コラム
ワインで対談
形だけだった日本のタレントマネジメントがやっと変わり始めた – プラスアルファ・コンサルティング鈴村 賢治さん×セレブレイン幸前 夛加史【前編】
セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第5回ゲストは、株式会社プラスアルファ・コンサルティング取締役副社長の鈴村 賢治さん。マーケティング領域から参入された鈴村さんならではの視点で日本の人事の課題に切り込んでいただきました。聞き手はセレブレイン取締役パートナー 人事戦略コンサルティング担当・幸前 夛加史が務めます。
第5回ゲスト:鈴村 賢治さん略歴
株式会社野村総合研究所を経て、2007年にプラスアルファ・コンサルティング創業。取締役副社長に就任。データ分析やテキストマイニングを使ったCS(顧客満足)向上やビッグデータ活用プロジェクトを数多く推進。CS向上にES(従業員満足)向上が欠かせないこと、自らが経営者として感じた人材マネジメントの解決手法として「タレントパレット」を開発。幅広い業界での人材活用・育成・離職防止の推進・啓蒙を支援している。
対談の舞台は“スタッフ全員ソムリエ”のあじる亭レピス――まずはスペインの「カヴァ」で乾杯!
幸前:鈴村さん、本日はお越しいただきありがとうございます。
鈴村:よろしくお願いします。こちらのお店はセレブレインさんのグループ会社なんですか?
幸前:そうなんですよ。株式会社セレブールとして運営しています。
鈴村:すばらしいですね。 グループ会社にワインが飲めるビストロがあるのはすごくうらやましい。 仕事の後にミーティングもできそうですね。
幸前:できますよ(笑)。「ちょっと場所を変えましょうか」なんて言って。
鈴村:いいですね~
幸前:では、まずはスパーリングワインで乾杯しましょう。加藤さん、こちらのワインは?
店長/加藤:スペインのスパーリングワイン「カヴァ」のラ・ロスカをご用意しました。
鈴村:こういう時の一杯目はスパーリングワインに限りますね!
幸前:こちらの加藤さんがあじる亭レピスの店長さんなんですよ。
実は加藤さんも含め、セレブールではお店の全スタッフがソムリエの資格を持っているんですよ。
鈴村:それはすごい。 男にとってソムリエって憧れの仕事の一つですよね。取るためにはどんな試験を受けるんですか?
店長/加藤:筆記試験とテイスティング、それから三次試験で実技ですね。
鈴村:三次試験まであるんですか!? すごいですね……。
幸前:鈴村さん、最初のお料理がきましたよ。
店長/加藤:「鰤のカルパッチョ 柚子の香り」をお持ちしました。柚子の香りがするドレッシングを使ったカルパッチョです。
鈴村:これはおいしい! 身が厚くて柚子の香りがまた爽やか。 食欲が出てきますね!
幸前:よかった! どんどん召し上がってください。
鈴村:ところで、幸前さんはセレブレインに入る前は、どちらにいらっしゃったんですか?
幸前:最初は銀行だったのですが、出向でシンクタンクに行って、そのままこの仕事がメインになりましたね。
鈴村:前職も人事系?
幸前:ええ。人事をテーマにしたコンサルが多くて。鈴村さんは野村総合研究所のご出身ですよね。
鈴村:CRMなどのシステム開発のほか、顧客データの分析などのマーケティング領域をやっていました。それからプラスアルファ・コンサルティングを設立して12年になりますね。テキストマイニング技術を駆使した見える化エンジンが主力製品です。
幸前:そこからタレントパレットで人事領域にも進出されて。
鈴村:タレントパレットをリリースして1年半くらい経ちますね。おかげさまで採用企業数ももうすぐ100社くらいになりそうです。
日本の人事はデータの管理は行っていても活用ができていない
店長/加藤:続いてはレピス名物、「パクチーとハラペーニョのサラダ」です。
幸前:おー、パクチがどっさり! 鈴村さん、パクチーは?
鈴村:大好きですよ! これだけあると食べ甲斐がありますね~
幸前:この独特の香りがたまらないですね。
鈴村:うん、これもおいしいですね! 弊社はシンガポールに支社があって、アジア系の料理も好きなんです。唐辛子とオリーブオイルを使った辛い料理とか最高ですね。
幸前:あじる亭レピスの「レピス」はフランス語でスパイスという意味なので、辛い料理もいろいろとありますよ。
鈴村:今度、会社の仲間とも来てみたいです♪
幸前:ところで、プラスアルファ・コンサルティングさんは昨年、HR EXPOに出展されていましたね。HRテックの活用で人事が変わりつつある中で、我々も最新トレンドは常にキャッチアップしているので、イベントや展示会には顔を出すようにしています。そのときにプラスアルファ・コンサルティングさんのブースにも立ち寄らせていただいて、タレントパレットの説明を受けまして。
鈴村:おお、そうだったんですね。幸前さんからみて、タレントパレット、いかがですか?
