クライアントサイドも候補者にとっても、最初に課題を具体化し明確化するという最初のボタンを掛け違えてしまうと、後から軌道修正が困難になり、プロジェクトの長期化や不成功に終わる確率が高まります。 クライアントがヘッドハンティングを依頼するケースは、経営における重要度や緊急度が高い状況に置かれている場合と想定されます。前述のプロセスも経営課題解決の重要なプロジェクトとして取り組めばヘッドハント成功の確率が大きくアップすることは間違いありません。
ワインの豆知識 2018年6月08日 ワインを楽しむためのソムリエとのスマートな接し方 ソムリエとのコミュニケーションもワインを楽しむうえでは欠かせないポイント。では、どのように接するといい関係性が構築できるのでしょうか?会話をしているなかで訊かれると困ってしまうことなどをソムリエに聞いてきましたので、ぜひご参考にしていただけると嬉しいです。 [目次] 改めてソムリエとは スマートな接し方(NGワード) まとめ 改めてソムリエとは ここでまずソムリエとはどういう方々なのかを改めてご紹介します。 ソムリエとは認定協会が定めた資格であり、ワインに関する筆記やテイスティングなどの実技の試験に合格した人をいいます。詳しくはこちら:日本ソムリエ協会 合格すると認定バッジが与えられます。 日本ソムリエ協会HPより お店でこのバッジをしている人がいたら、ソムリエ試験に合格している方です。 ソムリエがいるお店かどうかは、こんなところからも判別できます。 スマートな接し方(NGワード) では、ソムリエがいるお店ではどのようにオーダーするとスマートな人だなと思ってもらえるでしょうか? ワインに詳しい人だと思ってもらうためにはある程度、品種や国を知っている必要があります。 過去の記事: 赤坂のソムリエに訊く!今更聞けないワインの基本、ブドウの品種ってなに?【赤ワイン編】 赤坂のソムリエに訊く!今更聞けないワインの基本、ブドウの品種ってなに?【白ワイン編】 そして、「○○のワインが好きなんだけど」、と具体的な例をだしてもらえると、勧めやすいとのこと。 また、お店のワインリストをみて、中間のところがお店が一番力をいれている価格帯になります。それらを踏まえながら、予算感なども伝えるとそれにあったワインを紹介してくれます。 しかし、会話をしていくなかで回答に困ってしまうオーダーもなかにはあるようです。 「一番美味しくて安いワインをください」 コストパーフォーマンスが優れているワインを飲みたいと思うのですが、美味しさは主観であり回答が難しいとのことです。 また、価格に関してはメニューに記載されています。回答にはソムリエとしてのワインに関する知識も不要なため、会話もしづらくなるとのことでした。 「ドライな赤ワインをください」 某ビール会社の影響か「ドライ=辛口」という認識が世の中に広まっていますが、ドライは「すっきり」しているという意味になるとのこと。赤ワインの時点で「すっきり」していないため、どのようなワインが飲みたいのか、判断が難しくなるそうです。 基本的に赤ワインの場合、大別すると「軽め/酸味のあるタイプ」、もしくは、「重め(しっかり)/飲みごたえがあるタイプ」の2パターンになります。どのようなワインが飲みたいか伝えたい場合は、こちらの表現を使うと伝わりやすくなります。 ※参考までに、白ワインの場合は、「すっきりしたタイプ」、もしくは、「コクのあるタイプ」になるそうです。 まとめ ソムリエがいるお店では、ワイン初心者の方は「料理に合わせてお勧めいただけますか?」と素直にソムリエにお任せするのが一番かもしれません。そこで会話を楽しみながら、ワインの知識を増やしていき、徐々に具体例を出せるようになると、その時飲みたいワインがスマートに表現できるようになっていくかと思います。 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
ワインで対談 2018年5月30日 新卒採用でどうすれば“学生に選ばれる企業”になれるのか – 採用コンサルタント・谷出正直さん × セレブレイン関 伸恭 × セレブレイン倉本 健【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第7回ゲストは、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直さん。売り手市場が続く新卒採用の現状と今後の展望について、企業と学生それぞれの目線から語っていただきました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭と、人材開発コンサルティング シニアコンサルタントの倉本 健が務めます。 第7回ゲスト:谷出 正直さん略歴 採用アナリスト/コンサルタント。エン・ジャパンにて新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用のコンサルティングや、採用アナリストとしてメディアへの情報提供や記事・コラムの連載、企業や大学でのセミナー講師など、幅広く新卒採用に関する情報を発信している。 学歴や偏差値よりも立ち振る舞いに人としての魅力が出る 倉本:学生さん側は就職活動に向けて、何を考えてどんなことをやっているのでしょうか。また、何をやるべきなのでしょう。私も娘がいるのですが、まわりに振り回されず自分の人生を生きてほしいと思っています。だけど、現実には企業やメディアからさまざまな情報が発信されてくるので、その中で知恵をつけて情報を選別しなければいけません。 谷出:情報を選別して自身で考える、ということは働く経験をしたことのない学生にとっては簡単ではないと思っています。その根っこにあるのは、学校教育を通じて、同質化させられてしまうという現状です。 倉本:ああ、それについては私も話したいことが山ほどあります(笑)。 関:私の子どもも、ちょうど小学生になるので気になるトピックです。 谷出:うちにも、今年小学生になる子どもがいるんですよ。 関:一緒ですね! 倉本:新卒の話からは脱線しますが、せっかくなので谷出さんの教育方針も伺いたいですね。 谷出:僕が日頃から子どもに伝えているのは「挨拶をする」「靴は脱いだら揃える」「帰ったらまずやるべきことをやってから、好きなことをする」の3つですね。マナーや躾の部分になりますが、新卒者向けの説明会に参加すると、そういった基本的なことに対する所作も学生によってかなり違うなと感じるんですよ。受付に来ても全然挨拶しない学生もいれば、挨拶したとしてもどこか不自然だったりする。そういった行動からおそらく、普段は挨拶していないんだろうなとわかってしまいます。 関:毎年たくさんの学生を見ている谷出さんならではの視点ですね。 谷出:学生から就活相談をされることも多いのですが、1~2時間話すと、企業が欲しいと思う人材かそうでないかはわかります。学歴や偏差値といったことではなく、立ち居振る舞いや人間としての魅力に違いが出るんです。突き詰めると、それって学校や家庭での教育やそれまでに培われてきた価値観に根ざしているのかなと感じています。 倉本:うんうん。 谷出:あとは子どもにはなるべく新しいことを経験させるようにしていますね。