コラム
ワインで対談
米国のHRテックと日本企業の意外なつながりとは – タレンタ石橋慎一郎さん × セレブレイン高城幸司【後編】
セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第3回ゲストは、株式会社タレンタCEO・石橋愼一郎さん。ベンチャー支援を始めた経緯や、同社が提供するデジタル面接プラットフォーム「HireVue」について、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司と対談しました。
第3回ゲスト:石橋慎一郎さん略歴
IBM、オラクルをはじめとする著名なIT企業において上級管理職を歴任した後、創設時からのパートナーであるサンブリッジ株式会社においていくつもの新規事業を立ち上げてきた。日本におけるテクノロジービジネスの発展を30年以上に亘ってリードし、現在はタレンタ株式会社のCEOとしてHRテックの普及に注力している。
アメリカのHRテックは、かつての日本企業のマネジメントスタイルをベースに開発されている
高城:ここまで、サンブリッジを創業してベンチャー支援をされてきた経緯や、タレンタで展開するサービスについてお話を伺ってきました。ところで、Facebookを拝見したのですが、石橋さんはプライベートでもアクティブですよね。ゴルフとか登山とかヨットとか……。
石橋:今は山に凝ってますね。もともとはゴルフをやっていて、体幹を鍛えるために山に登り始めたらすっかりそっちに夢中になってしまって。体力をつけるために有酸素運動をしようとジョギングを始めましたし、足腰に負担がかからないようにロードバイクを買って自転車もやっています。
高城:いやー、すごいですね。山にはどなたと?
石橋:最近はモンベルとかクラブツーリズムとかのツアーに一人で参加してますよ。レベルがいろいろあって、まだまだ先は遠いです。
高城:ぜひゴルフもまたやりましょうよ。タレンタとセレブレインでゴルフカップを。
石橋:いいですね!
高城:お話を戻しますが、やはり人事の業界ではアメリカが進んでいますよね。日本でもようやくHRの世界にテクノロジーを活用する重要性が認識され始めていますが、石橋さんから見てどんな状況だと思われますか?
石橋:やはりアメリカは進んでいると思います。HRテクノロジーベンダー含め人事政策を支援するさまざまなベンチャー企業が出てきていますので、良いサービスは我々も日本で展開したいと考えています。
高城:まだまだ日本に入ってきていない新しいサービスがたくさんあるということですね。
石橋:一つ、面白い話をしましょう。20数年前、ジャパン・アズ・ナンバーワンといって日本の経済状況が良かった時代がありました。その経済を支えている企業が社員に対して行っていたトリートメントがかなりすばらしいものだったのです。有能な人材をそれなりのポジションにつけて、終身雇用のエンゲージメントを与えることでモチベーションを高めていました。じゃあそのとき、アメリカはどうしていたか。
高城:ふむ。
石橋:アメリカは日本を見て、一生懸命に研究していたのです。そして、日本企業がやっていたことを彼らはシステム化しました。実は今、我々がアメリカから学んで日本に持ってきている製品の多くが、昔の日本の大企業がやっていたことをシステム化したものなんですね。
高城:うーん、なるほど。アメリカ企業のHRテック関連製品が実現しているものは、実は日本人がかつて実践していたことなのですね。
石橋:そうなんです。では日本とアメリカの違いは何なのかというと、アメリカはそういうものをシステム化してインフラを作るのが非常にうまいんですね。
高城:それならHRテックの考え方なんかは日本人にも親和性が高そうですね。
石橋:使いこなすことについて日本人は長けていますからね。ただ、システムという切り口でいうと、やはり3~5年はアメリカに遅れを取っていますね。
ブレイクスルーはコーチングにあり! HRテックで「Work Happy!」の実現を
ソムリエ:さあ、メインディッシュです。ポークスペアリブに、ドンキー・アンド・ゴートのグルナッシュを合わせましょう。ここはもともとIT業界で働いていた夫婦が立ち上げたワイナリーで、クオリティは非常に高いです。
石橋:天国ですね、今日は(笑)。このワインは甘めのポークスペアリブにぴったり合いますね。日本だと甘めのスペアリブってあまり食べないですよね。
高城:ナチュールワインということもあって、普通のグルナッシュのイメージよりはさっぱりしていますが、やはり肉との相性は抜群ですね。普段はどんなワインを飲まれるのですか?
