コラム 2024年11月05日 世代間ギャップを制する組織がパフォーマンスを制する 「若手社員が何を考えているのかわからない」「上司の考え方についていけない…」。多くの職場でこうした声が聞かれます。多様な世代が共に働く職場では、価値観のギャップが大きな課題となり、コミュニケーションや業務のパフォーマンスを妨げる要因となることも少なくありません。では、世代間ギャップを乗り越えるための有効な対策はあるのでしょうか。今回は、そのヒントとなる考え方や具体的なアプローチについて解説します。 リーダーシップ 人事戦略 組織風土
解説 2020年12月14日 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜 近年「サーバント・リーダーシップ」というリーダーシップのスタイルが部下育成や組織力を高めるために求められています。 サーバントとは、直訳すると、奉仕者、召使いのことを指します。トップの画像はボスとリーダーの違いをモチーフにした画像です。下の図のBOSS(ボス)は部下に指示を与えて仕事をさせていますが、上の図のLEADER(リーダー)は自らが先頭にたちチームをまとめあげていきながら、物事を前に進めていきます。 一見すると奉仕者のように見えるこのリーダーが発揮しているのが「サーバント・リーダーシップ」です。 「サーバント・リーダーシップ」は米国のロバート・グリーンリーフ博士によって1970年に提唱された考えに基づいています。「リーダーのために部下がいる」という発想を逆転させ、「部下を支えるためにリーダーは存在する」という考え方をベースにしているのが特徴です。 なぜ今、サーバント・リーダーシップが求められているのでしょうか。 管理職としての仕事とは? 管理職とプレーヤーでは考え方を大きく変える必要があります。 管理職になる前は、一人のプレーヤーとしての成績や評価で優秀かどうかが判断されてきました。しかし、必ずしも優秀なプレーヤーが優秀な管理職になるとは限りません。なぜなら、プレーヤーとして成果を上げる力と管理職として成果を上げる力は全く異なるからです。 管理職の仕事とは、「組織上のミッションと目標を理解し、組織として質的にも量的にも上回る成果を上げること」です。そのためには、与えられたビジネスリソース(人・物・金・情報)を最大限に活用する必要があります。中でも、最も重要なビジネスリソースが人です。各メンバー一人ひとりがその能力を十分に発揮し、大きな成果を上げることで、組織としての成果も大きく向上するからです。 しかし、人の価値観も多様化している昨今、管理者としてチームメンバーそれぞれが成果をあげるよう支援することは簡単なことではありません。 一般的に以下のようなことが部下についての悩みとしてよく耳にします。 "・指示を待っていて、自ら主体的に動いてくれない ・指示してもその通りに動いてくれない ・出来なかったことに、責任を感じているように見えない ・仕事に対する意欲ややる気を感じない ・指導すると、反発したり、内にこもって黙ってしまう " 管理職になると個人の成果とは異なり、チームの成果を求められます。 チームとしての成果を上げることができない場合、経営層から「優秀な人材と見込んで管理職にしたのだが・・・」と言われたり、部下から「課長は自分たちのことを全く信頼していない・・・」などと、双方から批判的なことを言われ、板挟みになることも少なくありません。「部下とどのように向き合うか」「どのような関係を築いていくか」かは組織として成果を出すことを求められている管理職にとっては大切なテーマとなります。 時代とともに求められるリーダーシップは変化してきている ビジネスのスピードが加速し、それとともに求められるリーダーシップも変化をしてきています。 合理性の追求さえしていれば経済成長をしていた時代は、過去の成功体験をもとに上司が正しい答えを持っていました。そのため、正しく指示・命令さえできていれば、チームとしての成果も自然に上げることができていました。 しかし、テクノロジーが既存ビジネスを次々に破壊し、過去の成功体験は通用しなくなってきています。また、働き方改革による就労形態の多様化、ネット時代における情報入手の容易性、それにともなう人の価値観や生き方の変化など、これまでのマネジメントの仕方では人は付いてこなくなりつつあります。 そんななか組織の力を最大限に発揮するためには、上司は部下の自主性を尊重し、支援・奉仕を通じて信頼関係を育み、一人ひとりが前向きに能動的に活動していく環境を作っていく必要がでてきています。 これまでの支配型リーダーシップから、支援型リーダーシップへとリーダーシップのあり方自体に変化が求められているのです。 次回は、この支援型リーダーシップである「サーバント・リーダーシップ」を実践し、どのように部下と向き合っていくのかをお伝えします。 続き:サーバント・リーダーシップの実践 〜管理職の持つ2つのパワー〜 マネジメント リーダーシップ