知らないことは選択肢に入ってこないですから。 関:育成理論としては、社会人にも共通する部分ですよね。 倉本:私はヘッドハンティングを仕事にしているのですが、いつも思っていることがありまして、それは20代の若い方であっても50代の人生経験ある方でも、人生のターニングポイントでの道の選び方には、その人の原体験というか、経験やルーツにすごく影響を受けるんですよね。なので、そういう人生の大切な節目でも力まずに自分らしい選択が出来る様な経験や準備を重ねてゆく事が大切だと思っています。私は、人は本当に十人十色で良いと思っていまして、その人にはその人なりの価値発揮の仕方があると思っているんです。ただ、価値発揮の仕方はいろいろあっていいのですが、やはり独りよがりでは上手くいかない。自分を活かすためには周囲に受け入れられるチャームポイントを持つ事がとても大事だと思います。自分なりの強みとチャームポイントの両方があって初めて自分らしい仕事が出来るのではないかな、と。 例えば、ほら、ものすごく優秀というわけではないのに、妙に早く上に上がっていく方とかいるじゃないですか。 谷出:可愛がられ力ですよね。 学生に選ばれる企業になるためにやるべきこと 関:さあ、続いてのお料理とワインです。 建部/店長:メインは牛ハラミのステーキです。あじる亭のスペシャリテですね。あじる亭は南仏のビストロをイメージしたお店ですが、特に現地で好まれる食材の一つがハラミなんです。日本だと焼き肉で食べることが多いと思いますが、それを塊で焼いてステーキにしています。 関:これも私の大好きなメニューです! 谷出:おいしそうですね! 建部/店長:合わせるワインはスペインのメンシアという品種を用いたフェント・ワインズの赤ワインです。深みがあってスパイシーで、肉との相性がとても良いですよ。 谷出:何だか良い香りがします! 関:おいしい。たしかにこのボリュームのあるハラミと合いますね! 倉本:どちらの味わいもより深みを増すような印象です。 関:思わず肉とワインのマリアージュに夢中になってしまいましたが(笑)。企業としては、売り手市場が続くなかでも優秀な人材を採用していきたい。どのように取り組むことで採用活動がうまくいくのでしょう。 谷出:そうですね、毎年40万人くらいの大卒学生が民間企業に就職を希望しています。また、優秀な学生は複数の企業から内定を獲得します。そのような学生に選んでもらうためには学生が自分の企業を“選ぶ理由”を先行投資で作れるかが大事だと思いますね。 関:選ぶ理由、ですか。 谷出:大事なことは、学生に自分の会社のことをちゃんと理解してもらうということです。事業内容はもちろん、大切にしている価値観や企業文化、ビジョン。それと学生が考える自身の将来像が合致するかどうかが選ぶ理由につながってきます。 倉本:それは、まさにマーケティングの視点ですよね。 関:学生にアプローチする方法や採用の形態も多様化していますよね。 谷出:そうですね。たとえば紹介業です。以前は紹介での採用というのは就職活動の後半戦に集中していました。もう1人採用したいけど、この時期から新たに探すのはなかなか難しいので紹介サービスを活用していた。ところが今は就職活動の前半戦からどんどん学生を紹介することを求められることが増えています。 関:それはどうしてですか? 谷出:一つは、新卒採用を支援する企業が、学生の個人情報を比較的簡単に入手できるようになったことですね。 倉本:それはどういったルートで入手するのですか? 谷出:例えばSNSです。以前は就職サイトを通してという形でしか学生と会うことができなかったのですが、今はTwitterやFacebookで学生を集めることもできます。そうすると、企業は解禁日を待たずに学生と接触が図ることも可能になります。採用支援サービス企業に依頼して、「●●大学の学生にだけ会わせて」みたいなことができるようになります。そして、実際に水面下で面談が進んだりします。 関:それは実質的な選考、ですよね。 谷出:そうですね。去年の選考解禁日は6月1日だったのですが、実際には解禁日を迎えたその時点で6割の学生が内定をとっていましたからね。その前年は5割でした。つまり1年間で1割増えていて、その数字だけみても、着実に早期化していることが分かってくるわけです。 倉本:となると今年は……。 谷出:さらに企業の動きが早くなるわけですから、もっと内定が早く出てくるでしょうね。 関:ますます企業が、学生に対して自社の魅力をどのように伝えていくかが重要になりますね。そうなると、人事も、もっと外に出て自社のブランディングや、マーケティングでいうところのリードジェネレーションなどに注力することが求められるのでしょうか。 谷出:ええ。そもそも知らない会社に学生が応募することはないので、まずは知ってもらわないといけない。それは別に就活が始まってからでなくてもいいのです。極端な話、子どもの頃から知ってもらっていればいいのです。ですから、これからは企業広報そのものが、採用活動においても価値を持ってくるでしょうね。採用担当者と広報担当者は今よりもっと近づき、一緒に取り組んでいくべきだと思いますよ。 倉本:結局は、自社の事業を磨き上げることにつながっていきますね。 谷出:例えば、もしAppleが新卒採用するとなったら大勢が応募しますよね。それは企業自体にファンが多いからです。全ての企業がAppleのように全世界に知られる必要はありません。要は自社の事業と、そのために採用したい人がどこにいるかの組み合わせです。東京で採用したいなら東京の学生に知られていればいいわけですし。 関:仰る通りですね。 谷出:あとは企業として、「うちにくると絶対にいいよ」としっかりアピールすることですね。 倉本:アピールできないってことは自信がないということ。実際、採用担当者の方が辞めてしまったりすることもありますしね(笑)。 谷出:そうそう。自分が来年くらいに辞めようって思っているようでは、学生に強くアピールすることはできないじゃないですか(笑)。 関:たしかに(笑)。最近はリファーラルによる採用も活発になりつつありますが、うまく行かないケースもあると聞きます。 谷出:リファーラル採用は決して簡単ではありません。仕組みを用意したけど、思うようにいかないことも多いです。働いている社員からの紹介ということですが、本当に仲の良い友人を自分が自信を持って働いている会社に引っ張ってこられるか。そこですよね。 関:企業と学生はお互い不幸にならないように、しっかりとマッチする相手を見つけてほしいですよね。その点で我々にできることって何でしょう。 谷出:学生さんによく言うのは、やりたいことを見つけられたらいいけど、見つけられなくても、誰かの夢を一緒に追いかけることで、それが自分の夢にもなっていく。そのためにできることを増やすともっと貢献できるから、自己研鑽していこうと伝えています。そして僕らは、学生に「そういう大人、超かっこいいな」って思ってもらえる社会をつくっていくべきですよね。 倉本:本当にその通りですね。 関:とても勉強になりました。谷出さん、ありがとうございました。 今回のお店 ワイン居酒屋 赤坂あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。 今回のお話は新卒採用という身近な話題。何年も携わっておられる谷出さんならではの視点で、深い知見を得ることができました。 そんな語らいを一層盛り上げてくれたのが料理とワイン。 見た目にも美しいいちごとトマトのカプレーゼに、オムレツ、ステーキと、あじる亭屈指の人気メニューが勢ぞろい! どれもあじる亭を訪れたら一度は食べていただきたい料理ばかりです。ワインもまたすばらしいマリアージュでした。
