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心理的に「安全」だと感じる距離感「心理的安全性」の重要性

心理的に「安全」だと感じる距離感「心理的安全性」の重要性

離職防止策として心理的安全性の確保が重要と言われるようになりました。企業として社員に対して約束をしないと、人が離れていく。個人として、仕事で成果を導くために、優先的に取り組むべきテーマと言うことかもしれません。

相手を気にせず自分の意見が率直に言える状態

もともと心理学用語である「サイコロジカルセーフティ(psychological safety)」を和訳したもの。

職場で仕事をしているときに誰に何を言ったとしても、人間関係が壊れることがない。つまり、相手の視線や思惑などを気にせず、自分の意見が率直に言える状態のこと。

それだけ、周囲に気をつかっている。そうしないと、人間関係が壊れてしまうということなのでしょう。職場ですから家族のように気兼ねなく接するまではいかないでしょう。

その間を取った適度な距離感を維持できることが働きやすさにつながり、いわゆるエンゲージメントを高め、離職防止につながるということなのでしょう。

ただ、この距離感をもって、接するのは簡単ではありません。人によって心理的な安全性を感じる距離感が違うからです。

例えば、成長意欲が高く、上司や先輩たちから厳しい指導を受けたい人と、その反対に自分のペースで仕事したいから、構わないでほしい人がいます。

あるいは仕事が終わったら、すぐに職場を離れたい。会社の同僚との飲み会なんて参加したくない人。対極的に頻繁な飲み会がないとモチベーションが維持できない人もいます。

昭和なら、会社が心理的な安全性を確保するというよりは、社員が合わせていかないといけなかったかもしれません。各自の志向を考えると心理的安全性の確保を会社が考えて取り組むのは簡単ではありません。

当然ながら心理的安全性の確保を目指す、ITおよび人事ソリューションが数多く登場するようになりました。企業としては導入・活用を検討するべきことを迫られているのではないでしょうか?そうした状況で起きている距離感の維持に向けた様々な問題を紹介しつつ、対策を考えていきたいと思います。

お互いの関わりは密にある・生産性向上への成長機会がある

心理的安全性の高い職場のあるべき姿は職場のコミュニケーションが活発で、社員の仕事に対する意欲も高い状態。仲が良いだけの「ぬるま湯」組織でもなく、お互いを干渉しない孤立した「厳しい職場」でもない状態。このどちらかに振れている職場が大半かもしれません。

一般的には、触らぬ神にたたりなしの発想で、ぬるま湯にもっていこうと考えがち。ただ、それでは生産性が上がらない。業績が厳しくなって報酬があがらない。結果として処遇に対する不満から離職が出ることになるでしょう。

あくまで、職場としてお互いの関わりは密にあり、さらに言えば、生産性の向上に向けた成長機会があること。こうした状況こそが心理的安全性の高い職場なのです。

ただ、あるべき姿を実現するのは簡単ではありません。会社、正確に言うなら、上司や同僚たちが各自の望む距離に応じて接する必要があるからです。

様々なタイプの部下との距離感に悩む

あるマーケティング会社に勤務するSさんは7人の部下をもつ管理職。心理的安全性の確保を会社から要望されて、その類の研修も何回か受講しました。

ただ、研修でいくら学んでも部下は個別に価値観や要望を備えています。その距離感を間違えて痛い目をみる毎日に苦労しているようです。

幾つかケースを紹介します。一人の部下であるGさんは入社5年目の若手社員。真面目に仕事に取り組んでいるものの、成果が十分に出てこない。

そこで、あるクライアント向けの提案で「今週中にプランをまとめて欲しい」と要望を出したところ、その要望が負担に感じたようで、体調を崩して長期休暇となってしまいました。

結果につなげるためには早めにプランを確認して、指導をしたいと思ってのことでした。ただ、Gさんからすれば、別の提案との兼ね合いで難しい状況。

でも、無理とは言えないと感じてしまったようです。心理的安全性の確保の点では、不十分であったということになってしまいました。

一方で入社8年目のKさんは仕事に対する意欲も高く、主任になる可能性も出てきており、厳しい指導を求めてきます。

ちょうど、Gさんの長期休暇でマネジメントに自信を無くしていたSさんは、Kさんから夕方に「提案書の確認とアドバイスをお願いしたい」と言われたにも関わらず「今日はやめておこう。無理しない方がいい」と帰社を奨めてしまいました。

「クライアントが提案期日で無理な条件を出してきても、応える必要はない」と指導をしたところ「そんな甘い指導しかできないんですか?不満です」と切り出し、人事部に対して「うちの上司はやる気がない」と文句を言われてしまいました。

もはや、管理職としてどのような距離で接したらいいのか?わからなくなり、困っている状況に陥ってしまったようです。

1on1 自分を受け入れてもらえているという実感が高まる

心理的安全性の確保において安全と感じる会社と自分の距離感は人により違います。さらに言えば、タイミングでも変わってきます。

この距離感を捕まえるにはどうしたらいいのか?その方法は1つしかありません。定期的に相手の状況を把握するしかありません。そう考えると1on1と呼ばれる面談は管理者にとって、自分を守る有効な手段かもしれません。

現場を仕切るマネジメント層が心理的安全性をすべての部下に対して確保するためには、各自のコンディションを押さえるため1on1を行う。こうした動きは各社で始まりつつあるようにみえます。

1on1とは週1回から月1回ほどのペースで定期的に1対1で対話すること。日本では、ヤフー株式会社が取り入れたことから広まったと言われています。

心理的安全性に関する1on1の最も大きな効果ともいえるのは自分を受け入れてもらえているという実感が高まることかもしれません。

取材した広告代理店では1on1の実施から1年が経過したところで、エンゲージメント調査をしたところ、心理的安全性の確保に関するカテゴリーの設問で点数が大きく上昇。効果が出てきているようだと、嬉しそうに人事部が話をしてくれました。