幸前:人事情報の見せ方が面白いなと思いました。人事データベースやグローバル人事のスキルデータベースなんかは前からありますが、結局“箱”の中に入れたものを管理するだけで、それをどう活かしていくのかという状況がずっとあったんですよね。
鈴村:そうなんですよ。 マーケティング領域では情報活用がすでに研ぎ澄まされていて、販売データをExcelで眺めるだけじゃなく、ビジュアルで見える化して分析します。そこから試行錯誤してPDCAを回していくことが業務として浸透しているんです。ところが、人事領域はまだほとんどの会社がExcel文化ですよね。
幸前:まさにその通りですね。
鈴村:データの管理はできても活用ができていないわけです。そう考えたときに、マーケティングのアプローチが人事でも求められているんじゃないかと思いました。
幸前:そこが人事でずっと変わってこなかったところですよね。タレントパレットはそのブレイクスルーになる着眼点だと思います。
鈴村:ずっと人事領域のコンサルティングをされている幸前さんにそう言っていただけるのは嬉しいですね。
大事なのは表面的な情報ではない
店長/加藤:次のお料理は「トリュフ風味のスクランブルエッグ」です。トリュフの香りをつけたクリームソースが女性にとても人気のメニューです。トリュフの香りに合わせて、少し樽の風味を効かせたカリフォルニアのシャルドネ「グレンブルック シャルドネ」をご用意しました。
鈴村:これ、すごいいい香りしますね!
店長/加藤:幸前さんも毎回注文されるお料理なんですよ。
幸前:たとえコースメニューに入っていなくても注文するくらい好物です(笑)。
鈴村:たしかに、その気持ちわかります。濃厚な香りがふわっと立ち上ってきます。これは、赤ワインとぴったり合いますね~。
幸前:何度食べても飽きません。本当においしい! ワインも香りが甘くてバランスがいいですね。
鈴村:私もワイン大好きなので、飲みながらこんなふうにお話できて最高です(笑)。
幸前:人事のお話に戻りますが、こんなエピソードがあります。とある会社がグローバル人材のデータを一元化するプロジェクトをやろうとしてデータを集めて入れてみたものの、次に聞かれたのが「で、このデータどう使うの?」と(笑)。
鈴村:それ、データ活用のあるあるですね(笑)
幸前:そもそも人事にはこれまでデータを活用するという観点が少なかったんですよね。
鈴村:おっしゃる通りですね。コンサルティングをしていると、先に仮説があって、それを検証するためにデータを集めるという発想になるんです。データを集めてから、さあどうしましょうとは順番が全く逆なんですよね。その企業のタレントマネジメントの目的を考えたら、そこに必要なデータは、もしかすると今持っているデータではないかもしれない。違う情報を新たに集めるべきかもしれない。そんなことだってあるわけです。
幸前:そういう意味では今までの人事って、データとして可視化されていない暗黙知的な感覚はすごく持っているかもしれません。
鈴村:そうなんです。暗黙知をどうデータに落とすのかは次のテーマだと思います。たとえばどの部署にどんな人がいるのか、データとしてはあるけど、結局その人は何がしたいのか、何が得意なのか。そういう“状態”を表すようなエモーショナルなデータを活用しないといけません。
幸前:適性検査や性格特性などをアンケートで取ったりはしているんでしょうけどね。
鈴村:だいたい取りっぱなしで終わりますよね。本当はそれをもっと人事情報と組み合わせて使うべきだと思っています。
幸前:本当にその通りだと思います。勤怠データや給与データも大事だけど、社員の顔色やコンディション、社員同士がきちんと会話できているのか、そういうところが重要なんですよね。
鈴村:生きたデータというのはそういう情報ですよね。先日、科学的な離職防止セミナーを行ったのですが、すぐ満席になったんです。昔は辞めたら補充すればいいって考えだったでしょう。でも今は採用難で次の人が採れない。特に外食産業や介護業界などは離職率の高さが経営課題になっています。そうなると、今いる人たちをいかに辞めさせないか、持っているパフォーマンスを引き出すかという発想に変えていかないといけません。
前編では、マーケティング領域から参入された鈴村さんだからこそ見えた、日本の人事における課題を浮き彫りにしてきました。
後編では、タレントパレットのユニークな機能が生まれた背景を伺いつつ、日本の人事が抱える問題とその解決策についてさらに深く話し合っていきます。