人事施策 2019年4月11日 効果的なフィードバックで部下の成長を促進させる 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜にて実践に必要なパーソナルパワーについてご紹介しました。今回は部下の自主性を引き出す4つのコミュニケーションスキルから「フィードバック」についてお伝えします。 サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル: 1. 傾聴 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力 2. 質問 部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力 3. 承認 部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力 4. フィードバック 行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力 [目次] フィードバックとは? フィードバックとジョハリの窓 フィードバックの種類 振り返りを行うときのポイント フィードバックのまとめ 最後に フィードバックとは? フィードバックとは、部下が行った行動を自ら振り返り、学びや改善、成長に繋げていくためのアドバイスです。上司は、部下へのフィードバックを通じて、部下に自身の行動の内省を促していきます。成功や失敗から学び、改善を繰り返すことで、人は大きく成長をしていきます。 フィードバックとジョハリの窓 振り返りを行うことは、自分自身のことをよりよく認識・分析し、今後の活動に役立てていくことになります。 以前、客観的視点により社員の成長を促す!360度評価の勧めでもご紹介しましたが、自己認知を考えるのに有名な心理学のモデルが「ジョハリの窓」です。 ジョハリの窓 「ジョハリの窓」とはサンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト とハリー・インガムという二人の名前にちなんでつけられた自己認識を4つの窓に分けた「対人関係における気づきのグラフモデル」です。 「自分の認識」と「他者からみた自分の認識」の違いを理解することで、改善に活かすことができます。 ジョハリの窓は次の4つの窓で構成されています。 ・開放の窓: 自他ともに知っている領域です。 自分も周囲の人も知っていることになります。 ・盲点の窓: 自分だけ知らない領域です。 自分は知らないが、周囲の人は知っていることです。 ・秘密の窓: 自分だけ知っている領域です。 自分は知っているけれど、周囲の人には隠していることです。 ・未知の窓: 自他ともに知らない領域です。 自分も周囲の人も知らないことです。 フィードバックを通じた振り返りは、部下に「盲点の窓」を気づかせ、その成長に向けて「開放の窓」を拡げていくことを支援していくことになります。 上司は、時には耳の痛いことも部下に伝えなければならないことがありますが、部下を大切に思い、その成長を支援したいと心から願ってフィードバックすることが大切です。 部下は、上司からのフィードバックを通じて、新たな視点を得たり、過去の行動を整理したり、これまで自分一人では気づくことができなかった考え方を獲得する機会を得ることができます。また、上司とともに振り返りを行うことで、日々の仕事の意義や次の一歩を踏み出すための学びを得ることができます。 フィードバックの種類 フィードバックには大きく以下の2つの種類があります。 1. ポジティブフィードバック 部下の行動の良い点に着目して、前向きな言葉でその行動がもたらす結果や今後の期待を言葉で伝えます。部下の意欲や達成感、自己効力感を高め、自発的な成長を促すことにつながります。ポジティブフィードバックを行う際には、部下の成長を願う心からの気持ちを込めて行うことが大切です。 2.ネガティブフィードバック 部下の行動の改善が必要な点に着目して、どこをどのように変えていくのがよいかを言葉で伝えます。 改善の機会は、部下にとっては成長の機会でもあります。部下を叱る、怒る、非難する、人間性に対して否定的な発言をするのではなく、対象となる行動に対してフィードバックを行いしょう。注意をしないと部下の意欲を低下させ、信頼関係を壊すことにつながることもありますので、言い方には工夫も必要です。 どちらか片方だけ使えばいいというわけではなく、フィードバックの際にはこの2つのフィードバックを適切に使い分けることが大切です。 