耳・目・心を傾けて真摯な姿勢で話を聴く

ただ、どの会社でも1on1をやれば、すべてはうまくいくわけではありません。それなりに手間をかけて取り組む必要があります。

ポイントは傾聴です。部下や後輩の考え・意見に耳・目・心を傾けて、真摯な姿勢で話を聴くこと。これができなければ逆効果。心理的安全性は確保されていないと認識させてしまうことにもなりかねません。

いわゆる昭和な上司のスタンスで持論をぶつだけ。あるいは「君は意欲が前面に出ない。そこを変えれば大きく成長できる」と決め打ちのような指導だけするなら、やめた方がいいでしょう。

ただ、聞こうと思っても、そもそも相手が話してくれない部下や後輩もいるでしょう。そんな局面になったら、積極的に質問も取り入れましょう。

「最近、取り組んでいる仕事で、成長実感のあったトピックスを教えてください」

と相手が自分で気付きを得られたり、自分の考えを整理できたりするような質問のしかたが適切です。

心理的安全性を下げる4つの不安

こうした、取り組みを行い、心理的安全性の確保に取り組んでいきましょう。ちなみにマネジメント層でない人が心理的安全性を確保するにはどうしたらいいのか?

「対人リスク」を排除する取り組みを行うべきでしょう。なぜなら、対人リスクこそが、心理的安全性を下げる原因だからです。いわゆる

IGNORANT – 無知だと思われる不安

INCOMPETENT – 無能だと思われる不安

INTRUSIVE – 差し出がましいと思われる不安

NEGATIVE – ネガティブだと思われる不安

を感じないようにするため、誰かの承認を得られていると感じる状態をつくることが重要。

自分のことを承認してくれる人が何人かいれば、対人リスクは排除できると言われています。そんな自分に対する承認者は誰か?

直属の上司や同じ職場の同僚とは限りません。社内で自分と接するなかで、気軽に話せる、自分の仕事ぶりをみてくれていると感じる人とのコミュニケーションを心がけましょう。

一例を紹介しましょう。中堅社員で対人リスクを感じていたSさんは、心理的安全性の確保が出来ていないと感じていることで仕事に集中できないという悩みを抱えていました。

例えば、会議中に理解できない専門用語らしき言葉が話題に出た時、わからなくても「それってどういう意味ですか」と聞くことができない。「無知だと思われる不安」がある状態なのでしょう。

「決定としましょう」と同じ組織のメンバーが盛り上がっているときに、「リスクについて検証しましたか」と言い出せない。

ネガティブだと思われる不安があるに違いありません。これらの不安は、社会的に自分の安全を守るために起こっています。

周りから否定されない、非難されないように自分の安全を守ろうとする意識や行動で、心理的安全が低い場をつくってしまっているのです。

不安解消の支えになってくれる人を見つける

このままではまずい、会社に行きたくないと感じて退職への道がみえかけていました。ただ、何とか対人リスクを排除して、心理的安全性を確保して、仕事は続けたい…そのように考えた、Sさんは自分なりに対策を考えました。

そこで出た答えは、いまの同じ部署に限らず、過去に関わった上司・先輩・同僚で対人リスク=不安が解消されていたように思えた状況を振り返ること。そして、その状況の再現が出来れば、回避に向かうかもしれないという手法でした。

そこで、入社した5年前から、現在までの仕事ぶりの記憶を辿りました。すると、3年前に上司であったKさんと話していると対人リスクが解消されるような感触であったことが思い返されました。

Kさんは巧みに話を聞いてくれたり、笑顔で「心配しなくていいよ」と不安を払しょくする言葉を投げかけてくれたり。「よく頑張っているね」と仕事ぶりを観察した状況とともにほめてくれる人でした。

Sさんは人事部に相談の上で元上司であるKさんと久々に話す機会をもらいました。すると対人リスク=不安が随分と解消されている感触を得ることが出来ました。その状況をKさんに話したところ「定期的に話をしましょう」ということになりました。

いわゆる、メンターのような存在になってくれたのです。その後は、随分と心理的安全性の確保が出来ていると感じられるようになっているようです。誰か一人でも自分の不安解消の支えになってくれる人がみつかると大きく違ってくるということなのでしょう。

サービス・ソリューションの進化と拡大にも注目

最後に心理的安全性の確保につながるサービス・ソリューションも増えてきています。例えば、1on1ミーティングの導入と、その促進につながるマネジメント支援ツールやタレントマネジメントサービス。

続いて、周囲からの承認が高まるようにピアボーナスの導入と、それを促進させるシステム。ピアボーナスとは、メンバー同士で報酬を送り合える成果制度のこと。チームに貢献することで受け取れるピアボーナスは、お互いの承認を可視化することで、社員一人ひとりの「もっと貢献したい」という気持ちを刺激し、発言や挑戦に対して積極的になる空気を作ります。

あるいはつながりを強固にするためにチーム目標を設定して、その目標達成に向けたコミュニケーションツールの活用、共通のゴールを設けることで、お互いにサポートしあい、コミュニケーションが取りやすい環境を作ることが可能です。

企業の意欲の高まりは、その意欲を支援するビジネスの活況を生み出します。心理的安全性の確保が継続的に行われるために、サービス・ソリューションの進化と拡大にも注目していきましょう。

 

※フロンティア・マネジメント株式会社運営オウンドメディア『Frontier Eyes Online』より転載

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