HRTech 2018年5月28日 欧米の大手企業が導入する新しい評価制度ノーレイティングとは? 年度初めに目標を立案し、その目標の難易度や達成度に応じて人事評価をする。多くの日本の企業が実施してきた従来の方法が機能しなくなってきています。 そんななか欧米の企業を中心に導入が進んでいる「ノーレイティング」。今回は「ノーレイティング」についてご紹介します。 [目次] ノーレイティングとは 背景 具体的なツール まとめ ノーレイティングとは ノーレイティングとは、これまで行っていたスタックランキング制度(成績をA、Bなど全体からの相対評価でランキングをだす制度)は行わず、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う仕組みのなかで、上司が部下のパフォーマンスをマネジメントする人事評価の仕組みのことをいいます。 背景 近年、従来型の人事評価制度(年度初めに目標をたて、その実績に応じて、年度末にS,A、B、C、Dなどのランク付けを行って評価を行う)には大きく以下3つの課題がでてきました。 1. ビジネススピードが速くなり、目標達成サイクルとの乖離が発生してきた 2. スタックランキング制度は個人間の競争は生み出すが、チームワークや周囲とのコラボレーションは生まれにくい 3. 年度末に膨大な評価のための時間(手続きやドキュメントなどの準備)が必要とされる一方、評価をつけることが目的となり、形骸化してきている 従来、人事評価は賞与の決定や優秀な社員の昇格などを行うために活用されてきましたが、従来型の制度では時代の流れとともに、人材不足が進む中で優れた社員のエンゲージメントを高め、会社全体のパフォーマンスを上げるという本来の目的に対して機能しづらくなってきています。 こうしたなか、「ノーレイティング」という考え方が2012年ごろから欧米を中心に広がりをみせています。 ノーレイティングでは、月に1度などの頻度で定期的に主にマネージャーとメンバーとの間で1on1ミーティングを行います。メンバーのそれぞれの活動に対して、評価ではなく行動改善や成長につながるフィードバックをリアルタイムに行っていくことにより、業績向上に導いていきます。こちらの記事にも記載していますが、適切なタイミングでフィードバックを行うことは、効果を発揮するうえで非常に大切です。そして、必要に応じて目標も変化させていくことで、変化の激しいビジネス環境への対応も可能となります。 従来型の人事評価が、評価の目的を人材の査定に置いているのに対して、ノーレイティングでは人材育成を目的にしている点も特徴としてあげられます。 具体的なツール ノーレイティングを実施するためには、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う必要があるため、それらを管理するツールが欧米では活用されています。 Engagedly https://engagedly.com セントルイスに本社を構えるアメリカの会社です。 彼らの提供するプラットフォーム Engadedlyは、目標設定、マネージャーフィードバックの管理、ナレッジシェアなど、ノーレイティングを実施するための機能が含まれています。 2016年にはアメリカのHRTECHに関するメディア「HRTECH OUTLOOK」にて、Top10 HR Cloud に選ばれ、現在では中小から大手まで様々な規模の企業に利用されている注目の製品です。 まとめ 相対評価を可視化したスタックランキング制度は個人の競争を促すことを中心にマネジメントをしていたころは有効でしたが、チームワークを生みづらく、オープンイノベーションの考え方に代表されるような共創の時代には向いていないかもしれません。 ノーレイティングを実施する際に重要となってくるのがマネージャーのマネジメントスキルです。メンバーとのコミュニケーション機会が増えるため、マネージャーにとっては工数が単純に減るわけではありません。効果的な1on1を実施できるかどうかにより、メンバーの成長度合いや評価に対する納得度も大きく変化するため、より高度なスキルが求められます。 今後の企業戦略において、マネージャーであるミドル層のスキルや資質はより一層重要になってくるのではないでしょうか。
ワインで対談 2018年5月27日 新卒採用でどうすれば“学生に選ばれる企業”になれるのか – 採用コンサルタント・谷出正直さん × セレブレイン関 伸恭 × セレブレイン倉本 健【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第7回ゲストは、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直さん。売り手市場が続く新卒採用の現状と今後の展望について、企業と学生それぞれの目線から語っていただきました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭と、人材開発コンサルティング シニアコンサルタントの倉本 健が務めます。 第7回ゲスト:谷出 正直さん略歴 採用アナリスト/コンサルタント。エン・ジャパンにて新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用のコンサルティングや、採用アナリストとしてメディアへの情報提供や記事・コラムの連載、企業や大学でのセミナー講師など、幅広く新卒採用に関する情報を発信している。 企業の採用活動は年々早くなっている 関:谷出さん、赤坂あじる亭にようこそ! 本日はぜひ新卒採用についていろいろと教えてください。 倉本:私も谷出さんからお話を伺うことを楽しみにしていました。よろしくお願いします。 谷出:こちらこそよろしくお願いします。実はあじる亭で食事をするのは2回目なんですよ。以前に、懇意にしている会社の方に連れてきていただいたことがあります。 関:そうでしたか! では、セレブレインがあじる亭を経営していることもご存知で? 谷出:ええ。人事コンサルティングサービスを提供している会社が、飲食店も経営していると伺って、とてもユニークだなと思いました。 倉本:弊社のお客様からもよく言われることがあります。 関:谷出さんは、ワインはお好きですか? 谷出:大好きなのですが、今日はちょっとお酒が飲めないのです。実は先週、花粉症が悪化してしまい、しばらく寝込んでいまして、薬を服用しているもので……。 関:なんと、そうでしたか。 倉本:それでしたら、ソフトドリンクで乾杯しましょう。 谷出:ありがとうございます。お二人はお気になさらずぜひワインを。 建部/店長:それでは、谷出様のために、本日はスペシャルなソフトドリンクを用意いたしました。