振り返りを行う時のポイント 上司がフィードバックを通じて効果的に部下に振り返りを促すにはいくつか注意が必要です。以下に重要なポイントを記載します。 ・適切な場所を選び、ともにすごす時間をちゃんととる 日常の会話の中でなんとなく行うのではなく、本人が周囲を気にせず話せるように適切な場所と時間を確保して行いましょう。また、上司も部下と一緒に考えて振り返るという姿勢が大切です。 ・ポジティブフィードバックから行う 部下に肯定的なメッセージとして伝わるポジティブフィードバックから行いましょう。部下が素直になって心を開く準備を行うと効果的なフィードバックに繋がります。 ・部下そのものではなく、行動にフォーカスをあてる フィードバックは部下の具体的な行動に対して行います。 部下の欠点をあげつらったり、部下の人格に焦点をあてたりすることや、具体性にかける指摘をしたりすることは避けましょう。また、変えられるものに着目することも大切です。過去の結果は変えることはできないため、結果の話だけをしても改善に繋げることはできません。 フィードバックのまとめ そもそも人は自分から気づかない限り、自分を変えることはなかなかできません。部下が現状を把握し、向き合うことやその改善や成長に向けたアクションの支援をすることがフィードバックです。効果的なフィードバックは部下の目標達成やモチベーションの向上に大きく効果を発揮します。部下の成長支援がうまくできていないと感じる方は、これまでのフィードバックのやり方は適切だったのか、一度見直しをしてみてもいいかもしれません。 最後に これまで、数回に分けてサーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキルとして、傾聴、質問、 承認、フィードバックをご紹介してきました。 部下の話に心から耳を傾け、否定したり、自分の話をせずに真剣に聴く。 部下の頭の中を整理するために、効果的な質問を行う。 部下の日々の行動をよく観察し、適切に承認を行い、部下の仕事への意欲を上げる。 フィードバックを通じて振り返り、気づきや学びにつなげる。 これらの一連のことを部下を信じ、きちんと向き合って行っていくことで、部下との信頼関係が醸成され、部下の内なるパフォーマンスを引き出し、自発的な活動につながります。様々なテクニックもご紹介しましたが、一貫して一番大切なことは、表面的ではなく、心から部下と向き合うことです。上司は部下の自主性を尊重し、支援・奉仕を通じて信頼関係を育み、一人ひとりが前向きに能動的に活動していく環境を作ることが最も重要な仕事といっても過言ではありません。部下をもつ方々はチームとしての成果を最大化させるため、今回ご紹介した「サーバント・リーダーシップ」を発揮してみてはいかがでしょうか。 「今求められるリーダーシップ -サーバント・リーダーシップ- 」について体系的にまとめた資料をダウンロードすることができます。以下よりご確認ください。 資料ダウンロード マネジメント リーダーシップ
人事施策 2019年4月02日 部下の成長を支援!人間関係の基本となる承認力とは? 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜にて実践に必要なパーソナルパワーについてご紹介しました。今回は部下の自主性を引き出す4つのコミュニケーション・スキルから「承認」についてお伝えいたします。 サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル: 1. 傾聴 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力 2. 質問 部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力 3. 承認 部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力 4. フィードバック 行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力 [目次] 承認とは? 有名なマズローの欲求5段階説 承認ができているとき/できていないとき まとめ:承認を行うときの3つのポイント 承認とは? コミュニケーションスキルにおける「承認」とは、相対する人のことを心から認めることです。英語ではacknowledgement、acknowledge(認める)の名詞形が使われます。 承認は、部下の意欲や前に進むためのエネルギーを引き出し、積極的に自らの変化を促していく重要なスキルとして位置づけられます。