解説 2021年1月26日 テクノロジーを活用した新たなコーチングとは? 多くの企業が人材開発の一手法として取り入れている「コーチング」。コロナ禍でのリモートワークの浸透、コミュニケーションのデジタル化によって、ますますその有用性が注目されています。コーチングは対面でのコミュニケーションが基本ですが、昨今はAIなどのテクノロジーを活用することで従来のスタイルよりも科学的、効果的に進化しつつあります。今回は、デジタルツールを活用した新しいコーチングのスタイルを紹介します。 [目次] コロナ禍で高まるコーチングのニーズ コーチングとテクノロジー デジタルツールで革新的なコーチングへ まとめ コロナ禍で高まるコーチングのニーズ これまで企業が人材育成にコーチングを取り入れてきた主な理由は以下の2つです。 (1)価値観の多様化による、社員の抱える個別課題に対応 時代や社会環境の変化に伴い、社員の価値観は昔よりかなり多様化しました。また、変化の速いビジネス環境下で社員が直面する課題の個別性、複雑性も高くなってきましたが、コーチングはコーチが対象者の業務に詳しくなくとも傾聴と適切な質問で相手に気づき・行動変容を促せる手法なので、一人ひとりをオリジナルな解決策に導く効果がありました。 また、課題解決にまでは至らずとも心理状態や悩みを聞いてあげることでメンタルの安定につながるなど、ソフトランディング的効果もあったと言えるでしょう。 (2)経験学習の効果 不確実で複雑性が高く、変化のスピードが速いビジネス環境に対応するには、業務のなかで「経験→省察→概念化→実践」といった経験学習のサイクルを効果的に回すことが大切です。コーチングならコーチが第三者の立場から個人の省察や行動実践などを促すことができます。例えば、経営幹部向のエグゼクティブコーチングなら、自己認識力が高くなることによるマネジメント力向上や、より高い視座を持つことによる戦略構築力の強化が期待できました。 一般社員のコーチングなら、まったく自分で考える習慣のないいわゆる指示待ち社員も、コーチングを重ねることで自分の行動に自覚的になり、自主性と行動力を増していく効果があります。 直近ではリモートワークの普及によるコミュニケーション上の課題の解決手段としても期待されています。SNSやチャットでは「テキストでは怒っているように見えたが大丈夫だった」といった余計な誤解、違和感が生まれています。このようなコミュニケーションのギャップを解消するのにも有効だと言えるでしょう。 コーチングとテクノロジー コーチングは手法として有効であることは間違いないですが、現実には上司は忙しいためコーチングの頻度は少なく次のコーチングまでの時間も長くなりがちです。人事がそういった状況で費用対効果を見た際に価値観の多様化により一人ひとりに適切な解決策を提示すること自体が難しい面もあります。そこで、注目されているのが先端テクノロジーを活用したコーチングです。コーチングには以下のメリットがあります。 ◆対象者側 ・面談と面談の合間もコーチの協力が得られる ・アセスメントとAIの分析で自分のレベル・課題に適したコーチを受けることができる ・目標に紐づくエビデンスに基づいたコーチを受けることが可能 ◆コーチ側 ・面談と面談の間でも対象者に「一口サイズ」のアクションができる ・対象者のレベル・課題にあった実践的な提案ができる ・システムで一元管理できるため成長の遅い対象者を把握しやすい デジタルツールで革新的なコーチングへ 米国の「HR Technology Conference & Expo 2019」の『Pitchfest(スタートアップ企業コンテスト)』において、コーチングをサポートするデジタルツール『PILOT』が優勝しました。個々の社員のキャリアをデザインし、社員が自発的に成長できる環境を整えられる点が評価のポイントです。 PILOTを活用すれば、スマホやPCを利用して週に10~15分のコーチングが可能です。AIがコーチング結果を分析し次回以降のコーチングに反映するため、コーチング精度も向上します。コーチ側も業務負荷が減り人に向き合うことに集中できるなど、コーチをする側、受ける側ともメリットがあるシステムです。 まとめ テクノロジーの進化、リモートワークの普及などを背景にコーチングの形も変化しつつあります。AI搭載のデジタルツールを活用したコーチングなら、社員に対し精度の高いコーチングを時間は短く頻度を増やして提供することが可能です。学習効果、成長意欲を高めるだけでなく、リモートワークで発生するコミュニケーションのギャップを解消し、社員のパフォーマンスが高まる効果も期待できるでしょう。また、コスト削減にもつながります。 コーチング コミュニケーション テレワーク
HRTech 2021年1月25日 無料でつくれる採用HPの効果とは インターネットの普及とともに、求職者は企業の判断材料として企業ホームページ(以下、公式HP)を重視するようになりました。自社にとって最適な人材を確保するため、公式HPに加えて詳細な求人情報を発信する「採用ホームページ(以下、採用HP)」を構築する必要性が高まっています。近年は採用HPを無料または安価でつくることができるサービスも生まれています。本記事では採用HPの重要性と、無料でもつくれるHPの効果について解説していきます。 [目次] 採用HPは企業にとってなぜ重要なのか 無料でつくれる採用HPを活用するメリット 無料の採用HPで期待される効果とは 人材確保に、無料採用HPの活用のすすめと注意点/まとめ 採用HPは企業にとってなぜ重要なのか 企業が自社の公式HP以外に採用HPを特設する理由は、公式HPや求人広告では表現しきれない自社の魅力をアピールできる点にあります。 ・自社の魅力をもれなくアピール 企業が運営する公式HPは株主、取引先、消費者他さまざまなステークホルダーに情報を発信する目的で作られているため、バランス上、採用の情報だけを強調することはできません。そのため掲載情報も網羅的になります。 求職者がより深く企業を知ることができる専用の採用HPをつくり、自社の魅力や詳細な情報を発信することで「採用したい人材」に応募してもらえる可能性を高めることができます。 ・入社後のギャップを軽減 これまで公式HPや求人広告に盛り込みきれなかった情報を採用HPに掲載すると、求職者に入社した後のイメージを、リアリティをもって描いてもらうことができます。具体的な業務の流れや職務内容、必ずしも魅力だけでなく厳しい面も触れるなど求職者が本当に求めている情報を発信することで、応募者数を増やせたり、入社後のギャップを少なくする効果もあるでしょう。 無料でつくれる採用HPを活用するメリット 近年は、無料でつくれる採用HPサービスが増えており、多くの企業で活用されています。このサービスを使って採用HPを制作するメリットと期待できるポイントを解説します。 ・制作・運用担当者の負担と費用を削減 一般的なHP制作とは異なり大きな費用をかけなくても社内で簡単に採用サイトを作成することができます。 制作にあたっては、多く用意されているテンプレートを活用するため、クリエイティブなセンスに自信がなくても一定のクオリティに仕上がる点も安心です。一般的にはサイト構築のために必要となる多大な時間を減らせるため、採用担当者の負担も軽減できます。 ・サイトの立ち上げや更新が早い 制作する担当者に専門知識がなくてもスピーディーに採用サイトを立ち上げることができます。応募者の管理や情報の更新(追加や修正)なども即座に多くの時間をかけず、かつ簡単に行えるのもポイントです。 ・求人広告以外で広く人材を募集 無料サービスを活用して制作したページなので、求人情報は「長期掲載」しても費用は必要ありません。掲載期間が自由に設定できるので、自社に興味を持っているスキルの高い応募者からの直接応募の機会が増える事も期待できます。 通年採用にはとても有効でしょう。 無料の採用HPで期待される効果とは 無料でつくれる採用HPには、複数の求人情報が自動的に検索エンジンや大手SNSに掲載されるサービスもあります。Googleが提供するサービスは、ガイドラインの条件を満たせばGoogleの「仕事検索」に掲載されます。 各無料採用HPサービスにはデザイン性、強い求人領域などそれぞれ特性があるため、自社にあうサービスを選択することがポイントです。いずれもコストはかからず、より多くの求職者の目にとまるため応募数増加が期待できます。これまでの課題だった「費用削減」と「応募者の少なさ」を同時に対策できるでしょう。 無料でつくれる採用HPサービスの例 engage https://en-gage.net/ エン・ジャパン運営の無料採用サイト作成サービス。求人検索エンジン対応、SNS連携、スマホ表示に対応しており、採用報酬も無料です。 採用係長 https://saiyo-kakaricho.com/ Indeedをはじめ、6つの求人検索エンジンに採用サイトを一括連携でき、応募者の一括管理も可能です。 MEET SOURCE https://meet-source.com/ シンプルに始められる無料採用サイト作成サービス。Indeed連携可能です。カケハシ スカイソリューションズ運営。 人材確保に、無料採用HPの活用のすすめと注意点/まとめ インターネット、スマートフォンの普及により、情報収集をWebで行うことは今やスタンダードとなりました。企業が望む人材に求人情報に応募してもらうためには、まず求職者とのインターネット上での接点を増やす必要があるため、自社HP以外に無料採用サイトを活用する意義は高いと言えます。 ただ、昨今はコンテンツファーストの時代と言われるように、情報を探す側の目もシビアになってきています。自社でコンテンツを制作し過ぎてしまうと、求職者やユーザーにとって本来の効果とは逆に効果が働いてしまうこともあるので注意しましょう。求職者が本当に知りたい情報、求人広告や公式HPには掲載できない魅力を打ち出し、求職者を惹きつけることが採用HP活用のポイントです。また、一定の客観性をもったコンテンツを外部に制作してもらうことも選択肢として考えておくべきでしょう。 中途採用 採用サイト 新卒採用
人事施策 2021年1月25日 アルムナイ採用が注目される理由と最大限活かすためのコミュニケーションを解説 近年は、一度企業を退職した優秀な人材を貴重なリソースとしてとらえネットワークを構築し、再雇用につなげる「アルムナイ採用」に取り組む企業が増えつつあります。 アルムナイ採用はミスマッチが少ない、採用コストが低い、外部で多様な経験をつんだ人材に活躍してもらえるなどのメリットがあります。今回はアルムナイ採用が注目される理由とアルムナイを活かすコミュニケーションについて解説します。 [目次] アルムナイとは?注目される背景 アルムナイが注目される4つの理由 アルムナイの導入ポイント まとめ アルムナイとは?注目される背景 アルムナイとは英語で「alumni」と表記され「卒業生・同窓生」を意味します。転じて、ビジネスでは企業の離職者やOB・OGの集まりを指します。海外では離職者のネットワークを築き、コミュニケーションをとることで再雇用につなげる「アルムナイ制度」は一般的になっています。 日本でも、一昔前こそ離職者へのネガティブなイメージがありましたが、転職に対する人々の意識の変化、企業の成果主義へのシフト、人口減少による採用市場の競争激化を背景に、アルムナイを貴重な人材資源ととらえる企業が増えています。 