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AI最前線で!「ヒトの認識能力」の再発見と開発

AI最前線で!「ヒトの認識能力」の再発見と開発

最近、採用の現場で候補者のデータをAIツールで分析し、選考を行う企業が頻繁に取り上げられている。ところが先日、採用選考にAIの導入を検討したが見送った会社の例に出会った。

AIの方が人間と比べ圧倒的な処理速度で判定が出る上、特段に的外れな点はなかったにもかかわらずであった。理由は、AIが「なぜその人を選んだのかを説明しないこと」にあったという。「採用は非常に責任を伴う判断であり、判定の合理性を多面的にチェックする必要がある」ということで、改めて1人1人の判定理由を検証したところ、「結局、従来とやっている事が変わらない」という結論になり、導入を見送ったとのことであった。

この例は「データ分析ツールがいくら高度になっても、それだけでは必ずしも現状の変革や進化につながらない」 という、興味深い示唆に富んでいる。

実際、著名なデータサイエンティストである、大阪ガス(株)ビジネスアナリシスセンター所長、河本薫氏も、著書『会社を変える分析の力(講談社現代新書)』の中で、「ITや分析手法をどんなに備えても、データから問題を解明するプロセスを構想する力がなくては、意味のあるデータ分析は生まれない・・」「どんな分析問題に挑むか、どのようなデータを集めるか、どのような分析手法を用いるか、分析結果をどのように解釈するか、すべては人が考えること・・」と述べている。

要は、データ分析を適切に進めるには人によるマネジメントが不可欠ということである。

セレブレインでは最近、人事データの分析に関連するプロジェクトを幾つか手掛けている。静的な人事情報に加え個人の評価項目の内容や勤怠、日報等のデータから、ハイパフォーマーの特徴や退職・休職者の傾向を早期に見出し、政策の提言を行うものである。

私も実際にプロジェクトで分析に携わったが、当初想像していた 「データを取集してインポートし、後は機械に処理してもらうだけ」というメージとは大きギャップがあった。

AIを実践的に活用するには、ヒトのもつ認識能力の重要性を理解し、以下のようなアプローチでしっかり対応していくことが望ましいのではないかと考えている。

1.データの違和感への気付き

人事の世界でも次々と新たなクラウドシステムが登場し、「データの一元管理!」 が叫ばれているが、1,000人に満たない企業ではExcelでデータを保管しているケースも多く、社員数によっては、費用をかけてクラウドを使わなくても十分管理できる情報量であったりする。

実際のプロジェクトにおけるデータの中には、抜けや漏れ、誤字や全角半角が混じるなど必ずしも綺麗とはいえないデータも多い。これらのデータを俯瞰して眺め、分析を始める前に 「これはおかしい」 と気付くのは人間が得意とするところである。 例えば、「留学経験」の欄は、実際に経験がなければ空欄でもおかしくはないが、「前期評価結果」の欄が空欄というのは何となくおかしい。

また、社員番号が「HR001」の形式になっているのに、何名かは「ID005」になっていたケースもあった。これらは分析ツールではエラーと認識しない。データ上は間違っていないからである。

仮にデータ定義書が整備されていなくても、感覚的かつ連想的な人間の認識能力がデータの違和感を捉えることで、的確に分析が可能なデータとして整備することが可能となる。

2.分析における発散と収束の切り替え

データが多く集まると、AIを使って多面的な角度から情報を深掘りできるようになるが、分析があくまで「手段」であることを意識していないと、単に知的好奇心を探求する道具になってしまう。

何をどこまで分析するのか、全体像を把握しながら優先順位をつけてコントロールするのは人間の役目である。

限られた時間の中で分析を進めるには、全ての可能性を総当たりで見ることは難しい。深掘りする部分とそうでない部分を考え、時には 「ここを更に別の観点で分析するとうなる?」 と発散させ、時には 「何のために行うのか」 「仮説の検証にどう役に立つのか」 と出発点に立ち返ることで分析パターンを収束させる。

これによりAIツールが 「価値を生む分析」 に焦点を絞って活用することが可能となる。

3.分析結果による意味の明確化

冒頭の話にも通じるが、採用だけでなく、マーケティング、金融、医学などどの領域であっても分析後の回答と同様に、むしろそれ以上に 「なぜそうなのか?」 というポイントを明らかにすることが重要である。

我々が普段、言語によってコミュニケーションを取っている以上、幾ら高度な分析で大きなヒントがあったとしても、言語化して説明できないと、人を動かすこと、つまり、分析結果をアクションに繋げることができない。

ツールから出てくるのは、数値結果である。この数値に対し、人間のロジカルな考察やアナリティカルな考察により因果関係や示唆を整理し、「そこから何が言えるのか」 「改善するためには何をどう変えれば良いのか」 を明確にすることで、初めてデータ分析から価値を生み出すことに繋がる。

このように見ていくと、AIやデータ分析は、脚光を浴びてはいるが実際は、「ヒトの認識能力」 が大きなウェイトを占めることに気づかされる。

UIやUXの進化もあって、簡単な操作でAIを用いた機械学習も可能になったからこそ、我々人間がもつ能力と経験をフルに活用して適切にデータ分析をマネジメントし、現状の改革や進歩に繋げていくことが求められる。

今、セレブレインでは、各方面で絶対的に不足している 「データ分析をマネジメントできる人材」の育成に向けた、アナリティカル・シンキング(分析的思考)のトレーニング開発に力を入れている。

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