ワインで対談 2018年10月30日 エンゲージメントを高めることで企業に起きる変化とは? – スタメン 大西泰平さん × セレブレイン 山田和彦【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第10回ゲストは、株式会社スタメン取締役マーケティング部長の大西泰平さん。昨今の人事業界でトレンドワードとなっているエンゲージメント経営についてお話を伺いました。聞き手はセレブレイン コンサルタント・山田 和彦が務めます。 第10回ゲスト:大西泰平さん略歴 1984年生まれ。大阪府出身。筑波大学卒業後、広告会社 大広に入社。2012年よりファーストリテイリングのユニクロ事業に従事。その後、語学留学を経て2014年よりnanilani,inc.でフロントエンジニア、Sekai Labでベトナム拠点事業責任者を務める。2016年8月より取締役として株式会社スタメンに参画する。 シャルキュトリーに合わせるのはドイツの白ワイン! 山田:大西さん、本日はあじる亭にようこそ! 大西:お招きありがとうございます。素敵なレストランですね。こちらはセレブレインさんが運営されているのですよね? 山田:ええ。セレブレインの関連会社であるセレブールが展開するお店の一つです。サラリーマンの方々が自分の財布で気軽においしくワインと食事を楽しめるというコンセプトのカジュアルなビストロです。開店したのはもう13年前になりますね。 大西:長く愛されているお店なのですね。実は以前、私も赤坂で働いていたことがありました。 山田:そうでしたか。大西さんはお酒を飲まれますか? 大西:飲みますよ。ワインも好きです。あまり詳しくはないんですけど。 山田:ワインがお好きな方にはオススメのお店です!ぜひ今日はワインとお料理を楽しんでください。 小牧/店長:それでは最初のお料理です。自家製シャルキュトリーの前菜盛り合わせをご用意しました。パテ・ド・カンパーニュや生ハム、サラミなどを盛り合わせた当店の人気メニューです。 大西:おいしそうですね! ワインにもすばらしく合いそうです。 山田:早くワインと合わせてみたいですね! 最初のワインはどんなものでしょう。 小牧/店長:ドイツワインをご用意しました。リースリングという品種です。辛口も甘口もありますが、今回のワインは少し甘めです。味にふくらみがあり、お肉の柔らかさを包み込んでくれると思います。 山田:……うん、本当ですね! 確かに甘さもありますが、酸味もしっかりしていてバランスが良いですね。お肉を噛み締めたときの甘さにぴったりマッチします。 大西:たしかにこれは合いますね。お肉というと赤ワインのイメージでしたが、こういう感じで白ワインを合わせるのも良いですね。 “エンゲージメント”の定義とは? 山田:さて、ではワインとお料理を楽しんでいただきながらお話の方も聞かせてください。大西さんが取締役を務めていらっしゃる株式会社スタメンでは、エンゲージメント経営コンサルティングを事業として行っておられます。エンゲージメントという言葉はここ2、3年で人事の方がよく口にする言葉になりましたが、意外に定義が定まっていないと感じています。まずは御社が考えるエンゲージメントの定義から教えていただけないでしょうか? 大西:エンゲージメントは徐々に広がりつつありますが、まだ各社がそれぞれ違うことを言っていると感じています。私達はエンゲージメントという言葉を単体で使うこともありますが、エンゲージメント経営とか組織エンゲージメントとか、エンゲージメントという言葉に何かを付け足す形で、具体的な事象にフォーカスして捉えることが多いですね。 山田:世の中ではこれから定義が定まっていく状態ということですか? 大西:そうですね。ただ、私達としては、“会社と従業員の信頼関係が強固で、なおかつ従業員同士の信頼関係も強固な状態”を表していると考えています。 山田:会社と従業員、従業員と従業員の両方ですか。 大西:ええ。この2つが成り立っていて初めてエンゲージメントが高い状態だと考えています。たとえば実力主義の外資系企業の社員は、その会社で働くことにステータスを感じていたり、誇りを持っていたりします。しかし、個人主義で他の部署と足の引っ張り合いをしているのであれば、それは必ずしも組織としてエンゲージメントが高いとはいえません。 山田:会社と従業員の信頼関係はあっても、従業員同士の信頼関係がないパターンですね。 大西:一方、従業員同士は仲が良くて、信頼できる上司や同僚に囲まれていても、経営陣が信用できないと思っている場合も、先ほどと同じくエンゲージメントは高いとはいえません。 山田:先ほどの逆ですね。従業員同士の信頼関係はあるけれど、会社と従業員の信頼関係がない。 大西:エンゲージメントの把握については、こうして具体例を出すとわかりやすいと思います。 ロイヤリティとエンゲージメントはどう違うのか 小牧/店長:続いてのお料理をお持ちしました。新秋刀魚のコンフィです。低温の油でじっくり火を入れ、骨や内臓まで食べられる一皿です。付け合わせにはザワークラウトというキャベツの酢漬けとじゃがいもを添えてあります。じゃがいもにはお好みでマスタードをつけてお召し上がりください。 大西:肉に続いて魚ですか! これはワインも楽しみになりますね。 小牧/店長:ワインはオレゴンのピノ・ノワールをご用意しました。 山田:今度は赤なんですね。 大西:魚なのでてっきり白かと思いました! 小牧/店長:淡白な白身魚の場合は白ワインが合うのですが、肝まで食べられるコンフィとなると、実は赤ワインも相性が良いんですよ。特にオレゴンのピノ・ノワールは果実味が強く、酸もあるのでぴったりなんです。 大西:へえ~! そうだったんですね。……うん、たしかに合います! 山田:肉には赤、魚には白という思い込みをひっくり返される面白いペアリングですね。 大西:本当ですね。こういう提案をしていただけるのは楽しいですね。おいしいだけでなく驚きもあります。 山田:ワインと料理の世界は本当に奥深いですよね。さて、またエンゲージメントのお話に戻りますが、モチベーションやロイヤリティとは違うということでしょうか。 大西:モチベーションはもっと個人にフォーカスした概念になりますね。個人として仕事に熱中できているかを表すのがモチベーションなので、エンゲージメントとは直接関係ありません。ロイヤリティは比較的エンゲージメントに近い概念だと思いますが、先ほどの2つのうち会社と従業員の関係だけに限定した概念です。日本語でいうと“帰属意識”ですから。 山田:なるほど、ロイヤリティには従業員同士の関係は含まないわけですね。 大西:エンゲージメントはそういう意味では広義のワードですね。会社と従業員だけでなく、チームや部署をまたいだ関係性も考えないと組織としてのエンゲージメントは測れないのです。 