ノンアルコールのサングリアをベースにスパイスを利かせてトニックで割ってみました。 谷出:ありがとうございます! 関:建部さんはあじる亭の店長で、以前はフランスの2つ星レストランで10年間、シェフソムリエをされていた方なんですよ。 谷出:それはすごいですね! 建部/店長:関さんと倉本さんにはスパークリングワイン「BKワイン ペティアン・ナチュレル」をご用意しました。 関:ありがとうございます。それでは、乾杯! 谷出:このドリンク、とてもおいしいですね! さすがです。 関:次はぜひワインをご一緒しましょう。 谷出:そうですね、ぜひ。 関:花粉症の季節といえば、ちょうど企業の新卒採用が動き出す頃かと思います。 谷出:ええ。ちょうど今、2019年度の新卒採用が動き始めた時期ですね。 倉本:今はどのあたりのフェーズですか? 谷出:3月に新卒採用活動が解禁されたので、ちょうど1ヶ月くらいたちましたね。学生が春休みを利用して企業説明会に行ったり、OB訪問したりしている時期ですね。 関:ここ最近はずっと新卒は売り手市場と言われてますよね。 谷出:そうですね、売り手市場と言われて5年目ですね。 関:そうなのです。この5年間で何か変化もあったのでしょうか。 谷出:ありますね。売り手市場が続いていることもあり、どの企業も他社よりも早く学生と接点を持つために、動きがどんどん早くなってきています。 関:なぜ企業は動きを早めるのですか? 谷出:新卒の採用活動は前年の動きに強い影響を受けるものなのです。売り手市場だと前年と同じ動きをしていては、ライバル企業に出し抜かれてしまう。だから企業は前年よりも採用活動を早く始めて、学生との接点を作ろうとします。 倉本:やはり早く動いた方が有利ですか。 谷出:ええ。一人の学生が受ける企業数は限られていますし、最初に接触を図ると受けてくれやすいのです。接触が遅くなると、すでに他の企業の選考が進んでしまっていることもあるし、学生も既に第一志望の企業から内定をもらっているかもしれません。そうなると後発の企業は苦しくなります。 関:たしかに、後発の企業は既に選考が進んで着る企業より行きたいと思ってもらわないといけませんからね。 谷出:これが、売り手市場で企業の動きが早くなる理由です。それが4回、繰り返して起きていると考えてください。 倉本:どんどん前倒しで動くようになっているわけですね。 関:ちょうど最初のお料理がきました。 建部/店長:今回は春らしく、モッツァレラチーズを使用したカプレーゼです。季節の果物と野菜、今回は苺とトマトを合わせました。女子力高めの前菜です(笑)。 谷出:これは可愛らしいですね(笑)。 倉本:苺とは意外な組み合わせですね。 谷出:おっ、でもこれ、いけますね! 関:本当だ、苺とトマトの甘酸っぱさがうまく調和していますね。チーズにもぴったりです。 建部/店長:季節によってはリンゴや金柑を使うこともあるんですよ。 倉本:ワインも気になりますね。 建部/店長:前菜に合わせるのは、フランスのコート・デュ・ローヌの生産者、ドメーヌ・グラムノンのヴィオニエという品種を使ったワインです。トロピカルな香りで、春の芽吹きを感じさせてくれます。 関:うん、いい香りです。爽やかで飲みやすい。 倉本:前菜にぴったりです。瑞々しいアロマにしっかりした骨格を持つ白ワインですね。 谷出:いいですね、うらやましい。 関:さて、新卒採用に話を戻しますが、企業の採用人数も年々増えているのですか? 谷出:そうです。採用人数を増やすとなると何が起きるかというと、どの企業も積極的に自社のプロモーションをするようになります。まずは学生に自社の名前を知ってもらわないと始まりませんからね。そして、説明会の開催数も増やすようになります。 関:採用説明会に参加すると、学生もその企業が気になったりしますからね。 谷出:ええ。大手企業の情報が入ってくると、学生も入りたいですから受けますよね。採用の枠が増えているから、内定の数も増えています。企業からすると辞退される可能性も考えないといけないので、よりたくさんの内定を出す。そうすると、去年よりも今年の方が比較的に受かりやすいということになってきます。 関:私は氷河期世代だったので、信じられない状況です(笑)。 谷出:先輩が入社したとなれば、その後輩も感化されてその企業を意識するようにもなります。 倉本:わかりやすい図式ですね。 関:学生側はどういうところをみて、企業を判断しているのでしょう。 谷出:学生さんは世の中の動きに非常に左右されやすいですね。たとえば今ですと、2年前くらいから言われている「働き方改革」がトレンドワードです。また、ニュースを積極的に見るようになるので、「副業」・「在宅ワーク」といったキーワードも目にします。自分が受ける会社がそれらをどうとらえているのかは当然気になるところでしょう。 関:少し前ならダイバーシティや女性活躍、ブラック企業なんてワードも話題になりましたね。 谷出:そう、キャッチーな言葉が出てきたときに、それと目の前の会社を結びつけるのです。となると、企業はそれらの質問を想定して、答えられるようにしておかないといけません。 倉本:新卒採用で企業が意識すべき点ですね。 谷出:平均残業時間について質問されて、答えに詰まるようでは学生に不信感を抱かれます。もし残業時間が長くても、それを今後は改善していくといったポジティブな言葉が必要です。そうでないと学生は引いてしまいます。 倉本:もしくは、ネガティブな要素があっても、それを上回るポジティブな要素で魅了するかですね。 谷出:就職活動をはじめたばかりの頃は、学生は企業を選ぶ軸を持っていません。だからトレンドワードとか、単純に会社名を知っているとか、そういったところを重視します。 学歴や偏差値よりも立ち居振る舞いに人としての魅力が出る 関:次のお料理がきました。 建部/店長:当店でとても人気のあるオムレツのトリュフ風味をご用意しました。合わせるワインはカリフォルニアのナパ・バレーの典型的なシャルドネ、カモミ(Ca’Momi)です。樽が利いていて、バター系やクリーム系、卵料理と合わせるとおいしいですよ。 谷出:うーん、良い香りです! とろとろでたまらないオムレツですね。 関:このオムレツは私も大好きでよく頼んでいます。 倉本:ワインもバランスがいいですね。爽やかな甘いアロマがあって、華やか。酸味もちゃんとあり、全体を引き締めてくれています。 谷出:次は必ず飲みます(笑)。 前編では、売り手市場が続くなかでの企業の採用動向や学生が企業を選ぶ際に気にしているポイントをわかりやすく解説頂きました。 後編では、子どもの教育についての考え方から就職活動における学生の立ち振舞い、選ばれる企業になるために求められることについて議論を深めていきます。 今回のお店 ワイン居酒屋 赤坂あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
