コラム 2024年9月27日 人事を取り巻く環境変化に乗り遅れないために 経営環境の変化が加速する昨今、人事部門に求められる役割はますます専門的になり、その業務内容もより戦略的なものへと変わりつつあります。人事の現場では今、何が起こっているのでしょうか。また、これからの人事部門には何が求められるのでしょうか。 ISO30414 M&A 人事戦略 人的資本経営 企業事例
人事施策 2022年3月07日 「ジョブ型雇用」導入事例と運用のポイント [目次] 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント まとめ 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 職務内容を明確に定義して採用を行い、仕事の成果によって評価や処遇を決める「ジョブ型雇用」。 価値観の多様化や、リモートワークへの移行など、ビジネス環境の大きな変化を背景に、ますます注目が集まっています。 今回は、この「ジョブ型雇用」を積極的に導入・推進している企業の事例と、導入のポイントをご紹介します。 ・富士通株式会社の事例 日本と海外で異なる人事制度を運用していた富士通は、2020年に国内1万5,000人の幹部社員について、報酬体系を職責ベースとする『FUJITSU Level』へと切り替えました。2022年キャリア採用、2023年度新卒採用計画においても、ジョブを起点として職種ごとに適した人材の採用をグローバルに展開し、職責や専門性の高さに応じて個別の報酬設定を含む適切な処遇にて迎え入れるとしています。 一般社員についても、労働組合との話し合いを前提に適用を拡大する見込みです。 ・株式会社日立製作所の事例 日立製作所は、現在、全世界で約35万人の連結従業員を抱えており、すでに日本人よりも外国人の比率が上回るグローバル多国籍企業です。2024年度のジョブ型雇用への完全移行を目標に掲げ、国内でも「ジョブディスクリプションの導入・活用の具体化(職務の見える化)およびリスキル教育の強化」を2021年度の重点取り組み事項に挙げ、新卒採用においてもジョブ型インターンシップを導入しました。 ・株式会社資生堂の事例 資生堂の魚谷雅彦社長が「究極の適材適所」と語るジョブ型雇用。すでに課長以上を対象に2014年からジョブ型雇用を導入している資生堂では、対象の管理職社員からも「自分自身のポジションに求められることがよりクリアになっている」と前向きな評価が得られています。 魚谷社長は、従来の日本型雇用は現在の「変化する時代」に合わなくなってきていると述べ、ポストに応じて役割と専門性を明確にすることが多様な人材の公平な人事につながると考えています。 2021年1月からは、総合職の社員3,900人を対象にジョブ型雇用を拡大しました。 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント ジョブ型雇用の導入にあたって重要なポイントは、「ジョブスクリプションの記載内容」と「ジョブ型雇用契約についての従業員への説明」が挙げられます。 日立製作所の事例にあるようなジョブディスクリプションの作成にあたって、企業はこれまでよりも、職種やポジションごとの「職務内容」「達成目標」「責任と権限範囲」を明確にする必要があります。 ジョブ型雇用の導入前はもちろん導入後も、さまざまな局面で従業員に説明をする義務があります。ジョブディスクリプションに記載のない業務を依頼する場合は従業員が納得できる理由を説明しなければなりません。また、ジョブディスクリプションで定義している職務とは異なる職務への配置換えを行うことが簡単にはできないこともあるため、該当する職務の業務量が少なくなった場合や職務自体がなくなった場合を想定して、予めルールを明確にしておく必要があります。 ジョブ型雇用はドライな印象が強いものの、日本において多くの外資系企業がジョブ型雇用のもと優秀な人材を惹きつけ、かつ従業員のエンゲージメント向上も実現しています。重要なのは、雇用契約やジョブディスクリプションの明瞭さと事前の説明の徹底にあると言えるでしょう。 まとめ いわゆる日本型雇用とも呼ばれるメンバーシップ型雇用は、人材を自社に最適化できる長所がありましたが、ジョブローテーションを繰り返すため従業員に専門性がつきにくい短所がありました。また、待遇が横並びになりやすいため、優秀な人材の獲得競争においても弱い立場に置かれることが多くなります。 ジョブ型雇用は、企業側は優秀な人材を市場価値に応じた報酬で採用でき、従業員も専門性を高めていくことが可能な、雇用が流動化している時代にマッチしている雇用形態だと言えます。 ジョブ型雇用の導入を検討する企業は、他社事例をしっかりと確認して詳細なジョブディスクリプションを作成していくことが必要です。あわせて従業員に対して、人事の方針だけでなく、マクロ環境の変化についても情報発信していくことが望ましいでしょう。 ジョブディスクリプション ジョブ型雇用 企業事例 日立製作所 資生堂