山田:エンゲージメントが高まると組織はどうなっていくのでしょうか。 大西:業績の向上や社員の定着率が高まったり、教育コストが下がったりと、経営的なインパクトが出ることが証明されています。 山田:そうなると従業員満足度も上がりそうですね。 大西:そうですね。ただ、従業員満足度とエンゲージメントは明確に異なります。従業員満足度というのは、福利厚生や給与、仕事の内容など会社から与えられているものに対して満足している度合いなので、会社が赤字に転落するなどして待遇が悪くなると下がってしまいます。逆にいうと上げやすいということでもあります。 山田:待遇を改善すればいいわけですからね。 大西:一方でエンゲージメントは繰り返しになりますが、会社と従業員、従業員同士が信頼関係で結ばれている度合いですから、会社の業績が悪くなったときこそ力を発揮します。苦しい状況を皆で乗り越えようという空気が生まれるのは、エンゲージメントが高い組織ならではなのです。 山田:なるほど。そうなると短期的な視点よりも中長期的な視点で考えていくべきですね。 大西:もちろん企業には短期的な目標も必要です。でもそれだけでなく、中長期的にどうエンゲージメントを高めていくのかを考えることも大切ですね。 前編では“エンゲージメント”という言葉の定義と、モチベーションやロイヤリティといった概念との違いについて詳しくご説明いただきました。後編では大西さんが取締役を務めておられる株式会社スタメンについてさらに掘り下げて伺っていきます。 今回のお店 あじる亭 赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
人事施策 2018年10月29日 【スタート、ストップ、コンティニュー】1on1やフィードバック時に使える効果的なフレームワーク 年初に目標を立て、年度の終わりに目標の結果に対して評価をし、フィードバックをする。そんなこれまでの人事評価の仕組みがビジネスのスピードが早くなり通じなくなってきています。先進的な企業では1on1を取り入れたり、ノーレイティングの仕組みを取り入れ始めています。 そんなときに重要なのが、面談時のコミュニケーション。上手にコミュニケーションをすることで部下の成長を促すことも可能になります。今回はそんな面談時のコミュニケーションに活用できるフレームワーク「スタート、ストップ、コンティニュー」についてご紹介します。 [目次] 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは? 有用性について まとめ 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは? 「スタート、ストップ、コンティニュー」とは、フィードバックを効果的に行うフレームワークです。面談時などに話しあう内容をリスト形式で集約し、全体結果を分析しながら次の3つに分類します。 スタート(Start)・・・これから何を始めるか ストップ(Stop)・・・今までしてきたことで何をやめるか コンティニュー(Continue)・・・何をこれからも継続していくか 組織の中では、優秀な人に仕事が集まり、一部の人だけが業務過多になるケースが多々発生します。気がつけば、本来しなくてもいいことをしていたり、またやめるタイミングを逃したまま形式的に実施している業務も少なくありません。定期的に「スタート、ストップ、コンティニュー」を実施することで、優先順位が常に明確に整理され、次の行動を迷いなく促すことができるため、業務過多を緩和させることもできます。 有用性について 「スタート、ストップ、コンティニュー」はシンプルなフレームワークなので、マネージャ―から部下、部下からマネージャー、チームメンバー同士、クライアントからプロジェクト全体のフィードバックなど、様々なシーンで活用することができます。個人だけでなく、チーム成果、業務プロセス、プロジェクトなどにも活用できる汎用性の高いフレームワークです。 複雑な評語や評点を付ける必要がなく、フィードバックプロセスもシンプルなので年に複数回行うことができるのもポイントです。 ビジネスのスピードが早くなり、あっという間に立てた戦略が通用しなくなる昨今。工数をかけずに高い頻度で現状分析と見直しを行うことが求められている現代において、シンプルなフレームワークである「スタート、ストップ、コンティニュー」は大きな効果を発揮します。 まとめ シンプルなフレームワークである「スタート、ストップ、コンティニュー」ですが、出てくる内容に対して、どれに分類をするかを決めることはとても重要な判断です。本来は「コンティニュー」にすべき内容を「ストップ」にしてしまったり、逆に「ストップ」にすべきものを「コンティニュー」にしてしまい、何も整理されない、では本末転倒になってしまいます。 判断には、自社の戦略理解、目指す方向(ビジョン)の理解など、俯瞰的に物事を捉えられる総合力が必要とされます。これらをしっかりと判断して仕事を進めることができる人材が社内にいるかどうか、人材採用、人材育成は今後もより重要な経営課題になってくることが考えられます。
ワインの豆知識 2018年10月24日 【2018年 ボジョレー・ヌーヴォー】解禁前に改めてボジョレー・ヌーヴォーとは? 毎年楽しみにしている方も多いボジョレー・ヌーヴォー。1980年代から90年代にはメディアも多く取り上げ、かなりの盛り上がりを見せていた気がします。 2018年のボジョレー・ヌーヴォーの解禁も迫ってまいりました。そんなボジョレー・ヌーヴォーについて改めてソムリエに教えてもらいました。 [目次] ボジョレー・ヌーヴォーとは? ボジョレー・ヌーヴォー キャッチコピー ソムリエからの一言 ボジョレー・ヌーヴォーとは? 「ボジョレー」はフランスのブルゴーニュ地方の南にある地名を表しています。そして、「ヌーヴォー」とはフランス語で「新しい」という意味。つまり、ボジョレーでその年に製造された新しいワインのことをボジョレー・ヌーヴォーといいます。 毎年11月の第三木曜日の0時から販売開始され、それまでは販売してはいけないというルールがあるそうです。この「11月の第三木曜日の0時」ですが、現地時間での計算になるため、時差により本場フランスよりも日本のほうが早く解禁されます。先行発売好きの日本人の気質もあり、ボジョレー・ヌーヴォーの日本での人気は世界的にみても非常に高く、輸出先として1位とのことでした。一度に空輸ができるワインの瓶の総量は決まっているため、この時期はボジョレー・ヌーヴォーが優先されてしまい、通常のワインの空輸に弊害もでているという話もあるそうです。 