コラム
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AI時代の人事に欠かせない『ピープルアナリティクス』とは?
テクノロジーの進化、特にビッグデータとAIの組み合わせは、これまで「人」がしていた仕事の概念そのものを変えようとしています。
人事の仕事についてもその変化が訪れています。今回はそんなビッグデータとAIを活用するピープルアナリティクスについてご紹介します。
ピープルアナリティクスとは
ピープルアナリティクスとは、企業内に蓄積されている従業員データを収集・分析し、人事の施策(採用、人材配置、組織力の強化など)に役立てる取り組みをいいます。ビッグデータ解析や機会学習技術の発達とともに、ここ1、2年でピープルアナリティクスは大きな広がりをみせています。
企業内には大量の人事データが眠っています。
具体的には、給与や賞与、退職金、人事評価結果、フィードバック、1on1、教育研修実績、福利厚生の利用内容、退職実績・事由、休暇取得、出退勤時刻、残業時間、など。
これらの社内にある膨大な情報を有機的に結びつけ分析することで、「自社/自組織のパフォーマンスに大きな影響を与える要因は何か?」、「短期間で辞めてしまう社員にはどのような特徴があるのか?」などの今までは特定が難しかったことに対してデータからアプローチすることができるようになります。既に自社に合う人材の採用や離職率の低減などの施策に活用する企業もでてきており、これからはピープルアナリティクスを活用した経営課題の解決や予測に基づく人事施策を行うことは特別なことではなくなっていくのかもしれません。
これまでは、人材に関してはデータ化してもその特徴をつかむことが簡単ではなかったこともあり、経験や勘、前例に基づいて「こんな感じの人が活躍しそうだ」「あいつが退職しそうだ」などと判断していることが多くありました。しかし、ピープルアナリティクスの導入により、経験や勘ではなく、ファクトに基づく確かな判断が可能になるのです。
ピープルアナリティクスの導入と活用
では、どのようなステップで導入していくべきでしょうか。導入ステップとしてABCDで考えるとスムーズに進みます。
情報がデータ化されていなければ、ピープルアナリティクスを実施することはできません。自社のステージを把握し、適切なステップで導入していくことをお勧めします。
導入後はピープルアナリティクスで得られる情報をどのように活用していくかが重要になります。
「今あるデータをベースに未来を予測」することで、経験や勘とは違う効率的かつ効果的な人事アクションの実施につなげることができます。
具体的なツール
ピープルアナリティクスのツールとして、海外では「Visier」が台頭してきています。 Visier https://www.visier.com
2010年にSAP, Business Objects, Crystal Decisions, OracleなどのBI(Business Intelligence )業界出身の方々が設立したカナダ バンクーバーの会社です。
既に世界中で120社を超える大手企業が利用しており、クラウド上には300万人分を超えるデータが蓄積されています。
topページの「Goodbye Reports. Hello Insights.」に彼らのコンセプトが非常に分かりやすく表現されています。レポート自体には価値はなく、次の施策に結びつける「洞察」をツールとして提供することを目指しています。
今後の人事に求められること
2018年3月24日の日経新聞に銀行の大量採用が終わりを迎えるという記事が掲載されていました。
その中の「人材を無駄づかいしてきた面は多分にある」というコメントが非常に印象的でした。有力大卒の人材をまとめて囲い込みながらも、事務作業などの比較的単純な作業に労力を割くウエートが大きいという意味でした。
事務的な仕事はどんどんコンピュータに置き換わり、人の仕事が再定義されてきています。
ピープルアナリティクスが浸透していくことにより、データから出てくる情報をもとに「どう判断するか」「どう施策に反映させるか」が、より一層重要になってくるのは間違いありません。
これからの人事には、データや数値の持つ意味を読み解き、経営のビジネスパートナーとして、戦略的な提言を行う人事部門に変化することが求められています。