ワインの豆知識 2018年5月20日 ソムリエに訊く!ワインのラベルと瓶の形状から分かること ワインのラベルには多くの情報が記載されています。しかし、ブドウの品種が書かれているものもあれば、書かれていないものなど、ワインにより多少の違いが。 ソムリエに訊くと、そこには歴史のあるワイン業界におけるある一定の法則が存在していました。その法則とは何なのか?この情報をちょっと知っているだけで、ワイン初心者に一歩差をつけられます。 [目次] ワインの産地 伝統国とニューワールド ラベル 瓶の形 まとめ ワインの産地 伝統国とニューワールド ワインは産地により「伝統国」と「ニューワールド」という2つに大きく大別されています。 「伝統国」とはフランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパの国を指します。一方でアメリカ大陸やオセアニアなどのアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、チリ、などは「ニューワールド」と言われます。日本もニューワールドの一員になります。 ラベル ここで実際のラベルをみてみましょう。 こちらが伝統国フランス産のワインです。収穫した年や地名(Chablis=シャブリ村)や生産者の名前が記載されています。 こちらがニューワールド アメリカオレゴン産のワインです。 収穫した年や地名、生産者とともにPINOT NOIR(ピノ・ノワール)とブドウの品種が書かれています。 伝統国とニューワールドの大きな違いは「ブドウの品種の記載」です。伝統国では地域により使われるブドウの品種が規制されています。そのため、地名さえ書けばどのブドウ品種なのか分かるため省略されていることが多いそうです。 瓶の形 そして瓶の形にも違いがあることをご存知でしょうか? ワインの瓶の形は大きく、「なで肩タイプ」と「いかり肩タイプ」の2つがあります。 なんと地域により形状が決められており、「なで肩タイプ」はブルゴーニュ(=赤はピノ・ノワール、白はシャルドネ)、いかり肩タイプはボルドー(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどの5種類)となっています。 まとめ このように、生産された地域によりラベルや瓶の形状が変化していくのもワインの面白いところです。 伝統国のワインにはあえて品種を書かないところに、ワインの歴史を強く感じます。 書かれていないということはうんちくを語る大チャンス。 地域名と品種を勉強すればより一層大きな差をつけることができること、間違いなしです! 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
ワインで対談 2018年5月18日 企業が求める人材になるため何をすべきか – 人事・戦略コンサルタント松本利明さん×セレブレイン関伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第6回ゲストは、人事・戦略コンサルタントの松本利明さん。5万人以上のリストラと6000名以上の次世代リーダーの選定・育成に携わられた「人材の目利き」のプロフェッショナルです。1月に発売された著書「ラクして速いが一番すごい」が大ヒット中の松本さんに、企業が求める人材の条件とパーソナルブランディングについて伺いました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第6回ゲスト:松本 利明さん略歴 プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアなど大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。24年間で外資系、日系の世界的大企業から中堅企業まで600社以上の人事改革と生産性向上の実現を支援する。現在は、企業向けコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」に変革していくため、「持ち味の見つけ方、活かし方」をビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「ラクして速いが一番すごい」をはじめ、多数のベストセラーを執筆している。 なりたい自分ではなく、求められる自分になる 店長/加藤:メインのお料理に「国産牛ランプ肉の炭火焼きステーキ」をお持ちしました。添えてあるのはオーストラリア・タスマニア島のオーガニックマスタードです。これをすりつぶすと、一般的フレンチマスタードになります。 松本:おお、これはすごい! インスタ映えしそうですね(笑)。 関:本当ですね(笑)。私はこの粒マスタードが大好きです。ここはやはり赤ワインでしょうか。 店長/加藤:はい、ナパ・バレーの「シャペレ マウンテンキュヴェ」を合わせてどうぞ。こちらのワインは標高の高いところで収穫した4種類のぶどうをブレンドしており、ナパ・バレーらしくジューシーで凝縮感があります。お肉に負けないしっかりとした味わいですよ。 松本:このお肉は美味しいですね。柔らかくも噛みごたえがあって、旨味がぎゅっとつまっています。ボリュームたっぷりなのに、どんどん食べ進めてしまいます。 関:ワインと合わせることでさらに旨味が広がりますね。 松本:話を戻しましょう。もう一つの視点として、事業のライフサイクルのどこに自分が合っているのかを見極めることも重要ですね。 関:事業規模の成長に伴うステージ、ですね。 松本:事業のネタを考えることが得意なのか、事業を大きくしていくことが得意なのか、組織化して管理することが得意なのか。自分の資質がどのステージに合うのかを考えないといけません。 関:確かにポジションが同じだとしても、事業ステージによって求められる役割は大きく変わりますからね。 松本:結局、相手にどう喜んでもらうかということなんですよね。同じ「ありがとう」という言葉でも、中身はぜんぜん違います。仕事が速くてありがとうなのか、調整役をやってくれてありがとうなのか。 関:「ありがとう」の中身と自分の資質が合っているか、ですか。 松本:そうです。むりやりキャラ設定したとしても、その人の持つ資質と違っていたら破綻します。きっとうまくいきません。「ありがとう」と資質に一貫性を持たせないといけません。 関:そうでないと、自分の本来の姿とは異なるキャラクターを演じることになってしまいますよね。 松本:その一貫性が、パーソナルブランディングにつながります。パーソナルブランディングは、なりたい自分ではなく、求められる自分であるべきです。資質というものは20歳くらいまでに形成され、それ以降はほとんど変わりません。自分が資質として得たカードを仕事の中でどのようにうまく発揮していくか、ということがポイントなのです。 関:原点回帰ですね。見失いがちですが、大事なことだと思います。 松本:気をつけないといけないのは、自分の資質に合わないことであったとしても、時間をかけて努力するとちょっとだけ伸びるんですよ。そうやって身につけたものって苦労して獲得したこともあって、なかなか捨てられなくなるのです。 関:よくわかります。 松本:優秀な人材を獲得・育成していきたい企業側にとっても、社員の資質の話は重要です。野球で4番タイプばかり集めても勝てないのと同じ。リーダーと一言でいっても、その人なりの持ち味に合わせてポジションを考える必要があります。事業を太くするのが得意なリーダーもいれば、海外展開が得意なリーダーもいます。 関:日本企業の人材開発・育成は、そこがどうしても一つの同じ方向に流れがちですよね。 