もともとはその年のワインの出来をチェックすることを目的に始まったとも言われるボジョレー・ヌーヴォー。しかし、ボジョレーの帝王とも言われるジョルジュ・デュブッフ氏の努力により、新種のワインをどのようにして楽しむかという考えのもと現代のボジョレー・ヌーヴォーに進化をしていったとも言われています。 ボジョレー・ヌーヴォー キャッチコピー 毎年輸入元や販売業者がキャッチコピーを作ることもボジョレー・ヌーヴォーの楽しみの一つです。 以下にwkipediaからの一部を抜粋して掲載します。 引用元wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/ボジョレーワイン 2001年「ここ10年で最もいい出来栄え」 2002年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来」 2003年「110年ぶりの当たり年」 2004年「香りが強く中々の出来栄え」 2005年「タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』」 2006年「今も語り継がれる76年や05年に近い出来」 2007年「柔らかく果実味豊かで上質な味わい」 2008年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」 2009年「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」 2010年「2009年と同等の出来」 2011年「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」 2012年「偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全」 2013年「みずみずしさが感じられる素晴らしい品質」 2014年「太陽に恵まれ、グラスに注ぐとラズベリーのような香りがあふれる、果実味豊かな味わい」 2015年「過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせます」 他にも探すと毎年のキャッチコピーは色々なサイトで紹介されていますが、◯◯年に1度、◯◯年ぶりなどの言葉がよく目につくのが印象的です。輸入元や販売業者がどのようにして売ろうとしているのかもボジョレー・ヌーヴォーの楽しみ方のひとつですね。 Wkipediaでは上記の内容でしたが、他のところでは、2012年は「ボジョレー史上最悪の不作」なんていうキャッチコピーもでていたそうです。ソムリエの記憶だとこのキャッチコピー時のほうがむしろ売れていた気がするとのこと。お祭り感のあるボジョレー・ヌーヴォーならではの感じがしますね。 ソムリエからの一言 最後にソムリエにボジョレー・ヌーヴォーの美味しい飲み方について教えてもらいました。 「ご自宅の場合、冷蔵庫で軽く冷やして飲むとより美味しいですよ。ボジョレー・ヌーヴォーはライトボディの軽いワインです。感覚としてはフレッシュなフルーツを想像してもらうといいですね。もちろん好みがありますが、冷やしたフルーツのほうが一般的には美味しく感じる人が多いのと同じ感覚です。」 大変分かりやすい表現で納得しました。 ボジョレー・ヌーヴォーは大衆的な印象が強く、様々な生産者が作ることもあり、味についてはそれほど評価は高くないものが多かったそうですが、最近ではとても美味しいものもでてきているそうです。 「2018年11月の第三木曜日である11月15日(木)、あじる亭とあじる亭 Annessoではボジョレー・ヌーヴォーをご用意してお待ちしております。ぜひ皆様楽しみに来てください!」 今年のボジョレー・ヌーヴォーもぜひ楽しみましょう! 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
HRTech 2018年10月14日 退職防止にも効果的!オンボーディングでスムーズな「Yes to Desk」を実現する 以前、オンボーディングについてご紹介しましたが(新しい社員の早期戦力化!『オンボーディング』の勧め)、おかげさまで日々沢山の方々にアクセス頂いています。人材不足が騒がれている昨今、新しく入社する社員の早期戦力化はどこの企業でも重要度が上がってきています。今回はそんなオンボーディングについて、改めてアメリカの状況なども含めご紹介します。 [目次] アメリカでのオンボーディングの状況 「Yes to Desk」とは オンボーディング実施のためのツール紹介 まとめ アメリカでのオンボーディングの状況 アメリカでは2018年現在、失業率は過去最低水準に達しています。そのため、新しい人材の確保にはどこの会社も苦労しており、多くのコストをかけて採用した新たな社員に1日も早く会社にフィットしてそのパフォーマンスを発揮してもらうために、「オンボーディング」は企業における戦略的な取り組みとして上位に上がってきています。 誰にとっても最初の印象はとても重要です。しっかりとしたオンボーディングプログラムを提供することによって、受け入れた社員が長い間活躍してくれることが期待されます。実際に体系化された優れたオンボーディングプログラムを提供している企業では、新たに採用した社員が、3年というスパンで考えると継続して働き続ける率が69%も高いと言われています。また一方では、退職者の20%は45日以内に発生するというデータもあり、こういった数値を改善する手段こそがオンボーディングとなります。 また、オンボーディングの従業員に与える影響も大きくなってきており、退職する人たちの15%の人たちが、不適切なオンボーディングプログラムを退職理由にあげています。 つまり、アメリカではオンボーディングは早期戦力化の施策であるとともに、退職防止の施策としても重要な位置づけになってきています。 「Yes to Desk」とは そんななか、アメリカでは「Yes to Desk」という概念が新たにでてきています。 採用のオファーに対して「はい」と言ってから、実際に入社日に「デスク」に到着するまでの間をいかに生産的で従業員に歓迎されるようにするべきか、という考え方です。 オファーを受けいれた瞬間からオンボーディングプログラムは始まっているのです。 もともとはTwitter社の取組みなどから生まれた概念で、オファーを受け入れた瞬間から複数の関係する事業部が75ステップの「Yes to Desk」プロセスを実施していることからきているようです。ゴールは至ってシンプルで、座席の手配やメールアドレス、会社のミッションやビジョンの効果的な伝達、バーチャルオフィスツアー、幹部社員との交流機会、期待する業務内容などの迎え入れ方に関するアクションを漏れなく明確化させ、入社時の最初の印象をよくすることにあります。 