石橋:個人的には赤ワインが好きですが、周りに白好きが多いので、シャンパンからスタートして白、赤みたいな流れで飲むことが多いですね。
高城:いいですね! さて、メインディッシュをいただきながらお話の続きを。現在、アメリカではHRテックはどんな時期に入っているのでしょう。
石橋:まだまだ成長期ですよ。びっくりするようなものが次々に生まれています。たとえばスーパーの出入り口にボタンがあって、「良かった」とか「まあまあ良かった」みたいな感想を押すシステムなんかがあるんです。
高城:へえー! 面白いですね。
石橋:こういうのって日本人だとあまり考えないですよね。超多民族国家のアメリカだからこそ、システム化して合理的にお客さんの気持ちを汲み取ろうとするのかもしれません。
高城:しかし、日本からそういったサービスが生まれないというのはなぜなんでしょうね。日本発というのは難しいのでしょうか。
石橋:昔から日本のベンチャーはアメリカで成功しているモデルを日本に持ち込むというのが主流でしたからね。
高城:タイムマシン戦略ですね。日本はガラパゴスなんて言われますが、今後ブレイクスルーするとしたらどういうところが切り口になるでしょう。
石橋:難しい質問ですね。ブレイクスルーといっていいかはわかりませんが、コーチングをどうインフラで活用するのかが切り口になるかもしれません。
高城:というと?
石橋:たとえば新卒で採用した社員が3年で3割辞めるという話があります。それは本人の資質、組織の問題、ビジネスモデルの問題などいろいろな理由があるわけですが、かなりの部分を占めているのが上司との関係性なんですね。コミュニケーションをとって、社員のモチベーションを高く保てるかが重要なんです。
高城:これまではそういうものは仕組みとは別の部分で担保されていたと思いますが、今はなかなかそうもいかないですよね。
石橋:そうなんですよね。課長や部長や社長はタレントマネージャーそのものなんだけど、意外とタレントのマネージができていない。だからこそHRテックで仕組みを作っていくのが重要なんです。よくなでしこジャパンW杯優勝した佐々木則夫監督のことをサーヴァントリーダーといいますが、そういうマネジメントスタイルを実行するためにもHRテックは必要だと思いますね。
高城:石橋さんの今後の目標はどんなことですか?
石橋:タレンタ社は「Work Happy!」というビジョンを掲げています。ハッピーというと幸せ感ととらえられがちですが、僕が思うハッピーはウェルビーイングの世界なんです。つまり、感情としての幸福だけでなく、自分が健康であること、家族が健康であることです。そういうところまでいかないとハッピーとはいえない。アメリカのHRテックを見ていても、やはりウェルネスの領域まで広がってきていると思います。そういう視点で見ると、タレンタ社はすごく裾野が広い面白い会社にしていけるんじゃないかという感覚がありますね。
高城:気持ちの面だけでなく、自分や周囲の健康まで含めて「幸せに働く」ことだというのはすごく納得がいく世界観ですね。ぜひ一緒にHRテックを盛り上げて、「Work Happy!」を実現できたらと思います。本日はありがとうございました。
石橋:こちらこそ、ありがとうございました。
あじる亭カリフォルニア
地下鉄赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。
<本日のワインと料理>
本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。
ポークスペアリブ
あじる亭カリフォルニア屈指の人気商品。ジューシーで柔らかく、ボリューム満点のスペアリブを甘口のソースでガツッと食べるアメリカンな一皿です。
ドンキー・アンド・ゴート グルナッシュ
サンフランシスコのIT企業で働いていた夫婦が新たな挑戦として立ち上げたワイナリーのワイン。フランス・ローヌで技術を学び、2001年からワインを作り続けています。グルナッシュといえばどこか田舎っぽいイメージがあるかもしれませんが、自然派ワインということもあってか、ドライかつさっぱり。脂の多くない肉料理にマッチします。
ライター・カメラマンの山田井です。タレンタの石橋社長は日本のIT業界黎明期からベンチャー支援を続けてこられた方。投資家としてもプレーヤーとしても活躍されているからこその視点で、人事やテクノロジーの現状をお話ただきました。
食事についてもかなりのグルメということで、あじる亭カリフォルニアのお料理とワインをとても楽しまれていた様子。ご用意いただいた品々はどれも完璧なマリアージュで感動しました!
どれも良かったのですが、やはり大人気のポークスペアリブは絶品でしたね。ローヌのグルナッシュも合うと思いますが、アメリカのグルナッシュ、しかも自然派ワインということで、また違った雰囲気の面白い組み合わせでした。
今回のマリアージュはどれも鉄板ですので、あじる亭カリフォルニアを訪れたらぜひ一緒に注文してみてほしいですね。