松本:能力には3つあって、まず根底にあるのが“資質”です。その上に“ポータブルスキル”。これは仕事を前に進めるために必要な汎用的なスキルで、どのような会社・職場でも通用するものです。その上に“専門性”があります。専門性は資質に合っていれば身につきます。となると、重要になってくるのはポータブルスキルになります。 ラクして速いが一番すごい 関:そこで自分自身の特徴をどう出せるかですね。今のようなお話が松本さんの著書「ラクして速いが一番すごい」にも詳しく書かれていますが、この書籍はどんな方に向けて執筆されたのですか? 松本:30代くらいで、社員200名くらいのオーナー会社か大手の子会社に勤めていて、会社に問題意識を持っている方ですね。 関:読者のターゲットがすごく具体的ですね! 拝読しましたが、読みやすいですし、行動レベルにまで落とし込んでくれているので、仕事を効率的に進めていくために明日からでも実践できるエッセンスがぎゅっと詰まっています。 松本:ありがとうございます。タイトルから仕事術の本と思われることも多いのですが、実はコミュニケーションの本であり、キャリアの本でもあるんです。 関:企業で働いていると実際にこういうシーンってあるなと感じるエピソードがたくさん書かれていて、弊社の若手コンサルタントにも読ませたいと思いました。最後に読者に対してメッセージをいただけますか? 今は働き方改革やグローバリゼーションやダイバーシティなど、いろいろと言われている時代ですが……。 松本:今は誰にでもチャンスがある時代ですよね。だけど、こうすればいいというロールモデルがない時代でもあります。そんな時代を生きるためには、繰り返しになりますが、なりたい自分ではなくて、資質に基づいて求められる自分になることが大事だと思います。 関:とても勇気づけられる言葉です。本日はありがとうございました! 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワインと炭火焼きのダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。ソムリエ資格をもつシェフがカリフォルニアキュイジーヌとワインを絶妙にマリアージュし、腕を振るっています。 (都合により4月末日を持って閉店しています) 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。今回のお料理とワインもすばらしいマリアージュ! 実際にいただいてみると、料理とワインの要素やトーンがぴたりと一致していて感動すら覚えます。 ミニハンバーガーのスライダーは、見た目にもフォトジェニックですし、何と言っても甘辛い味噌煮込みが絶品。男性は特に好きな味じゃないでしょうか。 そしてランプ肉の炭火焼きステーキ! 肉、肉、肉で思わず笑顔になってしまう一皿。出てきた瞬間、対談されていたお二人の顔がほころんだのが印象的でした。「シャペレ マウンテンキュヴェ」とのマリアージュはあまりにも完璧なので、ぜひ一度味わっていただきたいところです。
コラム 2018年5月15日 関 将宏 AI最前線で!「ヒトの認識能力」の再発見と開発 最近、採用の現場で候補者のデータをAIツールで分析し、選考を行う企業が頻繁に取り上げられている。ところが先日、採用選考にAIの導入を検討したが見送った会社の例に出会った。 AIの方が人間と比べ圧倒的な処理速度で判定が出る上、特段に的外れな点はなかったにもかかわらずであった。理由は、AIが「なぜその人を選んだのかを説明しないこと」にあったという。「採用は非常に責任を伴う判断であり、判定の合理性を多面的にチェックする必要がある」ということで、改めて1人1人の判定理由を検証したところ、「結局、従来とやっている事が変わらない」という結論になり、導入を見送ったとのことであった。 この例は「データ分析ツールがいくら高度になっても、それだけでは必ずしも現状の変革や進化につながらない」 という、興味深い示唆に富んでいる。 実際、著名なデータサイエンティストである、大阪ガス(株)ビジネスアナリシスセンター所長、河本薫氏も、著書『会社を変える分析の力(講談社現代新書)』の中で、「ITや分析手法をどんなに備えても、データから問題を解明するプロセスを構想する力がなくては、意味のあるデータ分析は生まれない・・」「どんな分析問題に挑むか、どのようなデータを集めるか、どのような分析手法を用いるか、分析結果をどのように解釈するか、すべては人が考えること・・」と述べている。 要は、データ分析を適切に進めるには人によるマネジメントが不可欠ということである。 セレブレインでは最近、人事データの分析に関連するプロジェクトを幾つか手掛けている。静的な人事情報に加え個人の評価項目の内容や勤怠、日報等のデータから、ハイパフォーマーの特徴や退職・休職者の傾向を早期に見出し、政策の提言を行うものである。 私も実際にプロジェクトで分析に携わったが、当初想像していた 「データを取集してインポートし、後は機械に処理してもらうだけ」というメージとは大きギャップがあった。 AIを実践的に活用するには、ヒトのもつ認識能力の重要性を理解し、以下のようなアプローチでしっかり対応していくことが望ましいのではないかと考えている。
ワインで対談 2018年5月13日 企業が求める人材になるため何をすべきか – 人事・戦略コンサルタント松本利明さん×セレブレイン関伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第6回ゲストは、人事・戦略コンサルタントの松本利明さん。5万人以上のリストラと6000名以上の次世代リーダーの選定・育成に携わられた「人材の目利き」のプロフェッショナルです。1月に発売された著書「ラクして速いが一番すごい」が大ヒット中の松本さんに、企業が求める人材の条件とパーソナルブランディングについて伺いました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。 第6回ゲスト:松本 利明さん略歴 プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアなど大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。24年間で外資系、日系の世界的大企業から中堅企業まで、600社以上の人事改革と生産性向上の実現を支援する。現在は、企業向けコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」に変革していくために、「持ち味の見つけ方、活かし方」をビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「ラクして速いが一番すごい」をはじめ、多数のベストセラーを執筆している。 大企業へのアドバイスから個人のキャリア相談まで――松本さんの多彩な仕事ぶり 関:松本さん、あじる亭カリフォルニアにようこそ。あじる亭カリフォルニアは、カリフォルニアワインとこだわりの炭火焼料理を楽しむお店です。松本さんは、ワインはお好きでしょうか? 