事例としてはアクセンチュアなどの外資系企業はもちろん、住友商事、NTT西日本、みずほ銀行、IT企業のサイボウズ社など大手企業の取組みも目立ちます。近年で特に象徴的だったのはパナソニックの事例だと言えるでしょう。 一度は退職してマイクロソフトなどのCEOをつとめた樋口泰行氏を、2017年に代表取締役兼専務役員として招き入れ「異例の出戻り人事」と話題になりました。変革の時代には外部で経験を積み、社内に新しい風を吹き込める人材が必要という考えからです。 アルムナイが注目される4つの理由 アルムナイが注目されている理由は以下の4つです。 ・終身雇用制度の崩壊による人材の流動化 バブル崩壊、リーマンショック以降、日本企業は終身雇用を維持することが困難になり、人件費削減のために早期退職者を募る一方、競争力を高めるために専門性の高い人材を採用するようになり、人材の流動化が進みます。 ・働き方への意識変化と多様化 人々の価値観も変化しフリーランスやパラレルワークなど多様な働き方が増えています。特に若年層は自身の成長のために「転職」する傾向があり、企業が優秀で若い人材を雇い続けることが以前より難しくなっています。中途採用の転職マーケットも拡大し続けており、優秀な人材の確保は企業における課題となっています。 ・採用のミスマッチが起こりにくい 優秀な人材を採用しても社風や業務慣習になじめず離職するケースは少なくありません。アルムナイは企業風土や業務スタイルを承知してカムバックするためミスマッチを引き起こしにくく活躍が期待できます。既存社員も純粋な中途採用者より出身者を受け入れやすい面があるでしょう。 アルムナイの導入ポイント 導入ポイントは以下の4つです。 ・再雇用のための条件 再雇用するための必要スキル、在職期間などの基準を明確にします。「辞めてもすぐ戻れる」と安易な印象を持たれないように注意しつつ、できるだけ門戸を広く設けることが重要です。 ・退職時のコミュニケーションを最適化 退職時に良いイメージを持ってもらうことが大切です。退職後のステップアップ支援制度、再雇用する制度があることを丁寧に説明し、戻ってきても良いのだというメッセージを伝えます。 また、アルムナイ制度が社内に周知され、退職が決まった社員を気持ちよく送り出す必要が生じることで、退職予定者がいても社内の雰囲気が悪化しにくくなるなど、退職をとりまく社内風土の改善にも役立てることができます。 ・離職者との関係を維持する定期的なコミュニケーション メールマガジン、イベント、SNSなどを活用し退職者とのコミュニケーションがとれる仕組みを作ります。あくまで外部の人材なので社外秘の漏洩には注意します。 アルムナイネットワークの構築が成功している企業では、採用だけでなく、取引先として付き合いが広がったり、外部の視点を取り入れる機会に繋がったりと、副次的な効果が生まれているようです。 ・受け入れ体制を整える アムルナイの採用に一部の社員が良いイメージを持たないこともあります。全社員に制度を周知するとともに、カムバック前に配属先の上司との面談、同僚とコミュニケーションをとる機会を設けるなど受け入れ体制を整えます。 実際にアルムナイ社員がきちんと受け入れられている状況を目にした社員は、その後退職しても、戻ってくる心理的ハードルが下がるため、アルムナイ採用に好循環が生まれます。 まとめ 近年は一度退職した社員を再び雇用するアルムナイ採用に取り組む企業が増えています。変化の激しい時代、優秀な社員が多様な経験をつんで成長してもどってくれることは企業にとってプラスです。 前向き転職が多い時代には離職者の中にも出身企業にエンゲージメントを持ち続ける社員は多いため、SNSやイベントなどを活用しアルムナイとコミュニケーションをとっていきましょう。 アルムナイ アルムナイ制度 中途採用 再雇用
解説 2020年12月14日 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜 近年「サーバント・リーダーシップ」というリーダーシップのスタイルが部下育成や組織力を高めるために求められています。 サーバントとは、直訳すると、奉仕者、召使いのことを指します。トップの画像はボスとリーダーの違いをモチーフにした画像です。下の図のBOSS(ボス)は部下に指示を与えて仕事をさせていますが、上の図のLEADER(リーダー)は自らが先頭にたちチームをまとめあげていきながら、物事を前に進めていきます。 一見すると奉仕者のように見えるこのリーダーが発揮しているのが「サーバント・リーダーシップ」です。 「サーバント・リーダーシップ」は米国のロバート・グリーンリーフ博士によって1970年に提唱された考えに基づいています。「リーダーのために部下がいる」という発想を逆転させ、「部下を支えるためにリーダーは存在する」という考え方をベースにしているのが特徴です。 なぜ今、サーバント・リーダーシップが求められているのでしょうか。 管理職としての仕事とは? 管理職とプレーヤーでは考え方を大きく変える必要があります。 管理職になる前は、一人のプレーヤーとしての成績や評価で優秀かどうかが判断されてきました。しかし、必ずしも優秀なプレーヤーが優秀な管理職になるとは限りません。なぜなら、プレーヤーとして成果を上げる力と管理職として成果を上げる力は全く異なるからです。 管理職の仕事とは、「組織上のミッションと目標を理解し、組織として質的にも量的にも上回る成果を上げること」です。そのためには、与えられたビジネスリソース(人・物・金・情報)を最大限に活用する必要があります。中でも、最も重要なビジネスリソースが人です。