成果だけではなく、部下の内なる変化や成長に気づき、それを言葉で伝えることができると、部下は表面的な部分だけでなく心から認められたと感じ、より意欲的に仕事に取り組むようになります。 有名なマズローの欲求5段階説 人が自己実現するためには、自分の存在を他者から認めてもらうことが必要不可欠と言われています。アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した「欲求の5段階説(自己実現理論)」で、マズローは、人間の自己実現を研究し、人が自己実現するためには5つの欲求の段階があると説きました。 1. 生理的欲求 2. 安全の欲求 3. 所属と愛の欲求 4. 承認の欲求 5. 自己実現の欲求 この中の4段階目に「承認の欲求」があります。尊厳欲求とも言われ、自分が所属している集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求です。人と人との関わり合いの中で、自分の存在を受け入れてもらえたとき、自分の存在を認めてもらえたときに、これらの欲求を満たすことができます。 人が健全な社会生活を送り、自己実現するためには、他者から承認されることが必要不可欠であるということをマズローは主張しています。 承認ができているとき/できていないとき 承認はよく褒めることと混同されることが多くありますが、褒めることは承認の一部にすぎません。最も大切なことは部下のありのままを認めてあげることです。部下の考えや価値観、努力、経験、スキルなどにスポットを当て、認めます。そのためには日頃から部下に関心を持ち、その行動をよく観察しておく必要があります。この観察がとても重要で、評価することや他者との比較をせず、ありのままを観察することが必要になります。 日頃から気にかけられていない上司から、表面的に褒められたり、感謝されても、部下はすぐに気づきます。「何もわかってないくせに、いつもこういうときだけ調子がいい」と思われ、逆の効果を生むことも多くあります。 このサーバント・リーダーシップのシリーズで常に紹介していることではありますが、部下と心から向き合うことが一番大事になります。 承認ができていると、自分を見ていてくれて、認めてくれている人がいることを通じて、部下は安心感を感じるとともに、明るく元気になります。やる気が湧き出て自発的に行動しようとするエネルギーが高まります。部下は承認を通して、自分の成長を実感して、さらなるチャレンジに向けた活動意欲が湧いてくるでしょう。 一方で、承認されていない場合、頑張ったとしても仕方ないと思うことや、上司から認められないことによる疎外感や焦燥感を感じるようになります。人によっては、自分の存在を無視されているようにも感じ、自分には価値がないと思い込んでしまうこともあります。攻撃的な態度をとったり、逆に鬱々としてしまうこともでてきます。 まとめ:承認を行うときの3つのポイント 最後に、承認を行うときの3つのポイントをご紹介します。 1. 事実を客観的に捉えて伝える 部下が変化した点や努力してきたこと、どんな行動をしたのかなど具体的なその人なりのことをとらえて事実を伝えることを心がけましょう。 2. タイムリーに実施する 日頃からよく部下を観察し、その成果や変化、良い行動を行ったときなどタイミングを見計らって、行いましょう。 3. 心を込めて自分の感情を伝える 大げさな言葉を使う必要はありません。飾らずに自分の言葉で気持ちを込めて伝えましょう。 日本人は、総じて承認は苦手と言われています。「阿吽の呼吸」や「暗黙の了解」という言葉に代表されるような「言わなくても分かっているだろう」文化が根づいていることが背景にはある気がします。 しかし、上司の承認は部下が前に進むための大きなエネルギーです。 部下を輝く人財に変えることができるのは、上司のリーダーシップにかかっています。小手先のテクニックは必要ありません。承認を通じて、部下の内なるやる気を大きく引き出すことで、部下は想像以上に大きく成長をしていきます。 続き:効果的なフィードバックで部下の成長を促進させる 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 「今求められるリーダーシップ -サーバント・リーダーシップ- 」について体系的にまとめた資料をダウンロードすることができます。以下よりご確認ください。 資料ダウンロード マネジメント リーダーシップ