松本:好きですよ。お酒は大好きで、“シングルモルト普及委員会”というウイスキー入門者向けの試飲会を開催しているくらいです。ワインも好きですが詳しいわけではありません。というよりもあえて詳しくならないようにしているといいますか……ワインは奥が深いので、詳しくなろうとするとどんどん凝ってしまいそうなので(笑)。 関:(笑)。今日はぜひ楽しんでください。まずはスパークリングワインで乾杯しましょう。 松本:スパークリングワイン、おいしいですね。 関:食欲がわきますよね。今日は人事の話題を中心にいろいろとお話を伺わせてください。 松本:こちらこそよろしくおねがいします。関さんはセレブレインの前はどちらにいらっしゃったのですか? 関:前職はタレントマネジメントシステムを提供している会社で、セールスとマーケティングに携わっていました。その後、ご縁があってセレブレインに。松本さんが独立されたのはいつ頃ですか? 松本:約5年前ですね。20年以上は外資系大手のコンサルティング会社で人事分野のコンサルティングをした上で、40歳を過ぎたら独立してコンサルタントをすると決めていたんです。 関:そうでしたか。おっと、最初の料理がやってきましたよ。店長の加藤さん、ご説明をお願いします。 店長/加藤:最初のお料理は、「フランス・ロワール産ホワイトアスパラのサラダ 生姜とレモンの香り」と「昆布と真鯛のカルパッチョ」です。 松本:これはおいしいですね。ホワイトアスパラは香りが爽やかで、スパークリングワインにも合います。カルパッチョも身がしっかりしていてすばらしい。 関:ホワイトアスパラの食感も良いですし、緑が映えます。昆布締めも旨味が広がりますね。さらに食欲がわいてきました(笑)。 店長/加藤:合わせるワインはカリフォルニアの産地、ナパ・バレーのシャルドネ「マヤカマス・ヴィンヤーズ シャルドネ」です。特に90年台のカリフォルニアワインはインパクト重視で、しっかり樽を利かせるものが多かったのですが、こちらは樽を利かせつつも派手ではなく、クラシカルに造られたシャルドネです。旨味たっぷりの真鯛と相性抜群ですよ。 関:まろやかな品のある味わいですね。 松本:香りもよく、ぴったりですね。次のお料理とワインも楽しみになってきました。 関:松本さんは人事を中心とした企業へのコンサルティングサービスから書籍の執筆までとても幅広くご活躍されていますが、最近はどのような仕事に関わられることが多いのでしょうか? 松本:好きな仕事しかしていないのですが(笑)。基本的には企業を対象にした経営・人事領域のコンサルティングが多いですね。コンサルティングに加えて、本の執筆やメディアへの寄稿、個人のキャリア相談に乗ることもあります。 関:そういえば、東京ワーキングママ大学で女性のキャリア開発支援をされているとお聞きしました。 松本:はい。東京ワーキングママ大学は、子育てをしながら自分らしいリーダーとして活躍するためのビジネススクールになります。働く女性を支援するという主旨に賛同しまして、講師や受講者のキャリア開発支援を行っています。 関:そうなのですね。数多くの会社で人材開発に携わられた松本さんのアドバイスがあれば百人力ですね。 松本:私は、企業への人材紹介や私塾などは行っていないので、そういう意味では無理に転職を勧めたり、私塾に勧誘したりすることがないので、客観的に本音でアドバイスができるというのはありますね。 関:なるほど。 松本:少し前に行政関係の仕事で、50歳前後で大企業から成長産業へ転職する方々のキャリア指導の講座を受け持ったのですが、通常そういう方の転職成功率って2%くらいなんです。ところが私が担当したら、3年連続で25%以上の方がご自身が満足されるキャリアへ転身をすることができました。 関:それはすごいですね! 50歳を過ぎてキャリアチェンジをはかるというのは、簡単なことではないと感じます。 松本:私は毒舌なので、いきなりこう伝えるんです。「50歳をすぎて会社を移るということは、アルバイトか幹部として向かい入れられるかの二択しかない。それ以外の発想はなくしてください」と。 関:厳しいコメントですね。 松本:相談者の方々のそれまで生きてきた人生は決して間違ってはいません。それでも転職がうまくいかないのは、これまで培ってきた経験から何を引き出せば勝てるのか教わっていないからです。要は“大人の自己紹介”がきちんと出来ていないのです。私は企業側がどのような人材を求めているか理解していますので、その重要性を伝えることができます。 関:それはぜひ伺いたいですね。その前に次のお料理がきました。 欠点やコンプレックスこそ自分の“持ち味”にするべき 店長/加藤:続いては「スキレット スライダー」です。スライダーというのはミニハンバーガーのことで、こちらは牛肉の味噌煮込みを中に入れてあります。ワインはサンタバーバラの涼しい味わいの「ピエドラサッシ PS(ピーエス) シラー 」をご用意しました。 松本:これは見た目が可愛らしいですね。 関:ミニハンバーガーのことをスライダーというのですね。はじめて知りました。 松本:うん、おいしいです。味噌煮込みということで、少し和のテイストを感じます。 関:赤ワインのエレガントな果実味がマッチしますね。想像以上にぴったりの味わいです。 松本:ワインとお料理がお互いに引き立て合う組み合わせですね。すばらしい。 関:お話を戻して、先ほどの“大人の自己紹介”についてもう少し詳しく聞かせていただけますか。 松本:普通は自分の実績や強みをPRしがちですが、それでは他者と差別化ができません。「ソニーで30年」「パナソニックで29年」など、本人達はPRしているつもりでも、採用側からみるとどんぐりの背比べなのです。大人の自己紹介は「私がその会社にリソースとして加わることで、こんな課題をこう良くできます。それを証明する根拠となる実績はこれです。」と自己PRの1行目に書くことです。コツは強みではなく、持ち味から提供価値を考えることです 関:持ち味と強みの違いを教えていただけますか。 松本:強みは他の応募者と被りやすいものですし、もっと強い人がでてくれば負けます。持ち味は心理学でいう資質です。20歳くらいまでに形成される価値観・性格・根本的な動機で、一度形成されると変わりにくいものです。50歳前後となると資質を活かしたエピソードや実績はあるものです。その中から相手の企業で喜んでくれそうなものを取り出すのです。 関:なるほど。確かに強みは他の応募者と被りやすいですね。ただ、新卒採用の時に習った強みを自己PRするという以外のやり方をアラフィフの方々は受け入れてくれるのですか? 松本:大企業でずっと働いてきた方々にはプライドが高い方も多いので、私のやり方ではまずは10社くらい受けていただいて落ちるところからスタートします。 関:いきなり心が折れそうですね(笑)。 松本:そこからがスタートです。適性試験や実習を通して資質を浮き彫りにして、大人の自己紹介を作り込みます。そのプロセスで忘れていた本当の自分の良さを抽出し、伝え方を学ぶのです。 関:その人が輝ける道がきっとあるはずですよね。特に成長途上のベンチャー企業は、経験のある人材を求めています。 松本:そうですね。大事なことは「自分が入るとその会社がどうなるのか」という仮説を立てること。