コラム
人事施策
サーバント・リーダーシップの実践 〜管理職の持つ2つのパワー〜
「サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜」では、どうすれば、部下が成長し、活躍して成果を出してもらうことができるのか、今求められるリーダーシップのスタイルとして、支援型リーダーシップであるサーバント・リーダーシップを紹介しました。
今回は、その支援型リーダーシップである「サーバント・リーダーシップ」を実践し、どのように部下と向き合っていくのかをお伝えします。
管理職の持つ2つのパワー
リーダーとなる管理職の方々は、1. ポジション・パワー、2. パーソナル・パワー の2つのパワーを保有しています。
1. ポジション・パワー〜指示命令で部下を動かす〜
組織における地位や職位が持つ力です。誰でもそのポジションにいる限り、継続されます。立場や威厳などの統率能力で部下に指示に従わせ、言うことを聞かせるパワーです。ポジションがなくなると人は動いてくれなくなるため、肩書きが変われば失われるパワーになります。立場によって人を動かしているにも関わらず、自分が動かしていると錯覚してしまう人も少なくありません。2.パーソナル・パワー〜部下の自発性を引き出す〜
共感力、対話力、想像力などの人としての魅力と信頼感を通じて、ポジションにかかわらず発揮される力です。上司としての部下との向き合い方やコミュニケーション力が重要な役割を果たします。部下が、「この上司は、私のことを考えてくれている、大切に思ってくれている、期待してくれている」「この上司は、自分の強みや能力を引き出して、成長させてくれる」という思いから、働きがいや仕事への意欲を上げ、自ら考えて行動するようになることが特徴です。
サーバント・リーダーシップを発揮する人は、ポジション・パワーだけではなく、パーソナル・パワーをうまく活用して部下を動かします。
ポジション・パワーで強制的に人を動かす場合、部下の会社に対するエンゲージメントはなかなか上がりません。部下が主体的に行動することを好む人の場合は、自己実現できる環境を求め、転職なども考えるのではないでしょうか。一方、信頼関係や働きがいで力を発揮してもらうように促すことができれば、給与などの条件以外にも魅力を感じ、会社に対するエンゲージメントも高くなります。結果、チームとしての業績向上に向けた強固な組織を構築できます。
自主性の尊重とビジョンの共有
パーソナル・パワーを発揮するためには、前提として、部下の自主性を尊重することと、ビジョンを共有することを意識する必要があります。
上司は部下の自主性を尊重し、成功や成長を支援する行動を実践することによって、信頼関係が育まれていきます。また、組織全体が同じビジョンや目指す目標をしっかりと共有できていれば、上司が組織を導くのではなく、組織に所属する一人ひとりが能動的に活動をしていくことにつながります。
具体例と4つのコミュニケーションスキル
2011年にドイツで行われたFIFA女子ワールドカップで、なでしこジャパンを率いたサッカー指導者の佐々木則夫監督はサーバント・リーダーシップを発揮した典型例として有名です。上から目線での指示命令ではなく、選手に応じて得意分野を引き出すコーチングとティーチングを駆使し、自主性を尊重したチームを作りました。結果として、男女を通じて日本初のワールドカップ優勝という快挙を達成しました。
部下の自主性を引き出すには、4つのコミュニケーション・スキルが重要と言われています。
サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル:
1. 傾聴
部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考え正しく理解し、信頼関係を築く力
2. 質問
部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力
3. 承認
部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力
4. フィードバック
行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力
指示命令型の上司の場合、部下は自分で考えず、言われた以上の事をしないようになります。一方、サーバント・リーダーシップを発揮する質問傾聴型の上司の場合、部下は自分で考え自分の能力を最大限に発揮して自らの責任で主体的に行動するようになります。
次回は、このコミュニケーションスキルについてより深掘りしてご紹介します。
続き:傾聴 〜サーバント・リーダーシップを発揮するための重要なコミュニケーションスキル〜
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