オンボーディング実施のためのツール紹介 そんなオンボーディングを実現するための新たなツールをご紹介します。 https://enboarder.com/ 2015年に設立されたオーストラリアの企業 Enboarderは、単なるタスク、フォーム、書類作成などの効率化を支援するだけではなく、入社時における従業員経験とエンゲージメントに焦点を当てたオンボードとエンゲージメントのプラットフォームです。 まとめ これまでオンボーディング構築の効果は、早期戦力化に重きを置かれていました。しかし、今回ご紹介したようにアメリカでは退職やその後の在籍率にも影響していることがわかってきています。もし、自社の退職率が高い場合は「Yes to Desk」を含めたオンボーディングを一度見直してみてはいかがでしょうか。 セレブレイン社では、新入社員早期戦力化のためのロードマップ作り、メンタリング(バディ、メンター制度)、1on1の仕組みづくりなどを支援しています。お悩み事などありましたらば、お気軽にご相談ください。 お問い合わせはこちら:https://www.celebrain.com/inquiry
レポート 2018年10月09日 現地レポート! 2018年のHR Technology Conference & Exposition in Las Vegas (第2回) セレブレイン社のカリフォルニア駐在マーケティング担当の中澤佳奈生です。 私が参加した今年の「HR Technology Conference & Exposition」の現地レポート(第1回)では、AI・HRアナリティクスとビックデータ&データサイエンスの分野が盛大であったことをご紹介しました。 今回の第2回レポートでは、私が現地で調査したAIソリューションのトレンドとして、AIエンジンを組み込むことでHRプロセスを対話型に進化させた製品とサービスが印象的でしたのでご紹介したいと思います。 中でも代表的なのは、チャットボット、Nudge(ナッジ)、Augmented Analytics(拡張分析)の三つのカテゴリーです。 チャットボットで先行しているMya、textrecruit、Zugataなどは、企業への応募者が仕事を探す際に、AIベースによるチャットで自動応答の仕組みを作ることによって、一人当たりの採用コストが400ドルから600ドル節約できたと報告しています。まだチャットボットとの対話には多少不自然さが残りますが、その進化は目を見張るものがあります。新しい求人ポジションのアナウンスや応募者からの質問に対する回答、応募要件のチェック、面接のスケジュール調整などの多くの時間とコストを必要としていた採用プロセスが、チャットボットやその他の新しいソリューションツールによって自動化されるようになってきました。 米国では失業率が過去最低の水準に近づいている事情もあり、リクルーティング市場は激しさを増しています。 その中でAIを活用したリクルーティング分野のHR Techが大きなビジネスチャンスとなっていることから、多くのスタートアップ企業がこの分野の製品でしのぎを削っています。 一方、従業員のパフォーマンスを改善するための行動を支援するNudge(ナッジ)ベースのシステムを構築するソフトウェアベンダーも数多く見受けられました。 Nudgeとは「ヒジで軽くつつく」という意味で、私たちをそっと正しい行動に向かわせてくれる手法のことを言います。企業にとっては、単に生産性を向上させるためではなく、従業員がWell-being(身体的、精神的に良好で幸せに感じる満たされた状態を意味する)を維持することで、より創造的で高い生産性を生み、離職率の低減にもつながることが期待できます。 私たちがWell-beingに向けたヘルスケア、睡眠、食事の改善などの行動を起こすことを支援するNudge(ナッジ)関連のソリューションでは、AMP-IT、Virgin Pulseなどのツールも多く出展されており、市場も成長しています。 職場での過剰なストレスや燃え尽き症候群を無くし、一人ひとりが健康を重視する意識と行動によりパフォーマンスを向上させるという考え方が浸透していくことは、企業で働く私たちにとっても幸福度のアップにつながっていくと思われます。 また今年は、ピープルアナリティクスが成熟期を迎えていると、強く感じました。この分野では「Augmented Analytics(拡張分析。データから機械学習の手法を活用して、人間の判断力や作業の支援をすることにより、人間の能力を拡張する)」という概念が取り入れられていることが一般的ですが、今回、個人的に関心があったのは、「Relationship Analytics(関係分析)」です。 Trendata、SplashBI、Chasmaなど、予測エンジンを搭載したセルフサービス型分析サービスを提供する企業が数多く出展しており、人事システムやタレントマネジメントなどからデータを収集・分析し、従業員に関する状況をダッシュボードで管理できるようになっていました。これらは、Rなどの統計解析用のプログラミング言語を使用して手動で分析するのではなく、あらかじめ分析機能が組み込まれているため、業務部門のユーザーが直接導入して活用しやすくなっています。IT部門がBIツールをユーザーに提供していたのは、つい数年前なのに、隔世の感がありますね。今後は、業務部門主導でデータを準備し、認識し、統計解析するといったAI・機械学習プロセスにおけるセルフサービス型ツールはあらゆる場面で活用され飛躍していく分野となるでしょう。 HR Techの領域では、日々新しいテクノロジーが生み出され、企業も人も新しい価値観と行動が求められていることを実感した「HR Technology Conference & Exposition」ラスベガスでの4日間でした。 今、セレブレイン社では、AI・機械学習時代のビジネスリーダーに欠かせない思考法である、日本初の「アナリテイカルシンキング」の実践型トレーニング1日コースを提供しています。ご関心をお持ちいただいた方はお問い合わせ下さい。