各メンバー一人ひとりがその能力を十分に発揮し、大きな成果を上げることで、組織としての成果も大きく向上するからです。 しかし、人の価値観も多様化している昨今、管理者としてチームメンバーそれぞれが成果をあげるよう支援することは簡単なことではありません。 一般的に以下のようなことが部下についての悩みとしてよく耳にします。 "・指示を待っていて、自ら主体的に動いてくれない ・指示してもその通りに動いてくれない ・出来なかったことに、責任を感じているように見えない ・仕事に対する意欲ややる気を感じない ・指導すると、反発したり、内にこもって黙ってしまう " 管理職になると個人の成果とは異なり、チームの成果を求められます。 チームとしての成果を上げることができない場合、経営層から「優秀な人材と見込んで管理職にしたのだが・・・」と言われたり、部下から「課長は自分たちのことを全く信頼していない・・・」などと、双方から批判的なことを言われ、板挟みになることも少なくありません。「部下とどのように向き合うか」「どのような関係を築いていくか」かは組織として成果を出すことを求められている管理職にとっては大切なテーマとなります。 時代とともに求められるリーダーシップは変化してきている ビジネスのスピードが加速し、それとともに求められるリーダーシップも変化をしてきています。 合理性の追求さえしていれば経済成長をしていた時代は、過去の成功体験をもとに上司が正しい答えを持っていました。そのため、正しく指示・命令さえできていれば、チームとしての成果も自然に上げることができていました。 しかし、テクノロジーが既存ビジネスを次々に破壊し、過去の成功体験は通用しなくなってきています。また、働き方改革による就労形態の多様化、ネット時代における情報入手の容易性、それにともなう人の価値観や生き方の変化など、これまでのマネジメントの仕方では人は付いてこなくなりつつあります。 そんななか組織の力を最大限に発揮するためには、上司は部下の自主性を尊重し、支援・奉仕を通じて信頼関係を育み、一人ひとりが前向きに能動的に活動していく環境を作っていく必要がでてきています。 これまでの支配型リーダーシップから、支援型リーダーシップへとリーダーシップのあり方自体に変化が求められているのです。 次回は、この支援型リーダーシップである「サーバント・リーダーシップ」を実践し、どのように部下と向き合っていくのかをお伝えします。 続き:サーバント・リーダーシップの実践 〜管理職の持つ2つのパワー〜 マネジメント リーダーシップ
解説 2020年11月02日 DXの実現に必要な人材とは(後編) DX(デジタル・トランスフォーメーション)の実現にはIoTやAIなど最先端のデジタル技術を活用し、市場の変化にあわせてビジネスモデルを変革したり、新たな価値を創出できる人材を確保することが急務です。 今回は、DX人材を採用する際のポイントとDX人材の育成方法について解説します。 [目次] DX人材の採用手法と採用時の注意点 DX人材育成のキーワード「Reスキル」と「リカレント教育」 まとめ DX人材の採用手法と採用時の注意点 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、2019年、IoTやAIを活用したITサービス市場に従事する先端IT人材の転職方法についてアンケート調査を実施しています。 調査結果では、最先端の技術を持つIT人材の転職方法は「友人・知人等の紹介」や「人材サービス企業からの紹介」がいずれも3割を超え、次いで「ヘッドハンティング」が3割弱です。現在のDX人材の採用は、リファラルなどのダイレクトリクルーティングも主流になりつつあると言えるようです。 転職を決意した理由として最も多かった回答が、「自分のやりたい仕事ができなかったから(34.8%)」であることから、DX人材を採用する際は相手の持つスキルや経験とのマッチングだけでなく、相手が希望する仕事と自社が期待するDX人材としての役割のマッチングがポイントであることがうかがえます。 とはいえ、国内外においてDXの実現に必要な先端ITスキルを持つ人材がそもそも希少なことも事実です。多くの企業は、高額なオファーで厳しい人材獲得競争に勝ち優秀な人材を確保すること自体、困難でしょう。 そこで注目を集めている人材確保の取り組みが、自社内でのDX人材の育成です。 DX人材育成のキーワード「Reスキル」と「リカレント教育」 DX人材の育成には、従来型IT人材から先端IT人材へと転換するための「Reスキル推進」が重要と言われています。 従来型IT人材とは、既存システムの受託開発、保守・運用サービス市場に従事する人材のことです。つまり従来型IT人材を既存システムの維持保守業務から解放しDX分野にシフトさせ、先端IT人材として育成するということです。 事業部門人材のIT教育や適材適所の配置など、IT部門外人材の流動化を促進して先端IT人材を確保するといったアプローチも重要です。この場合、ITスキルの習得からDX人材の育成施策を検討する必要がありますので、いわば企業による「リカレント教育」の推進だと言えるでしょう。 IPAの資料によると、DXの取り組みで成果を出している企業は、一過性でなく継続的かつ全社的に勉強会や啓発のための研修などを行っています。 【例】 •経営層を含む定期勉強会 •CDO 自ら全社員向けにデジタル研修実施 •全社員向けの啓発研修 •海外のスタートアップの情報を現地で収集 •DXメンバー の自発的な最新技術把握・実践 •コンテスト、資格取得奨励、他 また、教育の取り組みが多岐に渡っているほか、組織文化において「リスクを取り、チャレンジ」、「多様な価値観受容」、「仕事を楽しむ」、「意思決定のスピード」という傾向があるという結果も出ています。