人事施策 2019年3月19日 質問力を鍛えて上司・部下のコミュニケーションを円滑にする!6つの質問の種類と5つのポイント 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜にて実践に必要なパーソナルパワーについてご紹介しました。今回は部下の自主性を引き出す4つのコミュニケーションスキルから「質問」についてお伝えします。 サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル: 1. 傾聴 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力 2. 質問 部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力 3. 承認 部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力 4. フィードバック 行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力 [目次] 質問とは? 6つの質問の種類 5つの質問のポイント 質問とは? 質問とは、部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に解決のための行動を引き出すことができる力です。サーバント・リーダーシップを発揮するためには、傾聴と並び重要なスキルのひとつです。 部下に自発的に行動をしてもらうためには、上司自身が部下の状況を把握するための質問に加えて、部下に考えてもらい、気づいてもらい、行動してもらうための質問を投げかけていく必要があります。 質問を通じて得られること ・対話のテーマとなっていることの正確な情報を引き出す ・状況や問題・課題などについての部下の理解状況を確認する ・話しやすい雰囲気を作り、部下の本音を引き出す ・部下に考えさせ、気づきを与え、自発性な行動を引き出す 上司の質問の仕方によって、部下との関係の質や、部下の行動や思考のあり方が大きく変わるため、部下に対して「気づき」や「発見」、「変化」をもたらす質問ができるかどうかがとても大事になります。 上司の投げかける質問を通じて、部下は考え、気づき、行動するようになります。質問によって、部下との関係を良くすることや、部下の主体性を高めること、部下の行動や思考の幅を広げることができるのです。 6つの質問の種類 質問は整理するといくつかの種類に大別されます。今回は6つの種類についてご紹介します。 1. クローズド・クエスチョン(特定質問) 「はい」または「いいえ」で答えられる質問で、深く考えなくても答えることができる質問です。端的に事実関係や考えを確認したい時に活用でます。 【具体例】 クローズド・クエスチョン(特定質問) ・訪問資料は準備できましたか? ・明日中に、見積書を作ってくれますか? ・明日は10時にお客様訪問でしたよね? 2. オープン・クエスチョン(拡大質問) さまざまな答えがあり、自由に答えることができる質問です。部下の意識の中にある発想や気づきを生み出すことにつなげられます。 【具体例】オープン・クエスチョン(拡大質問) ・さっきの会議で出た課題だけど、どこから取り組むのが良いと思う? ・この業務は、どうすればもっと効率化できると思う? ・今度の案件を獲得するために大事な点はどんなところだと思う? クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンはうまく組み合わせることで、部下との会話を広げることや深めること、はっきりさせることができます。 3. 未来質問 4. 過去質問 未来質問とは、未来に考えを向ける質問です。 部下の可能性を引き出すためにも、「これまでどうだったのか?」と過去のことを質問するより「これからどうしたいのか?」と未来に対する質問を行ったほうが、前向きな対話に近づきます。また未来のことを考えることで、自然と過去の行動を振り返ることにも繋がります。 一方で、過去質問とは、過去起こったことに考えを向ける質問です。 過去のことは変えられません。過去に焦点をあてた質問は原因の追求や部下を問いただすことになりがちです。 【具体例】 未来質問と過去質問 未来質問 過去質問 これから、どうしたら良いと思う? どうしてこうなったんだ? 問題に対してどこまで理解できている? どの問題が把握できていなかったんだ? 成功するために必要なことは何? 失敗してしまったのは何故だ? 5. 肯定質問 6. 否定質問 肯定質問とは、ものごとの肯定的な側面に焦点を当てた、否定の言葉が入らない質問です。同じことを質問しても、「なぜうまく行かないんだ?」とできない理由を質問するより「どうしたらうまくいくと思う?」とできる方法を質問するほうが今後の行動の変化を促すことにつながります。 一方で、否定質問とは、ものごとの否定的な側面に焦点を当てた、否定の言葉を含む質問です。自然と相手を疑うようなネガティブなニュアンスが含まれてしまい、詰問している雰囲気が発生しがちです。 