ワインの豆知識 2018年10月04日 【世界のワイン】アメリカ・カリフォルニアのワインの特徴とは? 根強いファンの多いアメリカ・カリフォルニアのワイン。ニューワールドのワインとしては知名度・人気ともにトップクラスではないでしょうか。今回はそんなアメリカ・カリフォルニアのワインについてソムリエに訊いてきました。 [目次] カリフォルニアワインの特徴 ソムリエからのコメント カリフォルニアワインの特徴 カリフォルニアワインについて、質問をしようとするとソムリエが早速ワインを2本持ってきてくれました。 左がOpus One、右がSCREAMING EAGLEです。 「カリフォルニアワインは高級なものも沢山ありますね。右のワインは1本数十万円します。」 スタートからかなり驚いてしまいました。 アメリカのワインの歴史自体は1500年代ころから始まり、1800年代のゴールドラッシュ時代にカリフォルニアワインが大きく普及し始めたと言われています。1920年の禁酒法により一時壊滅の危機にさらされますが、カリフォルニア大学の研究などの効果もあり少しずつ復興されてきました。 そして、カリフォルニアワインの拡大に最も貢献した人のひとりがロバート・モンダヴィです。画像にもある有名なカルフォルニアワイン、Opus One(オーパスワン)を作った人です。ヨーロッパの葡萄からワインを作り出した革新的な人で、ワイン製造における技術革新を持ち込むとともに、マーケティング戦略やブランディング戦略にも長けていたとのこと。 以前の記事(高級ワイン、なぜあのワインはそんなに高いのか?ワインが高額になる7つの理由)で紹介したように、ワインの価格は希少性やブランドイメージでも変わります。Opus One(オーパスワン)が高級なのもロバート・モンダヴィ氏のマーケティング戦略の影響も大きいのかもしれないですね。 味についての特徴は、カリフォルニアの日照量が多く雨が降りづらいという気候から、酸味が少なく、まろやかな傾向があるとのこと。愛されやすい果実味があるので、万人受けしやすいそうです。特に酸っぱいワインが苦手な人にはおすすめで、同じ品種でもアルコール度数が比較的高めなのも特徴とのことでした。 ソムリエからのコメント 最後に、上の画像にある高級ワインOpus One、SCREAMING EAGLEに合う食事について、教えてもらいました。 「赤みのお肉、ローストよりもグリル(焦げ目をつける)系の料理が合いますね。和牛よりも脂の少なめの赤みのお肉、リブロースなんかが美味しいと思いますよ。レアのマグロのステーキなんかもいいですね。フランスのワインに比べると、味わいにボリューム感がある為、料理の味わいも、輪郭のはっきりした濃いめの味付けが良いと思います。グリル料理は鉄板です! 」 さすが、ソムリエ!勉強になりました。 「カリフォルニアのワインはやっぱりシリコンバレーなどで働いていた人が注文することが多いですね。」 やはりカリフォルニアにいた人たちは皆、カリフォルニアのワインが懐かしくなるのでしょうか。過去にシリコンバレーに赴任されていた人への贈り物にはカリフォルニアワインなんかは喜ばれたりするかもしれないですね。 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
HRTech 2018年9月30日 2018 HR Technology Conference & Expositionピッチコンテストファイナリストの6社はどんな企業? ラスベガスで開催され、今年で21回目を迎えた「HR Technology Conference & Exposition」。速報の第一弾をセレブレイン社の人事・組織に役立つコラムのコーナーでもご紹介しましたが(現地レポート! 2018年のHR Technology Conference & Exposition in Las Vegas (第1回))、今回はそちらで実施されていたピッチコンテストについてより詳細をご紹介します。 [目次] HR Technology Conference & Exposition ピッチコンテストとは ファイナリスト6社 最後に HR Technology Conference & Exposition ピッチコンテストとは http://www.hrtechnologyconference.com/pitchfest.html 「Pitchfest」と呼ばれるこのコンテストでは、HRTechのスタートアップ企業に対して、人事責任者、投資家、ITプロフェッショナルを含むカンファレンスの参加者に、自社のサービスやテクノロジーを紹介する機会が与えられます。今年は、150社以上の参加企業から絞り込まれた30社がピッチコンテストに参加しました。 まずは予選ラウンドです。予選ラウンドでは参加企業は10社ずつ3つのグループに分けられた上で、各企業は3分間のプレゼンテーションを行います。審査は観客の投票を含んで行われ、各グループから2社ずつ選出され、6社に絞られます。そして、選ばれた6社により再度5分間のプレゼンテーションが行われ、審査員による厳正な審査のもと優勝企業が決まります。 優勝企業には、会期中に行われる「The Next Great HR Tech Company」に登壇する権利と、2019 HR Technologyカンファレンスで展示スペースなどが提供されます。 ファイナリスト6社 今回予選を通過した6社のファイナリストは次の通りです。 1.Blendoor http://blendoor.com AIを活用して、採用の際に性別や人種などによる偏見を排除して、多様な才能を持つ人財を採用することができるシステムを提供しています。最近では履歴書や職務経歴を分析するピープルアナリティクスなどのテクノロジーも提供開始しています。 2.ComplianceHR http://compliancehr.com 企業に求められる人事上のコンプライアンス管理をAIを活用して解決するテクノロジーを提供しています。 3.Jane.ai https://jane.ai AIを活用したチャットボットを提供しています。人部部門、IT部門、セールス、カスタマーサポートなど様々な部門で利用可能です。 4.RelishCareers https://www.relishcareers.com 修士卒業レベルに特化した人材採用プラットフォームを提供しています。 5.SwarmVision https://www.swarmvision.com 自社内からイノベーション人材を発掘/育成するためのプラットフォームを提供しています。 6.Talvista https://www.talvista.com データ・ドリブンでの採用プロセスを可能とするプラットフォームを提供しています。ジョブディスクリプションや面接評価なども最適化していくことができます。 優勝したのは、AIを活用した採用ソリューションを展開しているBlendoor。女性のCEO兼ファウンダーがとてもエキサイティングなピッチを展開し、会場を盛り上げていたのが印象的でした。 最後に このピッチコンテストは、EXPO会場の真ん中あたり、開かれた場で実施されており、会場にいる人は誰でも聞くことができました。 座席数は30〜40位でしたが、立ち見の方々も多く、全部で70〜80人くらいが聴講していました。そのため、よくあるピッチコンテストよりもカジュアルな雰囲気で、ピッチをする方も、ピッチを聞く方もまさに楽しんでいる!というのが特徴的でした。 この中から次のHRユニコーン企業がでてくるのか? HRTech先進国のアメリカの最新情報は常にキャッチしておきたいところですね。
