コラム
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戦略的人材マネジメントを考える
多くの企業では、製品開発、製造、販売、流通などあらゆる事業領域のグローバル化に加え、AI、IOT、VRなどテクノロジーの進化に伴うビジネスモデルの変革が進む中、企業の内外に適応可能な人材の絶対数が不足している状況にあります。一方、働き方改革における雇用・労働関連法の見直し、有効求人倍率が高まる状況下の就職や転職への意識の変化など、企業の人材マネジメントに立ちはだかる課題は多様化かつ複雑化しています。
今回は、ますます多様化、複雑化するビジネス環境の中で、企業は人材マネジメントについてどのような方針や施策で対応すべきなのかというテーマで考えてみます。
人材マネジメントにおける最初の課題に人材の採用があります。一般的に、大手有名企業は、思い通りに優秀な人材の採用ができているように思えますが、必ずしもそうとはいえないケースも多く、あまり名を知られていない中小企業の中に毎年優秀な人材を採用できているという事実を認識する必要があります。
一方、採用した後の状況に目を移してみると、名の通った企業でありながら離職率の高い企業がある一方で、知名度と待遇が高いとは言えない企業に優秀な人材が定着しているケースもあります。つまりこれらのケースの中に人材マネジメントのヒントがあるのです。
戦略的人材マネジメントは、企業の成長や進化、時に変革を促す適材と適所の在り方を効果的にマネジメントするために不可欠な施策です。しかしながら企業によっては、事業計画に即した人材マネジメントが不十分で、ビジネスの波をとらえきれず成長機会を逃すケースが多く見受けられるのです。
多くの企業では新卒や中途採用などの「リクルーティング」活動を実施しています。自社の将来に必要な能力や資質を持った候補者を様々な手段で募集し、一定のプロセスにより選考を行い。一定枠の人数を採用する活動で、候補者の「募集力」が重要であり、知名度や資金力のある大手企業に有利な汎用的採用活動と言えます。
一方、企業が事業計画を推進する上で、強化が必要とされるミッション、職種、ポジション、期待される成果などを明確にして人材を選抜する採用は、ターゲットセレクションとも呼ばれる「ハイヤリング」活動であり、「採用決定力」が重要で、採用に対する柔軟性、迅速性、一体性がある中堅企業やオーナー企業にとって、有利な点がある戦略的採用活動です。
「リクルーティング」と「ハイヤリング」を明確に認識して採用活動を行っている企業は、まだまだ多数とは言えません。例えば、戦略的採用で実績を上げているある企業では、人事担当者だけではなく、経営者や幹部クラスも社外の人材情報にアンテナを張り、優秀な人材の情報があれば、自ら出向いて、自社の事業やビジョンをアピールし、勧誘することもあります。仮に、その時点で入社に至らなくても、次期有望人材として継続的にコミュニケーションが可能な状態をつくっています。
戦略的な「ハイヤリング」活動を実践するには、業界や候補者の動向に対する知見、サーチと面談のスキル、活動のための時間などが必要であり、一朝一夕に実現できない企業が多いのはやむを得ないと思います。そのような場合、私たち人材サーチコンサルタントとの連携により実効性のある「ハイヤリング」を検討いただくことがあります。
サーチコンサルタントは、企業の特性や事業計画における不可欠な人材のニーズを把握し、一定期間の間に適任と思われる候補者をピンポイントでサーチしてリスト化します。リストする候補者は、人材会社等に転職登録されていない現職人材が多く、候補者が転職の意志を固めるまで企業の経営幹部とのカジュアルなミーティング機会をもつなど慎重にコミュニケーションをとる過程が重要となります。したがって採用に至るまで長期間を要する場合もありますが、重要なポジションほどミスマッチが許されないので、入社後に「知らなかった」という事態にならないためにも十分な情報共有の時間を持つことは必然と言えます。
戦略的「ハイヤリング」では、採用のプロセスも重要ですが入社後のオープンな受け入れ環境づくりも欠かせません。人材マネジメントにおける採用や定着の課題は、人事部門だけでなく、経営者、組織の責任者をはじめ企業全体の重要なミッションという風土を醸成することで、レベルアップさせることが可能なのです。