人事施策 2022年11月21日 コロナ禍3年目、働き方の「ニューノーマル」の今 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態宣言の発令を機に、多くの企業が「ニューノーマル」を旗印に、一斉にリモートワークを導入しました。その後3年目も終盤となり、リモートワークは一つの選択肢として定着し、まさに新しい「ノーマル」となりました。 今回は、多くの企業が推進してきた新たな働き方について、いくつかの取組み事例を紹介します。 [目次] 働き方のニューノーマル、その後 ニューノーマルな働き方への取組み事例 まとめ 働き方のニューノーマル、その後 働き方の「ニューノーマル」とは、主にコロナ禍を契機に、新しいビジネススタイル、職場の在り方などを指して生まれた言葉です。リモートワークのような社員の働く環境の整備だけでなく、顧客との商談、ビジネス上の手続きの在り方、採用の手法、オフィスのレイアウト、各種イベントのデジタル化なども含まれます。 背景には、当面はまだコロナウイルス対策を継続しなければならないという理由がまずあります。さらに、多くの企業がリモートワークを経験したことで、「リモートワークでも問題ない」「リモートワークのほうがむしろ合理的」など、場所や時間にとらわれない働き方が生産性向上につながると認識してきたことも影響しているでしょう。 もちろん、リモートワークでは対応できない業務もあれば、リモートワークで生産性が落ちたという意見もあります。リモートワークに限らず、働き方の多様性に目を向けることで、従来の形にとらわれない、働き方の「ニューノーマル」を実現することが求められてきたのです。単に社員にリモートワークを許可するだけではなく、企業が自社の価値を改めて考え、「働く環境の整備」「IT環境の整備」「業務体制と人事評価」「コミュニケーションの活性化」「健康サポート」などを包括的に行うことが必要になります。 ニューノーマルな働き方への取組み事例 ニューノーマルな働き方では日立製作所や富士通の取組みが注目されましたが、他にも次々と新しい動きが登場しました。 (1)パソナグループ 2020年9月、人材サービス業界大手パソナグループは、本社を東京から兵庫県の淡路島に移転すると発表しました。2024年5月までに経営企画、人事、財務経理などを担う1200人を島内に配置予定としており、2021年末時点で既に希望者350人が淡路勤務に。淡路を拠点とした地方創生事業を打ち立て、「地方創生テレワーク」を推進するほか、内閣府からの受託事業として「地方創生テレワークアワード」の運営も行うなど、テレワークを単なる出勤の代替としてではなく、新たな価値の提案としてうまく事業につなげています。地方への移転はほかにも、災害に対するリスクヘッジ、オフィス費用の低減、従業員が通勤ラッシュから解放されて自然豊かな環境で働けることなどを目的としている、と同社は述べています。 (2)サイボウズ株式会社 IT企業のサイボウズ株式会社はもともと2010年からリモートワークを推進している企業でしたが、コロナ禍によって全社的なリモートワークを経験した結果、従来の体制では情報格差が大きかったことや孤独感にどう対処するかなどの課題を隠すことなくオープンな場で発信してきました。現在では、「テレワークからハイブリッドワークへ」を掲げ、在宅勤務をはじめとしたテレワークと、出社してオフィスで働くオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を提唱しています。 (3)株式会社minitts コロナ禍によって多大な打撃を被った飲食業界。国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」を運営する株式会社minittsも例外ではなかったものの、早期に2店舗を閉店するという見切りの早さや給付金等の支援策をフル活用することで経営を維持しました。事業を大きくすることよりも、従業員と顧客の満足度に重きをおくため、メニューを1日100食限定と、あえて上限を設ける形態で運営。基本的に昼のみの営業で売り切れ、従業員は残業ゼロ。有給休暇完全取得を実現しています。「家族で晩御飯を一緒に食べられる働き方」を目指すという同社では、多様な人材が正社員として活躍しており業績も順調です。 (4)田辺三菱製薬株式会社 6年連続「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されている田辺三菱製薬株式会社は、2020年の在宅勤務時に行った従業員意識調査の結果をもとに、特に要望の多かった以下7項目を「働き方カエル宣言」と名づけ、新しい生活様式における働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。 