【具体例】肯定質問と否定質問 肯定質問 否定質問 どうしたら上手くいくと思う? なぜ上手くいかないんだ? 次回はどうすれば受注できると思う? どうして受注できないんだ? この提案の魅力的なところはどこだと思う? この提案のダメなところはどこだと思う? 5つの質問のポイント 強力な威力を発揮する質問力ですが、使い方を間違えると期待している効果とは逆の結果にもなりえます。質問を活用するにあたり、部下との関係を良好にするための5つのポイントをご紹介します。 1. 答えやすい質問から始める 最初の質問は、場の雰囲気作りに大きな影響を与えます。答えやすい質問から始めることで、良好な雰囲気の中で会話を始めることができます。相手が持っている知識や経験では答えることが難しい質問を投げかけても、前には進みません。相手のレベルに合わせた質問をすることも大切です。 2. 質問は短く簡潔にする 質問は短く簡潔に行いましょう。一度に複数の質問をしたり、漠然としすぎる質問をすると部下も混乱します。短く的確にポイントを抑えた質問をすることによって、部下の考えを引き出します。しかし、一問一答的になってはいけません。「課題は?」「予算は?」「要望は?」などは詰問調になりがちです。丁寧な言葉を選びながら話しましょう。 3. 詰問や追求をしない 変えるのが難しいことや、今検討すべきではないことにフォーカスしたり、部下の失敗を責める質問をしてしまうと、部下は攻撃されていると感じ、自分の身を守るために防衛モードに入り、一生懸命言い訳を考えてしまいます。詰問や追求にならないように、未来質問や肯定質問を意識していきましょう。 4. 誘導をしない 「発注は、今月にして頂ける予定ですよね?」など自分の答えや結論を前もって用意してそれにむけて誘導したり、押しつけたり、部下の答えをむげに否定したりしてはいけません。部下の成長を念頭に、部下に自分なりの答えを見つけていくことを期待されている、と感じてもらえるようにすることが重要です。一緒に考える気持ちを持って質問しましょう。 5. 沈黙を恐れない 質問した後、部下は自分の考えを頭の中で整理して考えをまとめています。 その部下が考えている時間の間に、追加で質問したり、自分から答えを言ったりせずに、部下を信じてじっと待ちます。傾聴を思い出してください。質問のスキルは、聴くこととセットで使って大きな効果を生みます。 上司であるあなたの質問の仕方、質問に使う言葉づかいの違いで、部下の意識や行動は大きく変わります。 質問力を鍛えて、部下の前向きな行動を支援しましょう。 続き:部下の成長を支援!人間関係の基本となる承認力とは? 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 「今求められるリーダーシップ -サーバント・リーダーシップ- 」について体系的にまとめた資料をダウンロードすることができます。以下よりご確認ください。 資料ダウンロード マネジメント リーダーシップ
人事施策 2019年3月05日 傾聴 〜サーバント・リーダーシップを発揮するための重要なコミュニケーションスキル〜 サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜にて実践に必要なパーソナルパワーについてご紹介しました。今回は部下の自主性を引き出す4つのコミュニケーション・スキルから傾聴についてお伝えいたします。 サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル: 1. 傾聴 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力 2. 質問 部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力 3. 承認 部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力 4. フィードバック 行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力 [目次] 傾聴とは 傾聴のメリット 傾聴を磨くための3つのテクニック まとめ 傾聴とは 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考えを正しく理解し、信頼関係を築く力です。「聞く」のではなく「聴く」であり、相手に意識を向けて、目で聴き、耳で聴き、心で聴き、何をどのように話しているのかを捉えることが重要になります。真剣に聴くことは、部下と向き合う基本姿勢であるとともに、部下に信頼感を起こさせることにつながります。 