経営層が中長期的な視点のもと、全社的にデジタル社会に対応できるような教育を実施していることがうかがえます。 しかし、DX人材の育成には時間がかかることや、先端IT人材が従来型IT人材よりも「自分のやりたい仕事」、「クリエイティブな仕事」、「先端的な仕事」を求めて転職する傾向が高いことを踏まえ、外部から人材を獲得する努力を継続することも重要です。もし、マッチングが上手くいき優秀なDX人材を採用できれば、社内の人材にポジティブな影響を与え、人材育成上も大きなプラスとなるでしょう。 まとめ DX人材の育成・採用については、DXの実現が企業の経営戦略上不可欠であることを、まず経営層が強く認識する必要があります。「人材流動化」や「Reスキル支援」は全社的な取り組みがあってはじめて成果を出せるからです。 企業には、個々の社員のキャリアビジョンとITリテラシーを考慮しながら、既存の社員に学び直しの機会を積極的に提供する努力が求められます。採用市場にスキル・経験を保有するIT人材が希少なことを踏まえて、社内リカレント教育を推進するための「Reスキル支援の仕組み・環境づくり」をしていきましょう。
解説 2020年10月27日 DXの実現に必要な人材とは(前編) IoT、AI、ビッグデータなどのテクノロジーの指数関数的な発展に伴って、世界規模でビジネスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進んでいます。多くの企業がこの変化を前にビジネスの転換期を迎えています。今回はDX推進に不可欠な「DX人材」について解説します。 [目次] DX人材とは、新たな価値を生み出せる存在 必要になるDX人材 なぜ今、DX人材が必要なのか まとめ DX人材とは、新たな価値を生み出せる存在 DX人材の理解にあたって、まずは「DX」について確認してみましょう。DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略称です。 経済産業省は「デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において、DXを以下の通り定義しています。 『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』 DXの成功例には、Amazon、Facebook、Appleなどがよく知られています。いずれも既存業界を変革するだけでなく、人々のライフスタイルにも大きな影響を与えました。 また、日本の基幹産業である自動車業界も自動運転技術の登場により100年に1度と言われる大変革期を迎え、DX化を加速しています。あらゆるモノがインターネットに接続し、AIでデータを分析できる時代には、車の運転も周囲の状況をセンサーでキャッチした安全走行が可能になります。 今や自動車=「乗るもの」「所有するもの」という概念が変わりつつあり、安全で快適な空間の在り方、新しい都市の在り方が構想されていることを、ニュース等で目にした方も多いのではないでしょうか? DXとは単なるデジタル化、技術革新ではなく、人々の暮らしや社会の在り方にまで変容をもたらすことを意味します。DX時代においては、単にデジタル技術に優れているだけではなく、技術を活用して顧客に新たな価値を提供できるDX人材が必要になります。 必要になるDX人材 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、2019年にDXの取り組み実態の把握やDX推進の組織や人材のモデル化を目的とした調査の結果を公開しています。調査対象は、東証一部上場企業です。 その中で、DX人材の一例として以下の職種を定義しています。 ・プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材 ・ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材 ・アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 ・データサイエンティスト/AIエンジニア DXに関するデジタル技術(AI、IoT)やデータ解析に精通した人材 ・UXデザイナー DXやデジタルビジネスのユーザー向けデザインを担当する人材 ・エンジニア/プログラマ 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材 なぜ今、DX人材が必要なのか 同調査では、8割を超える企業がプロデューサー、ビジネスデザイナー、アーキテクト、データサイエンティスト/AIエンジニアの人材が不足している、と答えています。 約6割の企業が「自社の優位性や競争力の低下」を懸念し「ビジネス変革の必要性を非常に強く感じている」と回答しているものの、取り組みは「業務の効率化による生産性向上」に留まり、「新規製品・サービスの創出」は半数に満たないという実態も明らかになっています。 その理由として、現在の「既存システム」がDX実現の障壁となっていることに加え、DXに向けてビジネスモデルやシステムを見直したくても、必要な人材が社内にいないことが挙げられています。DXの推進に向けてまず取り組むべきは、人事面の課題だと言えるでしょう。 まとめ DXとは、データやデジタル技術を活用して市場に変革をもたらし、顧客に新しい価値を提供していくことであり、企業のDX推進にあたっては多様なDX人材が必要になります。DX化は企業が優位性や競争力を維持するための必須課題ですが、多くの企業でDXを推進する人材が不足しているのが現状です。企業には、まずDX人材を確保するための採用・育成という人事戦略が求められています。後編では、DX人材の育成方法について解説します。 続き(後編)を読む