ワインの豆知識 2018年9月20日 【世界のワイン】日本ワインって実際どうなの?その特徴とは? 「伝統国」と「ニューワールド」の2つに大別されるワインの世界。国も変われば気候も変わり、ワインの特徴も変わります。今回は日本のワインについてソムリエに訊いてきました。 [目次] 日本ワインの特徴 ソムリエからのコメント 日本ワインの特徴 まず「日本ワイン」とはそもそも何なのか?答えは、日本各地で栽培されたぶどうを基に日本で製造されたワインのことをいいます。そのため、ぶどうを輸入して日本で製造されたワインは日本ワインには含まれません。 生産量は山梨がトップで、長野、山形、北海道と続いていきます。 日本のワインの歴史は他国と比較すると浅く、約150年くらい前、ふたりの若者が山梨で作り始めたことがスタートと言われています。 日本でもカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネのように有名な品種も栽培されていますが、主要品種は「甲州ぶどう」と「マスカット・ベリーA」という日本固有種になります。 甲州ぶどう(白ワイン)・・・色が透明で吟醸香がする。日本酒のような雰囲気があり、さわやかさが特徴。味はニュートラルで特徴がないのが特徴ともいえる。ふんわりお米の香りもして、和食にも合わせやすい。 マスカット・ベリーA(赤ワイン)・・・味の特徴はその酸味。酸味がベースでそこに甘さが感じられる。お味噌系の料理との相性がよく、西京焼きなどにお勧め。 そのほか、デラウェアをワインにするのも日本独自とのこと。ヨーロッパやアメリカでは敬遠されるそうです。 また、日本ワインでは「ぶどうは山形で栽培、ワインの生産は各地」というようにぶどうの生産地とワインの生産地が異なることがあります。これらは海外では異例のことで、日本ならでは。兵庫で作られる山田錦をもとに各地で生産される日本酒の文化に近い感じがしますね。 ソムリエからのコメント 世界では7,000年の歴史があるワインの世界。それに対して日本ではまだ150年程度なので、まだまだ生まれたてと言っても過言ではありません。その浅い歴史にも関わらず、近年では世界的に評価されるワインもでてきているそうで、このあたりに日本人の勤勉さがうかがえます。 日本ワインの生産者は若い人たちが多く、お洒落なものが多い印象とのこと。新しいことにもどんどんチャレンジしている小さな生産者が多いのが特徴で、今後が楽しみとのことでした。 お店では海外からお客様が来たときに日本ワインを提供することが多いそうです。 (山梨のワイナリーで作られた「三之蔵」) しかし、レストランで飲む日本ワインは流通上の特性から一般小売のワインと比較すると割高感があるそうです。そのため、レストランでは好んで飲む人はまだまだ少ない傾向にあるようです。 「日本ワインは和食にもよく合うワインが多いです。これからの季節、ご家庭でも秋の和食と共に日本ワインを楽しむなんてのもいいですね。」 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
コラム 2018年9月19日 現地レポート! 2018年のHR Technology Conference & Exposition in Las Vegas (第1回) 初めまして、セレブレイン社のカリフォルニア駐在マーケティング担当 中澤佳奈生です。 1997年に始まった「HR Technology Conference & Exposition」は、今年で21回目を迎え、9月11日から14日までラスベガスで開催されました。 HR テクノロジーに関する世界最大級のイベントとして、年々その規模と勢いを拡大させており、数多くのセミナーやセッションに加え、400社以上の企業が出展しています。 私もHRTechの市場や最新の技術トレンドを知ることができるイベントいうことで、今年もワクワクしながら参加してきました。開催初日の午前10時のオープンにはすでに多くの参加者が開場を待ちわびており、多方面からの注目の高さがうかがえました。 HR Technology Conference & Exposition では、HR関連コンテンツの動向とともに、AIなどの最新の技術を活用した新たな製品やサービスのトレンドを実感することができます。 多くの企業で、ビジネスの成長を支える人材の活性化や生産性向上が求められ、人事部門の役割が注目される中、HRTechを活用した人事と組織の改革が進みつつあることも、このイベントが注目を浴びている大きな理由となっています。 HR Technology Conference & Expositionはその名の通り「カンファレンス」と「エクスポ」から構成されています。11の コンテンツトラックで構成される59のセッションが聴ける「カンファレンス」と、ソフトウェアベンダーが自社製品を出展する「エクスポ」に分かれています。「エクスポ」では、毎年注目を集める「スタートアップパビリオン」と「ピッチコンテスト」、20社以上のソフトウェアベンダーの「デモセッション」がありました。 また今年は、「HR ハッピーアワー」が夕方4時半からスタートしました。多くのエクスポ出展ブースではビールやワインなどのドリンクとフィンガーフードが提供され、カジュアルな雰囲気の中で出展者と参加者との熱い議論と交流が行われました。アメリカも日本も少しアルコールが入ると議論が盛り上がるのは同じですね・・。 私の第1回レポートでは、今年のイベントの中で、特に興味深かったテーマを3つ取り上げ、紹介したいと思います。