部下をお持ちの方、特に忙しい時などに以下のような行動をしてしまってはいないでしょうか? <傾聴ができていない=部下は話を聴いてもらえていないと感じるケース> ・忙しそうにして、顔をパソコンやスマホの画面、資料に向けたまま聞く ・そっけないあいづちや生返事をする ・部下が説明している途中で自分の意見を挟む ・話の途中で遮り、「こうすべきだ」とアドバイスや指示を出してしまう ・部下の話を早く終わらせようと、自分から断定的に結論を押しつける 部下は上司に話を聴いてもらえないと感じると、上司にとって自分は重要ではないと感じ、不信感や疎外感、不安を覚え、仕事に対するやる気を失っていきます。 それに対し、しっかり話を聴いてもらえていると感じるのは以下のような対応をしているケースです。 <傾聴ができている=部下は話を聴いてくれていると感じるケース> ・作業の手は安め、話を聞くことに集中する ・部下に顔を向け、体を少し前に傾けた姿勢をとる ・アイコンタクトをしっかりとる ・表情を部下に合わせ、話しやすい雰囲気を作る ・「そうなんですね」、「なるほどですね」など部下の気持ちを汲み取るあいづちを返す ・話の内容を勝手に判断せずに、部下の言っていることを一旦そのまま受けとめる 部下は、自分の上司が気持ちをしっかりと受け止めてくれている、と安心感を得ることにより上司を信頼し、本音で会話をするようになります。 傾聴のメリット 傾聴を実践することで、以下のメリットを得ることができます。 課題の発見:部下を深く理解することで、抱えている課題や重要な点が見えてくる 良好な関係:部下の上司に対する信頼感を醸成し、良い関係を築ける 部下の自己成長:部下に内面をみつめる機会や気づきを与えるきっかけをつくる 傾聴によって得られる「課題の発見」「良好な関係」「部下の自己成長」は組織運営において大きな効果を発揮します。部下の抱えている本当の課題をみつけることで、組織としての課題を正確に把握することができます。良好な関係を構築することで、部下のエンゲージメントも自然に高まり、意欲高く組織に貢献をしてくれます。そして、コミュニケーションが自己成長のきっかけにもなるため、部下が自発的に行動する組織になります。 傾聴力を磨くための3つのテクニック 傾聴を実践していくうえで、傾聴力を向上させることができる3つのテクニックをご紹介します。 1.ミラーリング 2.バックトラッキング 3.パラフレージング 1.ミラーリング 自分の身振りや動作、表情を部下に合わせてあげることで共感を示します。 部下と感情を共有することで、部下との一体感を得ることができます。 2.バックトラッキング 一般的にオウム返しと言われる方法です。部下の言葉をそのまま使い応答することで、相手の伝えようとすることを理解し、共感していることを示します。 部下は自分が伝えようとしていることを理解してくれるかどうか不安に思っています。不安を解消することで本音を語ってくれます。 3.パラフレージング 部下の言葉やフレーズを別の言葉や表現で言い直すことで、部下が伝えようとすることをより深く理解し、共感していることを示します。 異なる表現を用いることによって、部下が自分の話を整理して、気づきを深めていくことができます。 これらのテクニックをうまく組み合わせながら活用していくことで、傾聴が深まっていきます。しかし傾聴で一番大切なことは、心から相手のことだけを考えて向き合うことです。自分の保身や組織の業績をあげたいという考えだけで部下と向きあい、テクニックだけを多用すると相手にもそのことが伝わり、見透かされてしまいます。意図しない逆の結果にもなり得ますので、テクニックの乱用には注意しましょう。 まとめ これまで傾聴を意識したことがない人が改めて意識しようとすると、つい口を挟みたくなったり、時間の無駄だと感じてしまったりと我慢が必要になるかもしれません。しかし、自分の考えを押し付けていては、部下からの信頼を得ることはできません。ビジネスのスピードが早くなり、昔と比べると市場環境も大きく変わってきています。以前は正しかった自分の考えが必ずしも現在も正しいとも限りません。 傾聴を実践するには、先入観を持たずに相手の立場に立って考えることが大切です。サーバント・リーダーシップを発揮して強固な組織の構築へ、まずは傾聴を意識してみてはいかがでしょうか。 続き:質問力を鍛えて上司・部下のコミュニケーションを円滑にする!6つの質問の種類と5つのポイント 〜サーバント・リーダーシップを発揮する〜 「今求められるリーダーシップ -サーバント・リーダーシップ- 」について体系的にまとめた資料をダウンロードすることができます。以下よりご確認ください。 資料ダウンロード マネジメント リーダーシップ