HRTech 2020年9月23日 従業員エンゲージメント向上に有効!? パルスサーベイのメリットと運用のコツ 近年、国内外の多くの調査において「企業の業績」と「従業員のエンゲージメント」との相関関係が実証されており、日本でも従業員満足度とあわせてエンゲージメントの向上に取り組む企業が増えています。従業員エンゲージメントを高めるためには、まず、現時点での従業員の満足度や仕事のやりがい、企業への信頼度などを把握した上で適切な施策を実施し検証・改善し続ける必要があります。そこで、従業員サーベイの手法として「パルスサーベイ」が注目されています。今回はパルスサーベイのメリットや運用時の注意点をご紹介します。 [目次] 高頻度で手軽に実施できる「パルスサーベイ」とは? パルスサーベイのメリット・活用効果 パルスサーベイ導入と運用における注意点 まとめ 高頻度で手軽に実施できる「パルスサーベイ」とは? パルスサーベイとは小規模かつ高頻度に実施されるサーベイのことです。「パルス(pulse)=脈拍」「サーベイ(survey)=調査」なので、脈のように短いスパンで繰り返し調査するという意味であり、日本では主に従業員満足度調査などに活用されています。 例えば、大規模な年1回実施するような従業員満足度調査は問題の原因究明、部署や年次ごとの比較を行いやすい長所はありますが、調査の案内や実施、結果の集約・分析にかなりの時間とコストが発生します。 急な職場環境や個人の変化を察知できず、対応が遅きに失する場合もあります。一方、実施する側にも受ける側にも負荷が少なく、組織内の課題や従業員の意識をリアルタイムに近い状態で把握できるのがパルスサーベイです。 パルスサーベイのメリット・活用効果 パルスサーベイのメリットを紹介します。 ・手軽かつリアルタイムな調査が可能 1回5~10分、質問項目3~7個程度の調査なので従業員の負荷が少なく、目的に応じ週次、月次に実施すると従業員の習慣になりやすいメリットがあります。「仕事に満足できていない」「周囲との連携がうまくいっていない」といった従業員の状態をリアルタイムに把握できます。 ・従業員満足度・エンゲージメントの向上 サーベイの結果をもとに、上司が従業員の「今の課題」をサポートしやすくなります。適切なフォローが可能になることで、従業員は「会社が自分のことを気にかけてくれる」という印象を持ち、エンゲージメントが向上しやすくなります。 ・新入社員のオンボーディング、簡易ストレスチェック 新入社員の中にはGW明けや試用期間中など早期に離職する人も少なくありません。例えば週次のパルスサーベイで兆候を把握し適切なフォローができれば、新人の思い込みや誤解による離職を防げる可能性があります。パルスサーベイで簡易的なストレスチェックを実施することで、メンタル不調の未然防止にもつながります。 パルスサーベイ導入と運用における注意点 導入時、運用時の注意点を解説します。 ・サーベイの実施頻度や内容を適切に決める 対象者、頻度、フィードバックのタイミング、質問数と内容を明確に決めることが重要です。頻度が高すぎると上司のフィードバックが追いつかず、サーベイ自体がマンネリ化してしまいます。質問数も多すぎると受ける側は負担です。 ・データを閲覧できる範囲を明言する 調査データの閲覧方法と範囲、回答内容によって不利益を被ることがないことを事前に説明することが重要です。回答内容によって人事評価に不利益が生じると危惧されてしまえば従業員は本音で回答せず、出てくる結果もそれに基づいてたてた施策も失敗に終わる可能性があります。 まとめ パルスサーベイは、手軽に高頻度で行えるため、従業員の状況をリアルタイムで把握できるメリットがあります。適切な質問数と頻度で実施し、調査結果をもとに従業員をフォローしたり、組織の問題点を改善したりし続けることで、従業員エンゲージメントが向上することが期待できます。 エンゲージメント ストレスチェック パルスサーベイ
HRTech 2020年9月16日 「ピープルアナリティクス」と「タレントマネジメント」との違いとは 近年は経営目標の達成に向けて、「人事を科学する」試みに取り組む企業が増えています。人事担当者の“経験”と“勘”に頼るのではなく、最新のテクノロジーを活用して人事データを分析することで、実際にどのような効果が期待できるのでしょうか? 今回は、人材データ活用における注目キーワード「ピープルアナリティクス」と「タレントマネジメント」について解説します。 [目次] 「ピープルアナリティクス」とは 「タレントマネジメント」とは まとめ 「ピープルアナリティクス」とは 「ピープルアナリティクス」とは、社内に存在する人材に関するデータを収集・分析し、統計的アプローチやエビデンスに基づいて、人材の採用・配置・評価ほか人事施策の意思決定を行っていく概念および取組みのことを指します。 ピープルアナリティクスという言葉を最初に使い始めたのはGoogleだと言われています。昨今、「心理的安全性」という言葉を耳にした方は多いと思います。これは、実はGoogleが「プロジェクト・アリストテレス」と名づけた社内調査において心理的安全性が生産性を左右する指標の5つのうちの1つであると解明したことがきっかけです。 社内の人事データを分析することで、今まで大きな成功要因と見なされていなかった新たな指標を導きだし、多くの経営者やマネージャー層に示唆を与えた事例です。Googleはピープルアナリティクスの定義を、「経営面で確率的な利点を得るために人材マネジメントに統計学と行動科学を体系的に応用すること」としています。 