1.感染予防策の徹底(オフィス環境、通勤、勤務形態) 2.会議の見直し 3.脱ハンコ 4.ペーパーワークの大削減 5.拠点のサテライトオフィス化 6.テレワーク環境の整備 7.毎週金曜日のFriday Survey継続(新しい働き方に対する従業員意識調査) その他、LGBTや女性活躍に対する積極的な取り組みや、事実婚・同性パートナーを配偶者と同様の扱いに変更するなど、従業員がより良く働ける環境の構築を積極的に推進しています。 以上、4社それぞれ独自性はあるものの、合理的思考に基づいた判断が企業にも従業員にもメリットをもたらしている点は共通していると言えるでしょう。 まとめ 新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中でビジネスのあらゆる面で変化が急速に進みました。さらに、今後は新しい環境にそったニューノーマルな働き方を設計していく必要に迫られています。現在はいわば大きな過渡期に直面しており社内外が混乱しやすい状況です。従業員の健康と働きやすさ、企業の生産性向上を実現できるニューノーマルを社内で検討することはとても重要です。 withコロナ テレワーク ニューノーマル 働き方改革 多様性
人事施策 2021年11月01日 AIの活用でダイバーシティ採用を推進 昨今、日本でもダイバーシティ採用の必要性が唱えられています。経済産業省もダイバーシティ採用の推進は多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高めるため、企業の競争力向上や持続的成長に不可欠となっています。 しかし、日本の企業が急に意識を変えることはそう簡単ではありません。採用活動においても無意識にこれまでのバイアスや慣例に影響される可能性はあるでしょう。本記事ではAIを活用してダイバーシティ採用を推進する例を紹介します。 [目次] ダイバーシティ採用推進の必要性 日本でダイバーシティ採用の推進が必要とされる背景 ダイバーシティ採用の推進にはAI活用が有効 ダイバーシティ採用にAIを活かした海外事例 まとめ ダイバーシティ採用推進の必要性 ダイバーシティは「多様性」という意味です。大きく 2つの意味があり、一つは表面的なダイバーシティ(国籍、民族、性別、年齢、障がい等)、もう一つが内面的なダイバーシティ(思想、価値観、所属するコミュニティ等)です。人事用語では「多様な人材を採用・活用する」といった文脈で使われます。 ダイバーシティはもともと米国で生まれた概念です。多様な人材を採用し、さまざまな価値観・発想をビジネスに活かしてもらうことが、社会にも企業にもプラスという思想です。 企業のメリット 国籍、民族を問わず能力の高い人材に活躍してもらえる 新しいアイデア・イノベーションが生まれやすい オープンな社風になり従業員が定着しやすくなる 日本でダイバーシティ採用の推進が必要とされる背景 日本でも以前からダイバーシティ採用推進は必要とされていました。 主な理由は以下の通りです。 (1)多様な人材を採用する企業の社会的責任 (2)労働人口の減少 (3)女性管理職が少ないなど女性人材の活用が進んでいない (4)労働観の多様化 (5)グローバル化による海外人材の来日 (6)多様化する市場ニーズへの対応が必要 特に(2)の労働人口減少の問題が影響しています。少子高齢化は年々進み若者が減っていくのは変えることができない現実です。そのため女性や高齢者、障がい者、外国人などの人材を採用し活かしていくことが求められています。 ダイバーシティ採用の推進にはAI活用が有効 海外では、ダイバーシティ採用の推進にAIを活用する企業が増えています。日本でもAIはチャットボット、スケジュール調整ほか採用プロセスの自動化など業務効率化に活用されてきましたが、海外ではそれにとどまらず、採用そのもの(面接・選考)にもAIを活用し始めています。 人事担当者といえども人間は何かしらのバイアスを持っていることが多いため、多様な人材を公正に採用するためには、バイアスのないAIを作り、採用活動に活用することが公正な採用に役立つという考え方に基づいています。 もちろん、AIがバイアスを持つこともありますが、AIのバイアスは発見されたら修正が可能なので人間のバイアスを減らすことよりは容易です。 ダイバーシティ採用にAIを活かした海外事例 ダイバーシティ 採用にAIを活かす事例に、ThisWay Global社の『Ai4JOBS』、TalVista社の『TalVista』があります。 Ai4JOBSは「バイアスを持たないトレーニングをされたAI」が、スキルはありながらも担当者のバイアスでチャンスを逸した人材を発見します。Ai4JOBSはHR Technology Conference & Expo 2019においてギグエコノミー賞を受賞しています。 