ワインで対談 2018年9月12日 AIの導入で人事の仕事はどう変わる? – AI研究家・大西 可奈子さん × セレブレイン 関 将宏【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第9回ゲストは、NTTドコモで対話AIの研究開発に携わり、3月には著書「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」も出版された大西可奈子さん。AIが人事業界に及ぼす革新と現状についてお話いただきました。聞き手はセレブレイン 人事戦略コンサルティングユニット マネジャー・関 将宏が務めます。 第9回ゲスト:大西 可奈子さん略歴 お茶の水女子大学修了後、株式会社NTTドコモ入社。国立研究開発法人 情報通信研究機構への出向を経て、現在はNTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部で自然言語処理と対話AIの研究開発に従事。著書に『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』(マイナビ出版)など。講演・執筆活動などマルチに活躍している。 雑談という正解のない研究に挑む 関(将):大西さん、あじる亭 Annessoのワインとお料理はいかがですか? 大西:すばらしいです。特にさっき出していただいたギリシャのワインは、やっと念願叶ってという感じだったので感動しました(笑)。ギリシャといえばタコですし、お料理との組み合わせも絶妙ですよね。 関(将):本当においしいですよね。次のお料理も気になりますね。 野村/店長:続いてはエビとゴーヤのチーズチリチャンプルです。チリソースのスパイス感とチーズのまろやかさが合わさって、コクのあるピリ辛なお料理です。合わせるワインはカリフォルニアのロゼをお持ちしました。スパイス感に合わせて赤ワインでもいいのですが、今日は暑いので赤の前にロゼからということで(笑)。 大西:スパイスの利いた料理、大好きです! ここまでのワインとお料理で猛暑からやっと解放されたので、ちょうど温かいお料理がほしいと思っていたところでした。すごくおいしいです! 関(将):ワインも面白いエチケットですよね。これはふくろう? 野村/店長:そうなんです。ストルプマン・パラ・マリアというワインで、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フランなどいくつかの品種がブレンドされています。カベルネ・フランに少しベジブルな香りがあるので、ゴーヤとぴったりなんですよ。 大西:たしかに! それでこんなに合うんですね。 関(将):ではチーズチリチャンプルとロゼをいただきつつ、お話の続きに。人事以外でもいいので、大西さんが研究されている対話AIについて、具体的な活用の可能性をお聞きしたいです。 大西:たとえばコールセンターですね。AIが応対できるようになれば、かなりのヒューマンコストの削減になります。といっても今はまだ、すべてをAIが行えるわけではありません。まずAIが電話に出て、音声認識で相手の質問や要望を聞き取ります。過去のデータから問い合わせの内容を推測して、対応できる部署に振ることはできるでしょう。さらに回答も予測して、5つくらいのパターンを提示したりもできると思います。担当者はかかってきた内容と、AIが提示された予測回答を見て応対できるのでかなり楽になるのではないでしょうか。 関(将):なるほど、タスク指向型対話システムと呼ばれる、特定のタスクを目的とした対話ですよね。ある程度回答がしぼれると、かなり役立ちそうですね。 大西:ただ、コールセンターのスタッフ側も、いきなりAIから質問が飛んできて5つの回答パターンを提示されても最初は戸惑うと思うんですよね。AIみたいに新しいやり方を現場へ浸透させるのってけっこう大変なんですよ。 関(将):よくわかります。 大西:せっかくAIをつくっても本格導入できないのでは意味がありませんよね。だからこそ現場とのハブになれる人が必要なわけですが。 関(将):その部分をクリアできるようになれば、タスク型の対話についてはAIが活きる場面も増えそうですよね。一方で、大西さんがメインで研究されているのは非タスク型の対話ですよね。 大西:そうですね。有り体に言うと「雑談」ですね。 関(将):その部分の技術は進んでいるのでしょうか? 大西:正直に言って微妙です。進んではいますが、おそらく想像されているよりも歩みは遅いです。というのも対話のなかでも雑談って、あまり研究者が好まないんですよね。研究向きなのは「これが正解!」と答えがはっきり出るものなんです。雑談って明快な答えがあるわけではなく、どうしても主観評価になってしまうので、取り組んでいる研究者は多くはないですね。 関(将):なるほど、たしかに直接的にビジネスとは結びつけづらいかもしれませんね。 大西:雑談ってお金にならないですからね。タスク型の対話AIは「暑い」と話しかければ「エアコンの利いた商業施設を探します」と課題を解決してくれますが、雑談AIは「暑い」と話しかけても「夏だもんね」と返してくれるだけ(笑)。つまり、雑談AIをビジネスにしようとすると“話をすること”そのものが価値を生まないといけません。これはかなり難しい。 関(将):でもアトムやドラえもんみたいなロボットが友だちになってくれたら嬉しいですけどね。 大西:そうですよね! 関(将):ただ、雑談は正解がないから機械学習やディープラーニングの手法でどこまでできるのかは難しそうですよね。 大西:ええ。国立研究開発法人 情報通信研究機構にいた頃、「雑談とは共通の認識を省略した対話である」という仮説を立てたことがあるんです。例えば、「Nintendo Switchほしいよね」「マリオテニスもできるもんね」という対話があったとき、そのベースには「Nintendo Switchでマリオテニスが遊べる」という共通認識があるわけです。だから、「Nintendo Switchほしいよね」と話しかけられたAIはネットをクロールしてNintendo Switchに関する情報を集め、「マリオテニスが遊べる」という情報を探してきて、「マリオテニスもできるもんね」と返せば人間らしい雑談になるのではないか――という仮説です。 関(将):面白いですね! たしかに人間同士でも初対面で会話するときはお互いの共通項を探りますよね。 大西:そういうことですね。でも、裏を返せば雑談AIってまだそういうレベルなんですよ。本当の意味で雑談できるレベルにはありません。これは世界の有名な外資系IT企業でも一緒です。最近は応答文をリアルにつくりこむのが流行っていますが、あれは単に応答がうまいだけで、雑談できているわけではないんです。 関(将):Siriとかチャットボットとかがちょっと気の利いた返しをするような? 大西:そうです。あれはあくまで会話のシナリオを作り込んでいるだけで、そこに未来はないと私は思っています。 関(将):会話のシナリオの数を膨大にしてもだめなのですか? 大西:実際にそれを検証した事例があって、数万件のシナリオと数十万件のシナリオで比較したところ、ある段階から対話のクオリティが頭打ちになったそうです。ある程度まではいけるのですが、限界があるのです。シナリオではAIは人になれません。 関(将):難しいのですね……。大西さんの今後の研究にも期待しています。 AIの導入で人事の仕事はどう変わる? 野村/店長:メインの牛ハラミのステーキをお持ちしました! 