人事施策 2019年2月18日 サーバント・リーダーシップの実践 〜管理職の持つ2つのパワー〜 「サーバント・リーダーシップが求められる理由 〜現在の管理職に求められる部下育成と組織力を高める方法〜」では、どうすれば、部下が成長し、活躍して成果を出してもらうことができるのか、今求められるリーダーシップのスタイルとして、支援型リーダーシップであるサーバント・リーダーシップを紹介しました。 今回は、その支援型リーダーシップである「サーバント・リーダーシップ」を実践し、どのように部下と向き合っていくのかをお伝えします。 [目次] 管理職の持つ2つのパワー 自主性の尊重とビジョンの共有 具体例と4つのコミュニケーションスキル 管理職の持つ2つのパワー リーダーとなる管理職の方々は、1. ポジション・パワー、2. パーソナル・パワー の2つのパワーを保有しています。 1. ポジション・パワー〜指示命令で部下を動かす〜 組織における地位や職位が持つ力です。誰でもそのポジションにいる限り、継続されます。立場や威厳などの統率能力で部下に指示に従わせ、言うことを聞かせるパワーです。ポジションがなくなると人は動いてくれなくなるため、肩書きが変われば失われるパワーになります。立場によって人を動かしているにも関わらず、自分が動かしていると錯覚してしまう人も少なくありません。 2.パーソナル・パワー〜部下の自発性を引き出す〜 共感力、対話力、想像力などの人としての魅力と信頼感を通じて、ポジションにかかわらず発揮される力です。上司としての部下との向き合い方やコミュニケーション力が重要な役割を果たします。部下が、「この上司は、私のことを考えてくれている、大切に思ってくれている、期待してくれている」「この上司は、自分の強みや能力を引き出して、成長させてくれる」という思いから、働きがいや仕事への意欲を上げ、自ら考えて行動するようになることが特徴です。 サーバント・リーダーシップを発揮する人は、ポジション・パワーだけではなく、パーソナル・パワーをうまく活用して部下を動かします。 ポジション・パワーで強制的に人を動かす場合、部下の会社に対するエンゲージメントはなかなか上がりません。部下が主体的に行動することを好む人の場合は、自己実現できる環境を求め、転職なども考えるのではないでしょうか。一方、信頼関係や働きがいで力を発揮してもらうように促すことができれば、給与などの条件以外にも魅力を感じ、会社に対するエンゲージメントも高くなります。結果、チームとしての業績向上に向けた強固な組織を構築できます。 自主性の尊重とビジョンの共有 パーソナル・パワーを発揮するためには、前提として、部下の自主性を尊重することと、ビジョンを共有することを意識する必要があります。 上司は部下の自主性を尊重し、成功や成長を支援する行動を実践することによって、信頼関係が育まれていきます。また、組織全体が同じビジョンや目指す目標をしっかりと共有できていれば、上司が組織を導くのではなく、組織に所属する一人ひとりが能動的に活動をしていくことにつながります。 具体例と4つのコミュニケーションスキル 2011年にドイツで行われたFIFA女子ワールドカップで、なでしこジャパンを率いたサッカー指導者の佐々木則夫監督はサーバント・リーダーシップを発揮した典型例として有名です。上から目線での指示命令ではなく、選手に応じて得意分野を引き出すコーチングとティーチングを駆使し、自主性を尊重したチームを作りました。結果として、男女を通じて日本初のワールドカップ優勝という快挙を達成しました。 部下の自主性を引き出すには、4つのコミュニケーション・スキルが重要と言われています。 サーバント・リーダーシップを発揮するために重要な4つのコミュニケーションスキル: 1. 傾聴 部下の発言を心を込めて深く聴き、共感を通じて部下の気持ちや考え正しく理解し、信頼関係を築く力 2. 質問 部下の頭の中にあるものを整理し、気付きを与え、自発的に考えて行動を促していく力 3. 承認 部下を尊重し認め、やる気や意欲を上げて、上司としての信頼感を醸成する力 4. フィードバック 行った活動の結果を振り返り、成功や失敗から学び、改善・向上に繋げる力 指示命令型の上司の場合、部下は自分で考えず、言われた以上の事をしないようになります。一方、サーバント・リーダーシップを発揮する質問傾聴型の上司の場合、部下は自分で考え自分の能力を最大限に発揮して自らの責任で主体的に行動するようになります。 次回は、このコミュニケーションスキルについてより深掘りしてご紹介します。 続き:傾聴 〜サーバント・リーダーシップを発揮するための重要なコミュニケーションスキル〜 「今求められるリーダーシップ -サーバント・リーダーシップ- 」について体系的にまとめた資料をダウンロードすることができます。以下よりご確認ください。 資料ダウンロード マネジメント リーダーシップ