人事施策 2020年7月01日 「通年採用」の導入は採用市場をどう変えるのか 新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の採用活動にも影響を及ぼしています。具体的には、学生向け合同説明会の中止や採用予定人数の縮小が発生し、就職活動を控える学生に大きな不安を与えています。 こうした状況をふまえ、経済産業省は企業等の関係団体に対し、新規学卒者への「通年採用」や「秋季採用」の導入を要請し始めました。そこで今回は、通年採用へ切り替え始めた一部企業の動向やメリット・デメリットをご紹介するとともに、通年採用が今後の採用市場に与える影響について解説します。 [目次] 日本企業の採用活動の最新動向 「一括採用」から「通年採用」へと動き始めた企業 「通年採用」がもたらすメリット、デメリット 「通年採用」の導入が今後の採用市場に与える影響 まとめ 日本企業の採用活動の最新動向 企業の採用活動において広く定着する「春期一括採用」。企業は短期間で集中的に学生を採用できるため、集団での企業内訓練の実施や知識・技術の習得機会の創出が可能です。また、OECDのレポートによると、2019年の日本の若者(14歳~24歳)の失業率は3.8%と諸外国と比べ低い水準でした。企業が長期雇用を見据える一括採用は、学生側にも一定のメリットがあると考えられます。 参考:OECD Data『Youth unemployment rate』 このように、春期一括採用は日本企業にとって主流の採用方法でした。しかし、現在の情勢から一部の企業では通年採用へと切り替える動きが出ています。KDDIや日立製作所は、2021年度から通年採用を開始すると発表しました。 「一括採用」から「通年採用」へと動き始めた企業 KDDIは2021年度入社の新卒採用から、年間を通じて学生がいつでも応募できる「通年採用」に変更します。また、個々の状況に合わせて入社時期を選べるよう、年2回、4月と10月に入社時期を設けました。 参考:KDDI『2021年度よりKDDI新卒採用で通年採用を開始』 日立製作所の入社時期はさらにフレキシブルで、新設する「デジタル人財採用コース」では原則として卒業から1年以内の入社が可能に。その目的は、各自の自己成長の時間を設けることです。デジタル分野への配属を確約したうえで、卒業後の海外留学や長期ボランティア、自己啓発といった活動を認めています。 参考:日立製作所『ジョブ型人財マネジメントの実現に向けた2021年度採用計画について』 「通年採用」がもたらすメリット、デメリット 企業側の切り替えが進み始めた「通年採用」には、以下のようなメリットがあります。 ・多様な人財と出会う機会が増える 通年採用は、春季一括採用では得られない人財と出会える可能性があります。第二新卒などの既卒者、日本での就業を希望する外国人の採用に対応しやすくなるからです。 ・期間に縛られず余裕を持って人財を選べる 選考時期にピークがなく、採用活動のリソースに余裕が生まれます。そのため、人事はゆとりを持って人財を見極めることができます。 ・自社の状況に応じた採用活動を行える 自社の経営状況に応じて採用計画を見直し、臨機応変に採用活動を行えます。自然災害や海外市場の影響を受けた急激な景気変動にも柔軟な対応が可能です。 一方、通年採用には人事の業務負荷や難易度が高まるといったデメリットも。人事には、人財採用のプランや募集活動、コスト管理などに通年で取り組む必要性が生じるのです。 「通年採用」の導入が今後の採用市場に与える影響 一括採用の意図は長期雇用を見据えた効率的な人財育成ですが、通年採用には必要なときに必要なポストを任せられる即戦力の人財を獲得する目的があります。企業によっては新卒や中途の区分をなくし、「求職者」として同条件で採用活動を行うこともあり得るでしょう。その場合、就労経験のない学生はこれまで以上にインターンシップなどの学外活動に力を注ぎ始めるかもしれません。 通年採用が広まることで、企業の採用活動の多様化はより一層推進されるでしょう。通年採用は採用市場のあり方を変え、日本の雇用環境全体に多大な影響を与える可能性があります。 まとめ 独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年に公表した調査結果によると、大学生・大学院生の約6割が「通年採用」を行う企業は多い方が良い、と回答しています。もはや通年採用のメリットやデメリットだけで導入を判断する段階ではありません。企業は現在の社会情勢や学生の動向を注視しながら、通年採用の導入を検討するよう求められているのです。 参考:(独)労働政策研究・研修機構『大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズ調査』 企業事例 新卒採用 新型コロナウイルス 通年採用