ピープルアナリティクスで扱う人材データは、性別や年齢という基本的な情報に留まりません。個々の従業員のスキル、行動、成果、キャリアプラン、従業員間の相互作用まで多岐に渡ります。 そのため、ピープルアナリクスは一般的な人事業務だけでなく、人材に関するさまざまな人事施策をデータによって客観的に捉えて判断し、その有効性を評価し、改善につなげることに役立ちます。 人事戦略上の難しい課題解決や大きな意思決定を迫られた際にも、豊富なデータを分析して得られたデータをもとに意見を出し合うことで、よりより解決策や判断基準を導き出せるようになります。 【活用領域例】 ●人材の採用、配置、育成 ●人事評価、人材の抜擢 ●離職理由の分析と改善 ●職場開発、組織改革 他 「タレントマネジメント」とは 一方、人事データを活用すると聞くと「タレントマネジメント」をイメージする方、実際に活用している方も多いと思います。 タレントマネジメントは、1990年代に欧米で生まれた概念です。日本では2010年代から注目を集めました。多くの企業が少子高齢化による労働力人口の減少や、働き方改革の推進による人的資源の活用に課題を抱え始めていたからです。 タレントマネジメントは、従業員の人材データを一元管理して可視化することで、人材開発や適材適所の人員配置・育成を行うことをさします。 一般に従業員のスキル、適性、ポテンシャルは入社何年かたつと変化しますが、その情報はブラックボックス化しがちです。仕事や上司との相性、本人の努力で大きく成長しているケースもあればその真逆のケースもあります。いずれにせよ、現場以外の人からは全体像が把握しづらい課題が出てきます。 タレントマネジメントシステムを活用して人材情報を一元管理し、リアルタイムに可視化することで、より戦略的な人材配置(リーダー候補の抜擢、適性を活かす人材配属)や、個々の従業員のスキル・潜在能力を伸ばすキャリア支援が可能になります。 まとめ 「ピープルアナリティクス」は、経営目標を達成するために人材データを収集し統計的アプローチに基づいて人と組織課題に向きあう概念です。人事を科学する「アプローチ手法」とも言えます。 「タレントマネジメント」は人材情報を一元管理・可視化することで、採用や配置、育成などの人事マネジメントを最適化する考え方です。タレントマネジメントシステムを活用する際も、ピープルアナリティクス的アプローチを取り入れることで、より有効な意思決定をすることができるでしょう タレントマネジメント ピープルアナリティクス
人事施策 2020年9月09日 従業員との永続的な関係を実現する! 「エンプロイー・エクスペリエンス」とは? 少子高齢化による労働力人口の減少により、多くの企業が「優秀な人材の採用や定着」に課題を抱えています。近年、この課題の解決策として従業員との永続的な関係構築を目指す動きがあります。 今回は、企業と従業員の関係構築にあたり重要なキーワード、「エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)」について解説します。 [目次] 「エンプロイー・エクスペリエンス」が求められる理由 「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める取り組みに必要な手法 エンプロイー・エクスペリエンスをデザインする際の注意点 まとめ 「エンプロイー・エクスペリエンス」が求められる理由 エンプロイー・エクスペリエンスとは「従業員満足度」や「エンゲージメント」といった 指標を超えた概念です。入社前、採用プロセス、研修や仕事、評価や異動、退職など企業と従業員が関わる全てのプロセスから個人が得る経験価値を意味します。 背景にはマーケティングの考え方があります。企業は優れたカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を提供することで、生産性はもちろんSNSを通じた評価の拡散によるブランド力向上などさまざまな恩恵を得ることができます。同様に従業員に価値ある体験を提供していくことが企業の成長につながるという考え方です。 エンプロイー・エクスペリエンスはデロイト トーマツ コンサルティング合同会社の「2017 デロイト グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド」において、テクノロジーの発展にともない企業が取り組むべきテーマの一つとして取り上げられ、世界的に注目されました。2019年の同レポートにおいては、『すぐれたEE(Employee Experience)を提供している上位25%の企業は下位25%と比べて2倍のイノベーション、2倍の顧客満足度、25%の高い利益率を達成している』というMITの調査結果も紹介されています。 企業業績との相関関係が実証されつつあることから、今後はますます企業の関心が高まっていくことが予測できます。日本でも働き方改革が進むなか、エンプロイー・エクスペリエンスの向上に取り組むAirbnb, Inc. や freee株式会社 などの事例がメディアで取り上げられるようになりました。 「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める取り組みに必要な手法 エンプロイー・エクスペリエンスを高める取り組みに有効な2つの手法を紹介します。 まず1つ目は「エンプロイー・ジャーニーマップ」の作成です。 エンプロイー・ジャーニーマップとは人と企業との出会い、就労期間、退職後までを体系立ててデザインする手法です。企業は自社が求める人材がどういった経験価値を求める人物か? 