「TalVista」は求人情報の最適化、ブラインド・レジュメ/CVレビュー、ストラクチャードインタビューの3機能で多様な人材を集め、バイアスに影響されず適性や入社後の活躍を指標に選考する支援をします。 まとめ グローバル化による厳しい競争に企業が勝ちぬくためには多様な人材が必要であり、そのためには多様な人材の能力を、的確に判断して採用する力が必要です。 とはいえ、それまでとは異なるさまざまな価値観・バックグラウンドを持つ人材の能力や活躍可能性を見抜くのは指標が難しく、バイアスに影響される可能性も少なからず出てくるでしょう。バイアスを持たないAIを選考に活かすことは、ダイバーシティ採用の推進に有効です。 AI活用 ダイバーシティ 多様性
人事施策 2020年7月22日 多様な人材をまとめるリーダーの要素と組織を成功に導くチーム運営のステップ 働き方の多様化が進んでいくなか、正社員だけではなく非正規社員、フリーランス、インターンなどさまざまな雇用形態のメンバーを、目標達成に向けてマネジメントする機会が増えています。バックグラウンドはもちろん、個性や利害関係が異なるメンバーのチームで成果を上げるためには何が重要でしょうか? 今回はチーム運営を成功に導くために必要不可欠なステップとリーダー人材に求められるスキルを解説します。 [目次] マネジメントの観点で捉える、チーム運営に必要な人材とは 組織を成功に導くチーム運営、そのステップとポイント まとめ マネジメントの観点で捉える、チーム運営に必要な人材とは チーム運営を担うリーダーには、メンバー一人ひとりの能力を最大限に発揮させる力が必要です。チームワークを発揮できる環境を整え、メンバーの力量や個性を把握し、個々のモチベーションを高め、維持していくマネジメント力が問われます。 また、チームの目的である組織目標達成に向けて、メンバーを牽引する強いリーダーシップも必要です。チーム運営には「マネジメント力」と「リーダーシップ」を兼ね備え、チーム運営についての知識を持つ人材が求められます。 組織を成功に導くチーム運営、そのステップとポイント 組織を成功に導くチーム運営は、どのようなステップで実現できるのでしょうか? ここではチーム運営のフレームワークの一つである「タックマンモデル」を紹介します。 アメリカの心理学者Bruce Tuckman氏は、チームの成熟段階を「形成期、混乱期、統一期、機能期、散会期」の5ステップに整理したうえで、混乱期や統一期をへて機能期に到達しなければ、チーム力は十分に発揮されないと述べています。 ・形成期(Forming) チームを形成していくステップ。メンバーの目標に対する理解が浅く、メンバー同士もお互いを詳しく知らないため、チーム内に緊張感がある時期です。このステップのマネジメントではビジョンの明示や目標の共有、アイスブレイクによるチーム内の緊張緩和、チーム活動の阻害要因の見極めが必要です。 ・混乱期(Storming) 目標や課題へのアプローチ方法を模索するステップです。個々の経験や価値観の違いからメンバー間で意見が分かれ、チーム内に混乱が起きる時期でもあります。 このステップでは意見の衝突を避けてはいけません。メンバーが率直に意見をぶつけ合い、相互理解を深められるようなマネジメントを行うことで、チームの抱える課題が浮き彫りになり、その解決に取り組むことができるからです。 ・統一期(Norming) メンバー同士が相互理解を深め、チームが機能し始めるステップです。チームの行動規範や役割分担が明確になりメンバーのベクトルが揃います。このステップではメンバー間のコミュニケーションを促進させ、チーム活動によりドライブをかけるためにメンバー個々に主体的な行動を推進してもらうことが大切です。 ・機能期(Performing) メンバーが自律的に活動しながらお互いを自発的にサポートしあうステップです。チームが成果を生み出す時期を迎えます。チーム全体を俯瞰しながら、メンバーの活動を適時バックアップするマネジメントに注力します。 ・散会期(Adjourning) 当初の予定期間の終了、半期や年度の終わりなどを機に、チームとしての活動を終えるステップです。最終的なチーム運営の成否が明らかになります。目標の達成状況だけでなく、メンバー間で感謝の声やチームの解散を惜しむ声が自発的に上がるかどうかも、チーム運営の成否を測る要素になります。 まとめ 組織が目標を達成するためには、多様な人材の能力を発揮できるチーム運営を行うことが必要です。成果を出すチーム運営には、ときに摩擦を恐れず相互理解を促進させるステップが不可欠です。また、各ステップで適切なマネジメントを実施できるリーダー人材が必要です。 ダイバーシティ マネジメント リーダー 人事戦略 多様性