それは意外なところにあるかもしれません。たとえば、とある方は専門能力としては一見パッとしないようにみえましたが、部下が一人も辞めていないという実績がありました。ということは、どんどん人が辞めていってしまう企業の管理部門ならニーズがあるのではないかという仮説が立てられます。それを実際に書いていただいたら、すぐに決まりました。 関:直属の上司との人間関係、というものは職場でいきいきと働くにあたっての重要なファクターですよね、退職理由のランキングで取り上げられることも多いですし。 松本:ポイントは、自分自身の欠点やコンプレックスというものは、実は個性につながっているということです。たとえば太っているという特徴は一般的に欠点と思われるかもしれませんが、見方によっては癒し系といえるかもしれません。人間は自分をかっこよく見せたくなりますが、本当の魅力というのはむしろ、欠点をうまく見せることで伝えられるのです。 関:そういうものを見つけることができれば、転職においても強い武器になるということですね。 松本:一つ、例としてお話しましょう。昔の編集者はお酒が飲めることが大事でした。なぜなら、作家の先生と付き合うためには一緒にお酒を飲めないといけなかったからです。ところが、とある編集者の方はお酒が全く飲めませんでした。 関:それは困りますね。欠点を克服するなら、少しでもお酒を飲めるように頑張る方へ向かいそうですが……。 松本:酒が飲める編集者はたくさんいます。そのため、その方はそこで勝負してもしょうがないと考えました。ただ話をすることや聞くことは上手でした。そこで、作家先生が考えていることを先回りして調整していったそうです。その結果、お酒の場でのコミュニケーションがなくても、信頼をされるようになり、うまく仕事を進めることができるようになったのです。酒が強い編集者はたくさんいるが、こまごましたことを調整してくれて執筆に集中させてくれる編集者は他にいないと。持っている資質を活かすことでオリジナルな存在になれば強いのです。 関:これまで必ず必要と思われていたことができなくても、自分の得意な領域に注力することで、相手との信頼関係を築くことに成功したのですね。今のお話は参考になるという方も多いのではないでしょうか。 ここまで前編では、松本さんの多彩な仕事ぶりやキャリア開発に取り組んでいく上での重要な視点について話し合ってきました。 次回の後編では、企業に求められる人材になるために大事な視点とは?にフォーカスをあてて詳しく語っていただきます。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワインと炭火焼きのダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。ソムリエ資格をもつシェフがカリフォルニアキュイジーヌとワインを絶妙にマリアージュし、腕を振るっています。 (都合により4月末日を持って閉店しています)
人事施策 2018年5月06日 報酬だけではない!レコグニションの仕組み化で社員エンゲージメントを高める 日本の労働人口が減少している現在、社員ひとりひとりのエンゲージメントを高め、長期的に活躍してもらうことは企業や人事部門にとって重要な検討事項です。 では、どのようにすればエンゲージメントを高めることができるのか?今回は「レコグニション」についてご紹介します。 [目次] レコグニションとは? レコグニションを構築するための5つのポイント 海外のレコグニションプログラム提供サービス まとめ レコグニションとは? 「レコグニション」とは、日本語に直訳すると「認識」や「承認」という意味です。人事用語としては、「社員の活躍を認め、承認・称賛することを仕組み化する」ことです。以前、リワードプログラムについて紹介しましたが、「社員の活躍に対して報いる」という意味ではリワードもレコグニションも同じです。しかし、大きな違いとしては、リワードは金銭を伴うインセンティブのことを指し、レコグニションは非金銭的報酬で承認・称賛することを指します。社員の取り組んでいる仕事に価値があることを示し、ポジティブな職場の雰囲気を作りだすなど、より企業カルチャーへの影響が強いのが特徴です。 具体的な例としては、表彰制度、社内SNSで称賛しあう文化、ありがとうカードなどがレコグニションになります。 レコグニションを構築するための5つのポイント 最近の研究では、社員に対して前向きなフィードバックをするには、次の5つのポイントが重要であることがわかってきました。 1.即時 あとでまとめてフィードバックするよりも、その時々にすぐにフィードバックをする方が効果が高いと言われています。 2.誠実 何かを意図してやテクニックで承認・称賛をしても相手には響きません。承認・称賛は心から伝えることが大切です。 3.具体性 「いい仕事したね」などの曖昧な表現よりも「前年比200%の売上達成はとても素晴らしいね」など具体的に表現するほうが相手によく伝わります。 4.バランス 感謝する対象に対するレコグニションの釣り合いも重要なポイントです。メールで伝えるのか、電話で伝えるのか、わざわざ会って言うのかなど、伝え方だけ考えてみても重みが変わります。 5.ポジティブ 「これは×だけど、これは◯だね」などのように批判的なことと一緒に行うと効果はでません。良いことだけをフィードバックすると効果が高まります。 どれも受けて側にたつと納得のポイントです。これらの5つのポイントをレコグニション構築の際には念頭におくことで、効果の高い仕組み構築が可能になるかと思います。 海外のレコグニションプログラム提供サービス このような承認・称賛について、特に昔の日本では暗黙的という考え方が強く、あえて言わないという文化的な側面もある気がします。一方で欧米では必要なことは仕組み化していく、具体的にアクションをしていくという文化的な傾向があり、レコグニションについても、サービスが生まれてきています。 Achievers https://www.achievers.com 2002年に設立されたカナダの会社です。「Change the way the world works(世界の働き方を変える)」ミッションに掲げ、レコグニション、リワードに関するプラットフォームを提供しています。 ※レコグニション単体のシステム(承認・称賛を可視化するなどのシステム)はあまりなく、リワード(外部サービスと連携した福利厚生)がセットになるシステムが多くなります。 まとめ 個人の価値観によりますが、世の中報酬だけを目的に働く人だけではありません。ましてや、モチベーションは些細なことで大きく変わります。 最適なレコグニションの構築は経営的な観点からも、お金をかけずとも業績があがるという経済的合理性を発揮します。また、会社の文化構築や変革にも大きく寄与するため、働きやすい職場という競合優位性にもつながります。 継続的かつ頻発に承認・称賛が発生する仕組みを組織に作り込むことで、社員のエンゲージメントが向上し、イキイキと働くことや高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。 自社に合うレコグニションの構築を人事施策に取り入れてみてはいかがでしょうか。