世代、職歴、キャリアビジョン、個人の興味・関心などを明確にする必要があります。マーケティングの「ペルソナ設定」と同じ手法です。 人物像は複数設定し各々に提供できる経験を整理したうえでジャーニーマップに落とし込みます。企業で経験する事柄に付随する個人の思考・感情もマッピングし、エンプロイー・エクスペリエンスを高める施策まで記載します。 そして2つ目は「eNPS(Employee Net Promoter Score)」による評価です。 eNPS(Employee Net Promoter Score)とは、「この会社で働くことを友人や知人にどの程度勧めたいですか?」という質問をする調査ですが、仕事や企業への愛着や満足度など従業員エンゲージメントを数値として把握できるため、取り組みの検証・改善に役立ちます。 エンプロイー・エクスペリエンスをデザインする際の注意点 前述のレポートでは、多くの企業のエンプロイー・エクスペリエンスの取り組みが「組織主導」「トップダウン型」の発想で進められており、改善の余地が大きいと述べられています。 エクスペリエンスのデザインにあたっては、「働きがい」や「キャリアビジョン」といった個人の働く意義がどう職場経験と結びつくかという「個人目線」を持つことが重要です。 まとめ 企業が持続的に成長するためにはエンプロイー・エクスペリエンスの向上が鍵を握っています。「エンプロイー・エクスペリエンス」の向上に努めることで従業員エンゲージメントが向上すれば、顧客満足度や企業収益などにもプラスの影響が期待できます。 eNPS エンゲージメント エンプロイー・エクスペリエンス エンプロイー・ジャーニーマップ
HRTech 2020年9月02日 タレントマネジメントシステム導入のメリットと注意点 タレントマネジメントシステムとは、社員のスキル・知識・経験値などの情報をデータで一元管理するツールです。欧米ではマネジメント手法のひとつとして「タレントマネジメント(talent management)」という概念は以前から普及していましたが、ここ数年、日本の企業でも人材活用の観点からタレントマネジメントシステムに注目が集まっています。今回は、タレントマネジメントシステムの目的や機能、導入のメリット、注意点を紹介します。 [目次] タレントマネジメントシステムとは タレントマネジメントシステム導入のメリット タレントマネジメントシステム導入の注意点 まとめ タレントマネジメントシステムとは タレント(talent)とは、「才能」「才能ある人」という意味です。タレントマネジメントシステムは、自社のタレントである社員の採用、育成・評価、配置を適正に行い人材のパフォーマンスを最大化することで、会社の業績向上を支援するシステムです。 ・目的 タレントマネジメントシステムは、社員の能力や強み、ポテンシャルをもっとも発揮できる人材配置や教育によって、社員のモチベーションと業績の両方を向上させることが目的です。 ・基本機能 (1)プロファイル管理 社員の基本情報・能力・配属・経歴・評価面談の記録などの管理機能です。社員を特定のスキル・プロフィールで絞り込み、データの比較・分析が可能です。 (2)パフォーマンス・目標管理 人事考課などで個人が立てた目標や実績を管理する機能です。個人だけでなく部門などグループ単位での目標管理も可能です。 (3)キャリア開発管理 社員研修などの教育施策の策定や進捗管理ができる機能です。プロジェクトの立ち上げの際などに、特定スキルを学んだ人材を絞り込むことも可能です。 (4)要員計画・採用管理 職種ごとの想定人件費と会社の収益をもとに人員計画を立案する機能です。人材獲得の費用対効果を分析することも可能です。 (5)報酬管理 人事考課データや昇進・昇格などに連動して給与や賞与の自動計算を行う機能です。 タレントマネジメントシステム導入のメリット 導入のメリットを4つ紹介します。 ・人材配置の適正化 社員の適性、目標、スキル、経歴がデータベース上で一元管理され、かつ社員の成長に伴いデータが更新されるため、精度の高い最適な人材配置が可能になります。 ・計画的な人材育成 社員のスキルを個別に詳細に把握することで、同期や同部門などグループ単位ではなく個人の能力や経験、ポテンシャルに応じた育成が可能になります。 ・公平な人事評価 社員のスキルや実績がデータ上で可視化されるため、バイアスによる恣意的な評価を防ぎ、客観的で公正な人事評価が実現できます。 ・社員のモチベーションUP 社員はスキルや適性にあった業務についたり効果的な教育プログラムを受ける機会が増えます。モチベーションがアップし離職防止につながることが期待できます。 タレントマネジメントシステム導入の注意点 導入する際の注意点を紹介します。 ・目的の明確化 まず、導入目的を明確にすることが必要です。製品によって機能に差があるため、目的があいまいなまま導入すると自社が希望するデータ活用ができない可能性もあります。 ・運用体制の確立 運用体制も重要です。誰がどのようにシステムのデータを活用するかを決める必要があります。また、明確な評価指標があればこそシステム導入も成果につながります。目的と活用方法、導入フローについて社内に周知しコンセンサスを得ることが大切です。 まとめ タレントマネジメントシステムの特徴は、社員一人ひとりのプロフィールやスキル・経験などがデータとして一元管理でき、戦略的な人材マネジメントに生かせることです。システム導入にあたっては人事戦略を明確にすることが求められます。目的にあったシステムを見極め、人事管理の最適化を目指しましょう。 エンゲージメント タレントマネジメント タレントマネジメントシステム 人事評価 人材開発 適材適所