合わせるワインはカリフォルニアの赤ワイン。このエチケット、見覚えがありますか? 関(将):あっ! ゲーム・オブ・スローンズじゃないですか! 野村/店長:そうなんです、こちら世界中で大ヒットしているドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の公式ワインです。ドラマの中でもワインが重要な役割を果たしています。 大西:へ~! すごい! それが実際に発売されたんですね。 野村/店長:ワイン自体はカリフォルニアにパソ・ロブレスという地域のもの凝縮感があり、しっかりとした味わいです。品種が6種類ほども入っているそうなのですが、何が入っているかは企業秘密とのことです。 大西:ミステリアスですね。 関(将):やわらかくてボリュームたっぷりのハラミと濃い赤ワインの相性は言うまでもなく最高ですね! 大西:お肉と濃い赤ワインが大好きなので、いくらでも食べられそうです(笑)。 関(将):さて、お話を戻して……もう一つ、人事的な視点でいうと、AIが普及することで人の仕事が置き換わってしまうのではないかという懸念があります。これについてはどうお考えでしょう。 大西:置き換わる仕事とそうでない仕事はあるでしょうね。たとえば勤怠データなどははっきりとした数字なので、それをもとにした分析はAIが得意とするところでしょう。 関(将):勤怠データから退職予測をするとか、適性検査からハイパフォーマーを見つけるとかですね。 大西:ええ。一方で社員の様子を見てコンディションを予測したりするのは難しいでしょうね。結局、AIといってもデータに基づいて分析・予測しているだけなので、データがふわふわしたものだとあまり活用する意味がないんです。 関(将):たしかに、適性検査と面接のデータをもとに、その人を採用するかどうかを判断するAIを導入しようとした企業の話を聞いたことがあります。AIならより少ないコストで正しく判断できるのでは……と期待したわけですね。ただ採用は重要事項なので、「なぜ採用/不採用になったのか」を採用担当が検証するように言われた。そうすると結局担当者が検査や面接の結果を一つ一つ確かめることになり、AIを導入する意味がなかったという(笑)。 大西:なるほど(笑)。そもそも、人でないと許されない領域というのは絶対にあって、そういったものはたとえAIの得意分野であっても、現時点では置き換えるべきではないと思います。たとえば医療とかもそうですね。発見はAIに任せた方がいいと思うけど、それを患者さんに伝えるときに「AIがそう言ってるんで」というのはまだ受け入れられないでしょう。 関(将):人間のお医者さんがきちんと診てくれていることに安心感を覚える人は多いでしょうね。 大西:クリエイティブ方面ももう少し時間がかかるかもしれません。すでに小説や絵画をつくるAIは出現していますが……。 関(将):村上春樹の小説を大量に読み込ませると彼の文体や作風を模倣したそれっぽい物語が出てきそうですけど、それはちょっと違うというか。 大西:それっぽければいいわけじゃないんですよね。背景となる物語も含めて消費しているので。 関(将):人間の面白いところですよね。 大西:最近、ワイン×AIについてすごく考えるんですよ。仮にソムリエがAIになったらどうなるだろうって。エチケットは画像認識で判別できるだろうし、味も酸味とか渋味とか数値化できるんじゃないかと。でもソムリエは目の前のお客さんを見て、料理や今日の気温、お客さんの体調や雰囲気などを総合的に判断してワインを選んでくれますよね。それは今のAIには絶対にできないんです。 関(将):面白いですね。ワイン自体はデータベース化できそうですが、そこに人という要素が入ってくると、途端にAIの手には負えなくなってしまうわけですね。 大西:ちょうど先日、「日本の夏」をテーマにワインを持ち寄ってワイン会を開いたのですが、「日本の夏」をどう解釈するか、めちゃくちゃ悩んだんですよ。夏といえば潮の香りかなとか。でも潮の香りって定義できないので、それを選ぶことはやっぱり人間にしかできないんです。単純に「このワインに似たワインを選んで」ということなら、データさえあればAIは正確に選び出してくれると思いますけどね。 関(将):レコメンドはAIの得意分野ですもんね。とはいえ、今後はあらゆる分野にAIが浸透していくことは間違いありませんよね。AIが当たり前の世代もどんどん出てくるでしょう。 大西:世代の影響はありますね。たとえば音声認識もそうじゃないですか。私たちの世代はまだ、外でスマホに向かって話しかけることに気恥ずかしさがありますが、でもある世代からはきっと普通になっていくはずです。 関(将):慣れもありますよね。 大西:ええ。最近、スマートフォンを耳にあてずに、Bluetoothのイヤホンだけで通話している人も見かけますが、あれもちょっと前まで見かけるたびにギョッとしていました(笑)。Bluetoothイヤホンが普及した今はもう、それほど驚くこともないですよね。 関(将):人事とAIもそうなんだと思います。世代交代が進むにつれて少しずつAIの風は吹いてきている。勘と経験だけじゃなく、データをもとに話ができるようになっていくと思いますね。 大西:AIで世の中がどうなっていくのか、私も楽しみです。 関(将):本日は興味深いお話をありがとうございました! 大西:こちらこそ、今日は本当にいろいろな方向性からワインが楽しめて、すごく良い経験になりました! 今回のお店 あじる亭 Annesso 赤坂見附駅から徒歩5分。赤坂あじる亭の姉妹店で、Annesso(アネッソ)とはイタリア語で「別館」という意味。2018年にリニューアルオープンしました。フレンチをベースに、ワインに合う欧風料理と世界のワインをご提供します。スタッフは全員がソムリエ有資格者。シェフのこだわり料理をバルスタイルでどうぞ! ライター・カメラマンの山田井です。 世の中は空前のAIブーム。今はまだ各業界、手探りなところもありますが、キャズムを超える瞬間もそう遠くはありません。今後、人事の世界もAIの導入により大きく変わっていくものと思われます。 来るべきAI社会に向けて、大きなヒントが得られた対談だったのではないでしょうか。 そして、リニューアルオープンしたあじる亭 Annessoのお料理とワインですが、相変わらずすばらしいものでした! フランスから始まり、モンテネグロ、ギリシャ、アメリカという世界旅行を楽しむかのようなワインのチョイスと、夏の火照った体を冷やし、食欲がぐんぐんわいてくるようなお料理の流れ! ペアリングも含め、夏の夜にふさわしい完璧なディナーでした。 あじる亭 Annessoを訪問された際は、ぜひ今回の記事もご参考して楽しんでいただければと思います。